2024年4月2日火曜日

IPO分析(Will Smart)

 【事業内容】

 当社は、「アイデア」と「テクノロジー」を活用し社会の課題解決を行うことを目的として、課題発見のコンサルティングから解決のためのソフトウエアの開発、ハードウエアの提供及び納品後のサポートまで行うトータルサービスを提供しております。一部、海外の先進技術を持つ開発パートナーの技術協力や国内開発パートナーの協力を仰ぎつつ、当社が主体となってシステム開発を行うことで、顧客ニーズを満たしたIoTシステムを短い期間で提供することが可能となっております。

 モビリティ業界では、これまでインバウンド対応のための業務量の増加、高齢化による現場業務の労働力人口の不足、近年のカーボンニュートラル、CASEの進展や地域交通の再編に対応するソリューション不足等が課題となってきました。当社では、これらの業界課題に対し、当社が持つIoT及びWebシステム開発技術と業界知見を掛け合わせることで、時代の変化に伴って必要とされる新規需要やビジネスモデルの変化に適した企画提案を考案し、その仕組みを自ら開発することで業界の課題に対応してまいりました。

 また、顧客の発注に応じてシステムを受託開発する他、当社が独自のパッケージサービスとして展開するため、ソフトウエアを開発する場合もあり、他社の類似課題に展開できるよう一般化することで、より多くの企業に導入できるように、汎用化もしております。

 そのため、当社の収益はシステム開発を行った際の開発売上のみならず、その後の保守売上やパッケージサービスの利用料売上も主要な収益となっております。


(1)報告セグメント

 モビリティ業界の企業を主な顧客とする「モビリティ」セグメントと、海外のモビリティ周辺機器を中心とした輸入商材を小売販売する商社を主な顧客とする「インポート」セグメントを、報告セグメントとして記載しております。

 なお、「インポート」セグメントについては、2025年3月期に事業を撤退いたします。これにより、2026年3月期から「モビリティ」の単一のセグメントとなる予定であります。


(2)事業の特長

 2025年3月期にインポートセグメントから撤退するため、主にモビリティセグメントについて記載いたします。

①業界特化の顧客理解力

 創業当時から世の中の動静や社会課題などに注目し、それらの背景から発生する企業の課題を解決するためのソリューション提供に取り組んでまいりました。そのためには、他のITベンダーの下請けでは顧客企業の声を拾いきれないことから、モビリティ業界の顧客企業と直に対話を行うことにこだわり、顧客との共創型の課題解決手法により、その実現に必要なシステムの開発を行いつつ、モビリティ業界特有の業務フローに内包される課題や特徴に対する理解も深めてまいりました。

 モビリティ業界に特化し、顧客との直接的な関係構築によって、「開発実績」と「案件を通じて得られる業界知見」を増やすことで当社独自のポジションを築きながら、他社との差別化を図ってまいりました。

 今後もモビリティ業界は、地方自治体などで公共交通系のドライバー不足からくるライドシェア問題を始め、様々な課題が発生することが予測されますが、当社は顧客との関係性を通じて構築してきた実績と業界知見を背景に、業界課題へ柔軟に対応してまいります。


②技術力

 ハードウエアを中心としたIoT技術とWebオープン系のソフトウエア技術を有しており、それらの技術に業界の知見を組み合わせることで、単なるシステム提供ではなく、モビリティ業界の課題解決を提案・実行するために欠かすことのできない業務オペレーションも考慮した総合的な企画開発を行えることが特長となります。

 具体的には、IoT技術として、車などの移動体、屋外環境、公共施設などの通信の安定が必要な場所への設置技術やIoT機器にとって不利な気象条件下でも稼働を可能とする技術を有しております。また、Web技術としては、モビリティ業界には特有のシーズナリティによって変動する需要に応じた価格設定や、在庫と連動した予約管理フロー、業界特有の法律や業界ルールなどに対応が可能な開発技術を有しております。


③モビリティ業界特化のプラットフォーム

 受託開発技術を基礎としつつ、開発したサービスを機能毎に提供できる様、プラットフォーム化したパッケージサービスの展開も行っております。そのため、パッケージサービスを利用しつつ、顧客企業のニーズに応じたカスタマイズが可能です。これにより、フルパッケージでの一括導入はもとより、必要な機能のみを既存システムと組み合わせた一部導入など、各々のニーズに沿ったカスタマイズにより、顧客企業のDX化を迅速かつ低コストで実現することが可能となっております。


(3)ソリューションごとの特長

 当社の事業特性は、以下のサービスにおいて強みを持ち、事業展開しております。

①総合情報配信サービス

 創業時からのサービスであり、屋外・店頭・公共空間・交通機関などの場所において、ディスプレイなどの電子的な表示機器(デジタルサイネージ)を使って施設の館内情報や交通機関の運行情報などの情報を発信するサービスを行っております。本サービスの特長は、複数のシステムから抽出されるフォーマットの異なる情報を統合し、統一した情報として配信することが可能な点や、音声案内・制御システム等の他の機能と連携し、画像以外の情報の配信が可能となる点です。本システムの事例としては、羽田空港リムジンバスの行先・発車時刻・空席情報などのダイヤ情報の表示において、バス会社2社が持つ仕様の異なるデータを統合し、単一の画面で表示しユーザーへ情報を提供しております。また、屋内外の様々な環境下で設置・情報配信が可能となっております。近年では本サービスの特長を活用し、複数情報を統合して配信する必要があるバスターミナルなどにおいて、本システムが採用されております。また、本システムを活用したデジタルサイネージ導入支援サービス「Will-Signコンテンツパッケージ」は、多言語配信や緊急情報配信、スマートフォンとの連携をパッケージ化し、全国に販売網を持つ販売パートナーと連携することで、地方自治体や公共施設、交通機関、駅などといった各種事業者に向けた展開に取り組んでおります。


②クラウド化支援サービス

 顧客企業が利用するフロントエンドシステム(販売や予約システムなど)を中心にオンプレミス(サーバーやネットワーク機器、ソフトウエアなどを自社で保有し運用する利用形態)のシステムをクラウド化することによるリニューアルや、新規事業の販売系基幹システムの開発を行っております。

 

③モビリティシステムサービス

 ガソリン車・EV車両の双方に対応する車載デバイスと、車載デバイスから取得した車両データ(位置情報、燃料残情報、車両情報など)に基づく鍵の制御や車両管理を行うための機能等を有するIoTゲートウェイパッケージの提供と、カーシェアやレンタカー、EV充電器の予約システム(予約決済、会員管理、管理画面)等から構成されております。これらは各機能別に独立したシステムとなっており、API連携により既存システムとの同期も可能なことから、フルパッケージでの提供はもちろん、顧客が必要とする一部機能の提供も可能となっております。

 なお、自動車等のデータ取得等にかかるシステム基盤及び車載器については、韓国最大のモビリティプラットフォーム事業者であるAltimobility Corporation(本社:韓国ソウル市、代表者:JEONG KYU SEO)から技術協力を仰ぎ、機能の一部についてライセンス提供を受けつつ、当社が日本向けに追加開発した箇所については、当社と共同ライセンスの形で保持しております。


④AI・データサイエンスサービス

 地方行政や自治体、地方公共交通などの顧客を中心に、事業領域に特化した実証実験や、地方公共交通再編のために複数の交通事業者や自治体などの交通利用データを分析、可視化することができるシステムの提供を行っております。可視化することで課題となる論点を整理し、顧客によるEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング/エビデンスに基づく政策立案)による政策推進が可能となっております。


⑤インポートサービス

 海外商材の輸入・販売を行っております。具体的には、ドライブレコーダー等を始めとするモビリティ周辺機器を中心に事業者の要望に合わせ、新商材発掘や仕入先企業との商談、輸入業務の支援などを行っております。しかしながら、昨今の円安基調の市場環境や事業における収益性などを踏まえ、今後の事業戦略における事業の位置づけを考慮した結果、2025年3月期での事業撤退を決定いたしました。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2024/03 単独3Q累計実績 662 -126 -127 -128

2024/03 単独会社予想 1,080 30 29 24

2023/03 単独実績 813 -179 -179 -287

2022/03 単独実績 1,103 -21 -20 -33


決算期 種別 EPS BPS 配当

2024/03 単独会社予想 19.29 248.07 -


上場時発行済株数 1,444,000株(別に潜在株式270,200株)

公開株数 772,800株(公募200,000株、売り出し472,000株、オーバーアロットメント100,800株)

調達資金使途 人材採用および人件費・教育費、設備投資


PER:71.5

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:10.7億

公募時時価:20億

​   

【株主構成】 以下90日・1.5倍

(株)ゼンリン 親会社 845,000 55.81% 売出200,000

九州旅客鉄道(株) 資本業務提携先 222,000 14.66% 売出 222,000

石井康弘 代表取締役社長 103,000 6.80%

ENEOS(株) 資本業務提携先 83,000 5.48%

都築電気(株) 資本業務提携先 50,000 3.30% 売出50,000

金秉都 執行役員 43,000 2.84%

岡谷鋼機(株) 資本業務提携先 22,000 1.45%

飛島建設(株) 資本業務提携先 22,000 1.45%

布目章次 取締役副社長 17,000 1.12%

杉山賢治 執行役員 11,000 0.73%


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である株式会社ゼンリン、売出人である九州旅客鉄道株式会社、都築電気株式会社、並びに当社の株主であるENEOS株式会社、岡谷鋼機株式会社、飛島建設株式会社は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後90日目の日までの期間、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること及び売却価格が本募集等における発行価格又は売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う株式会社東京証券取引所取引での売却等を除く。)を行わない旨を合意しております。

 加えて、当社の新株予約権を保有する石井康弘、金秉都、杉山賢治及びその他13名は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後90日目の日までの期間、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式の売却等(ただし、新株予約権の行使により取得した当社普通株式の売却価格が本募集等における発行価格又は売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う株式会社東京証券取引所取引での売却等を除く。)を行わない旨を合意しております。

【代表者】

代表者名 石井 康弘(上場時45歳8カ月)/1978年生

本店所在地 東京都江東区富岡

設立年 2012年

従業員数 50人 (2024/01/31現在)(平均37歳、年収661.1万円)

事業内容 モビリティー業界を中心とした事業課題解決に対してDX(デジタルトランスフォーメーション)技術を駆使したソリューションの企画・提案、ソフトウエアの受託開発および運用支援

URL https://willsmart.co.jp/

株主数 7人 (目論見書より)

資本金 545,850,000円 (2024/03/13現在)


【幹事団】

主幹事証券 大和 - -

引受証券 野村 - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 松井 - -


【参考類似企業】今期予想PER

4414 フレクト 47.7倍 (単独予想)

5137 スマートドラ 88.0倍 (連結予想)

7213 レシップHD 4.3倍 (連結予想)

7314 小田原機 21.8倍 (連結予想)

7368 表示灯 17.5倍 (単独予想)

7836 アビックス 339.3倍 (連結予想)

9417 スマートバリュ 267.9倍 (連結予想)

9474 ゼンリン 25.8倍 (連結予想)


【私見】

 モビリティー事業ということで、ゼンリンの子会社で多少の有意性はあるかもしれませんが、大きく成長性している同業もなく、黒字がやっとの業界なのかとも思います。JR九州やエネオスなど大手が株主であることは魅力ですが、JR九州は全株売出しで、どうなのかとも思います。1.5倍のロック基準もあるので不透明ではあります。時価総額が非常に小さいことは魅力ですが、中期的にも買い材料は少ないのかと思います。時価総額は小さいので、初値段階は上がる可能性は高いでしょう。



想定価額:1380円

仮条件上限:1380円

初値予想:1800円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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