2026年9月30日水曜日

IPO分析(ルクレ)

 【概要】

ルクレ
648A 東証グロース 情報・通信業 100株
ブックビルディング期間 2026/09/29 - 10/02
上場日 2026/10/15

【事業内容】

(1) 事業の全体像

当社は、「『記録』で世界をアップデートする。」をミッションに掲げ、建設業界、保育・教育業界、及び修理・整備業界といった、肉体的な労働や物理的な作業を伴う業務に従事するフィジカルワーカーの現場業務が中心となる産業を「フィジカル産業」(注6)と定義し、写真を起点とするDX支援を主たる事業としております。これらの産業では、現場と事務所が物理的に分断されていることが多く、IT化が遅れがちであるという共通の課題を抱えております。具体的には、工事の進捗、子どもの成長、修理の工程等、現場で行われた作業や対象の状態を社内外の関係者へ共有・説明する業務が不可欠であり、その際、写真をはじめとする視覚的な記録手段が重要な役割を果たします。この記録は、品質管理、業務の引継ぎ、成果物の作成及び説明責任の基礎となる一方、撮影後の整理、共有及び帳票化等に多くの手作業を要します。当社は、これら一連の記録業務を「記録」「認識・構造化」「共有・活用」の三工程として捉え、専用端末、アプリケーション、クラウド及びAIを組み合わせた記録DXサービスを提供しております。また、記録の信頼性を支える技術基盤として、撮影情報及び撮影後の改変の有無を検証可能にする写真証明基盤を整備しております。

当社の事業は報告セグメントとしては単一セグメントでありますが、顧客産業及び記録対象に応じて、建設業界は施工記録、保育・教育業界は成長記録、修理・整備業界は整備記録の三領域で展開しております。各領域は独立した製品の集合ではなく、写真を現場で取得し、AIで意味付けし、クラウド上で共有・業務利用する共通基盤「記録DXプラットフォーム」を、業界固有のデータ入力の方法や、業務フロー及び販売経路に合わせて展開したものであります。

 


 

各領域の業績面における位置づけとして、施工記録領域は「蔵衛門」により建設現場の工事写真を管理するサービスであり、当社の売上の過半を占めるとともに、利益の大半を創出している中核事業であります。成長記録領域は「みんなの写真屋さん」等により学校・保育施設と保護者をつなぐサービスであり、当社における一定の売上規模を有しておりますが、現時点における全社利益への貢献は限定的であります。また、整備記録領域は「AITURBO」により修理・整備工程を管理する新領域として展開しておりますが、現時点では事業の立ち上げ及び先行投資のフェーズにあり、業績への寄与は軽微となっております。

 

(2) 施工記録領域

① サービスの概要

建設業は現場と事務所が物理的に分断されるフィジカル産業であり、膨大な写真の撮影から共有までの作業負荷が課題となっております。

この問題の解決を担う施工記録領域の根幹製品・サービスは、①粉塵や水濡れ、衝撃などが伴う建設現場等で写真を撮影し、関連する工事情報等を記録・送信する専用端末「蔵衛門Pad」、②記録を集約し関係者へ共有する「蔵衛門クラウド」であります。利用者は、蔵衛門Pad又はアプリ「蔵衛門カメラ」で撮影し、蔵衛門クラウドを介して共有し、台帳作成などを行います。また、通信環境を準備しにくい現場向けのオプションとして、蔵衛門Padで利用できるデータ通信サービス「ルクレSIM」を提供しております。各製品は独立商品ではなく、現場での記録作業からクラウド集約、成果物作成までを構成する一連の製品群であります。また、当領域においては、1998年より提供している買切り版のPCソフト「蔵衛門御用達」シリーズ(現行版は「蔵衛門御用達2021」)が長年にわたり当社の事業を支えるとともに、現在のクラウド展開の源泉となる強固な顧客基盤を形成してまいりました。今後は、この顧客基盤に対して主力である継続課金型の「蔵衛門プレミアム」への移行を推進し、同サービスによる継続的かつ安定的なストック収益を当社の最大の成長ドライバーとして伸ばしていく方針であります。


 

※1:オフライン環境等で工事写真を整理し、写真台帳等の成果物を作成する「蔵衛門御用達」と「蔵衛門プレミアム」を導入した会社数。2026年6月末時点の会社数

※:数値はすべて2025年9月期実績

 

各製品がそれぞれの役割を補完し合うことで、現場と事務所間で分断されがちな情報(写真や図面等)の一元管理を可能にし、撮影後の写真整理、データ受渡し及び帳票作成の効率化を実現しております。各製品・サービスの具体的な役割及び位置づけは以下のとおりです。

 

② 主要製品・サービス、顧客価値

製品・契約

主な顧客・作業と利点

備考

蔵衛門Pad

建設現場で工事写真を撮影・確認する技能者、技術者等。専用端末とアプリを一体化し、粉塵や水濡れなどが伴う現場での撮影とクラウド連携を支援。

[現在の主力(現場導入の起点)]

端末売切りによるフロー収益。専用端末のラインナップを展開。

蔵衛門クラウド/蔵衛門プレミアム

現場と事務所の関係者間で、写真や図面等の工事情報を共有・管理したい利用者。現場の端末と事務所のPCをクラウドでつなぎ、リアルタイムな情報共有と、国土交通省の基準に準拠した写真台帳の作成機能を提供。

[現在の主力・今後の成長ドライバー]

ID単位の定額契約によるストック収益。

蔵衛門御用達2021

オフライン環境等で工事写真を整理し、写真台帳等の成果物を作成する技術者、事務担当者等。インターネット接続がない環境でも写真台帳の作成を完結でき、紙のアルバムをめくるような操作で写真の確認・整理が可能。

[集客基盤(台帳作成ソフト)]

従来の買切り版ソフト。パッケージ販売によるフロー収益として計上。クラウド移行の対象となる顧客基盤。

蔵衛門カメラ

個人端末(スマートフォン等)から工事写真を撮影する利用者。蔵衛門クラウドと連携し、手軽な記録作業を支援。

[集客基盤(スマートフォンアプリ)]

アプリは無料で提供。個人の端末から手軽に利用を開始でき、クラウドサービスへの新たな導入起点となる。

ルクレSIM

通信環境を準備しにくい、又は端末と一体で通信環境を導入したい現場作業者。端末にあらかじめ設定された状態で提供するため、受け取ってすぐに利用開始が可能。

[付帯サービス]

データ容量に応じた定額契約等によるストック収益。

 

 

③ 収益構造

施工記録領域の収益は、蔵衛門Pad及び従来の買切り版PCソフト「蔵衛門御用達」シリーズ(現行版は「蔵衛門御用達2021」)等の販売によるフロー収益(注7)と、「蔵衛門プレミアム」のID利用料及びルクレSIMの通信料等によるストック収益(注7)から構成されます。買切り版のライセンス商品や専用端末の販売が長年にわたり当社の収益を支えてきたため、2025年9月期においては、当領域の売上高はフロー収益が過半を占めております。一方で、近年はこれら「蔵衛門御用達2021」等の買切り版ソフトを利用する既存顧客に対して、機能をクラウド上で提供する継続課金型の「蔵衛門プレミアム」への契約切り替え(以下、クラウドへの移行)を推進しております。その結果、全社の売上高に占めるストック収益の割合は前期の24.7%から30.8%へと6.1ポイント上昇しております。

今後の見通しといたしましては、このクラウドへの移行をさらに推進することに伴い、「蔵衛門御用達2021」をはじめとする買切り版ソフトの販売は段階的に縮小していく見込みです。「蔵衛門Pad」等の端末販売は引き続き現場への新たな導入起点としつつも、既存顧客のクラウドへの移行を促すとともに、工事写真台帳の作成にとどまらない機能の追加及び現場と事務所の間のコミュニケーションを促進する機能の提供により、導入企業内での利用現場・部門の拡大(全社展開)を進めることで契約社数及びID数を拡大し、継続的かつ安定的なストック収益が当領域の成長を牽引する事業モデルへの転換を図ってまいります。

 

④ 競争優位性

当社は、1998年の「蔵衛門」発売以来築いてきた約11万社(2026年6月時点)の顧客基盤、粉塵や水濡れなどが伴う現場環境に耐え現場技能者が直感的に操作できる専用端末やiOSアプリである「蔵衛門カメラ」、撮影した写真を現場と事務所の間でリアルタイムに共有できるクラウドプラットフォーム「蔵衛門クラウド」並びに約17億枚(2026年8月時点)を超える施工写真を活用する記録AIを有しております。さらに、撮影写真は独自の改ざん検知機能でデータの真正性が検証され、発注者等に対する施工品質の客観的な証明として利用することができます。これらに営業提案、オンライン導入及びカスタマーサクセス(注8)を組み合わせ、企業規模を問わず現場から利用を開始しやすい体制を構築しております。

 

(3) 成長記録領域

① サービスの概要

成長記録領域では、主に保育・教育現場における行事写真や日常の成長記録をオンラインで販売・共有するサービスを展開しております。

子どもと直接向き合うフィジカルな業務が中心の保育・教育現場では、保育園における日々の活動報告や、小学校・中学校における運動会などの行事写真の販売において、現金集金や写真の仕分け、壁貼り展示といったアナログな作業が多忙な教職員の大きな負担となっておりました。当社は、この課題を解決するため、「写真を取得し、対象を認識し、安全に届ける」という共通の記録DX基盤を活用し、主力サービスであるオンラインスクール写真販売「みんなの写真屋さん」を提供しております。

 

② 主要製品・サービス、顧客価値

「みんなの写真屋さん」は、写真店や保育園・学校などの施設が撮影・登録した写真を、保護者がオンラインで閲覧・注文できるサービスであります。本サービスは、保育園での日常風景の記録から、小・中学校での大規模な行事写真の販売まで、幅広い場面で活用されております。

煩雑な現金集金や写真展示業務をデジタル化し、学校配送や保護者の自宅への個別配送、多様なオンライン決済に対応することで、現場の作業負荷を大幅に軽減しております。また、保護者はスマートフォンからいつでも場所を選ばず写真を選択・購入することが可能となります。

 

③ 収益構造

成長記録領域の収益は、主に「みんなの写真屋さん」において、保護者が写真やデータを購入した際の販売代金によるフロー収益を中心として構成されております。これらの収益は都度の購入によるフロー型ではあるものの、多数の写真事業者や施設との継続的な利用契約を通じて、売上の源泉となる一定規模の保護者(利用者)基盤が毎年確保される仕組みとなっております。これにより、2025年9月期の同領域の売上高は903百万円、年間利用者数(YAU)(注9)は約21万人、利用者1人当たり年間売上高(ARPU)は4,136円となり、当社の安定的な売上基盤を形成しております。なお、当領域における現時点の全社利益への貢献は限定的となっております。また、子ども成長共有アプリである「うちの子」及び、園と保護者をリアルタイムにつなぐ成長共有アプリである「せんせいみて!」等の関連サービスにつきましては、本書提出日現在においても収益化に至っておらず、当領域の収益は「みんなの写真屋さん」によって構成されております。

 

④ 競争優位性

当社は、自社で蓄積した子どもの写真データを学習モデルとし、日本の子どもの顔貌的特徴の認識に最適化された画像解析AI「うちの子AI」(注10)を有しております。多数の園児が写る行事の集合写真からでも対象の園児を高精度に抽出でき、保護者の写真選択の負担を大幅に軽減しております。また、「みんなの写真屋さん」において、従来の壁貼り展示や現金集金といったアナログな写真販売業務をオンラインで代替し、保護者が自身の子どもの写真をあらかじめ登録することなく子どもの写真を探し出せる直感的なUI/UX設計と、多様な配送・決済に対応する柔軟な運用基盤により、保育・教育現場や写真事業者への導入障壁を低減しております。

当社の競争優位性は、日本の子どもの顔貌的特徴に最適化された画像解析AI、保護者及び施設の双方の負担を抑えるUI/UX設計並びに多様な配送・決済に対応する運用基盤の三点にあり、これらを通じて多数の施設・事業者への継続的な導入と広範な保護者ユーザー基盤の形成につながっております。

 

(4) 共通基盤を活用した新領域(整備記録領域)への展開

当社は、施工記録や成長記録で培った「写真等の記録」「AIによる認識・構造化」「クラウドでの共有・活用」という三機能を、全領域で転用可能な共通基盤として構築しております。新たなフィジカル産業へ参入する際は、この共通基盤に業界固有の業務フロー及び記録をもとに作成する帳票等の成果物を追加するだけで済むため、迅速かつ効率的な横展開が可能となっております。

 

 

① 記録DXを支える共通基盤(記録AI及び写真証明基盤)

施工写真及び成長写真等の実データを活用する記録特化型AI「RecAI」(注11)を各領域に展開しております。また、撮影時の情報を証明IDとして保持し、撮影後の改変の有無を照合できる写真証明基盤を運用しております。これは写真に写った事象そのものを保証するものではなく、撮影情報及び撮影後の改変の有無を検証可能にするものであります。

さらに、これらの基盤を活かし、端末・ソフトウエア販売等のフロー収益を現場への導入起点(顧客接点)として、クラウドID、通信及び各種サービスのストック収益へつなげる事業モデルを全社的に採用しております。各領域でフィジカルワーカーの日常業務へ定着する入力手段とクラウドを一体提供し、利用継続と顧客内の利用拡大を通じて収益の安定性と成長性を高めます。

 

② 共通基盤の横展開による「整備記録領域(新領域)」への参入

上記の共通基盤を活用した新たな横展開として、2026年6月より、車体整備事業者向けに修理・整備AIクラウド「AITURBO」を提供し、整備記録領域へ参入しております。本サービスは提供開始から間もないため、現時点においては事業の立ち上げ及び先行投資のフェーズにあり、当社の売上高等の業績に与える影響は軽微であります。しかしながら、中長期的な当社の持続的成長を牽引する「第三の収益の柱」と位置づけており、戦略的な重要性は高いと認識しております。

修理・整備業界では、修理内容や進捗に関する透明性の向上が求められる一方、工程写真の撮影・整理や案件進捗の共有に手作業が残っており、現場の業務負担と情報の分断が課題となっております。AITURBOは、修理工程で撮影した写真を起点に、工程、品質、案件及びリソースに関する情報をクラウド上で一元管理し、記録業務の負担軽減等を支援するサービスであります。現在は初期導入顧客の獲得や販売パートナー網の構築に注力しており、今後の本格的な導入拡大を図っております。

 

 

【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益
2027/09 単独会社予想 4,177 1,212 1,212 792
2026/09 単独会社予想 3,473 688 701 464
2025/09 単独実績 2,920 329 341 226
2024/09 単独実績 2,224 78 77 49

1株あたりの数値(単位:円)
決算期 種別 EPS BPS 配当
2027/09 単独会社予想 91.73 295.56 24.00

上場時発行済株数 9,500,000株(別に潜在 株式805,000株)
公開株数 3,841,000株(公募500,000株、売り出し2,840,000株、オーバーアロットメント501,000株)
調達資金使途 採用費・人件費、AI技術・システム開発費、オフィス増床費用、販売促進費

PER:14.8
PBR:
配当利回り:1.76%
公募時吸い上げ資金:52億
公募時時価:129億

​   
 【株主構成】 以下180日

TAK(株) 創業者の資産管理会社 3,800,000 44.94%
池田武史 創業者、元代表取締役 2,840,000 33.58% 売出2,840,000 
有馬弘進 代表取締役 1,000,000 11.82%
渋谷充宏 取締役 200,000 2.36%
池田恭子 元取締役 150,000 1.77%
野村絵里奈 従業員 114,000 1.34%
東哲 従業員 64,000 0.75%
阿部雅美 従業員 32,000 0.37%
嶌崎香織 従業員 32,000 0.37%
石倉麻里奈 従業員 32,000 0.37%
本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、貸株人であるTAK株式会社並びに当社株主である有馬弘進、渋谷充宏、池田恭子、野村絵里奈、東哲、阿部雅美、嶌﨑香織、石倉麻里奈及びその他7名並びに当社の新株予約権者である横田弘通及びその他16名は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2027年4月12日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、元引受契約締結日に保有する当社普通株式(当社新株予約権を含む。)の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)を行わない旨合意しております。

【代表者等】

代表者名 有馬弘進(上場時58歳2カ月)/1968年生
本店所在地 東京都港区北青山
設立年 1995年
従業員数 47人 (2026/07/31現在)(平均32.1歳、年収587.1万円)
事業内容 デバイス×AI(人工知能)クラウド型の「記録DX(デジタル変革)プラットフォーム」を提供
株主数 18人 (目論見書より)
資本金 30,000,000円 (2026/09/08現在)

【幹事団】

主幹事証券 野村 - -
引受証券 SBI - -

【参考類似企業】

参考類似企業 今期予想PER(9/15)
145A エルイズビー 25.4倍 (連結予想)
3416 ピクスタ 14.9倍 (連結予想)
3979 うるる 16.0倍 (連結予想)
4192 スパイダーP 361.9倍 (連結予想) 116億 売上72億 利益5億 EPS11.5
5254 Arent 28.4倍 (連結予想) 280億 売上85億 利益17億 EPS148

【私見】

 写真アプリですが、建設業向けなどが主で、スパイダープラスやArentが近い業種となりそうです。 ストックビジネスで、利益は倍々で増えて非常に魅力的で、Arentと比較すれば2倍近くまで評価はしても良いかもしれません。問題は需給で、元創業者が全株売出しで、吸収金額も50億と、海外売り出し・親受けなしで捌けるかが課題です。そういった状況も踏まえると初値は低めに抑えられ、低ければセカンダーがあるのかもしれません。


想定価額:1360円
仮条件上限:1480円
初値予想:1800円
ブック申し込み度・・・やや強気
セカンダリー期待度・・・中立~やや強気

総合評価3.5

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