2024年7月14日日曜日

IPO分析(Liberaware)

 【事業内容】

​ (当社の事業内容)

(1)ドローン事業

 自社開発した屋内専用の産業用小型ドローン「IBIS」を中心に、その他ドローン等のデバイスを活用し、ユーザーが抱える各種課題の解決に資するソリューションの提供を行う事業であります。

 具体的には、調査・点検・測量等を目的としたドローン撮影画像の提供を行う「点検ソリューション」及び当該用途に供されるドローンの機体販売・レンタルを行う「プロダクト提供サービス」を展開しております。特に、ドローン等で撮影した画像は後述のデジタルツイン事業において、3次元化の基礎となる重要なデータとなります。

 サービスの中核を構成するIBISは、製鉄業等における実現場での綿密な実証実験のもと開発された、屋内の暗所・狭小空間、鉄粉の舞う環境や高温環境での飛行に耐えうる防塵性・耐熱性を有した、20cm四方程度の大きさの小型ドローンとなります。転落リスクを伴う高所空間、狭小で点検員が進入できない空間、高温あるいは半水没環境、又は有毒性のガスが含まれているような空間といった、危険かつ点検が困難な箇所を人に代わって調査・点検を行うことが可能となります。このような環境は国内外に数多く存在しており、IBISは「狭く、暗く、危険な」環境においても接近目視と同等の調査・点検を実現しております。


(2)デジタルツイン事業

 当社の関連会社であるCalTa株式会社(以下「CalTa」という。)が提供するソフトウェアTRANCITY(以下「TRANCITY」という。)や、その基幹システムを構成する当社のソフトウェアLAPISを用いて、デジタルツインサービスを提供する事業となります。それらのソフトウェアを活用し、映像及び映像以外の周辺情報(例えば、ガス濃度、温度など、ドローン等から取得した情報等)を、デジタルツインのプラットフォーム上に構築することで、顧客が設備の維持管理や建設現場の管理などを行う上で必要となる様々な情報の一元管理を支援しております。

 TRANCITYの顧客は、鉄道業・建設業が中心で、インフラ及び設備の維持管理のためには時系列でデータを保管することが有用となります。そのため、当社のサービスを用いてデータを保管し続けることが想定されることから、他社サービスへスイッチしにくく、継続利用が見込めるサービスであります。

 

(3)ソリューション開発事業

  「ドローン事業」「デジタルツイン事業」を展開する上で源泉となる事業であり、インフラ・プラント業界や建設業界等の企業に対し、効率化・省力化・省人化のニーズに応じたドローン等の開発やデジタルツインプラットフォームの開発、ユーザー保有施設のデジタル管理ソフトウェアなど、当社の技術力とノウハウを基にハードウェアからソフトウェアまで幅広いソリューションを自社開発にて提供する事業となります。

 当事業では、導入にあたり顧客企業からのヒアリングや情報分析を徹底して行うことで課題を深く理解し、当該理解を基に活用方針を明確にし、実証実験や試作開発、本開発、さらには事業化後の継続開発まで、長期にわたり顧客企業と協同し、課題解決に取り組んでおります。

 これまでに、日本製鉄株式会社(以下「日本製鉄」という。)との高温環境対応ドローンの開発や、東京電力グループとの高放射線環境下でのドローンの活用といった特殊環境特化型ドローンの共同開発等を行っており、現在も開発を継続しております。また、後述するTRANCITYもJR東日本グループから受託したソリューション開発が発端となっています。ドローンの開発にとどまらず、ロボットやデジタルツインを主とした新たなサービスの源泉となる開発を進めております。


(関連会社の概要)

 CalTaは、JR東日本スタートアップ株式会社、JR東日本コンサルタンツ株式会社及び当社が出資し、2021年7月に設立された企業となります。東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR東日本」という。)をはじめとした鉄道・インフラ業界は、施設・設備の老朽化と労働力減少の背景から建設工事・維持管理などの生産性向上が急務であります。その課題解決のため、IBIS等を用いた施設の撮影サービス事業、IBIS等のドローン・ロボットの技術等により取得した情報をデジタルツインで表現し、施工管理や維持管理に資する情報を提供するソフトウェアサービスTRANCITY事業、及び受託開発事業を展開しております。

 TRANCITYは、JR東日本グループが長年研究・蓄積していた施工管理や設備維持管理の現場における技術ノウハウと、当社の画像処理技術をベースに構築されたデジタルツインのソフトウェアサービスであり、取得した情報の時系列管理、測量、CAD化、BIM化、差分分析等を行えるサービスであります。類似サービスと比較し、より現場業務にフィットしたソフトウェアであり、鉄道業を中心に、製鉄業・通信業などにも活用が広がっております。

 当社は、CalTaがエンドユーザーから獲得した設備等の調査・点検業務や受託開発案件等の全部または一部の受託、TRANCITYの画像処理に係るライセンス供与や当該ソフトウェアの構築・アップデートを行っております。2024年5月末時点でのライセンスの供与数は100件であります。

 

(1)ハードウェア、ソフトウェア及びサービスの強み

 当社は、ハードウェア及びソフトウェアともに自社開発によりサービス構築を行い、顧客ニーズに応じたソリューションを提供することにより、屋内狭小空間での飛行実績及び撮影画像データを積み上げてきたことで、以下のような強みを有しております。

・屋内ドローン飛行を可能とする技術力

 当社のドローンIBISは、「狭く・暗く・危険な」環境における画像データの取得を可能としている屋内狭小空間に特化したドローンであり、そのような環境での飛行・撮影に資する多くの技術を組み合わせることで、機体の優位性を確保できていると考えています。


具体的には、屋内という暗く、粉塵等が舞い、配管やダクト等の障害物の多い空間の飛行は、屋外に比べ様々な制約があることから技術的なハードルが高く、また、天井裏等のより狭い空間の飛行には小型化が必須であるため、カメラ・モーター・プロペラ・バッテリー等の各部品をそれぞれ独自に設計する技術も必要となりますが、IBISはそれらの技術課題を乗り越え生み出された機体であります。


・屋内外の重要設備撮影情報の解析技術と他社連携

 狭小空間は、暗く、粉塵等の障害物が多いため、撮影データの3次元化等の画像処理が極めて困難な空間ですが、LAPISは、独自のアルゴリズムを構築することで、当該環境下においても顧客の求める形で画像処理を行うことができます。


・屋内狭小空間における飛行・画像撮影実績

 長年、屋内における小型かつ非GPS環境下での事業展開を行っているため、屋内におけるドローンの利活用実績を多く有しており、ユーザーとしては、製鉄会社・鉄道会社などの固定資産の多い重厚長大型産業に属する企業が中心です。他の機体では撮影できないプラントやインフラでの豊富な利活用実績を通じて、ハードウェアとソフトウェアの技術開発を進められていること、及び他社が有していない屋内における重要設備のドローン撮影画像データ蓄積及び撮影ノウハウが強みとなっております。

 上記に加えて、JR東日本グループや日本製鉄とは、長年にわたり取引関係を築いていることも、当社の強みの一つと捉えています。JR東日本グループに対して、また、他の鉄道事業者に対しては、CalTaを通じて各種サービスの提供をしており、日本製鉄とも設立初期より共同研究等を行い深い関係が構築できております。これらの会社が当社サービス利用先となっていることに加え、JR東日本グループや日本製鉄等が蓄積してきた設備データやノウハウを基にサービス開発を行えていることも強みの一つと捉えております。


(2)当社の技術的な強み

 ドローン等を開発するハードウェア技術、及びドローン等のデバイスで取得した映像情報等のデータ処理や解析、デジタルツインプラットフォームといったデジタル管理システムの開発等のソフトウェア技術を合わせ持ち、それらを一気通貫で実行できる開発体制を有しております。そのため、営業やプロダクトマネージャーが得たユーザーニーズを、各技術スペシャリストの検討のもと、正確に開発項目・要件・仕様に落とし込むことで、ユーザーニーズにフィットした製品・サービスを開発することが可能であります。

 特に当社がターゲットとするユーザーは、インフラやプラント、建設業界等に属する事業者であり、当該ユーザーが従事する環境は「狭く・暗く・危険」であることも多いため、そのような環境に耐えうる仕様の製品・サービスを開発する必要があります。


(3)コア技術に関する知財確保

 企業競争力・事業競争力の確保を企図し、競合他社が市場参入してきた際の防御策として、ドローンを構成する要素の中で、筐体設計に係る耐久性向上技術や、モーターの放熱に係る安全性向上技術に関して、知財を確保しております。

 

(4)大手との取引

・JR東日本グループ

 JR東日本のグループ会社が出資し、当社の関連会社でもあるCalTaを通じ、当社は、JR東日本グループ関連の案件を多数受注しております。CalTaへの売上高は、2022年7月期は52百万円、2023年7月期は74百万円であり、2024年7月期以降も継続的な成長を見込んでおります。

 CalTaの運営に係り重要となる契約は、同社の株主であるJR東日本コンサルタンツ株式会社・JR東日本スタートアップ株式会社・当社間の合弁契約と、同社と当社間のTRANCITYに係るライセンス契約の2つとなります。


・日本製鉄グループ

 機体の開発に着手した2016年より、日本製鉄のフィールドを借り、耐環境性、ユーザビリティの高いドローンの開発を進めてきており、同社とは継続的な取引関係にあります。

 日本製鉄のグループ会社や、製鉄所における協力会社・商社等を通じ、日本製鉄関連の案件を多数受注しております。サービス開始の2019年から継続した取引実績があり、直近2年の取引実績は、2022年7月期が42百万円、2023年7月期が33百万円であり、今後も継続的な受注を見込んでおります。また、2024年7月期以降は営業体制を再整備し、日本製鉄に対してはアカウント営業に徹する方針にしており、より一層の受注拡大を目指しております。


・東京電力グループ

 東京電力ホールディングス株式会社の福島第一廃炉カンパニー等をエンドユーザーとした受託開発プロジェクトを過年度より継続して実施しております。

 福島第一廃炉カンパニーとは、廃炉内の状況を把握し、今後実施が見込まれる廃炉処理を安全・適切に進めることを最終目的としており、社会的意義の非常に高い事業であると考えております。


(5)産学官連携による研究開発推進及び事業化推進

 当社が身を置くドローン市場やデジタルツイン市場は、ドローンやそのシステムを構成するハードウェア・ソフトウェアの各関連領域において、めまぐるしい関連技術の発展とサービス創出がなされている状況であります。

 このような状況において、「誰もが安全な社会を作る」という大きなミッションに向けて、当社が各分野でのリーディングカンパニーとしての地位を獲得するには、最先端の技術を取り入れ、継続的に研究開発を行っていくことが不可欠と考えております。

 そのために当社は、省庁、自治体、大学、その他外部の研究機関や民間企業と積極的に産学官連携を行い、研究開発推進並びに事業化推進をしております。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2024/07 単独3Q累計実績 609 -282 -260 -262

2024/07 単独会社予想 812 -464 -463 -466

2023/07 単独実績 379 -630 -635 -641

2022/07 単独実績 260 -462 -455 -456


決算期 種別 EPS BPS 配当

2024/07 単独会社予想 -27.25 42.34 0.00


上場時発行済株数 18,836,700株(別に潜在株式1,693,000株)

公開株数 3,616,600株(公募1,700,000株、売り出し1,444,900株、オーバーアロットメント471,700株)

調達資金使途 サーバーなど設備の購入費用、新規拠点の設立費用、研究開発費、人件費や広告宣伝費、借入金返済


PER:

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:11.2億

公募時時価:58億

​   

【株主構成】 

閔弘圭 代表取締役 3,446,000 18.30% 180日

BIG2号投組 投資業(ファンド) 2,217,400 11.78% 90日・1.5倍 売出104,800

AI・テクノロジー・イノベーション・F3号(責) 投資業(ファンド) 2,100,000 11.15%

千葉道場ドローン部1号投組 投資業(ファンド) 1,390,000 7.38% 90日・1.5倍 売出417,000

みやこ京大イノベーション2号投組 投資業(ファンド) 980,000 5.20% 90日・1.5倍 売出294,000

和田哲也 取締役 980,000 5.20% 180日

千葉道場ドローン部2号投組 投資業(ファンド) 756,000 4.01% 90日・1.5倍 売出226,800

AI・テクノロジー・イノベーション・F3号α(責) 投資業(ファンド) 680,000 3.61% 90日・1.5倍 売出36,300

野平幸佑 従業員 640,000 3.40% 90日

コタエル信託(株) 新株予約権信託の受託者 498,500 2.65% 180日

価値共創ベンチャー2号(責) 投資業(ファンド) 450,000 2.39% 売出135,000


親受けJR東日本 1,883,600㈱


 本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、売出人であるオリックス株式会社、当社株主である閔弘圭、和田哲也、林昂平、TOPPANホールディングス株式会社、内田太郎、鈴木智、大録洋志、株式会社ORSO及びセントラル警備保障株式会社並びに当社新株予約権者であるコタエル信託株式会社は、SMBC日興証券株式会社(以下「主幹事会社」という。)に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2025年1月24日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。

 当社株主である野平幸佑及びその他4名並びに当社新株予約権者である富田竜太郎は、主幹事会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して90日目の2024年10月26日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。

 売出人であるBIG2号投資事業有限責任組合、千葉道場ドローン部1号投資事業有限責任組合、みやこ京大イノベーション2号投資事業有限責任組合、千葉道場ドローン部2号投資事業有限責任組合、AI・テクノロジー・イノベーション・ファンド3号アルファ有限責任事業組合、価値共創ベンチャー2号有限責任事業組合、FFGベンチャー投資事業有限責任組合第1号、ケップルDX1号投資事業有限責任組合及びKepple Liquidity1号投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して90日目の2024年10月26日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等(ただし、その売却価格が募集における発行価格又は売出しにおける売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)を行わない旨を約束しております。

【代表者】

代表者名 閔 弘圭(上場時39歳1カ月)/1985年生

本店所在地 千葉県千葉市中央区中央

設立年 2016年

従業員数 52人 (2024/05/31現在)(平均37.4歳、年収792.7万円)

事業内容 屋内狭小空間点検ドローン「IBIS」をベースにしたドローンなどの開発と、点検サービス、ドローンのレンタル・販売、およびドローンなどで収集したデータの処理・解析するサービスを提供

URL https://liberaware.co.jp/

株主数 37人 (目論見書より)

資本金 220,000,000円 (2024/06/25現在)

代表者生年月日 1985年06月26日生まれ

代表者略歴

2013年04月 国立大学法人千葉大学 特別研究員

2016年08月 当社設立 代表取締役就任(現任)

2021年06月 CalTa株式会社 社外取締役就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 SMBC日興 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 松井 - -

引受証券 水戸 - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 極東 - -

引受証券 岡三 - -

引受証券 丸三 - -


【参考類似企業】時価総額(7/1)

5597 ブルーイノベ 41億円

6232 ACSL 130億円


【私見】

 ドローンベンチャーとして業種としては面白く、JRとの関係も強く業種妙味はあります。成長性は高そうですが、現状は赤字なので投資妙味はやや落ちます。JR東日本を親受けとしていることから吸収規模は非常に小さく、初値高騰しやすい要因になりそうですが、VCのロック基準は甘いので高値は追いかけるのはリスクは高そうです。同業種のACSLとの比較から、同程度までの可能性はありますが、上限ラインは黒字見通しがでるまでは同水準かと思います。


想定価額:295円

仮条件上限:310円

初値予想:550円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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