2024年12月10日火曜日

IPO分析(MIC)

 【事業内容】

​(1)事業内容

 「ビジネス改善カンパニー」として、主にリテール業界において販促活動を展開する企業が抱える非効率を解消するため、全体最適化を実現する『リテール販促360°フルサービス』(=以降、『360°フルサービス』と表記)を提供し、企業が本質的な業務に集中できる時間を創造しております。

 当社が掲げる『360°フルサービス』とは以下のサービスを顧客に応じて組み合わせ、それらを「自社一貫体制」でシームレスに提供することで、リテール販促活動を全体最適化するビジネスモデルとなります。


<『360°フルサービス』の提供内容>

・業務改善コンサルティング

・システム開発(業務システム開発やデータベース構築など)

・BPO(デザイナーや営業の顧客常駐、キャンペーン事務局代行など)

・クリエイティブデザイン(デジタル、フィジカル領域を問わない企画提案やデザイン制作など)

・ものづくり(販促物の印刷製造・加工など)

・フルフィルメント(在庫保管・流通加工や共同配送・個別配送など)

・フィールドサポート(小売店舗を回り最適な陳列などをおこなうラウンダー派遣や売場立ち上げ、店舗調査等)

 

(3)市場概況

 当社がターゲットとするリテール業界とは「物品販売や飲食などのサービス提供のための実店舗を保有する業界」と捉えております。リテール業界の売上規模は70兆円を超える巨大市場(※)であり、2021年の新型コロナウイルス感染症収束以降更に売上が拡大している市場であると認識しております。

 また、上記リテール業界の中でも特にドラッグストア市場は売上高(商品販売額)及び店舗数ともに拡大を続ける成長市場であり、当社としては同業界向けに展開している販促物共同配送サービス(後述)を成長戦略の柱として位置付けております。


(4)当社が解決する社会課題・業界課題

 ターゲットとしているリテール業界が主として属する卸売・小売業は、我が国のGDPの約14%を占める巨大産業でありながらも、労働生産性は全産業平均(8,138千円/年)を下回る7,871千円/年であり、他業界と比較すると労働生産性が低く、改善ポテンシャルの高い産業であると考えております。また、我が国全体の少子高齢化の進行、人口減少を受け、卸売・小売業においても人手不足の慢性化・深刻化が想定される一方で、同業界自体が日常生活に非常に密接な業界であり、国民生活の基盤となる業界であることを踏まえると、卸売・小売業及びその関連業界における労働生産性の向上は社会全体の要請であり、解決されるべき課題であると考えております。

 こうした視点からリテール販促領域の現状を確認すると、小売店舗における販促活動を改善していくためには、大きく分けて2つの構造的な課題があると捉えております。

  1つ目は販促サービスを提供するサプライヤーの分断・多様化です。例えば小売店舗では、POPやポスター等のフィジカルな印刷物からアプリやサイネージ等のデジタル媒体まで、多種多様な手段で店頭販促が行われており、リテール企業及びメーカー企業の担当者は、販促の手段や目的に応じて、デザイン会社や印刷会社、WEB制作会社や配送会社などの多種多様なサプライヤーとのやり取りが求められます。さらに、販促活動自体が販促対象の商品・サービスの売れ行きや競合他社の販促活動に左右される性質であることを踏まえると、販促企画の内容や時期は流動的なことが多く、素早い変更対応などが求められる一方、そうした変更にあたっても多種多様なサプライヤーとのやり取りが必要になり、リテール企業やメーカー企業の販促担当者にとってはコミュニケーションの多さが負担になるケースが多いと認識しております。

 2つ目は小売店舗側の多様化であり、消費者の嗜好の多様化や競合チェーンとの差別化の観点から、例えば同じチェーンストアであっても、立地や店舗サイズなどによって取扱商品や販促内容及び販促物数量が変わるということがあり、個別の店舗によって必要な販促物の種類や数量が異なるという状況が生じております。そのため、リテール企業及びメーカー企業ともに本部と現場(店舗や各営業部)間において、日々多大なコミュニケーションが発生し販促物に関する業務対応が埋もれがちな中で、店舗ごとに販促物の作り分け、送り分けといった「変種・変量対応」が必要になります。一方で、上述のようにそもそも販促サービスに関連するサプライヤーが分散化・多様化している状況を踏まえると、販促担当者にとってはより業務負担が大きくなるという課題が存在しております。

 

(5)当社の提供するサービスとその特色 

 上記のような業界課題を踏まえ、当社では『360°フルサービス』という形でリテール業界における販促活動に必要なあらゆるサービスを提供しており、それによってリテール企業及びメーカー企業の販促担当者の業務負担を大きく改善するとともに、それらの販促サービスを自社一貫体制で提供することで、販促企画の急な変更などにもスピーディかつフレキシブルに対応し、販促機会を逃すことなく販促効果を最大化することを可能にしております。

 当社が提供する『360°フルサービス』の中でも、特に2つの戦略サービスがリテールとメーカー間をシームレスに繋げるハブ機能を担っております。各サービスについては、詳細を以下に記載いたします。


① 戦略サービスその1:ドラッグストア向け販促物共同配送サービス(Co.HUB)

 ドラッグストア店舗においては、各メーカー企業から1カ月あたり100~130箱にも及ぶ多量の店頭販促物が日常的に届き、またそれらの販促物は約半数が容積率平均約40%の状態(大きな段ボールの中に小さな販促物が梱包されている)で届くため、店舗スタッフの受取作業や開梱作業の負担になっていることが多く、結果として販促物が使われずに廃棄されてしまうケースがあります(販促物の梱包状態及び店頭利用状況は、当社の店舗実態調査によるものです)。

 そうした実態を踏まえ、当社では2022年からドラッグストア向けの販促物共同配送サービス(Co.HUB)を開始致しました。具体的には、メーカー企業の販促物を当社の物流センターである「はちフィル」に一度集約した上で、店舗ごとに必要な販促物の種類や数に応じて梱包(=変種・変量対応)・メーカー複数社分をまとめて共同配送することで、店舗側の受取り負担を減らしております。さらに、メーカー企業が負担する配送費用の削減、廃棄段ボール量の削減・物流の集約化により、環境負担の軽減につながっており、大手ドラッグストアで販促物共同配送サービス(Co.HUB)を導入した際の試算結果では、段ボール廃棄量は約70%削減及び物流によるCO2排出量は約50%削減される結果となっております。

 ドラッグストア向けの販促物共同配送サービス(Co.HUB)は、2024年10月31日時点においてすでに20チェーンのドラッグストアチェーンが導入しており、全国のドラッグストア店舗19,440店舗における店舗カバー数は10,572店舗(※4)となり、店舗カバー率は54%であります。また、約300社のメーカー企業が本サービスを利用しており、当社の販促物共同配送サービス(Co.HUB)はドラッグストア業界において、事実上の配送プラットフォームとして機能していると考えております。


<販促物共同配送サービス(Co.HUB)導入後の物流イメージ>

 当社の成長戦略において、販促物共同配送サービス(Co.HUB)は「新規顧客獲得のための戦略事業」として位置付けられており、同事業の運営拠点として「はちフィル」を2022年に開設しました。「はちフィル」の開設は当社の経常利益率を一時的に下げる要因になっていますが、同サービスの立ち上げから約3年で既に302社の新規顧客を獲得(※5)しており、今後の事業成長基盤を形成することができていると考えております。また「はちフィル」の年間稼働率は約43%であり、今後の販促物共同配送サービス(Co.HUB)や『360°フルサービス』の拡大余地を残していると考えております。

 世界的な燃料費高騰や物流の「2024年問題」などを受けて、物流コストは引き続き上昇していくことが予想される中、まさに当社の販促物共同配送サービス(Co.HUB)はこうした物流課題に対して応えていく稀有なビジネスモデル(※7)であると考えており、今後はドラッグストア業界以外の小売業界等においても同事業を展開していきたいと考えております。

 

② 戦略サービスその2:販促DXクラウドサービス(PromOS)

 リテール企業及びメーカー企業が行う販促活動そのものの効率化を進めるため、当社では販促DXクラウドサービス(PromOS)を自社開発・提供しております。PromOS(プロモス)の語源は「Promotion(販促活動)+OS(オペレーティングシステム)」であり、販促活動の基幹システムとして『360°フルサービス』に含まれる販促業務の指示や進捗確認などができるクラウドサービスです。すでにリテール企業やメーカー企業などの幅広い顧客に導入されており、顧客が別々のサプライヤーに依頼していた販促物の作成発注、在庫管理、出荷指示などは、PromOSを通じて窓口の一元管理化が可能になります。販促業務の情報とモノの流れを最適化し、メーカー企業から必要なものだけを送るだけでなく、リテール企業からも必要品を追加発注するなど、無駄な配送コストと業務負荷の削減、販促活動の最大化を可能にしております。

 

【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2025/03 単独中間実績 5,704 391 411 264

2025/03 単独会社予想 11,399 619 648 418

2024/03 単独実績 10,115 529 572 365

2023/03 単独実績 10,328 571 635 408


決算期 種別 EPS BPS 配当

2025/03 単独会社予想 66.54 1,119.30 17.60


上場時発行済株数 7,100,000株(別に潜在株式306,000株)

公開株数 2,070,000株(公募1,100,000株、売り出し700,000株、オーバーアロットメント270,000株)

調達資金使途 設備資金、運転資金


PER:14.4

PBR:

配当利回り:1.8%

公募時吸い上げ資金:19.8億

公募時時価:68億

​   

【株主構成】 

(株)エムツー 役員らが議決権の過半数所有 3,568,800 56.59% 90日

水上光啓 代表取締役会長 1,906,200 30.23% 90日

河合克也 代表取締役社長執行役員 390,000 6.18% 90日

辻怜子 取締役の血族 60,000 0.95% 90日

真鍋悠子 取締役の血族 60,000 0.95% 90日

谷口大輔 取締役常務執行役員 60,000 0.95%

石黒陽平 執行役員 30,000 0.48%

松尾力 執行役員 30,000 0.48%

松崎良樹 執行役員 15,000 0.24%

匿名1 従業員 15,000 0.24%

匿名2 従業員 15,000 0.24%

匿名3 従業員 15,000 0.24%

匿名4 従業員 15,000 0.24%

匿名5 従業員 15,000 0.24%


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、貸株人である株式会社エムツー、売出人である水上光啓並びに当社株主である河合克也、辻怜子、眞鍋悠子、谷口大輔、松崎良樹、村山幹子及び荻野正彦は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2025年3月24日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと及びグリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等を除く。)を行わない旨合意しております。

【代表者】

代表者名 河合 克也(上場時45歳8カ月)/1979年生

本店所在地 東京都新宿区西新宿

設立年 1953年

従業員数 344人 (2024/10/31現在)(平均32.3歳、年収562.7万円)

資本金 10,000,000円 (2024/11/21現在)

代表者生年月日 1979年04月03日生まれ

代表者略歴

2002年04月 ㈱キーエンス 入社

2007年01月 水上印刷㈱(現 MIC㈱(当社)) 入社

2013年05月 当社取締役管理部長

2014年11月 当社代表取締役社長

2023年04月 当社代表取締役社長 社長執行役員(現任)


【幹事団】

主幹事証券 野村 - -

引受証券 大和 - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 松井 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 岡三 - -

引受証券 あかつき - -


【参考類似企業】今期予想PER(11/25)

7863 平賀 7.2倍 (単独予想)

7875 竹田iP 7.8倍 (連結予想)

7911 TOPPANHD 17.3倍 (連結予想)

9466 アイドマMC 14.3倍 (連結予想)


【私見】

 ドラッグストアを中心とした販促活動で、歴史のある会社で、内容的には悪くないのですが、地味な業種で短期的には人気は出そうもない銘柄です。PERからの割高感はなく、VCなしで需給も良く下値不安はありませんが、初値から買われる要素もなく公募前後の動きと予想します。


想定価額:900円

仮条件上限:960円

初値予想:1000円

ブック申し込み度・・・中立

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3

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