2023年5月30日火曜日

IPO分析(ABEJA)

【事業内容】

(1)事業概要

 ABEJA Platform上で、顧客企業の競争優位の源泉となるビジネスプロセスを変革し、継続的な収益成長の実現に伴走する「デジタルプラットフォーム事業」を営んでおります。当社事業は、ABEJA Platformを基盤としており、主たる領域として「トランスフォーメーション領域」と「オペレーション領域」に分類できます。

 「トランスフォーメーション領域」は、フロー型(都度契約)の契約形態となり、企業のデジタルトランスフォーメーションニーズに対応したプロフェッショナルサービスを、ABEJA Platformを導入し、提供しております。

 「オペレーション領域」は、ストック型(継続収入)の契約形態となり、ABEJA Platform上に構築した様々なシステムを汎用的な仕組み・サービスとして提供しております。

  デジタルプラットフォーム事業として展開する当社のビジネスモデルは、EMS(Electronics Manufacturing Service)に近い形態となります。

 これまでの多種多様な業界・業態300社以上のデジタルトランスフォーメーションを支援する上で培ったナレッジ(EMSにおける製造プロセスノウハウ)を活かし、顧客のニーズにあわせ、設計、開発、構築及び運用まで、デジタルトランスフォーメーションに必要な工程をデジタル版EMSとして、フルマネージドサービスで請け負います。これにより、顧客はABEJA Platformの最先端の製造機械と製造ノウハウを活用し、AIシステムをシームレスに基幹業務に取り入れ、運用することが可能となります。

 トランスフォーメーション領域で設計し、ABEJA Platform上に構築したビジネスプロセスを、オペレーション領域で運用する事業モデルとなります。このため、運用におけるフィードバックがビジネスプロセスの精度向上やトランスフォーメーション領域での機能改善・追加開発に結びつくなど、2領域は密接に連携しております。


① ABEJA Platform

a.ABEJA Platform概要

 デジタルトランスフォーメーションの実行に必要な、データ生成からデータ収集、データの加工、データ分析、AIモデリングまでのプロセスを提供し、継続的・安定的な運用を行う、ソフトウェア群となります。

 ABEJA Platformは、大きく5つのレイヤーで構成されております。顧客企業は必要なデータをABEJA Platformに蓄積することにより、コンピューティングリソースの管理やセキュリティを担保した環境の中で、データ加工等を行い、当該データと、BaaSレイヤーで予め準備しているAIモデルを組み合わせることにより、簡便に属性推定システム、異常検知システムといったAIシステムを構築することができます。

 また、ABEJA Platformの強みとして、300社以上に対するサービス提供実績と、その際に開発されたモジュール群が備わっているため、個別の検証を必要とせず安定した品質のソリューションを素早く提供できる点などが挙げられます。

 創業当初よりABEJA Platformへ継続的な投資を行っており、基礎的な機能面における投資はほぼ完了しております。また、ABEJA Platformにおけるコア技術については、特許(「機械学習又は推論のための計算機システム及び方法(PCT/JP2018/3824)」)を取得しており、競合他社への牽制、優位性の一要素となっているものと考えております。


b.ABEJA Platform上でのHuman in the Loopの仕組みについて

 従来、AIを活用したデジタルトランスフォーメーションを推進するためには、PoCを繰り返し行い、AIの精度を継続的に向上させていました。しかし、企業にとってPoC期間は投資期間であり、精度の保証が難しいAIの開発において、継続して投資の意思決定を行うことがボトルネックとなる等、PoCに留まっている企業の割合は63%にものぼります。

 一方で、ABEJA Platform上で、Human in the Loopの仕組みを利用することにより、PoCを行わず、デジタルトランスフォーメーションを推進することが可能となります。

 当社の提供するHuman in the Loopとは、ABEJA Platform上にビジネスプロセスの運用ノウハウや知識をデータとして蓄積するとともに、人が判断や意思決定を補うことで効率的にAIモデルを構築していく仕組みとなります。例えばデータ量が少なく、AIが効果的に学習することができない、高い精度を発揮できない初期段階においても、人が補うことでAIの学習サイクルを成立させることができ、人とAIの協調(人とAIの相互補完)により、当初より実運用を可能としています。


 c.取組範囲の拡大について

 一顧客において、単一のビジネスプロセスから、複数のビジネスプロセスに取組範囲を広げることにより、重層的に顧客企業のデジタルトランスフォーメーションを推進できます。この段階では、ABEJA Platformに蓄積済みの連携データを再活用することで、デジタルトランスフォーメーションの速度を上げ、顧客企業の高収益化に貢献できると考えております。


② トランスフォーメーション領域とオペレーション領域

 a.トランスフォーメーション領域

 企業のデジタルトランスフォーメーションニーズに幅広く対応したプロフェッショナルサービスをABEJA Platformを導入し、提供しております。

 プロフェッショナルサービスの提供にあたっては、経営レベル、全社レベルのビジョンの策定・共有から、ビジョンを具現化するためのプランニング、ビジネスプロセスにあわせたシステム構築・運用までを伴走型で支援しております。

 創業以来、幅広い業種にわたる300社以上の顧客企業のデジタルトランスフォーメーションを支援してまいりました。当該経験がプランニング力やプランを具現化する実行力に繋がっております。


 b.オペレーション領域

 ABEJA Platform上に構築した様々なシステムを、汎用的な仕組みやサービスとして提供しております。

 現状では、小売業、不動産業、製造業、金融業などが対象となり、複数の業界にわたってABEJA Platform上に構築したシステムを運用して業務推進しております。

 創業以来、1,000拠点を超える様々な環境に設置したカメラやセンサーから取得したデータ、顧客の業務システムなどをABEJA Platform上に実装してまいりました。これにより、長期間安定運用するノウハウを蓄積し、プライバシーやセキュリティなどを担保する仕組みを構築しております。

そのほかに、オペレーション領域主体の具体例として、ABEJA Platform上に構築したABEJA Insight for Retailを、小売業中心に553店舗に提供しております。ABEJA Insight for Retailでは、店舗に設置したカメラなどデバイスを通して消費者の動線分析や年代・性別の推定を行い、入店から購買に至る消費者行動をデータとして可視化・数値化することで、店舗の課題を客観的に把握し、運営の改善に繋げることが可能となります。


  d.ABEJA Platformと2領域の連携

 トランスフォーメーション領域とオペレーション領域で得た知見を基盤であるABEJA Platformに還元するとともに、2つの領域間でも相互に連携をとる、シナジー効果の高い事業モデルとなっております。2領域で獲得した知見をABEJA Platformに蓄積することで、継続的な効率化や安定性の向上、ユーザーインターフェース・ユーザーエクスペリエンスなどの改善を行っております。


 (3)収益構造

 トランスフォーメーション領域は、顧客企業のデジタルトランスフォーメーション推進のための各種支援に伴う収入が主な収入となります。デジタルトランスフォーメーションは段階的に進めていくため、多くはフロー型の契約となりますが、一方で長期間にわたる計画的なプロセスとなるため、売上高に占める継続顧客の割合は高くなっております。

 オペレーション領域は、顧客企業に提供する汎用的な仕組み・サービスに応じたストック型が主な収入となります。

 なお、ABEJA Platformはトランスフォーメーション領域、オペレーション領域の基盤となりますが、全体の売上高のうち、ABEJA Platform関連の売上比率は83.6%となります。また、ABEJA Platformの利用社数は266社に及びます。主な販売先はSOMPOホールディングス38.0%。

 

【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/08 単独中間実績 1,407 345 345 344

2023/08 単独会社予想 2,767 390 366 320

2022/08 単独実績 1,978 -163 -181 -196

2021/08 単独実績 1,259 -264 -259 -350


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/08 単独会社予想 40.74 - 0.00


上場時発行済株数 8,411,400株(別に潜在株式1,907,100株)

公開株数 1,437,500株(公募700,000株、売り出し550,000株、オーバーアロットメント187,500株)

調達資金使途 人件費、ABEJA Platform拡充のための研究開発運用費、採用費


PER:38.0

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:22.3億

公募時時価:130億

​   

【株主構成】 

岡田陽介 代表取締役CEO 1,708,100 17.76% 180日

SOMPO Light Vortex(株) 業務提携先の子会社 1,693,500 17.61% 180日

ヒューリック(株) 資本業務提携先 432,945 4.50% 180日

(株)インスパイア・インベストメント 投資業(ファンド) 430,400 4.47% 90日・1.5倍

外木直樹 執行役員 355,000 3.69% 180日

富松圭介 特別利害関係者など 354,155 3.68% 90日・1.5倍

SBI AI&Blockchain投組 投資業(ファンド) 347,200 3.61% 90日・1.5倍

SBI Ventures Two(株) 投資業(ファンド) 347,200 3.61% 90日・1.5倍

コタエル信託(株) 新株予約権信託の受託者 332,000 3.45%  180日

(株)NTTドコモ 特別利害関係者など 326,100 3.39% 180日 

PNB-INSPiRE Ethical Fund 1投組 投資業(ファンド) 297,900 3.10% 90日・1.5倍

小間基裕 代表取締役COO 271,000 2.82% 180日

VC Worldwide, Ltd. 投資業(ファンド) 269,900 2.81% 90日

アーキタイプベンチャーファンド投資事業有限責任組合 229,900 2.39%

Google International LLC 197,100 2.05% 90日

日本郵政キャピタル株式会社 173,600 1.80% 90日・1.5倍

ダイキン工業株式会社 104,100 1.08% 180日


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である岡田陽介、売出人である田島充及びさくらインターネット株式会社、当社株主であるSOMPO Light Vortex株式会社、ヒューリック株式会社、株式会社NTTドコモ、外木直樹、ダイキン工業株式会社、武蔵精密工業株式会社、清水琢麿、小間基裕及び英一樹並びに当社新株予約権者であるコタエル信託株式会社、田中邦裕及び麻野耕司は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2023年12月9日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)を行わない旨合意しております。

 また、当社株主であるVC Worldwide, Ltd.及びGoogle International LLCは、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2023年9月10日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等を行わない旨合意しております。

 さらに、売出人である富松圭介、PNB-INSPiRE Ethical Fund 1投資事業有限責任組合、緒方貴紀、アーキタイプベンチャーファンド投資事業有限責任組合、岡田隆太朗及びアセットマネージメント株式会社、当社株主である株式会社インスパイア・インベストメント、SBI AI&Blockchain投資事業有限責任組合、SBI Ventures Two株式会社、日本郵政キャピタル株式会社、TBSイノベーション・パートナーズ2号投資事業組合及び杉山央は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2023年9月10日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びその売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う売却等を除く。)を行わない旨合意しております。


【代表者】

代表者名 岡田 陽介(上場時34歳5カ月)/1988年生

本店所在地 東京都港区三田

設立年 2012年

従業員数 87人 (2023/03/31現在)(平均36.6歳、年収893.4万円)

事業内容 DX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォーム「ABEJA Platform」を基盤として顧客企業のDXを総合的に支援する「デジタルプラットフォーム事業」の運営

URL https://www.abejainc.com/

株主数 33人 (目論見書より)

資本金 100,000,000円 (2023/05/09現在)

代表者略歴

2011年02月 株式会社響取締役CTO

2011年06月 株式会社リッチメディア(現株式会社シェアリング・ビューテ ィー)入社

2012年09月 当社設立 代表取締役社長 10月:移動体付随情報表示装置株式会社代表取締役社長

2017年03月 ABEJA Singapore PTE. LTD. Director 6月:一般社団法人日本ディープラーニング協会理事(現任)

2018年04月 株式会社CA ABEJA取締役

2019年06月 当社代表取締役社長CEO 10月:ABEJA Technologies, Inc. Managing Director

2020年11月 当社代表取締役CEO(現任)

2021年04月 那須塩原市DXフェロー(現任)


【幹事団】

主幹事証券 野村 1,125,200 90.02%

引受証券 SBI 93,700 7.50%

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー 12,500 1.00%

引受証券 みずほ 9,300 0.74%

引受証券 楽天 3,100 0.25%

引受証券 マネックス 3,100 0.25%

引受証券 松井 3,100 0.25%


【参考類似企業】今期予想PER(5/10)

3993 PKSHA 117.8倍 (連結予想)

4011 ヘッドウォータ 160.1倍 (連結予想)

4259 エクサウィザー - (連結見込)

4268 エッジテクノ 62.2倍 (単独見込)

4382 HEROZ - (連結見込)

4418 JDSC 9,999.9倍 (連結予想)

5026 トリプルアイス - (連結予想)

5132 pluszero 165.9倍 (単独予想)

5572 リッジアイ 99.1倍 (単独予想)


【私見】

 AI・DX銘柄で業種妙味はあり、注目度は高い銘柄です。成長性もありそうで、同業のPERが高いことからも割高感は感じません。やや規模が大きめで、1.5倍でロックが外れるVCが相当数いるのはマイナス材料です。空白期間のIPOなので、初値人気はありそうですが、ロック基準を考えるとセンカンダリーは積極的にはなれません。


想定価額:1390円

仮条件上限:1550円

初値予想:3000円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5 

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