【事業内容】
(1)当社の事業領域
「現場」を持つ企業の業務課題をDX(デジタルトランスフォーメーション)によって解決するデジタルサービスを、主にSaaSと呼ばれる形態で提供しています。現場とは、建設業、流通小売業、インフラ業、運輸・交通業等の業界における現場のことを指します。業務は立って行い、普段パソコンは使わない人々をメインターゲットとして、当社のサービスを提供しています。
(2)顧客が抱える課題
当社の顧客である現場を持つ業界の多くの企業は、生産年齢人口の減少によって人材不足が深刻化しております。さらに、他の産業と比べて長時間労働が常態化し、例えば建設業においては、厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和4年度分結果確報」によると全産業平均と比較して年間約328時間の長時間労働となっています。長時間労働が発生する背景には、現場特有のコミュニケーション課題として、話したい相手が近くにおらず業務が停滞する、確認のために現場と事務所の往復が多い、膨大な手書きの点検記録や提出書類が必要となる、多くの協力会社とのタスク・スケジュール調整が頻発するといった課題があります。
(3)当社が提供するサービス
現場の課題を解決するデジタルサービスとして、2014年10月に現場向けビジネスチャット「direct」をリリースしました。その後、「direct」と連携して稼働するサービス群として、2016年10月には働き方改革支援ソリューション「direct Smart Working Solution(SWS)」を、2017年1月にチャットボットレンタルサービス「direct bot RENTAL」を、2018年7月にはユーザーの思考に合わせて進化するFAQソリューション「AI-FAQボット」を、2022年4月にはタスク管理、スケジュール管理、掲示板を搭載した「direct Apps」をリリースし、サービスの拡充に努めてまいりました。さらに、顧客から寄せられるDXに関する課題を解決するため、2022年7月にDXコンサルティングサービスを開始し、コンサルティングや「direct」等と連携した個社別のオリジナルソリューションの設計・開発を行っております。また、「direct」のOEM提供を行う形で、自治体や信用金庫に対して、ビジネスチャットサービスを提供しております。
(4) サービスの提供形態
当社の主なサービス提供形態は、顧客に対して「direct」等のデジタルサービスを提供し、顧客から利用料の支払いを受けております。商流は、当社から利用者に対して直接販売する形態と、販売パートナーを通じて利用者へ販売する形態があります。また、「direct」等の自社サービスを、OEMパートナーに対し、OEMパートナーのブランドとして利用者へ提供することがあります。
毎月経常的に得られるサービス利用料は、ストック売上高として計上しております。そのほかに、当社サービスの初期設定やDXコンサルティングサービスは、作業完了やシステムの納品ごとに、プロフェッショナルサービスその他売上高として計上しております。
(5) 現場のビジネスチャット「direct」の特徴
① 直感的でシンプルなインターフェース
「direct」は、リリース以来、現場で利用されるITツールとして開発してきました。チャットサービスは、業務連絡・報告といったコミュニケーションを円滑に行うために、業務に携わる全ての人が使いこなせる必要がありますが、現場で働く人々の職務内容やITリテラシーはばらばらで、ITツールの利用を全員に浸透させるのは困難です。「direct」は、スマートフォンを操作できる人であれば直感的に操作できるユーザーインターフェースを指向して開発しております。
② 現場に出入りする協力会社、取引先と安全につながることが可能となるアカウント管理機能
現場の業務には、社内の従業員だけでなく、協力会社や仕入れ先など、多くの社外の関係者と業務を推進します。建設現場では、現場監督を中心として、土木、左官、電気、配管、クロスその他多くの協力会社の作業員が関わり、流通小売では、仕入れ先や店舗の臨時職員など、自社の従業員以外とのコミュニケーションが必要とされます。「direct」は、このような社外の関係者と安全につながる仕組みとして、「direct Guest Mode(ダイレクトゲストモード)」というアカウント管理機能を提供しております(特許取得済 特許第6243382号)。「direct」の管理者及び通常ユーザーは、協力会社などの社外メンバーをゲストとして組織に招待することで、全参加メンバーに話しかけることができますが、招待されたゲストメンバーには他のゲストの存在が表示されません。
③ 現場の情報管理に必要なセキュリティ
「direct」の開発・運用体制は、お客様の情報資産の保護を徹底し、セキュリティ事故の発生ゼロを目的として、情報セキュリティマネジメントシステムを構築し、一般財団法人 日本品質保証機構(JQA)の厳正なる審査のもとISO/IEC 27001:2013(JIS Q 27001:2014)及びISO/IEC27017:2015(JIP-ISMS517)の認証を取得しています(登録日:2016年12月9日)。
「direct」で送受信されるメッセージや添付ファイルのデータは、すべて暗号化通信(SSL/TLS)にて行われています。「direct」のサーバー管理は、専門エンジニアによる運用ルール(社内管理者アクセス制限・ログ管理、最新セキュリティパッチの定期適用、脆弱性診断など)のもと行われており、お客様からお預かりしたデータ(写真、動画、ドキュメントなどの添付ファイル)は暗号化方式AES256により保存しております。 また、外部攻撃からの対策として、侵入検知、改ざん検出システムを設置して監視しております。さらに、「direct」は、現場の協力会社の関係者がスマートフォンで利用するという特性上、ファイルのダウンロード制限や、端末でのスクリーンショット制限といった現場で求められるセキュリティ機能を有しております。
④ 現場で活用されるデジタルサービスとの連携
建設業をはじめとして、現場ではDXによる生産性向上のために、様々なデジタルツールが使用されています。「direct」は、現場で利用されるファイル共有ツール、グループウェア、帳票記録・報告・閲覧ツール、図面管理ツール、施工管理ツール等の他社サービスと連携しており、業務ツールのハブとなっています。
(6) 連携ソリューション
① 「direct Apps」
2022年4月、「direct」と連携するアプリケーション群として「direct Apps」のサービスを開始しました。初期アプリとして、タスク管理、掲示板、スケジュール管理の3アプリをリリースし、2023年3月に日程調整のためのアプリ「トリスケ」をリリースしました。各アプリにおいて情報を更新すると、「direct」にチャットとして通知され、現場の業務連絡の円滑化を実現しています。
② 「direct Smart Working Solution」
「direct Smart Working Solution(ダイレクトスマートワーキングソリューション、以下「SWS」という)」とは、「direct」とチャットボットの技術を活用した、従業員の長時間労働の是正を支援するサービスです。働き方改革関連法に対応するため、企業は限られた時間で成果を上げる仕組み作りが求められます。「SWS」は、残業実態を見える化し、一人ひとりの勤怠を適切に管理・運用することをサポートします。
③ 「AI-FAQボット」
チャットボットと会話して、必要な回答を必要な時に手に入れるAI活用によるFAQソリューションです。事前学習は一切不要、顧客が利用しているビジネスチャットやグループウェアとの連携可能、言葉の揺れの自動学習といった特徴を有しております。よくある問い合わせや、時間外の問合せに対して、チャットボットが対応することにより、問合せを受ける側の業務負担を軽減し、問合せを発する側の顧客又は従業員の満足度の向上を目指します。
④ 「タグショット/タグアルバム」
2023年6月、現場向け写真管理サービスとして、「タグショット/タグアルバム」をリリースしました。「タグショット/タグアルバム」は、タグを付けて写真や動画を撮影するだけで、クラウド上でデータを分類・保存できる現場向けカメラアプリです。現場にかかわるすべての人とリアルタイムでデータを共有でき、保存した写真や動画を探す手間を削減し、現場の業務効率化を実現します。
⑤ 「ナレッジ動画」
「仕事は視て覚える」をコンセプトとし、現場のナレッジやノウハウを動画で共有するためのサービスとして、「ナレッジ動画」を開発しております。動画編集の手間は不要であり、また動画ごとに閲覧できるユーザーを設定することが可能なため、手軽に、かつ安全に動画共有を行うことができます。2023年7月から一部のユーザーで先行試験利用を開始しました。
⑥ チャットボットソリューション
「direct」をもっと便利に、業務を自動化するためのツールとしてご利用頂くために、「direct」上で稼働するbotを提供する「direct bot RENTAL(ダイレクトボットレンタル)」及び「daab(ダーブ)」を運営しています。
「direct bot RENTAL」は、現場の報告、連絡、事務作業を自動化するためのボットのレンタルサービスです。利用者は、「現場報告ボット」、「翻訳ボット」、「熱中症予防チェックボット」といったボットをすぐに利用することが可能です。
「daab」は、「direct agent assist bot(ダイレクト エージェント アシスト ボット)」の略称であり、チャットボット開発環境「daab SDK」を公開することにより、「direct」の利用者自身が開発できる開発環境を提供しています。「direct」のアクションスタンプや位置情報、既読者の取得などをボットに組み込んだり、複数の機能を組み合わせるなど、さまざまな形でボット作成が行えます。
⑦ DXコンサルティング
「direct」の利用顧客から寄せられるDXによる業務効率化の要望・相談に対して、コンサルティングや「direct」等と連携したオリジナルソリューションの設計・開発という形でサービス提供しております。具体的には、災害時の速報・連絡、資材やコンクリートの発注、現場の出面管理、CO2排出量記録、現場で利用される機器の貸出管理、生成AI(注2)を活用した業務自動化等の要望に対し、「direct」と連携したシステムの設計・開発を行い、顧客に提供しております。
⑧ directのOEMサービス
株式会社トラストバンクに対して「direct」のOEM提供を行っており、株式会社トラストバンクは総合行政ネットワーク「LGWAN」で使える自治体向けビジネスチャットサービス「LoGoチャット」として展開しております。また、信金中央金庫及び東日本電信電話株式会社と連携し、信用金庫と取引先のDX支援として、信用金庫とお客様との間で非対面コミュニケーションを可能にする「しんきんdirect」を提供しております。OEMサービスにおいて、当社は、ID数に応じたレベニューシェアによる利用料の一部、システム開発にかかる開発料及び運用にかかる業務委託料を受領しております。
【業績等】
業績動向(単位:百万円)
決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益
2024/12 単独会社予想 1,664 152 132 106
2023/12 単独実績 1,279 38 32 46
2022/12 単独実績 970 -263 -265 -316
2021/12 単独実績 770 -312 -313 -335
1株あたりの数値(単位:円)
決算期 種別 EPS BPS 配当
2024/12 単独会社予想 22.28 - 0.00
上場時発行済株数 4,955,200株(別に潜在株式403,200株)
公開株数 1,672,600株(公募800,000株、売り出し654,500株、オーバーアロットメント218,100株)
調達資金使途 採用費・人件費、PRマーケティング費
PER:44.4
PBR:
配当利回り:
公募時吸い上げ資金:16.6億
公募時時価:49億
【株主構成】
(株)Well Side 役員らが議決権の過半数所有 1,524,000 33.43% 90日
横井太輔 代表取締役社長CEO 642,000 14.08% 90日 売出342,000株
(株)インターネットイニシアティブ 取引先 312,500 6.86% 90日 売出312,500
(株)チェンジホールディングス 取引先 300,000 6.58% 90日
DCIベンチャー成長支援投組 投資業(ファンド) 266,700 5.85% 90日・1.5倍
アズワン(株) 取引先 200,000 4.39% 90日
浮川和宣 ジャストシステム創業者 120,000 2.63% 90日
(株)サンロフト 取引先 80,000 1.76% 90日
(株)QTnet 取引先 80,000 1.76% 90日
城戸猛 取締役 70,000 1.54% 90日
加納正喜 取締役COO 70,000 1.54% 90日
本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、貸株人かつ売出人である横井太輔、当社株主である株式会社Well Side、株式会社チェンジホールディングス、アズワン株式会社、浮川和宣、株式会社サンロフト、株式会社QTnet、城戸猛、加納正喜、横井輝美、武内雅宇、籔内祥司、三浦源吾、星畑太一郎、小松央、松田敏孝、宝崎訓成及び阿子島力並びに当社新株予約権者である渡辺龍二及び北嶋正樹は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2024年6月23日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)を行わない旨合意しております。
また、当社株主であるDCIベンチャー成長支援投資事業有限責任組合、イノベーション・エンジンPOC第2号投資事業有限責任組合、みずほ成長支援第3号投資事業有限責任組合及び三菱UFJキャピタル8号投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2024年6月23日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、その売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う売却等を除く。)を行わない旨合意しております。
【代表者】
代表者名 横井 太輔(上場時52歳10カ月)/1971年生
本店所在地 東京都千代田区岩本町
設立年 2010年
従業員数 88人 (2024/01/31現在)(平均35.7歳、年収674.6万円)
事業内容 フィードワーカー向けビジネスチャット「direct」を中心とした現場DX(デジタルトランスフォーメーション)サービスの開発・提供
URL https://l-is-b.com/ja/
株主数 35人 (目論見書より)
資本金 100,000,000円 (2024/02/20現在)
代表者生年月日 1971年05月13日生まれ
代表者略歴
1995年04月 CFJ㈱入社
1997年11月 ㈱ジャストシステム入社
2010年09月 当社設立代表取締役社長CEO 就任(現任)
【幹事団】
主幹事証券 野村 - -
引受証券 SBI - -
引受証券 岡三 - -
引受証券 岩井コスモ - -
引受証券 マネックス - -
引受証券 あかつき - -
引受証券 水戸 - -
引受証券 東洋 - -
引受証券 むさし - -
【参考類似企業】 今期予想PER(2/29)
3962 チェンジHD 14.7倍 (連結予想)
4192 スパイダーP - (連結予想)
4345 シーティーエス 16.4倍 (連結予想)
4412 サイエンスアーツ - (単独予想)
4448 Chatwork 108.9倍 (連結予想)
4476 AICROSS 26.0倍 (連結予想)
【私見】
ビジネスチャットをメインとしたDX銘柄ですが、似たような業種は多く、業種妙味はさほどありません。黒字化され、成長性はあるものの割安感はありません。単価は低いものの、そこそこの規模の吸収金額で、IIJが全株売出、1.5倍で外れるVCもおり、需給面では決して良好とは言えません。初値のみの参加銘柄で良いかと思います。
想定価額:920円
仮条件上限:990円
初値予想:1300円
ブック申し込み度・・・やや強気
セカンダリー期待度・・・やや弱気
総合評価:3.5
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