2024年2月9日金曜日

IPO分析(VRAIN Solution)

【事業内容】

​ (1) 事業の概要

当社は、「モノづくりのあり方を変え、世界を変えていく」ことをミッションに掲げ、製造業界向けに、AI技術及びIoT技術等の新しい技術を活用したサービスを提供しております。当社がサービスを提供している日本の製造業界は、グローバル化や技術革新に伴うアジアの国々を代表とする新興国の工業化による「国際競争の激化」や少子高齢化に伴う労働人口の減少による「人手不足」等の構造的な課題に直面していると当社では捉えております。これらの課題に対処すべく製造業界においては生産性向上のためのAIやIoT等の新しい技術を活用したDXが強く求められていると判断しております。

 当社が製造業界に提供するものは、生産性向上のソリューションとして、AIの技術を活用し自社開発する「AIシステム」及び顧客のDX推進のための「DXコンサルティング」の2つとなります。AIシステム及びDXコンサルティングは、以下に記載する特徴があると考えておりますが、それらは製造業に特化することにより、この分野でのノウハウや専門性を短期間に有することができ、より高品質なソリューションの提供が可能となるように努めてきたことによります。

 当社の見解では現在、製造業に向けて両ソリューションを提供している企業は国内において多くなく、当社の優位性に繋がるものと考えております。また、同一企業へ両ソリューションの導入を推進することにより、企業のDXを加速させ、一企業における収益の最大化を図っております。


[当社が提供する2つのソリューション]

 なお、当社では、AIシステムを提供した顧客へはDXコンサルティングを、DXコンサルティングを提供した顧客へはAIシステムを提供することを推進しており、両ソリューションは完全に分離されるものではなく、両要素を異なるバランスで含んでいることから、経営管理上はセグメントの分離をせず、「製造業DX事業」の単一セグメントとしております。

メントを指します。

 

① AIシステム

(特徴)

 当社は、自社のエンジニア部門においてAIシステムの企画・研究・開発を行っており、特定の顧客ごとに仕様を大幅に調整する必要がない汎用性の高いシステムを開発し、顧客の製造ラインの製造環境及び解決したい課題に合わせて、AIシステムの提供だけでなく、撮像機器等の周辺のハードウェアと組み合わせて提供することで、顧客の製造ラインの自動化を実現しています。

 従来、製造ラインの検査工程において検査員の目で行われていた良品/不良品の判定について、人の目に頼らず省力化・自動化を可能にするAI技術を活用したAI外観検査システム「Phoenix Vision/Eye」の開発・販売を行っております。

 さらに当社は、顧客に対して、このようなAIシステムの販売に加えて、より高い検査精度を達成するための撮像環境を構築するために、カメラやセンサー等の撮像機器等についても、組み合わせて提案・提供を行っております。


(当社の強み)

a 製造業に対する豊富な知識

 当社が対面している製造業の顧客にサービスの価値を訴求し販売を行うには、豊富な製造業の知識及び高い精度の実現が必要になります。製造業界においては、商談やサービス提供の過程において、高度な業界知識、製品知識及び製造工程に関する知識が求められます。当社は、製造業界出身者が多く在籍していることに加え、マニュアル化や社内教育により、製造業界出身者以外の者でも十分なパフォーマンスを発揮できるための仕組みを整えていると当社では考えております。

 なお、外観検査システムは通常1製造ラインごとの導入となり、その製造ラインでの効果が実証されることにより同一企業の別ラインへの追加導入へと繋がり、継続的な収益を見込むことが可能と当社では考えております。当社は工場現場の状況やデータ、解決したい課題に基づき、顧客に合わせた自動化や効率化の提案ができる点に強みがあると当社では考えており、その実績により複数の企業で追加導入へ至っております。


b 企画から導入までワンストップ対応

 当社はAIシステムの開発・販売だけでなく、企画からカメラやセンサー等の撮像機器及び検査装置の製作等の提案、設置、稼働までをワンストップで提供しております。AI外観検査システムは、撮像条件により大きく検査精度が左右されますが、当社以外のAIベンダーでは、ソフトウェアのみを販売し撮像機器等については顧客側で別途調達しており、本番環境下において導入検討時と同水準の検査精度を出せない事例が多く見られます。

 当社は、製造業界や画像検査領域での知見が豊富であり、ソフトウェアと撮像環境をワンストップで企画・提案・販売することにより、導入後の本番環境下でも高い検査精度を実現することが可能と当社では考えております。


c 自社開発のAI技術による外観検査処理

 外観検査の処理技術には、従来技術であるルールベースと当社が開発しているAI技術を用いた2つが存在します。ルールベースは、人が設定した検査ルールに基づいて良品/不良品を判断することから検査基準が明確となりますが、設定には専門知識が必要なうえ、条件が複数ある場合にはその分の検査基準を全て事前に登録する必要があり、検査結果においてもその検査基準に完全に一致したもののみを検出します。そのため、明るさ等の環境変化に応じた設定を行うことは大変難しく、大量の製品を製造しつつ不良品の出荷をゼロとするには、例え良品であっても一定の基準を満たさない製品を歩留まりにして熟練の検査員による検査をもって良品/不良品を判断している製造現場があります。このような製造現場では、良品でありながらも歩留まりにせざるを得ないことに頭を悩ませている場面が見受けられます。

 一方で、AI技術を用いた場合は、良品/不良品の画像を学習データとして与えて自己学習させていくことで特徴を自動的に抽出して判断するようになります。曖昧さや柔軟性等は、試行回数を増やせば増やすほど数値化して表現することができ精度も高められることから、熟練の検査員による官能検査が必要なケースに非常に有効です。工数削減又は歩留まりの大幅な解消が期待できると当社では考えております。


d 汎用性の高さ

 AI外観検査システムの核となる基盤は、自社が開発する汎用性の高いソフトウェアであるため、特定の顧客ごとに仕様を大幅に調整する必要がなく、要望によっては注文を受けてから1週間程度で導入することが可能です。操作性も容易なため、顧客側での設定調整や導入後の運用において、操作者の熟練度等に左右されません。

 また、当社製品の外観検査処理にはAI技術に加え、ルールベースも搭載しております。学習データ用の良品/不良品画像を蓄積し十分に学習させるまでは、従来のルールベースで使用することも可能です。このように、汎用性の高さにより検査する商品や特徴が変わっても顧客の要望に合わせて対応が可能なため、大手製造業で同一工場に複数のラインがあっても、大きな仕様変更を行うことなく、全ラインに導入の機会があります。加えて、大手製造業であれば国内だけでも複数の工場を保有しており、今後は、既存顧客のライン追加案件の比率が高まることが予想され、獲得コストの低減に繋がると当社では考えております。 


(導入実績)

 これまでの「AIシステム開発・販売」の実績は、自動車業界及び食品業界を中心に、2023年2月期までに累計69社であります。AIシステム及びその周辺機器の販売を通じた2023年2月期の平均販売単価は、10,028千円であります。導入事例として、大手自動車メーカーにおける「部品の傷の自動検査」、大手即席麺メーカーにおける「かやくとソースの自動分類」、大手ハムメーカーにおける「生成されたハムの自動検査」等があり、人が行っていた業務の自動化を実現しています。


[外観検査自動化例]

② DXコンサルティング

(特徴)

 日本の製造業界は、新興国の工業化による国際競争力の激化や少子高齢化に伴う労働人口の減少による人手不足等の構造的な課題に直面していると当社では捉えております。当社は、その課題解決にDXコンサルティングが有効と考えており、AIやIoT等の新しい技術を活用したDX推進を支援するサービスを提供しております。


(当社の強み)

 当社が対面している製造業界においては、製造現場の生産性向上を目的としたDXの推進が急務となっているものの、製造業の企業にはAIやIoT等の新しい技術に精通している人材が不足しており、必要なデータがない、データが生産設備から取得できないことによってDXの推進が想定通りにいかないケースがあると当社では捉えています。

 一方で、製造業、特に製造現場におけるDXには、製造業界や製造工程に対する豊富な知見が必要になりますが、AIベンダーやDXコンサル企業に、製造業界や製造工程に対する豊富な知見を有している人材は多くはなく、そのため製造現場にDXのコンサルサービスを十分なレベルで提供できる企業は多くはないと当社では想定しております。

 当社は、製造業に特化してきたことにより、製造業及び製造工程における多くの知見と実績やノウハウを有することができ、顧客の生産設備からデータを取得するためのデバイスの選定から、データ取得、分析、結果を踏まえた実際の運用までを支援しています。そして、製造現場のDXプロジェクト全体を通じて、より質の高いサービスを提供することに取り組んでおります。また、当社は、人材育成、テーマ選定、検証、開発、運用に至るまで、単なるアドバイスではなく、ハンズオンでの開発支援ができることが特徴であると考えております。


[当社が導入したソリューション]

 (導入実績)

 これまでの「DXコンサルティング」の実績は、自動車業界及び食品業界を中心に生産工程における複数の領域で導入したほか、同一企業から幅広く課題に対する相談を受け複数回の成約を獲得し、2023年2月期までに累計19社であります。2023年2月期のDXコンサルティングの平均販売単価は、2,121千円であります。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2024/02 単独3Q累計実績 1,052 384 383 253

2024/02 単独会社予想 1,410 497 493 330

2023/02 単独実績 617 64 63 49

2022/02 単独実績 344 3 14 11


決算期 種別 EPS BPS 配当

2024/02 単独会社予想 33.32 93.21 0.00


上場時発行済株数 10,110,000株(別に潜在株式198,000株)

公開株数 1,274,000株(公募210,000株、売り出し897,900株、オーバーアロットメント166,100株)

調達資金使途 研究開発費、採用費・人件費、設備投資


PER:89.7

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:38.1億

公募時時価:302億

​   

【株主構成】 

(同)Y&N 役員らが議決権の過半数所有 3,960,000 39.22%

南場勇佑 代表取締役社長 3,694,000 36.58%   売出600,000

ジャフコSV6投組 投資業(ファンド) 1,109,000 10.98% 90日・1.5倍 売出110,900

テクノロジーベンチャーズ5号投組 投資業(ファンド) 297,000 2.94% 90日・1.5倍 売出29,700

東京センチュリー(株) 投資業(ファンド) 297,000 2.94% 90日・1.5倍

ジャフコSV6-S投組 投資業(ファンド) 276,000 2.73% 90日・1.5倍 売出27,600

荻本成基 取締役 99,000 0.98%

菊地佳宏 取締役 99,000 0.98%

山田郁生 取締役 99,000 0.98%

石原慎也 執行役員 99,000 0.98%

伊原保守 特別利害関係者など 50,000 0.50%

石田光一 特別利害関係者など 19,000 0.19%


 本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、貸株人かつ売出人である南塲勇佑、売出人である合同会社Y&N、当社株主である荻本成基、菊地佳宏、伊原保守及び石田光一並びに新株予約権者である山田郁生は、SMBC日興証券株式会社(以下「主幹事会社」という。)に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2024年8月19日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。

 売出人であるジャフコSV6投資事業有限責任組合、テクノロジーベンチャーズ5号投資事業有限責任組合、東京センチュリー株式会社及びジャフコSV6-S投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して90日目の2024年5月21日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等(ただし、その売却価格が募集における発行価格又は売出しにおける売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)を行わない旨を約束しております。

 また、当社は、主幹事会社に対し、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2024年8月19日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利あるいは義務を有する有価証券の発行又は売却(株式分割による新株式発行等、ストックオプションに係る新株予約権の発行及び新株予約権の行使による当社普通株式の発行等を除く。)を行わないことに合意しております。

【代表者】

代表者名 南場 勇佑(上場時31歳6カ月)/1992年生

本店所在地 東京都中央区晴海オフィスタワーY17階

設立年 2020年

従業員数 45人 (2023/12/31現在)(平均33歳、年収533.3万円)

事業内容 製造業向けAI(人工知能)ソリューションの提供

URL https://vrain.co.jp

株主数 10人 (目論見書より)

資本金 9,900,000円 (2024/01/18現在)

社員数 45人(2023年12月31日現在)

代表者生年月日 1992年08月06日生まれ

代表者略歴

2016年04月 株式会社キーエンス 入社

2018年10月 エムスリー株式会社 入社

2019年02月 株式会社ゼットウィル設立 代表取締役

2019年07月 株式会社STANDARD 執行役員

2020年03月 当社代表取締役社長(現任)


【幹事団】

主幹事証券 SMBC日興 - -

引受証券 野村 - -

引受証券 大和 - -

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 松井 - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 東海東京 - -

引受証券 岩井コスモ - -


【参考類似企業】今期予想PER(1/22)

3993 PKSHA 79.3倍 (連結予想)

4011 ヘッドウォータ 187.2倍 (連結見込)

4056 ニューラル - (連結見込)

4259 エクサウィザー - (連結予想)

4268 エッジテクノ 50.6倍 (単独予想)

4371 CCT 34.7倍 (連結見込)

4382 HEROZ 795.5倍 (連結予想)

4418 JDSC 96.2倍 (連結予想)

5572 リッジアイ 88.7倍 (単独予想)

5574 ABEJA 61.2倍 (単独予想)

5582 グリッド 55.0倍 (単独予想)

5586 LaboroAI 81.7倍 (単独予想)

5591 AVILEN 96.0倍 (単独見込)

6656 インスペック - (単独予想)

6698 ViSCOTEC 12.1倍 (連結予想)

7709 クボテック - (連結予想)


【私見】

 人気業種のAIソリューションで、今後の成長性も期待できそうな注目度が高い銘柄です。売上・利益の伸びは非常に良く、高PERが容認されている業種ですが、現時点で同業種並みの高いPERで、次の決算での上澄みを考えてどこまで評価するかがポイントになりそうです。問題はジャフコを筆頭にロックが外れるVCがおり、1.5倍の4500円が上限ラインと考えると逆算しても初値からの上値は限られるかとも思います。地合いが良いのですが、ロックが緩い銘柄まで波及するのかは微妙ではあります。


想定価額:2760円

仮条件上限:2990円

初値予想:3800円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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