2019年4月9日火曜日

IPO分析(トビラシステム)

【事業内容】
 スマートフォンを始めとするデジタルデバイスが普及していく中で、データベーステクノロジーを活用し、利用者が特段意識することなくこれらの脅威から守られるセキュリティ製品・サービスを提供しております。具体的には、当社は日本全国の迷惑電話番号等に関する情報を網羅的に収集し、データベースを用いた独自の迷惑電話番号抽出技術により生成された迷惑電話番号リストを日々更新しております。当社はこの迷惑電話番号リストを参照して迷惑電話への該当有無を自動的に判別し、特殊詐欺等の被害を防止するためのセキュリティ製品及びサービスを独自開発し、提供しております。
 社会問題の一つである特殊詐欺の防止に有効な製品・サービスとして、迷惑電話番号リストを活用し、利用者にとって未知の迷惑電話番号であっても自動的に着信拒否設定がなされる「迷惑情報フィルタ事業」を主要事業として展開しております。
 同事業は、自社の得意分野にリソースを集中するため、プロモーションや販売代金の回収については主に通信キャリアや通信回線事業者といった提携先により実施されており、顧客獲得コストの低い収益モデルとなっております。また、これらの通信キャリアや通信回線事業者、メーカー、自治体等との提携によるBtoBtoCの販路により、安定的な顧客基盤を構築しており、本書提出日現在における迷惑情報フィルタの月間利用者数は220万人を超えております。
(1) 迷惑情報フィルタ事業
 2011年6月、悪質な迷惑電話や詐欺電話を防止する「トビラフォン」を自社製品として開発し、販売を開始しました。同製品の販売以降、「トビラフォン」の電話番号データベース、迷惑電話番号解析アルゴリズムを活用して、スマートフォンやフィーチャーフォン等のモバイル端末及び固定回線向けのアプリやサービスの提供、法人向けに「トビラフォン」の機能を強化した「トビラフォンBiz 光回線用」の販売を行う等、迷惑情報フィルタの新たな製品・サービス展開を行っております。
 当社では、常に最新の迷惑電話の活動状況に関する調査を行うことを目的とし、当社の迷惑情報フィルタの利用者が行う着信許可・拒否登録、利用者のアプリやサービスから得られるログ情報、警察等の公的機関による情報提供、及び当社の調査活動等、日々膨大なデータを収集・蓄積しております。これらのデータは、上述のデータベース化された電話番号情報の元になるものであり、当社の管理サーバには2019年1月末までの累計で約7億件の調査分析用データが収集・蓄積されております。
 「トビラフォン」は、これらの収集・蓄積されたデータを元に当社独自の迷惑電話番号抽出技術を用いることで、利用者に着信した電話が迷惑電話かどうかの判別を行い、迷惑電話と判別された電話番号について、自動的に着信拒否や警告レベルに応じた「危険」「警告」の表示が適用される従来にはないセキュリティシステムです。また、公的機関や法人の電話番号など公開された電話番号もデータベース化されており、予め携帯電話の電話帳に登録されていなくても、自動的に発信者情報を表示する仕組みにより、安心して通話できる社会の実現に貢献しております。
 なお、当社は、これらの技術開発について積極的な研究開発活動と知財戦略を行ってきており、本書提出日現在において国内外にて13件の特許を出願し、うち10件の特許を取得しております。

① モバイル向けフィルタサービス
 ソフトバンク、NTTドコモ、KDDIといった国内の主な通信キャリアと提携し、各通信キャリアが提供するオプションパックに含まれる複数のサービスの1つとして、当社の迷惑情報フィルタアプリを各通信キャリアのアプリという形で、エンドユーザーに提供しております。
 オプションパックは、「iPhone基本パック」や「あんしんパック」等の名称で販売されており、他社が提供する「危険サイトの検知サービス」や、「危険Wi-Fi対策サービス」等、様々なサービスとセットで提供されております。携帯電話の利用者の多くは、携帯電話の契約を行う際に、通信キャリアの店頭でオプションパックの商品内容について対面での説明を受けることが多く、当該説明を踏まえてオプションパック加入の是非を検討しております。
 各通信キャリアのオプションパックに加入した契約者は当社の迷惑情報フィルタアプリをダウンロードすることで迷惑電話フィルタ機能を利用することが出来るようになるほか、モバイル端末の電話帳等に登録をしていない電話番号であっても、当社の電話番号データベースに蓄積された情報をもとに公共施設や企業等の名称を自動的に表示する機能を利用することが可能となります。
 また、一部の通信キャリアに対しては、当社独自のアルゴリズムにより収集・分析した迷惑メールデータベースを活用し、詐欺につながるテキスト情報を含むメールやSMSをフィルタする「迷惑メールフィルタ機能」の提供も行っております。迷惑メールデータベースは、利用者に届くメールやSMS情報を収集・分析し、迷惑URLとして出現頻度の高いURLや、迷惑メールとしての特徴を持つ本文情報から、独自のアルゴリズムにより危険な疑いのあるURL情報等をパタン抽出し、それらの情報について社内調査を行った上で構築されております。2019年2月現在において、月間約2,300万件のメールやSMS情報等を収集・分析し、25,000件以上の迷惑メールデータベースが構築されております。
 当社は、通信キャリアと定額または従量課金、あるいはレベニューシェアによる契約を締結しており、通信キャリアが提供するオプションパックの契約数または利用者数に応じた収益モデルにより、継続的かつ安定的な収益基盤を確立しております。
 上述のとおり、エンドユーザーが当社のモバイル向けフィルタサービスを検討するタイミングは、主にスマートフォンの新規および買替え契約時であり、その人数は、国内スマートフォンの年間出荷台数の数量と同程度であると推定されます。一般社団法人電子情報技術産業協会発表の「携帯電話国内出荷実績」によると、国内のスマートフォン出荷台数は、2018年において995万台となっており、当社では同数程度のスマートフォンの新規および買替え需要が発生していると見込んでおります。当社は、これら3社と提携することで各社の顧客基盤にアプローチすることが出来ておりますが、機種変更等による買い替えや契約内容の見直し等に伴うオプションパックへの加入需要を取り込むこと等で、モバイル向けフィルタサービスの利用者数・契約者数が増加していくことを期待しております。
② 固定電話向けフィルタサービス
 通信回線事業者のオプションパックとして、IP電話向けの迷惑情報フィルタサービスを提供しており、通信回線事業者のオプションサービス契約数に応じた従量課金による契約を締結しております。
 IP電話を利用するためには通信回線事業者が提供するホームゲートウェイ(※6)を介して、インターネットと固定電話の接続が必要となりますが、通信回線事業者が提供するホームゲートウェイに当該サービスに係るアプリケーションが内蔵されており、利用者はオプションパックの利用申し込みを行うことで、迷惑情報フィルタサービスの利用が可能となります。利用者の固定電話に着信があった際に、着信電話番号が迷惑電話に該当するかどうか当社データベースに自動的に照会をすることで判別を行い、迷惑電話と判別された電話番号については自動的に呼び出し音を鳴らさない仕組みとなっております。
 2018年10月期において、当社のIP電話向け売上が全体の売上に占める割合は5%程度ですが、各通信回線事業者を通じたサービス契約数は拡大し続けております。
また、従来の電話回線向けの製品として「トビラフォン」の電話機外付け型端末を販売しており、自治体等の実証実験事業における外付け型端末の販売・レンタルを主たる商流としております。当該実証実験は、特殊詐欺被害防止施策として自治体等が地域住民に対して「トビラフォン」を無償貸与し、その効果を検証するものであり、当社は「トビラフォン」の提供の他、パンフレットやレポートの作成、アンケートの実施等を行っております。
 「トビラフォン」の電話機外付け型端末は、本体正面のLED発行色によって着信電話の安全度をお知らせする機能を搭載しており、電話を取る前に一瞬で着信電話の安全度を確認することができます。またボタンひとつで、着信拒否を行うことができ、利用者の拒否ボタンは当社の管理サーバに記録され、迷惑電話判定における調査対象データの参考となります。
③ ビジネスフォン向けフィルタサービス
 「トビラフォン」にクラウドサーバにおける通話録音システムや集中型管理システムの機能を追加した「トビラフォンBiz 光回線用」を販売しております。
モバイル向けフィルタサービス、固定電話向けフィルタサービスが一般消費者(個人)を対象としている一方、「トビラフォンBiz 光回線用」は企業を対象としており、導入により、通話情報の録音、着信履歴の管理・共有、不要なセールス電話等迷惑電話の自動拒否による業務の効率化やサービス品質の向上、コンプライアンスの強化を図ることができます。
当社は、迷惑情報フィルタ事業における法人向け市場の開拓を目指し、機器の販売代金及びサービスの利用料を収益源としていくための準備を進めており、営業活動を行っております。
(2) その他事業
ホームページの制作運営支援システム「HP4U」の販売及びシステムの受託開発等を行っております。
なお、今後は迷惑情報フィルタ事業に注力する方針のため、積極的に展開はしない方針であります。

【業績等】
(単独実績)2017.10 591 191 192 109
(単独実績)2018.10 842 228 222 147
(単独予想)2019.10 902 318 318 209
(単独1Q実績)2019.10 214 103 102 67
1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当
(単独予想)2019.10 66.04 -  - 
調達資金使途 自社システムインフラの増強、ソフトウエア購買・開発、採用費、研究開発費、事務所移転費
上場時発行済み株数 3,215,000株 (別に潜在株式240,600株)
公開株数 901,600株(公募95,000株、売り出し689,000株、オーバーアロットメント117,600株) シンジケート 公開株数784,000株(別に117,600株)

PER:36.3
PBR:
配当利回り:
公募時吸い上げ資金:21.6億
公募時時価:77億
    
【株主構成】
明田篤 代表取締役社長 2,407,800 71.65 90・1.5
松下智樹 取締役副社長 661,800 19.69  90・1.5
後藤敏仁 取締役 135,400 4.03  90・1.5
結城卓也 取締役(監査等委員) 25,000 0.74  90・1.5
岩井健治 従業員 25,000 0.74 90・1.5
坂倉翼 従業員 25,000 0.74  90・1.5
(株)Kips ベンチャーキャピタル(ファンド) 20,000 0.60 90・1.5
藤井智康 執行役員 15,000 0.45
佐々木貴浩 従業員 6,000 0.18
菊地耕平 従業員 3,000 0.09
柘植悠孝 従業員 3,000 0.09
 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である明田篤、売出人である松下智樹、並びに当社の株主である後藤敏仁及び株式会社Kipsは、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後90日目(2019年7月23日)までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること及び売却価格が本募集等における発行価格又は売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う株式会社東京証券取引所での売却等を除く。)を行わない旨を合意しております。
 また、当社の第4回新株予約権者である結城卓也、坂倉翼、岩井健治は、保有する第4回新株予約権について、主幹事会社に対し、ロックアップ期間中は、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社第4回新株予約権及び同新株予約権を行使して取得した普通株式の売却等(ただし、新株予約権の行使により取得した当社普通株式の売却価格が本募集等における発行価格又は売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う株式会社東京証券取引所での売却等を除く。)を行わない旨を合意しております。
 加えて、当社は主幹事会社に対し、ロックアップ期間中は主幹事会社の事前の書面による同意なしに、当社普通株式の発行、当社普通株式に転換もしくは交換される有価証券の発行又は当社普通株式を取得もしくは受領する権利を付与された有価証券の発行等(ただし、本募集、グリーンシューオプション、株式分割及びストックオプションにかかわる発行等を除く。)を行わない旨を合意しております。

【代表者】
代表者生年月日 1980年12月28日生まれ
代表者略歴 
2003年04月 (株)アトムコンサルタント 入社
2006年12月 当社設立 代表取締役就任(現任)

【幹事団】
主幹事証券 大和 - -
引受証券 みずほ - -
引受証券 SMBC日興 - -
引受証券 SBI - -
引受証券 東海東京 - -
引受証券 いちよし - -
引受証券 岡三 - -
引受証券 エース - -
引受証券 マネックス - -

【参考類似企業】今期予想PER(3/28)
2326  デジアーツ61.6倍(連結予想 )
3925  DS66.7倍(連結予想 )

【私見】
 時流に乗っており、ビジネスモデルとしては非常に面白い銘柄です。業績も急拡大しており、利益率も高くしばらくは成長が見込めそうです。需給に関しては、規模が中規模で、VCはほぼいないもののロックが1.5倍で外れることはやや気になります。時流には乗ってはいるものの、一巡してからの成長戦略には疑問があり、中期では不安が残ります。
しかし、ビジネスモデルと短期での成長性は期待できるので、短期でのセカンダリーとしては期待がもてるかもしれません。

想定価額:2040円
仮条件上限:2400円
初値予想:4000円
ブック申し込み度・・・強気
セカンダリー期待度・・・中立~やや強気
総合評価3.5

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