【概要】
【事業内容】
当社は、自社で構築したイヌ及びネコのファージディスプレイ抗体ライブラリー(注1、2)とモノクローナル抗体単離技術(注3、4)をビジネスの基盤として、創業以来、ペット用抗体医薬品(注5)の創出に取り組んでおります。当社の保有する抗体ライブラリーと単離技術は、従来困難とされていた創薬標的抗原(注6)に対するモノクローナル抗体の提供を可能とするものです。当社は、自社主導の研究開発と動物用医薬品企業等との共同研究を事業の両輪として、動物用抗体医薬領域での創薬活動を推進しております。なお、当社は、医薬品の研究開発事業のみの単一セグメントであります。
(1)当社のビジネスモデル
① ビジネスモデルの概略
当社は、以下の事業系統図で示しますように、当社保有の抗体ライブラリーより取得する抗体について、その開発・製造・販売する権利を製薬企業に導出(注7)することで対価を得ております。

図1.MabGenesisの事業系統図
当社は、藤田医科大学及び宮崎大学が保有するファージディスプレイ抗体技術に関するノウハウの独占実施権許諾を受けて、ペット(イヌ、ネコ)用抗体医薬品にフォーカスしたバイオ医薬品の研究開発を行う企業として創業しました。創業後の早い段階でイヌ及びネコそれぞれのファージディスプレイ抗体ライブラリーを構築することで、当社の基盤アセットを確立しました。当社は、これらの抗体ライブラリーから独自の抗体単離技術(「(2)当社の基盤技術」参照)を用いて取得する創薬標的抗原に対する抗体の開発・製造・販売の権利を製薬企業に導出することで収益を得ています。なお、取得した抗体の特性を評価する過程で必要となる各種試験は、大学等の公的研究機関との共同研究や、医薬品開発業務受託機関(Contract Research Organization: CRO)(注8)への業務委託も活用しデータを取得しています。
当社では、抗体を取得する研究の総体をプロジェクトと称します。当社のプロジェクトは、当社が設定する標的抗原に対して当社が単独で抗体を取得するもの(以下、「自社プロジェクト」)と、製薬企業との合意に基づいて設定する標的抗原に対して抗体を取得するもの(以下、「共同研究プロジェクト」)とがあります。自社プロジェクトでは、抗体を取得後、一定の前臨床試験(注9)を当社主導で実施したのち開発から製造販売までを実施できる製薬企業(以下、「パートナー」)への導出のための事業開発活動を行います。一方、後者の場合は、当社の基盤技術を評価するパートナーと標的抗原及び取得する抗体の品質条件について同意した共同研究契約を締結後、抗体取得(共同研究)を開始し、品質条件を満たす抗体は、契約に基づきパートナーへ導出します。
図2に現時点におけるプロジェクトの一覧を示します。
ヒト臨床段階フェーズ1、フェーズ2に相当する動物用医薬品の前臨床段階に本書提出日現在7件のプロジェクトがあり、うち4件はパートナーであるCeva Santé Animale S.A.(以下「Ceva社」)、Virbac S.A.(以下「Virbac社」)、日本曹達(株)及び共立製薬(株)へ、抗体の研究、開発、製造、販売に関する権利を導出済であり、各パートナーが開発を進めております。このうちVirbac社と日本曹達(株)に対しては自社プロジェクトで取得した抗体の導出で、Ceva社と共立製薬(株)に対しては共同研究プロジェクトで品質条件を満たす抗体の取得に成功し、その権利を導出したものです。
探索段階にある11件のペット用抗体医薬品プロジェクトのうち10件は国内外の大手動物薬企業との共同研究プロジェクトであり、進捗に応じたマイルストーン受領条件を定めた契約に基づいて研究を進めております。また、すい臓がんを適応としたヒト用抗体は国内公的研究機関との共同研究を実施中です。
共同研究プロジェクト及び導出済プロジェクトについては、動物種、標的分子、適応疾患、開発ステージ等に関する具体的な内容は、提携先の重要な研究開発上の機密情報に該当する場合がありパイプライン情報を明示しておりません。また、「第2 事業の状況 5 重要な契約等」に記載する各契約との対応関係についても、秘密保持上の理由から明示しておりません。

図2.当社進行中プロジェクトの一覧(2026年8月末現在)
自社プロジェクト及び共同研究プロジェクトの契約によって得られる収益の構造は、以下のとおりです。
表1.当社の収益構造
収益の種類 | 内容 |
契約時一時金 | アップフロントとも呼ばれ、契約締結時に受領する収入 |
研究マイルストーン | 共同研究の進捗に応じて受領する収入 |
開発マイルストーン | 導出後、研究開発の進展や承認取得に応じて受領する収入 |
販売ロイヤリティ | 製品の売上金額の一定料率を受領する収入 |
販売マイルストーン | 製品の年間売上が所定の金額に達した際に受領する収入 |
共同研究プロジェクトでは、1つの標的抗原に対してはパートナー1社とのみ独占的な共同研究契約を結び、同一の標的抗原に関する共同研究を複数のパートナーと実施しないように管理しております。また、パートナーの経営判断等により共同研究プロジェクトが中止される場合には、パートナーに付与した標的抗原に対する独占的権利は消滅し当該プロジェクトは当社の判断により自社プロジェクトとして当社が継続できる旨を可能な限り契約で定めております。これまでに2件の共同研究プロジェクトがパートナー企業の戦略的な判断で中止に至りましたが、現在自社プロジェクトとして研究・開発を継続しております。
② ビジネスモデル選択の背景
当社は、以下の理由により、現在はペット用、具体的にはイヌ用及びネコ用の抗体医薬品の研究開発に注力しております。
a) ペット用医薬品市場は現在世界的に急速に拡大していること
世界的にペット飼育数は増加傾向にあり、中でもペット用医薬品の主要市場である欧米においては、イヌ、ネコそれぞれ人口の20~25%に相当する約1億8,000万頭が飼育されています。また、中国、ブラジルにおいても5,000万頭以上のイヌ、数千万頭のネコが飼育されています(出典:Pet Population in Major Markets, HealthforAnimals)。

図3.世界のペットの飼育頭数
近年のペットの家族化と飼育環境の改善による長寿化に伴い、獣医療、医薬品、フード・サプリ等のペットケア関連市場は、2023年の3,200億米ドルから2030年には5,000億米ドルに達すると予測されています(Bloomberg, March 24, 2023)。その中でもペット用医薬品の世界市場は、年成長率11.1%で拡大が見込まれており、2034年には670億米ドルに達すると予測されています(出典:Grand View Research 2025)(図4)。また、主要慢性疾患である、イヌアトピー性皮膚炎、ネコ慢性腎疾患、イヌ変形性関節症(関節痛)、イヌがんの獣医療の主要市場である欧米のマーケットポテンシャルを、参考文献(Veterinary Medicine; Research and Reports (2024), International Renal Interest Society (IRIS), Journal of American Veterinary Medical Association (2010), American Veterinary Medical Association, Cancer in Pets) に基づき、ペット数(1億8,000万頭、15歳以上のネコ数1,800万頭)、罹患率(15~70%)、受診率(20%)、年間治療費用(2,400米ドル)として当社で推計したところ、それぞれ129.6億米ドル、60.5億米ドル、172.8億米ドル、216.0億米ドルと算定され、いずれも高いマーケットポテンシャルがあることが想定されます。

図4.ペットケア及びペット用医薬品の市場規模
b) 世界の大手動物薬企業がペット用抗体医薬の研究開発に活発に取り組んでいること
既にヒト医療において約220種類が製造販売され有効な治療形態としての地位が確立されている抗体医薬品は、その有効性、安全性及び作用時間の長さ(利便性)の観点と、近年の製造技術の進歩(製造コストの低下)により、ペットへの応用が検討されてきました。2016年末に、米国Zoetis社が世界初のペット用抗体医薬品であるサイトポイントⓇ(イヌのアトピー性皮膚炎及びアレルギー性皮膚炎治療薬)の販売を開始し、2022年には世界売上が6.3億米ドルに達しました(出典:The Business Research Company)。その後Zoetis社が製造販売開始したネコ及びイヌ用の変形性関節症に対する抗体医薬品であるソレンシア®とリブレラ®は、2024年には世界で合わせて5.81億米ドルの売上を記録し、ペット用抗体医薬品のポテンシャルの大きさが証明されました(出典:Fourth quarter and 2024 full year financial results, Zoetis Inc.)。ペット用抗体医薬品は、現時点で、欧米ではZoetis社が5品目、業界2位のMSD Animal Health (MAH)社が1品目、業界4位の米Elanco社が2品目と合計8品目が販売されており(表2)、本邦においてはZoetis社の3品が販売されています。Grand View Research, Inc.の最新のレポートによれば、世界のペット用抗体医薬品市場規模は2034年までにグローバルで約61億米ドルに達すると予測されており、2024年から2034年にかけて年成長率(CAGR)18.1%で拡大する見込みです(図5)。

図5.イヌ・ネコ用抗体医薬品市場の成長性
上述のZoetis社のイヌ、ネコ用抗体医薬品の爆発的な売り上げと市場規模の拡大に呼応し、現在、世界の大手動物薬企業は一斉にペット用抗体医薬の研究開発に活発に取り組んでいます。例えば当社が共同研究契約又は譲渡契約を締結した業界第2位のMAH社、3位のBoehringer Ingelheim Animal Health(BIAH)社、5位のCeva Santé Animale社、6位のVirbac社及び11位の共立製薬(株)はペット用抗体医薬の研究開発を活発的に推進しています(表2)。
c) ペット用抗体医薬品(完全イヌ型抗体、完全ネコ型抗体)(注10,11)創出のための基盤技術を有する企業が限られていること
上述のように、現在、世界の大手動物用医薬品企業の多くは、成長著しいペット用抗体医薬品を重点領域として位置付けております。しかし、医療目的の抗体取得のための基盤技術確立には高い専門性と経験・ノウハウが必要とされるため、大手動物用医薬品企業のほとんどは抗体の創製技術の内製化に至っておりません。
そのため、当社のようなペット用抗体医薬品創製の基盤技術を有するベンチャー企業との提携又は買収(米Zoetis社による米Nexvet社(2017年、表2)、米Elanco社による米KindredBio社(2022年、表2)、Zoetis社による英PetMedix社と独Adivo社(2023年、表2)、英Dechra社による米Invetx社(2024年))により基盤技術と医薬候補抗体を取得し抗体薬を創出している状況です(出典:各社ホームページ)。さらに、既にヒト用抗体薬では主流となっている安全性に優れた種特異的抗体(注12)(ペット用としては、完全イヌ型抗体、完全ネコ型抗体)を創出できる独立企業は当社の知りうる限り、現時点で世界的に見ても完全イヌ型抗体は当社と米Vetigenics社のみ、完全ネコ型抗体は当社のみです。このような状況下で、当社は今後のビジネス展開において優位性を保ち、リーディングポジションを確立していると考えております。
表2. 抗体医薬に取り組む世界の動物用抗体医薬品企業
世界 売上高 ランキング | 企業名 | 売上高 (2024年) | 抗体医薬品(一般名) | 買収スタートアップ (ディール規模) |
1 | Zoetis(米) | 9,256百万米ドル | サイトポイントⓇ(ロキベトマブ)、対象疾患:イヌ皮膚疾患 リブレラⓇ(ベジンベトマブ)、 対象疾患:イヌ変形性関節症 レニヴィアⓇ(イゼニベトマブ)、 対象疾患:イヌ変形性関節症 ソレンシアⓇ(フルネベトマブ)、 対象疾患:ネコ変形性関節症 ポルテラⓇ(レルフォベトマブ)、 対象疾患:ネコ変形性関節症 | NexVet(8,500万米ドル) PetMedix(2億1,000万米ドル) Adivo(不明) |
2 | MAH(米) (当社提携先) | 5,877百万米ドル | ギルベトマブ、対象疾患:イヌがん |
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3 | BIAH(独) | 4,749百万ユーロ | なし |
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4 | Elanco(米) | 4,439百万米ドル | トルテクトTM(アニボベトマブ)、 対象疾患:イヌパルボウイルス感染症 ベフレナTM(ティルノベトマブ)、 対象疾患:イヌ皮膚疾患 | KindredBio(4億4,400万米ドル) |
5 | Ceva Santé Animale(仏) (当社提携先) | 1,770百万ユーロ | なし |
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6 | Virbac(仏) (当社提携先) | 1,397百万ユーロ | なし |
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11 | 共立製薬(株)(日) (当社提携先) | 約63,200百万円 | なし |
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d) 開発成功確率が高く、開発に要する時間が短く、研究開発コストが低いこと
ペットの高齢化に伴って発症する慢性疾患の多くは、上述のようにヒトと共通しています。ヒトでは、そのような疾患の治療標的となる生体内物質(以下、「標的抗原」)が多く特定されており、その結果、種々の安全で高い治療効果を示す抗体医薬品が製造販売されています。ペットとヒトで共通する疾患では、その標的抗原も共通していることから、改めて標的抗原を特定する必要が無く、かつ、そのような標的抗原に対して開発されたペット用抗体医薬品は有効性、安全性が合理的に期待できるといえます。
開発については、前臨床段階で対象動物(イヌ、ネコ)を用いて探索的有効性試験(注13)及び安全性試験(注14)を実施し有効性、安全性を確かめることにより(出典:VICH Guideline)、それに続く臨床試験の成功確率を上げることが可能です。このように、ペット用抗体医薬品の開発は、ヒトにおいて既に同様の標的抗原に対する同様のメカニズムを持った抗体医薬品が販売されている状況と、対象動物を用いた前臨床試験が可能である点から医薬品としての開発の成功確率はヒトバイオシミラー(微生物や動物の細胞を使って製造されるバイオ医薬品の特許切れ後に作られる医薬品のことで、完全に同じ構造を作ることは不可能なため「同等・同質のシミラー」と呼ばれる。バイオシミラーのベースとなる医薬品(先行品)は、既に治療効果も安全性も証明済みであり、製造技術を確立できれば臨床試験で失敗するリスクは下がり、医薬品開発の成功確率が高いことが特徴)の開発の成功確率(出典:Biologics: Targets and Therapy, 2025:19 125–135)と同程度の約70%と高いことが想定されます。

図6.ペット用抗体医薬品の開発の利点
ヒト用医薬品は、製造販売承認を得るまでに前臨床試験の後にフェーズ1からフェーズ3の原則3段階の臨床試験(注15)を実施する必要があり、これらの実施に7~8年程度を要するといわれています(出典:Research Paper Series No.82, 日本製薬工業協会)。一方、ペット用医薬品の開発は、前臨床試験段階まではヒトとほぼ共通しますが、その臨床試験は大きく異なります。臨床試験は、VICHのガイドライン(VICH, Guideline, Good Clinical Practice)(注16)に則り、実施地域の規制当局(米国における規制当局であるFDA(米国食品医薬品局)又はUSDA(米国農務省)、欧州における規制当局であるEMA(欧州医薬品局)、農林水産省)との合意の下、臨床試験(pivotal study)を行いその安全性と有効性を証明します。ヒトと異なり、3つのフェーズに分かれておらず、有効性、安全性を担保できる1つ以上の臨床試験の結果によって製造販売申請が可能です(出典:Clinical Trials of Veterinary Medications Differ From Drugs for Human Use 2022, Volume 88, Pharmacy Times)。疾患によって異なりますが、通常1-3年程度で完了するといわれています(出典:当社によるグローバル動物用医薬品企業インタビュー)。このような制度の違いのため、新薬開発に必要な期間はヒト用医薬品の約10年に対し、ペット用医薬品では約5年と短いことから、医薬品開発企業にとってペット用医薬品の開発はヒト用医薬品に比べ低リスクであり、また、そのような企業をパートナーとする当社にとっても開発マイルストーンや販売ロイヤリティを得られるタイミングがヒト用医薬品よりも早いという利点があります。また、上記の開発期間の短縮に応じて、新薬開発に必要な開発コスト(研究開発から臨床試験に至る総開発コスト)も、ヒト用医薬品の1,000億円以上(出典:医薬品産業の現状、厚生労働省)に対しペット用医薬品は約30億円と抑えられます(出典:Animal Health Institute.org)。このように、ペット用医薬品は一般的なヒト用医薬品開発と比較して、新薬開発に必要な期間を4~6年短縮し、コストは90~95%削減可能であると言えます。

図7.動物用医薬品の開発プロセスの特徴
(2)当社の基盤技術
当社の基盤技術は、ファージ抗体ライブラリー(完全イヌ型、完全ネコ型、完全ヒト抗体及びラクダVHH抗体の各抗体ライブラリー)、及び抗体ライブラリーから目的とする抗体を効率よく取得する技術・ノウハウから成立しています。

図8.当社の基盤技術
① 抗体ライブラリー
当社がビジネスの基盤とする完全イヌ型及び完全ネコ型の各抗体ライブラリーは、当社が独占的に保有するファージディスプレイライブラリー作製技術を応用して構築したもので、それぞれイヌMOURA(網羅)ライブラリー、ネコMOURAライブラリーと称しています。MOURAライブラリー構築の基となる技術は、元藤田医科大学学長 黒澤良和教授が30年以上にわたる抗体研究をもとにして構築したものを、さらに宮崎大学 森下和広教授(創業当時、現在は当社従業員で医学専門家)と藤田医科大学 黒澤仁講師(創業当時、現在は当社従業員で最高技術責任者)が発展させ確立させたもので、その商業目的での使用権は当社が独占しております。各MOURAライブラリーは、対象とする動物種の脾臓等から取り出した抗体産生細胞より抽出した抗体遺伝子を鋳型として、独自の技術・ノウハウで個体が持つ抗体を網羅するように抗体遺伝子群を増幅させることで作製します。当社のMOURAライブラリーは、生体由来の抗体群から構成されるナイーブライブラリー(注17)であり、抗体の研究開発効率と品質、安全性面で優れた方法といえます。
表3にモノクローナル抗体取得技術の比較を示します。モノクローナル抗体の取得方法には大きく分けて動物に抗原を免疫する免疫法(注18)と、抗体の遺伝子を試験管内で発現させるディスプレイ法の2つの方法があります。免疫法ではマウスなどの動物にその抗原を投与し免疫を行い、脾臓からモノクローナル抗体産生細胞を分離した後、細胞融合技術を用いてモノクローン抗体産生細胞を作成しその中から求める抗体を産生する細胞を特定します。一方、ディスプレイ法では、動物を用いずに、予め作製した抗体ライブラリーから試験管内で抗原に結合する抗体を絞り込み、求める抗体を特定する方法です。当社の強みであるファージディスプレイ法を含むディスプレイ法の特徴を以下に説明いたします。
a) 各動物種が持つ抗体産生細胞(注19)を用いて抗体ライブラリーを作製するため、完全(100%)種特異的抗体を取得することができます。すなわち、イヌ用の抗体薬の探索には完全イヌ型抗体ライブラリー、ネコ用の抗体薬の探索には完全ネコ型抗体ライブラリーを作製し、各ライブラリーから完全種特異的抗体を取得するため、取得した抗体は生体適合性が高く、安全性の高い抗体医薬品になることが期待されます。
b) ディスプレイ法で使用される抗体ライブラリーは、大きく二つに分類されます。一つは抗体の構造のうち抗原に結合する領域に人工的に多様性を持たせるために核酸配列(注20)を挿入した合成ライブラリー(注21)であり、もう一つは、生体が保有する抗体遺伝子をそのまま組み込んだナイーブライブラリーです。当社のMOURAライブラリーはナイーブライブラリーに分類され含まれる抗体のアミノ酸配列がもともと対象とする動物種が持っている配列であるため、その種に投与した場合の安全性が高いことが期待されます。
c) ファージディスプレイ法は免疫法に比べて、動物に免疫反応を引き起こすために要する時間は必要なく、また、モノクローン化のために細胞融合技術を用いないため、比較的短期間で抗体が取得できることが期待されます。
d) 近年、世界的に、特にEUでは、医薬品開発のための実験動物の使用規制が厳しくなっており、抗体を取得する過程で動物を使用しないファージディスプレイ法は、世界的に実験動物の使用削減方針に則った方法といえます。
表3.モノクローナル抗体取得技術の比較
| 当社採用技術 |
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抗体取得技術 | ナイーブライブラリーを用いるファージディスプレイ法
対象とする動物種の血液や脾臓等から取り出した細胞より抽出した抗体遺伝子をもとにPCR法(注22)を用いて作成した抗体ライブラリーから、目的とする抗体を取得する | 合成ライブラリーを用いるファージディスプレイ法
抗体遺伝子の抗原結合領域にランダムなアミノ酸配列が生じるようにPCR法を用いて作成した抗体ライブラリーから、目的とする抗体を取得する | トランスジェニックマウスを用いる免疫法
イヌまたはネコの抗体遺伝子を組み込んだトランスジェニックマウスに対して抗原を免疫し、目的とする抗体のみを産生する細胞から抗体を取得する | 通常マウスを用いる免疫法
遺伝子改変を行っていない通常のマウスに対して抗原を免疫し、目的とする抗体のみを産生する細胞から抗体を取得する |
動物の使用 | 不要 | 不要 | 必要 | 必要 |
非免疫原性抗原/毒性抗原に対する抗体の取得 | 可能 | 可能 | 困難 | 困難 |
抗体取得に要する時間 | 短い | 短い | 長い | 長い |
取得できる抗体の種類(注) | 完全イヌ型/ネコ型抗体 | 人工抗体(注23) | イヌ化/ネコ化抗体(注24) | キメラ抗体(注25) |
開発効率 | 良い
イヌ/ネコ生体の抗体配列のレパートリーを再現するため、効率的な抗体スクリーニングが可能。 | 悪い
生体で効果を示さない抗体がライブラリーの多くを占めるため、抗体スクリーニングに工数を要する。 | 悪い
免疫(動物体内で抗体が作られるようになるまで)に長時間を要する。 | 悪い
免疫に長時間を要する。 |
抗体の品質 | 高
イヌ/ネコ生体由来の配列が100%であるため、取得される全ての抗体に免疫原性(注26)はなく、安全性が高い。 | 低
取得した抗体がイヌ/ネコの生体では存在し得ない抗体の場合、免疫原性を有する可能性がある。 | 中
イヌ/ネコ生体に由来しない配列が10%程度含まれるため、取得した抗体が免疫原性を有する可能性がある。 | 低
イヌ/ネコ生体に由来しない配列が30%程度含まれるため、取得した抗体が免疫原性を有する可能性がある。 |
(注) 完全イヌ型/ネコ型抗体:抗体タンパク質の配列すべてが、イヌ又はネコが生体内で産生する抗体と同一である抗体(相同性100%)。
人工抗体:抗体のうち抗原結合部位のタンパク質の配列について、イヌ又はネコが生体内で産生する抗体との相同性は不明です。配列を人工的にデザインするためイヌ又はネコの生体に存在しない抗体が含まれます。
イヌ化/ネコ化抗体:イヌ・ネコ以外で産生された抗体をイヌ又はネコの生体で産生される抗体との類似性を高めるために、抗体タンパク質のうち可変領域の結合性に関わらない部分と定常領域をイヌ又はネコの配列に改変した抗体。イヌ又はネコが生体内で産生する抗体との相同性は90%程度といわれています。
キメラ抗体:イヌ又はネコ以外で産生された抗体をイヌ又はネコの生体で産生される抗体との類似性を高めるために、抗体タンパク質の配列のうち定常領域のみをイヌ又はネコの配列に改変した抗体。イヌ又はネコが生体内で産生する抗体との相同性は70%程度といわれています。
② 抗体単離技術
上述のイヌ及びネコMOURAライブラリーは、約10億種類の抗体から構成されています。そのため、特定の抗原に対する抗体をライブラリーから効率よく取得する技術が必要となります。例えばサイトカイン(注27)や膜タンパク質(注28)は、外界からのシグナル伝達(受容体)(注29)や物質輸送・チャンネル機能などを担う重要な役割を果たしていることから、それらの多くが創薬標的分子になりうると考えられています。当社はこれらの分子に対して、基盤技術であるMOURAライブラリーと抗体単離技術とノウハウを組み合わせて、高機能性、高親和性の医薬品候補抗体を効率よく取得することに成功しております。図9の左のグラフは、当社が取得した抗体を用いて試験管レベルで機能阻害活性を測定したグラフで、抗体の濃度(X軸)が高くなるにつれて、阻害活性(Y軸)が強くなることを示しています。この抗体は、医薬品が特定の生体機能の働きを示す指標で「50%阻害するのに必要な濃度」として知られるIC50(Half maximal inhibitory concentration)が、130 pM(ピコモル、注30)という一般的に薬品として高い有効性が期待できるレベルの阻害活性を保有しています。また、右のグラフは抗原タンパク質と抗体の分子間相互作用(親和性)を測定した試験のグラフを示します。光を透過するチップの先端に抗体を貼り付け、チップを抗原溶液に浸すと抗原と抗体が結合し、センサーグラムが上昇します(X軸の0-1000秒)。その後、チップを抗原を含まない溶媒に浸すと親和性の弱い抗体は抗原との結合を失い、センサーグラムが下降しますが、当社の取得した抗体は親和性が高いため、抗体が結合を失わず、センサーグラムは高い値を示しています(X軸の1000-2000秒)。この反応を6水準の抗原濃度溶液を用いて試験を行い、平衡解離定数(KD)を測定し、当社の抗体のKDは31 pM(ピコモル)という強い親和性を示しました。
今後も基盤技術の向上を進め、安全で治療効果の高い完全イヌ型・完全ネコ型抗体を新たな治療選択肢としてパートナー企業、獣医師、ペットオーナー・ペットに提供していきます。

図9.当社の抗体単離技術を用いて取得した抗体の機能性及び親和性に関する評価データの一例
(3)当社事業の優位性・可能性
当社の所有する各種のMOURAライブラリー及び抗体単離技術・ノウハウに関しては、その技術の詳細を保持、秘匿していることから、同業他社の模倣が困難な優位性を確立しています。ファージディスプレイ抗体ライブラリーは、上記「(2)当社の基盤技術①b)」で述べたように、合成ライブラリーとナイーブライブラリーに大別されます。抗体ライブラリーを有する企業の多くは合成ライブラリーですが、生体内に人工的な配列を持つ抗体を投与した場合、生体の免疫機能によって、それが異物として認識され、結果的に抗体が排除されることで効果が現れなくなる可能性も示唆されています。一方、当社が保有するMOURAライブラリーは、ナイーブライブラリーでイヌ及びネコそれぞれに特化したものであり、その生体内で産生され得る抗体のみを網羅しています。その結果、このライブラリーから取得される特定標的に対するモノクローナル抗体は、生体内で産生される抗体に等しいものです。すなわち、MOURAライブラリーより取得されるモノクローナル抗体は、合成ライブラリーにより取得されるモノクローナル抗体に比して、医薬品として開発が成功する可能性が高いことが想定されます。このようなナイーブライブラリーの構築には、技術、ノウハウ及び経験が必要であり、競合他社が新規に構築するには高い障壁が存在するといえます。また、当社独自の抗体単離技術・ノウハウは、従来の方法では難しいとされている膜抗原に対するモノクローナル抗体の取得を可能としています。このようなビジネス基盤上の優位性をもとに、当社は、動物用抗体医薬品に特化して創薬ビジネスを展開しています。
また、当社が展開する動物用抗体医薬品は、競合する企業も製品もまだ限定的です。さらに動物用抗体医薬品は、ヒト用医薬品として既に製品化され販売されている実績のある抗体薬と作用機序(注32)を同じくすることから、開発の成功確率が高いことが想定されます。このような背景から、当社は、現在動物用医薬品としての抗体薬の研究に事業資源を集中させております。複数の国内外の大手動物用医薬品企業とは、当初単独案件の提携から複数案件の提携へと移行しており、当社のMOURAライブラリー及び抗体選別法は高く評価されております。当社の独自技術の有用性に基づくこれら大手動物用医薬品企業との関係性構築の実績から、同様の協働関係が今後も継続すると期待されます。
また、当社は、VHHラクダ抗体ライブラリー、完全ヒト抗体ライブラリー(ヒトMOURAライブラリー)も保有しています。現在は、イヌ用、ネコ用抗体医薬品に集中してビジネスを進めておりますが、近い将来ウシ、ブタ等の産業動物、また、安定的な収益を見込める状況になった時点で、成功確率を精査した上でヒト用抗体医薬品の分野にもビジネスを拡大していくことを計画しております。
【業績等】
PBR:
配当利回り:
公募時吸い上げ資金:19億
公募時時価:66億
【株主構成】
SMBC ベンチャーキャピタル産学連携2号投資事業有限責任組合 40,000 株
みやざき未来応援2号ファンド投資事業有限責任組合 20,000 株
きぼう投資事業有限責任組合 15,000 株
㈱ベクトル 15,000 株
みやざき未来援3号ファンド投資事業有限責任組合 10,000 株
古田 晃浩 7,000 株
長久 厚 5,200 株
本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、貸株人である新庄勝浩、売出人である長久厚、古田晃浩並びに当社株主(当社新株予約権の保有者を含む。)である黒澤仁、小泉信一、森下和広、柴崎友一朗、前田龍、河合昭好、初澤寛成、工藤利秋、西井大輔は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2027年4月30日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等は除く。)を行わない旨合意しております。
また、売出人である名古屋大学・東海地区大学広域ベンチャー2号投資事業組合、みやぎん宮崎大学夢応援投資事業有限責任組合、九州広域復興支援投資事業有限責任組合、株式会社アニヴェルセルHOLDINGS、アクシル・ライフサイエンス&ヘルスケアファンド2号投資事業有限責任組合、SMBCベンチャーキャピタル産学連携2号投資事業有限責任組合、みやざき未来応援2号ファンド投資事業有限責任組合、株式会社ベクトル、きぼう投資事業有限責任組合及びみやざき未来応援3号ファンド投資事業有限責任組合は主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2027年1月30日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及び売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通じて株式会社東京証券取引所で行う売却等を除く。)を行わない旨合意しております。
加えて、当社は主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2027年4月30日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の発行、当社普通株式に転換若しくは交換される有価証券の発行又は当社普通株式を取得若しくは受領する権利を付与された有価証券の発行(ただし、本募集、株式分割、ストック・オプションとしての新株予約権の発行及びオーバーアロットメントによる売出しに関連し、2026年9月28日開催の当社取締役会において決議された主幹事会社を割当先とする第三者割当増資等を除く。)を行わない旨合意しております。
【幹事団】
【参考類似企業】時価総額(10/2)
【私見】
ペット用のバイオということで、初物感はありますが、業績未知数のバイオ銘柄で人気が出るとは思えません。仮条件は想定価額を下回っており、厳しさが見えます。救いは規模の小ささで、バイオにしては吸収金額が大きくはないので、下値不安はなさそうですが、上がる要素もないのかと思います。
仮条件上限:830円
初値予想:830円
ブック申し込み度・・・中立
セカンダリー期待度・・・中立
総合評価2.5
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