【事業内容】
(1)経営戦略等
当社は、「診断技術で、安心な毎日を。」をコーポレートスローガンとして、世界の安心な毎日を創るために、感染症POCT1分野において、創業以来30年以上の長きにわたり、多くの製品を開発・販売し、世界に向けて高品質な製品の提供を目指しております。2020年10月に新型コロナウイルス抗原検査キットの製造販売承認を得て「イムノエース®SARS-CoV-2」の販売を開始するなど、現状においても国内のPOCT市場を牽引していると自負しております。今後に向けては、新たな事業の柱を築き更なる高付加価値企業となるべく、以下の戦略を推進しております。
① 新たな検査技術の開発
既存のイムノクロマト法に加えて、高付加価値な次世代の検査技術の開発に取り組んでおります。
開発中のD-IA(デジタルイムノアッセイ)は、抗原検査キットと同等の簡易な操作性でありながら、PCR検査にも比肩し得る高い精度の検査を、小型かつ安価な装置で迅速に実施できることが最大の特長です。
ディスク型の装置に検体をセットすれば同時に最大で8検体を検査でき、1名分の検体を最大8項目同時(例えば風邪症状の患者の検体を、新型コロナ、インフルエンザ、アデノウイルス、溶連菌、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルスなど複数の呼吸器検査項目を同時に検査することや、性感染症疑いの患者検体を、HIV、梅毒、B型肝炎、C型肝炎など複数項目を同時に検査することを想定)に検査したり、あるいは1項目であれば最大8名分を同時(例えばクリニックの繁忙期や、大量の検査を日常的に実施する検査ラボにおいて、同時に8名分の検査を行うことで検査の効率化・迅速化に貢献)に検査するなど、さまざまな使い方が想定できます。また定性検査のみならず、定量検査も可能です。当社はD-IAにより、POCT検査を質的にも量的にも進化させ、クリニック環境においてラボレベルの検査を簡易に行えるようにすることを目指しています。D-IAの他にも、血中のバイオマーカーを定量的に測定することができる小型血液検査装置や尿中バイオマーカーを簡便に測定できる尿検査システムの開発、新たな抗体取得技術による高性能な抗体の創出、体内の免疫細胞状態を解析するアプローチを用いた診断技術の開発、全ゲノム検査への取り組み等、当社の技術基盤の強化に向けて様々な角度から取り組んでおります。
② 慢性疾患領域への進出
血中の亜鉛濃度を測定して亜鉛欠乏症の診断を行う「アキュリード®亜鉛」を皮切りに、慢性疾患分野への進出に取り組んでいます。具体的には、免疫プロファイリングを活用した血液検体によるがんのコンパニオン診断、POCTによるがんのリキッドバイオプシー検査、簡易尿検査システムによる腎疾患検査、イムノクロマト法による歯周病検査キット等、様々な製品の開発を進めています。
③ 予防・未病領域の開拓への取り組み
低侵襲に取得できる検体を用いたホームテストの活用とそこから得られる健康情報の解析や、各医療機関と連携した検体データベースの構築に向けた準備を進めています。それらを活用することで、新たなバイオマーカーの発見や、予防・未病領域向けの新たなPOCTの開発に繋げていきます。
④ 海外展開
海外展開は、短期的には既存製品を取り扱う各地域の代理店網の強化を進めております。中期的には品質を維持しつつコストを抜本的に見直した海外向け仕様品の開発・展開、長期的には新開発の高付加価値製品の投入を行っていきます。
⑤ 新工場設立
新工場の設立を計画しております。今後の事業成長に向け、既存製品向けの製造ラインの増設に加えて、新製品に対応した製造ラインを設置し、またFactory Automationの推進により人員数の効率化を実現すると共に、品質の安定化を進めます。加えて、広大な敷地を活用して原材料在庫の十分な保管スペースを確保することで、倉庫費や物流費の削減が可能となることや、従来の1拠点のみの生産体制から2拠点体制に移行することで、緊急事態時にも生産ラインを止めることなく事業継続が可能となるBCP面の効果も想定しております。
⑥ 知財・戦略投資
慢性疾患領域への進出を始めとする事業ドメインの拡大・強化に向けて、10年後のビジョンと現状の技術基盤を比較し、不足している・強化すべき領域を中心に、知財への投資や技術提携先への資本投資を戦略的に行ってまいります。
⑦ 戦略人事
今後事業領域を拡大して国内外で高い成長を続けていくために必要なのは、それを実現する人財の登用と、最大限能力を発揮してもらうための仕組み、現社員と融和した組織作りだと考え、重要課題の解決に直結する戦略人事を実行してまいります。
(4)経営環境及び優先的に対処すべき事業上並びに財務上の課題
体外診断用医薬品業界においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえて、医療現場におけるPOCTの重要性が一層認知されている一方で、競合他社の参入により、競争は激しくなっています。
また、昨今の新型コロナとインフルエンザの同時流行の発生や薬剤耐性問題、性感染症の蔓延などを背景として、網羅的かつ迅速な検査による、高精度な疾患鑑別へのニーズが高まりを見せており、感染症検査におけるマルチプレックス検査※化や更なる高精度化への流れが加速しています。
このような状況の中、当社は「診断技術で、安心な毎日を。」というコーポレートスローガンのもと、企画開発から製造、販売までを自社一貫体制で行う強みを活かし、医療機関や患者を始めとする世の中の幅広いニーズに応える製品を提供するため、以下の課題に取り組み、事業の継続的な成長と企業価値の向上に努めてまいります。
① 営業チャネルの強化・拡大
2024年4月30日時点で35名の営業員を有しており、その6割以上が10年以上にわたる業界経験を持つ人財です。今後はさらに人員を拡充することで、新規及び既存の医療機関との関係構築・強化に注力してまいります。一方で、現状で当社がアプローチし切れていない医療機関もあることから、当社製品を扱う重要代理店との関係強化に加えて、製薬会社との共同販売推進による営業チャネルの拡大に取り組んでいます。
② 特定製品への売上依存
当社の各感染症検査キットの市場シェアは、概ね拡大傾向で推移しております。以前はインフルエンザ検査キットが当社売上の大きな割合を占めていたものの、2020年10月に新型コロナウイルス抗原検査キット「イムノエース®SARS-CoV-2」を発売して以降は、新型コロナウイルス感染症関連製品への売上依存度が5割以上を占めており、新型コロナウイルス感染症の流行度合いにより業績に大きな影響を受ける状態にあります。当社は継続的に次世代型の検査技術や新製品の開発、新たな市場の開拓に取り組み、新型コロナウイルス感染症感染製品以外の売上拡充に努めております。また、新製品の迅速な市場展開に向け、薬事申請を含む規制対応の体制強化や、量産製造への移行プロセスの最適化等に取り組んでおります。新たな収益基盤を速やかに構築することで、特定製品への売上依存度を下げるように努めております。
③ 海外事業拡大に向けた基盤整備
各地域における特定の代理店を通じて海外市場での販売を行っております。今後海外事業をさらに拡大していくために、より海外市場に受け入れられ易い価格と高品質を両立させる海外仕様製品の開発を行っています。また海外市場向けの薬事申請体制の強化や海外のKoL※との関係構築等と併せて、海外営業体制やマーケティング体制の強化に取り組んでおります。
④ 新たなコア技術の開発
現状の抗原検査の枠を超えて事業領域を拡大するために、Ecobody技術、D-IAや簡易尿検査システム、小型血液検査装置、免疫プロファイリング等の新たなコア技術の開発を行っております。これらの技術を活用し、既存の呼吸器感染症検査の領域のみならず、D-IAを用いた性感染症検査や慢性疾患の検査などの新疾患領域、予防・未病領域における超早期マーカーの発見や新規IVDの開発、簡易尿検査システムによる日常的な疾患リスクのモニタリングへの進出などに取り組んでおります。
⑤ ICT活用による生産性向上
現在推進している新基幹システムの導入プロジェクトに伴い、業務体系を見直し、様々な業務データを標準化・マスタ整理をすることで、社内における非効率的なオペレーションを解消し、業務体系の効率化及び生産性の向上に取り組んでおります。
⑥ 人財採用及び育成の強化
当社の、今後の更なる成長に向けては、人員体制の一層の強化が必要です。専門人財の積極的な採用活動や、社内人財への教育体制の強化に努めてまいります。
2【サステナビリティに関する考え方及び取組】
(1)サステナビリティ全般
① 戦略
2020年から始まった新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界各地で医療体制がひっ迫し、人々の生活や経済全体に大きな影響を与え、診断技術の重要性が改めて明らかになりました。また、昨今では老年人口の増加による慢性疾患の需要が拡大しており、国策としての社会保障費の削減要請などを背景にした予防・未病医療の進展が待ち望まれております。他方で、今後地域医療構想※による病院の再編が見込まれる中では、病院の減少に伴いクリニックの役割が拡大し、クリニックで完結する検査の領域拡張が求められると考えております。
当社は、このような社会的課題への問題意識を常に持ち、事業活動を通じてその解決に全力で挑みます。持続可能な社会の実現及び当社の持続的な成長に向けて、感染症診断の拡充に加え、感染症以外の診断領域への展開を進め、総合的な診断薬企業を目指すべく、以下のプロセスを経て、優先的に取り組むべき課題(マテリアリティ)を特定しました。
【業績等】
決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益
2024/06 単独3Q累計実績 16,371 8,226 8,249 5,906
2024/06 単独会社予想 17,553 7,891 7,741 5,550
2023/06 単独実績 15,673 4,967 4,953 3,034
2022/06 単独実績 17,456 11,189 11,210 4,480
決算期 種別 EPS BPS 配当
2024/06 単独会社予想 55.51 134.30 27.75
上場時発行済株数 100,000,000株(別に潜在株式7,907,918株)
公開株数 24,253,500株(売り出し21,090,000株、オーバーアロットメント3,163,500株)
引受人の買取引受による売出しに係る売出株式のうちの一部を当該引受人の関係会社等を通じて、欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)の海外投資家に対して販売します。
PER:8.3
PBR:
配当利回り:6.0%
公募時吸い上げ資金:111億
公募時時価:460億
売出しを行う地域
欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)
【株主構成】
CCJP. III 投資業(ファンド) 59,632,653 55.26% 180日 売出17,715,800
野中雅貴 代表取締役社長 33,252,000 30.82% 180日 売出1,304,400
Ariake-T1 投組 投資業(ファンド) 6,000,000 5.56% 180日 売出1,782,500
(株)くふうカンパニー 特別利害関係者など 3,000,000 2.78%
Ariake Secondary Fund I LP 投資業(ファンド) 600,000 0.56% 180日 売出178,200
CCJP III Co-Investment, L.P. 投資業(ファンド) 367,347 0.34% 180日 売出109,100
内山義雄 取締役 164,736 0.15% 180日
中沢真士 特別利害関係者など 148,000 0.14% 180日
匿名1 従業員 124,037 0.11%
匿名2 従業員 119,420 0.11%
引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人であるCITIC Capital Japan Partners III, L.P.、Ariake-T1 投資事業有限責任組合、野中雅貴、Ariake Secondary Fund I LP及びCCJP III Co-Investment, L.P.、並びに当社の株主である中澤真士は、共同主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後180日目の日(2024年12月16日)までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を大和証券株式会社が取得すること等を除く。)を行わない旨を合意しております。
また、当社の新株予約権を保有する野中雅貴、内山義雄、遠藤佳孝及びその他役職員229名は共同主幹事会社に対し、ロックアップ期間中は共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式の売却等を行わない旨を合意しております。
【代表者】
代表者名 野中 雅貴(上場時49歳0カ月)/1975年生
本店所在地 静岡県伊豆の国市神島
設立年 2016年
従業員数 272人 (2024/04/30現在)(平均38.6歳、年収720.7万円)
事業内容 体外診断用医薬品、研究用試薬などの開発、製造および販売事業
URL https://www.tauns.co.jp/
株主数 7人 (目論見書より)
資本金 200,000,000円 (2024/05/17現在)
代表者生年月日 1975年06月11日生まれ
1999年10月 太田昭和監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)入所
2003年04月 (株)日本総合研究所入社
2005年09月 アリコジャパン(現メットライフアリコ生命保 険)入社
2006年06月 みずほキャピタルパートナーズ(株)入社、みずほコーポレートアドバイザリー(株)入社
2007年07月 アルノホールディングス(株)(現当社)事業開 発部長兼海外担当取締役
2010年05月 (株)タウンズ取締役
2013年12月 アルノホールディングス(株)代表取締役
2014年04月 (株)タウンズ代表取締役、5月:(株)ビーエル(現当社)代表取締役
【幹事団】
主幹事証券 大和 - -
主幹事証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -
主幹事証券 モルガン・スタンレーMUFG - -
引受証券 みずほ - -
引受証券 SMBC日興 - -
引受証券 野村 - -
引受証券 SBI - -
引受証券 静銀ティーエム - -
引受証券 FFG - -
引受証券 アイザワ - -
引受証券 岩井コスモ - -
引受証券 極東 - -
引受証券 東海東京 - -
引受証券 東洋 - -
引受証券 丸三 - -
引受証券 松井 - -
引受証券 マネックス - -
引受証券 楽天 - -
【参考類似企業】今期予想PER(5/23)
177A コージンバイ 13.8倍 (連結予想)
4549 栄研化 15.9倍 (連結予想)
4556 カイノス 8.7倍 (単独予想)
4595 ミズホメディ 10.8倍 (単独予想)
【私見】
検査キットということで、コロナ特需が終了し、VCの売出しのため案件で厳しいことが予想されます。特需終了により、今後の業績を伸ばすことは簡単ではなく、公開価額もそれを踏まえての低めの設定でしょう。VCも巧みに考え、記念配当により配当利回りは今期のみ6%と高配当で、しかも6月決算なので、5営業日のホールドで権利が得られるという、ゆうちょの時のPOのような作戦ではあります。本来なら初値で8%下がる可能性が高く、6%の配当なので、5営業日の限定銘柄でしょう。
想定価額:440円
仮条件上限:460円
初値予想:440円
ブック申し込み度・・・やや弱気
セカンダリー期待度・・・中立
総合評価:3
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