2024年12月5日木曜日

IPO分析(キオクシアHD)

 【事業内容】

​ メモリ事業ではメモリ製品を開発・製造・販売しています。フラッシュメモリとは、当社グループが1987年に世界で初めて開発し世界標準となった不揮発性半導体メモリであり、大容量のデータ保存を可能にする記憶用デバイスです。スマートフォンで写真・動画などを保存するために使われるほか、身近な電子機器やデータセンター等においても、欠かすことのできないコアデバイス(基幹部品)となっています。当社グループは市場の要求に応えるために、フラッシュメモリの微細化による大容量化、及びコスト低減を推進してきました。もっとも、極度の微細化には電子同士が干渉しエラーが起きやすくなるという課題がありました。そこで当社グループではメモリセルを積み上げることで干渉を防ぐ積層化技術により、大容量化と信頼性の向上、低消費電力化を実現したBiCS FLASH™を開発しました。本書提出日現在は第8世代BiCS FLASH™を量産しています。第8世代BiCS FLASH™には、高メモリ密度の実現により高性能動作を図るため、CBA(CMOS directly Bonded to Array)とOPS(On Pitch SGD)という新技術が用いられています。近年、フラッシュメモリ市場においては、データセンター、エンタープライズ向けSSDの需要が拡大しており、これまで以上に大容量化、信頼性の向上、低消費電力化が求められています。当社グループは、更なる大容量化、高速化に向けた次世代の半導体メモリの開発も進めています。

 フラッシュメモリチップは、当社グループの四日市工場及び北上工場において製造しています。半導体は材料となるシリコンウエハー上に微細な集積回路を作りこむため工程は数百に及び、製造プロセスの効率化は至上命題です。四日市工場及び北上工場では、生産効率の向上と生産コストの低減に向けた生産ラインの自動化を徹底しており、特に四日市工場では2022年10月に竣工した四日市第7製造棟を含む6つの製造棟を棟間搬送で連結する統合生産体制を確立しております。さらに、高い生産効率を実現するため、開発と量産の拠点一体化、AI・ビッグデータを活用したスマートファクトリー化も進めております。

 また、今後も続くと想定される3次元フラッシュメモリの需要に継続的に対応するため、BiCS FLASH™の生産能力の増強を目的として、2022年4月から北上工場第2製造棟(K2棟)の建設を開始し、その建屋が2024年7月に完成しました。K2棟の稼働は2025年秋を見込んでいます。四日市既存製造棟と同様に、地震の揺れを吸収する免震構造を採用するとともに、最新の省エネ製造設備の導入や再生可能エネルギーの利用などで環境面も重視した工場となる予定です。また、四日市工場と共に人工知能(AI)を活用した生産システムの導入などを推進し、全社製造オペレーションの生産性及びフラッシュメモリ製品の品質をさらに向上させます。今後も大容量化に向けた技術開発、生産体制の拡大、コントローラ(ICチップ/ファームウェア)開発等の強化により、技術力とコスト競争力の両面における長期的な優位性の確保に努めてまいります。

 なお、当社グループは、Western Digitalグループとの間で製造合弁契約を締結し、キオクシア株式会社とWestern Digitalグループが共同出資する製造合弁会社3社を設立しています。合弁契約に基づき、製造合弁会社3社が当社グループ及びWestern Digitalグループからの資金借り入れ又は製造合弁会社3社によるリース契約により生産設備を調達し、当社グループの四日市工場及び北上工場に設置、キオクシア株式会社が製造合弁会社3社から製造委託を受け、無償貸与された生産設備にて生産をしております。当社グループとWestern Digitalグループは、合弁事業を通じて四日市工場と北上工場の生産能力合計の約80%を共有し、当社グループが残りの約20%を単独で所有しています。合弁契約に基づき、当社グループとWestern Digitalグループは、それぞれ製造合弁会社3社が所有する生産能力の各半分(すなわち、上記2工場の生産能力合計の各約40%)を割り当てられている一方、当社グループは上記2工場の運営を行い、製造ノウハウを有しています。また、当社グループは、製造合弁会社3社各社の議決権の50.1%を所有しており、IFRSに基づく共同支配事業として、その資産、負債、収益及び費用の50%を連結財務諸表に計上しています。

 SSD & ストレージの主要製品であるSSD(Solid State Drive)は、半導体メモリ(フラッシュメモリ)を記憶素子とするストレージ製品です。HDDに比べて読み出し性能、衝撃・振動等の耐環境性、静寂性に優れ、待機時の消費電力が低いことも特徴の一つです。クラウドサービス、5G、IoTの拡大やAIを搭載したスマートフォンやPC、データセンターを含むAI関連の機器やサービスの普及等により、今後も成長が見込まれています。当社グループはクライアント及びエンタープライズ製品において最先端PCIe®製品を他社に先駆けて上市し、市場における優位性を確立しているものと認識しています。また、自社製フラッシュメモリを活用し、一般汎用品から高付加価値品まで幅広いラインナップを展開しています。

 スマートデバイスにおいては、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス、テレビ等の民生機器、車載、産業機器など、幅広いアプリケーションで利用される制御機能付きの組み込み式メモリ製品群に注力しています。特にスマートフォン向けメモリ製品の市場は依然として規模が大きく、成長しているアプリケーションであり、当社グループにとって重要なマーケットとなっております。

 また、その他には、SDメモリカード、USBメモリ等のリテール向け製品及び製造合弁会社3社経由で計上されるWestern Digitalグループ向けの売上収益等が含まれます。

 今後も製品ラインアップの強化とサポート体制の強化により、市場でのプレゼンス向上を目指します。

 なお、当社は特定上場会社等に該当し、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準のうち、上場会社の規模との対比で定められる数値基準については連結ベースの計数に基づいて判断することとなります。

  

【業績等】

決算期 種別 売上収益 営業利益 経常利益 純利益

2025/03 連結3Q予想 430,000 98,000 - 56,000

2025/03 連結中間実績 909,408 291,891 248,919 175,980

2024/03 連結実績 1,076,584 -252,698 -343,330 -243,728

2023/03 連結実績 1,282,101 -99,015 -186,443 -138,141


決算期 種別 EPS BPS 配当

2025/03 連結3Q予想 107.48 1,301.42 -


上場時発行済株数 539,062,500株(別に潜在株式12,465,420株)

公開株数 82,733,900株(公募21,562,500株、売り出し50,380,100株、オーバーアロットメント10,791,300株)

調達資金使途 設備投資


国内募集、引受人の買取引受けによる国内売出し及びオーバーアロットメントによる売出しと同時に、欧州及び米国を中心とする海外市場(但し、米国においては米国証券法に基づくルール144Aに従った適格機関投資家に対する販売のみとする。)における売出し(海外売出し)がMorgan Stanley & Co. International plc、Nomura International plc及びMerrill Lynch Internationalを共同主幹事引受会社兼ジョイント・ブックランナーとする海外引受会社の総額個別買取引受けにより行われる予定です。


PER:14.1

PBR:0.86

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:1257億

公募時時価:8193億

​ 

【株主構成】 

(株)東芝 その他の関係会社 210,300,000 39.68% 180日 売出12,329,300株

BCPE Pangea Cayman, L.P. 投資業(ファンド) 134,112,000 25.31% 180日 売出4,957,200株

BCPE Pangea Cayman2, LTD. 投資業(ファンド) 77,400,000 14.60% 180日

BCPE Pangea Cayman 1A, L.P. 投資業(ファンド) 48,489,780 9.15% 180日

BCPE Pangea Cayman 1B, L.P. 投資業(ファンド) 30,998,220 5.85% 180日

HOYA(株) 特別利害関係者など 16,200,000 3.06% 180日

ステイシー・スミス 取締役会長執行役員など 3,105,000 0.59% 180日

ロレンツォ・フロレス 元執行役員など 388,140 0.07%

早坂伸夫 代表取締役社長執行役員など 372,600 0.07%

渡辺友治 副社長執行役員など 310,500 0.06%


​グローバル・オファリングに関連して、当社の株主であるBCPE Pangea Cayman, L.P.、株式会社東芝、HOYA株式会社、BCPE Pangea Cayman2, Ltd.、BCPE Pangea Cayman 1A, L.P.及びBCPE Pangea Cayman 1B, L.P.並びに当社の新株予約権者である早坂伸夫、ステイシー・スミス、太田裕雄、渡辺友治、花澤秀樹、朝倉崇博、沖代恭太、矢口潤一郎、横塚賢志、市村椎座、川端利明、宮城和史、宮島秀史、佐野修久、松下智治及び橋本真一は、ジョイント・グローバル・コーディネーターに対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の日(当日を含む。)までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、ジョイント・グローバル・コーディネーターの事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(但し、引受人の買取引受けによる国内売出し、海外売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと及びグリーンシューオプションが行使されたことに基づいて当社普通株式を売却すること並びに一定の借入れに関する担保権の設定(担保権設定契約において担保権者がその担保権の実行等について同様の制限に服する場合に限る。)等を除く。)を行わない旨を約束する書面を差し入れる予定です。


【代表者】

代表者名 早坂 伸夫(上場時69歳4カ月)/1955年生

本店所在地 東京都港区芝浦

設立年 2019年

従業員数 123人 (2024/10/31現在)(平均46.3歳、年収1045.3万円)、連結1万5152人

事業内容 メモリーおよびSSD(Solid State Drive)など関連製品の開発・製造・販売事業などを営むグループ会社の経営戦略策定および管理

URL https://www.kioxia-holdings.com/ja-jp/

株主数 6人 (目論見書より)

資本金 10,000,000,000円 (2024/11/22現在)

代表者生年月日 1955年08月07日生まれ

代表者略歴

1984年04月 ㈱東芝 入社

2001年07月 セミコンダクター社プロセス技術推進センター半導体プロセス開発第五部長

2004年10月 セミコンダクター社プロセス技術推進センター半導体プロセス開発第三部長

2007年12月 セミコンダクター社先端メモリ開発センター長

2013年10月 セミコンダクター&ストレージ社統括技師長、同社半導体研究開発センター長

2014年06月 執行役常務(セミコンダクター&ストレージ社統括技師長、同社半導体研究開発センター長)

2015年03月 執行役常務(セミコンダクター&ストレージ社統括技師長)、10月:執行役常務(セミコンダクター&ストレージ社統括技師長、同社事業化推進プロジェクトチームプロジェクトマネージャー)

2016年04月 執行役常務(ストレージ&デバイスソリューション社統括技師長、同社事業化推進プロジェクトチームプロジェクトマネージャー)

【幹事団】

主幹事証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

主幹事証券 モルガン・スタンレーMUFG - -

主幹事証券 野村 - -

主幹事証券 BofA - -

主幹事証券 SMBC日興 - -

主幹事証券 みずほ - -

主幹事証券 大和 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 松井 - -

引受証券 マネックス - -


【参考類似企業】今期予想PER(11/27)

00001 米WD 8.4倍 (連結予想)

00002 米マイクロン 10.5倍 (連結予想)

00003 米シーゲート 11.9倍 (連結予想)

00660 韓SKハイニクス 4.7倍 (連結予想)

02408 台湾南亜科技 276.5倍 (連結予想)

05930 韓サムスン電子 10.1倍 (連結予想)


【私見】

 幾度となる上場話は出ては消えてで、新方式による念願の上場となりました。1.5兆と言われた時価総額は半分ほどの8000億となり、サイズ感としては想定以上の小ささでした。サイズ感は良くなったのですが、業績の不透明感は消えず、ぼんやりとした数字が判断を迷わせます。メモリ市場が、底打ちしたのであれば割安感は非常にありますし、底打ちはせず、下振れするようであれば割安とは言い難くなってしまいます。目論見書などを見ると、高い市場の成長率が記載され、コクサイの時のような右肩上がりのチャートもイメージ出来なくはありません。前回のリガクでプライム神話も終わり、公募割れの可能性もありますが、仮条件は上がり、新方式による第一弾の銘柄であることからも直感的な予想ですが失敗はないような気はします。


想定価額:1390円

仮条件上限:1520円

初値予想:1650円

ブック申し込み度・・・中立~やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3

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