2018年4月5日木曜日

IPO分析(HEROZ)

【事業内容】
(1)AI(BtoC)サービス
 当社のAI技術は、将棋、囲碁、バックギャモン、チェスといった頭脳ゲームAI開発の過程で蓄積されました。具体的には、ビッグデータと呼ばれる、従来のデータ処理技術では処理することが困難であると考えられる膨大なデータ群から、機械学習等の技術に基づいて重要な示唆を導き出す技法になります。例えば、将棋AIの開発においては、過去のプロ棋士の棋譜を活用した機械学習の導入以降、評価関数と呼ばれる局面の優劣を判断する関数の精度が大幅に向上し、コンピューター将棋の棋力の向上が見られました。
 機械学習導入以前の将棋AI開発においては、エンジニアによる手作業、つまり最善と考えられる指し手を規定するためのプログラムを一行ずつ記述することによって、AIを開発することが一般的でした。しかしながら、手作業によるプログラミングでは将棋AIの棋力向上には限界がありました。そこで、より精度が高い将棋AIを高効率に開発するために機械学習が導入されることになりました。機械学習を用いることにより、コンピューターが過去のプロ棋士の棋譜データを自ら反復学習し、パラメーター調整等を自動で行いながら、手作業では記述しきれない精緻なプログラムを構築することが可能となりました。その結果、当社エンジニアが開発した将棋AIが2013年に現役プロ棋士に、また2017年には現役将棋名人に勝利することとなりました。また、2015年10月には、情報処理学会から「コンピューター将棋プロジェクトの終了宣言」が出されており、AIが日進月歩で進化していることが示されております。
 現在は、このような手法に加えて、深層学習や強化学習といった手法を実施しながら、日々AIの精度を向上させております。
 当社ではこのAIを活用したアプリケーションを、主に、Google Inc.が運営するGoogle PlayやApple Inc.が提供するApp Store等世界標準のプラットフォームを通じてBtoCサービスとして展開しており、収益はそれらの有料課金収入が中心となります。またアプリケーションの運営効率化のためにもAIを活用しております。現在提供しているアプリケーションの特徴としては、当社の戦略的な重点分野であるAIの活用に加えて、リアルタイムオンライン対戦技術を活用したサービスとしていることが挙げられます。一般的には、スマートフォン端末等においては、通信遅延の問題等によりリアルタイムオンライン対戦は困難とされておりますが、当社では同時対戦型アプリケーションの豊富な開発経験をもとに高品質なリアルタイムオンライン対戦をユーザーに提供することが可能となっております。主要なサービスの内容は下表の通りとなります。
・将棋ウォーズ
 会員数420万人以上を誇る世界最大のスマートフォン将棋ゲームアプリで、現代特有のAIとグラフィックや音楽により、ユーザーは新しい将棋の世界観の中で全世界のプレイヤーとオンライン同時対戦が可能です。Google PlayやApp Store等のプラットフォームを主として展開しております。本アプリにおいては、ユニークなAI課金を行っております。これは、ユーザーがオンライン対戦しているときに、アプリ内で「棋神」と呼ばれる、当社エンジニアが開発したAIである「Ponanza」が、ユーザーに代わって指し手を進めてくれる機能になり、5手120円でユーザーに販売されております。また、終局後には「Ponanza」が算出する評価関数に基づいてプレイ中の分析結果を振り返ることもでき、棋力向上に役立てることができます。日本将棋連盟公認の免状・認定状(六段~5級)申請も可能となっており、将棋の全国大会の予選にて使われることもあります。
また、民放キー局のAIをテーマにしたテレビドラマで使用等、各種メディアとの連携を強化しています。

・Backgammon Ace
 AIとグラフィックを駆使したバックギャモンのスマートフォンアプリで、Google PlayやApp Store等のプラットフォームを主として展開しております。ユーザーは世界中のプレイヤーとオンライン同時対戦やAIが算出する評価関数に基づく最善手やプレイの分析結果を知ることができます。
・CHESS HEROZ
 AIを最大限に活かし、快適・スピーディーなオンライン対戦を提供するチェスアプリで、Google PlayやApp Store等のプラットフォームを主として展開しております。華麗なグラフィックと洗練されたユーザーインターフェイスの下、世界中のプレイヤーといつでもどこでも対戦することができます。AIが算出する評価関数に基づくベスト・ムーブやプレイの分析結果を知ることができます。
・ポケモンコマスター
 ポケットモンスターの魅力的なキャラクターと強力なAIが融合した新しいボードゲームです。株式会社ポケモンとの協業により、平成28年4月にGoogle Play版とApp Store版をリリースしております。平成29年1月には対応言語に英語を追加し、「Pokémon Duel」として世界64の国と地域で配信を開始しております。

(2)AI(BtoB)サービス
 将棋や囲碁といった頭脳ゲームにおけるAI開発では、深層学習等の機械学習を活用しておりますが、こうしたAI開発の手法の根幹となるのは、ニューラルネットワークという人間の脳を模した学習システム等の汎用性の高い技術になります。したがって、将棋等のAI開発で蓄積したAI関連の技術を活用することにより、インプットとなるデータを変えることで頭脳ゲーム以外の問題を解決することが可能となっております。このAIサービスにおいては、様々な領域の事業会社に対してAIサービスを提供しており、当社のAIが高い付加価値を創出できることが実証されております。
 当社ではAIサービス提供にあたっては、金融等の各業界に当社AI基盤技術を複製してBtoB向けAIを提供しておりますが、精度の高いAIサービスを提供するためには、各業界に蓄積されたデータを継続的に機械学習する必要があります。そのため、当社では積極的にパートナーシップ戦略を実行しております。すなわち、資本を含む提携を各産業を代表する事業会社と実施することで、長期的な視点に立ち継続的にデータを活用した学習を行うことが可能となっております。
 なお、具体的には下表領域について、その初期設定から運用・継続学習フェーズにおいて、AIサービスを提供しております。
収益構造については、AIの提供開始時において、顧客から初期設定フィーを受領し、その後、継続する顧客から月次で継続フィーを受領する収益構造を基本としております。すなわち、当社のビジネスモデルはフロー収入となる初期設定フィーに加えて継続フィーを得ているストック型ビジネスとなります。また、AIの性質上、機械学習を継続するほどその精度が向上することから、顧客にとっては当社AIサービスを継続使用するインセンティブが働くため、当社は安定した収益基盤を確保することが可能となります。
 また、各産業におけるAI構築ノウハウを蓄積するとともに、「HEROZ Kishin」と呼ばれる社内専用MLaaSを備えるなど、将棋AIで培ったAI技術の標準化が進んできており、インプットするデータを変えるだけで幅広い産業で様々な課題に対して効率的にAIサービスを提供できる体制構築を進めております。このMLaaSを活用して、各産業に対して上述のAIの提供を行っております。そして、AIサービス提供に際しては、大規模サーバ構築を含む包括的なAIサービスの提供体制を構築することにより、安定した収益を獲得するように努めております。

【業績等】
(単独実績)2016.4 1,155 -22 -23 -87
(単独実績)2017.4 877 88 94 94
(単独予想)2018.4 1,103 321 300 219
(単独3Q累計実績)2018.4 871 305 303 223
1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当
(単独予想 )2018.4 72.87 - 0 
上場時発行済み株数 3,333,839株 (別に潜在株式264,200株)
公開株数 198,000株(公募172,200株、オーバーアロットメント25,800株)
シンジケート 公開株数172,200株(別に25,800株)
PER:61.7
PBR:
配当利回り:
公募時吸い上げ資金:8.9億
公募時時価:150億
    
【株主構成】
林 隆弘 代表取締役CEO 1,250,000 35.19
高橋 知裕 代表取締役COO 1,250,000 35.19
MICアジアテクノロジー投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 300,000 8.44
HEROZ(株) 自己株式 126,710 3.57
ビッグローブ(株) 特別利害関係者など 100,000 2.81
浅原 大輔 取締役CFO 72,000 2.03
井口 圭一 従業員 48,000 1.35
藤野 英人 特別利害関係者など 44,170 1.24
片山 晃 特別利害関係者など 44,169 1.24
(株)バンダイナムコエンターテインメント 資本業務提携先 44,169 1.24
(株)コーエーテクモゲームス 資本業務提携先 44,169 1.24
(株)ハーツユナイテッドグループ 資本業務提携先 44,169 1.24
(株)竹中工務店 資本業務提携先 40,783 1.15

ロックアップについて
 本募集に関し、貸株人かつ当社役員である林隆弘及び高橋知裕、当社役員かつ当社新株予約権者である浅原大輔、並びに当社新株予約権者である井口圭一、池田立野、山本一成、岩下直人、川嶋直樹、近村学、清田英寿、平岡拓也、伊藤久史、一丸貴則、今井達也、二神権一、鈴木義規、石川明洋、岩元智春、田島龍二、坂井靖弘、石井直樹、大井恵介、及川亮太郎、安藤周作及び窪田慈恵奈は、SMBC日興証券株式会社(以下「主幹事会社」といいます。)に対して、本募集に係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の平成30年10月16日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)の売却等を行わない旨を約束しております。
 当社株主であるMICアジアテクノロジー投資事業有限責任組合、ビッグローブ株式会社、藤野英人及び片山晃は、主幹事会社に対して、本募集に係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して90日目の平成30年7月18日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)の売却等(ただし、その売却価格が募集における発行価格又は売出における売出価格の1.5倍以上であって、東京証券取引所における初値が形成された後に主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)を行わない旨を約束しております。
 また、当社は、主幹事会社に対し、本募集に係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の平成30年10月16日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利あるいは義務を有する有価証券の発行又は売却(本第三者割当増資に係る新株式発行並びに株式分割による新株式発行等及びストック・オプションに係る新株予約権の発行を除く。)を行わないことに合意しております。

【代表者】
代表者生年月日
1976年12月20日生まれ
代表者略歴
1999年04月 日本電気(株)(NEC)入社 IT戦略部、経営企画部に在籍
2009年04月 当社設立 代表取締役CEO(現任)

【幹事団】
主幹事証券 SMBC日興 145,100 84.26
引受証券 マネックス 6,800 3.95
引受証券 みずほ 3,400 1.97
引受証券 大和 3,400 1.97
引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー 2,500 1.45
引受証券 SBI 2,500 1.45
引受証券 いちよし 1,700 0.99
引受証券 岩井コスモ 1,700 0.99
引受証券 エース 1,700 0.99
引受証券 岡三 1,700 0.99
引受証券 極東 1,700 0.99

【私見】
 AI銘柄で業種妙味は抜群に良く、レオスの藤野社長、投資家の片山 晃が株主で話題性もあり目玉のIPO銘柄です。この3期をみて売上が伸びていないことは気になりますが、今期の利益は良く、将棋関連やポケモンなどゲーム関連かつAI銘柄として今後の成長性は期待できます。PERからはPKSHA同様に判断できず、需給は吸収金額は小さくVCも気になるほどではないので問題ないでしょう。仮条件が示しているようにPKSHA並み、RPA以上の評価は得られるのと思うので時価総額1000憶をまずは目指すと思われます。

想定価額:3640円
仮条件上限:4500円
初値予想:21000円
ブック申し込み度・・・強気
セカンダリー期待度・・・中立
総合評価4.5

2 件のコメント:

  1. お疲れ様です。
    イメージとしては2万円台前半で寄り付いて3万円を目指す展開ですか?
    いきなり初値3万とかもありえそうですが・・そこまではいかないですかね・・・
    セカンダリはお考えでしょうか?
    去年12月とは違いこの春のセカンダリは難易度高いですね。

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  2. 仰る通り2万初値の3万狙いも考えていましたが、3万の初値も可能性高いですね。とりあえずキャッシュの準備はしましたが、使わずに終わりそうです。
    毎年12月以外は難易度高いですからね。

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