2024年5月31日金曜日

IPO分析(Chordia Therapeutics)

 【事業内容】

(1)事業の概要

① ビジネスモデル

 当社は、新規抗がん薬の市販を目指して研究開発を行う創薬ベンチャー企業です。医療ニーズ(アンメットメディカルニーズ)の高いがん領域で、新しい作用を有する低分子の画期的医薬品(ファーストインクラス)の研究開発が主要な事業の内容です。当社がマネジメントと研究業務(探索研究、前臨床研究、臨床研究)、特に候補化合物の探索、評価、最適化、臨床試験に集中し、外部協力先が得意な業務、中でも基礎研究、原薬及び製剤の製造、流通・販売などは各外部協力先に委託するという形を取ってビジネスを進めております。

 創薬事業においては様々な専門性の高い作業や過程があり、また長い開発期間と多額の研究開発費用が必要です。当社は、効率的な創薬事業を実現するために、大学や公的機関、事業補完性のある企業、製薬会社などと積極的に共同研究やライセンス提携などの協業を行い、より短い期間で効率的に新しい抗がん薬の創出に取り組んでいます。


・パートナリングに関する方針、考え方

 当社における事業提携の基本戦略は、パイプライン(開発プログラム)の医薬品として市販される蓋然性が高まったタイミングで日本国外の販売権についてライセンス交渉を行う事です。2021年のBiotechnology Innovation Organizationの報告では、第2相臨床試験の成功確率が最も低いとされており、第2相臨床試験が成功してパイプラインが医薬品として市販される蓋然性が高まったタイミングは、パイプラインの価値が高くなるタイミングと当社は考えております。そのため事業提携の基本戦略としては第2相臨床試験の結果を確認できるタイミングで行うことが最適であると当社では考えています。

 パートナー企業の選定基準としては、①パートナー企業の臨床開発戦略立案力、②パートナー企業の臨床開発に関する資金力、③当社のパイプラインの理解力、④パートナー企業内での当社のパイプラインの優先順位などを基準に選定を行います。


 ② ファーストインクラスの抗がん薬を生み出すための研究開発

 がんは世界において主要な死因の一つであり、国立がん研究センターの統計によると日本人が一生のうちにがんと診断される確率(国立がん研究センター がん情報サービス、がん統計まとめHPで2019年のデータに基づく)は、2人に1人ががんと診断され、また、がんで死亡する確率(国立がん研究センター がん情報サービス、がん統計まとめHPで2021年のデータに基づく)は5人に1人が死亡しています。そのため、患者や家族、社会にとって、がんは大きな問題になっています。また、近年、新しい治療法や新規抗がん薬が開発され、生存予後が改善する傾向がみられていますが、がんと診断された人の5年相対生存率(2009年-2011年にがんと診断された人のデータに基づいて当社で算定)は男女計で64.1%にとどまり、依然として新しい抗がん薬や治療法の開発が望まれています(国立がん研究センター がん情報サービス、がん統計まとめHP)。このことから、がん領域は依然としてアンメットメディカルニーズが高い領域と考えています。

 当社は、がん領域において、ファーストインクラスの研究開発を行っています。ファーストインクラスの医薬品は、既存治療薬と異なる有用性を示すことが期待され、これまでの治療法を大きく変えることができる医薬品に成長する可能性があると考えています(図1)。特に既存治療薬では十分な効果が認められず、現在のがんの進行に不安を感じている多くの患者に対して、がんの進行をコントロールできるという希望を届けられる可能性を秘めております。医薬品市場の観点からは、初めて市場に出るため大きな市場を取れる可能性が高く、薬価算定の際にその有効性や新規性に応じた高い価格が設定されることが多いことから、数多くのグローバル製薬企業が非常に高い関心を持っていると考えています。そのため、ファーストインクラスの医薬品にフォーカスしたパイプラインを有する当社は、グローバル製薬企業との共同開発やライセンス契約等の機会を積極的に検討しながら事業の価値最大化をめざすことが可能になります。


③ 当社の研究領域

 抗がん薬の標的となる分子を見つけ出すには、がんのホールマーク(特徴)、つまり、がん細胞が正常細胞と比べてどのように異なるのかを明らかにすることが重要です。これまでに、12種の多様なホールマーク(継続的な血管新生、組織への浸潤と転移、アポトーシスの回避、増殖シグナルの自己充足、増殖抑制シグナルに対する不応答性、無制限の複製能力、DNA損傷ストレス、酸化ストレス、有糸分裂ストレス、タンパク質毒性ストレス、代謝ストレス、及び免疫ストレス)が見出されていましたが、近年、最新の研究によって、RNA制御ストレスが新たなホールマークとして認識されるようになりました(右図、枠内がRNA制御ストレス)。がんのホールマーク(特徴)に着目した医薬品開発はこれまでにも盛んに行われてきており、優れた抗がん薬が多数生み出されてきたことから、高い効能を有する抗がん薬の開発において有効な研究戦略であると考えています。


 ④ パイプラインの概要

 現在、2つの臨床パイプライン(CLK阻害薬、MALT1阻害薬)に加えて、1つの前臨床研究段階のパイプライン(CDK12阻害薬)、探索研究段階のパイプライン2つ(GCN2阻害薬、新規パイプライン)、合計5つのパイプラインを保有しています(図3)。そのうちMALT1阻害薬は全世界での開発及び商用化の権利を小野薬品工業株式会社に導出しておりますが、その他のパイプラインは全世界での権利を当社が有しています。


 ⑤ 収入形態

 当社が得る収入は、当面の間は、ライセンス契約に基づく提携企業からの収入を想定しています。ライセンス契約の収入には、「契約一時金」「開発マイルストン収入」「販売マイルストン収入」「ロイヤリティ収入」があります。また、当社は自社でも製造や販売する体制を構築することを視野にいれてパートナー企業との戦略的提携を進めていますので、今後のビジネスの進展により自社で製品を販売して得る収入も想定しています。

 2020年12月に小野薬品工業株式会社との間で全世界におけるCTX-177の独占的ライセンス契約を締結いたしました。この契約に基づき、2020年12月に8億円の契約一時金を受け取っております。また、2023年2月には初回開発マイルストンとして25億円を受け取っております。今後、開発が順調に進んだ場合には、さらなる開発マイルストン収入を受け取るだけでなく、申請・承認された後で販売マイルストン収入やロイヤリティ収入を受け取る事ができます。

 

【業績等】

決算期 種別 事業収益 営業利益 経常利益 純利益

2024/08 単独中間実績 0 -809 -801 -802

2024/08 単独会社予想 0 -2,273 -2,278 -2,280

2023/08 単独実績 2,500 212 225 223

2022/08 単独実績 0 -1,844 -1,776 -1,779


決算期 種別 EPS BPS 配当

2024/08 単独会社予想 -40.40 52.87 0.00


上場時発行済株数 65,543,800株(別に潜在株式7,807,000株)

公開株数 10,465,000株(公募9,100,000株、オーバーアロットメント1,365,000株)

調達資金使途 抗がん薬化合物CTX-712(CLK阻害薬)にかかる開発業務委託費用


PER:

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:16億

公募時時価:100億

​   

・募集を行う地域

欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)


【株主構成】 以下90日

武田薬品工業(株) ライセンス契約先 9,453,400 14.71%

イノベーション京都2016投組 投資業(ファンド) 7,954,800 12.38%

New Life Science 1号投組 投資業(ファンド) 6,598,600 10.27%

日本グロースキャピタル投資法人 投資業(ファンド) 5,052,800 7.86%

ジャフコSV5共有投組 投資業(ファンド) 4,615,600 7.18%

従業員17名 従業員 4,286,000 6.67%

MEDIPAL Innovation 投組 投資業(ファンド) 4,210,800 6.55%

三菱UFJライフサイエンス1号投組 投資業(ファンド) 3,977,200 6.19%

三宅洋 代表取締役CEO 3,930,000 6.12%

協創プラットフォーム開発1号投組 投資業(ファンド) 3,368,600 5.24%

京大ベンチャーNVCC2号投組 投資業(ファンド) 2,660,600 4.14%

森下大輔 従業員 1,466,000 2.28%

SMBCベンチャーキャピタル4号投組 投資業(ファンド) 1,360,000 2.12%

SMBCベンチャーキャピタル5号投組 投資業(ファンド) 1,360,000 2.12%


 本募集に関連して、貸株人である三宅洋は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後360日目の2025年6月8日までの期間(以下「ロックアップ期間①」という。)中、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなしには、当社普通株式(当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式を含む。)の売却等(ただし、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)を行わない旨合意しております。

 貸株人である森下大輔並びに当社株主(新株予約権者を含む。)である当社従業員5名、嶋内明彦、石井幸佑、橋本阿友子及び西方ゆかりは、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2024年12月10日までの期間(以下「ロックアップ期間②」という。)中、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなしには、当社普通株式(当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式を含む。)の売却等(ただし、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)を行わない旨合意しております。

 当社株主(新株予約権者を含む。)である武田薬品工業株式会社、イノベーション京都2016投資事業有限責任組合、New Life Science 1号投資事業有限責任組合、日本グロースキャピタル投資法人、ジャフコSV5共有投資事業有限責任組合、MEDIPAL Innovation 投資事業有限責任組合、三菱UFJライフサイエンス1号投資事業有限責任組合、協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合、京大ベンチャーNVCC2号投資事業有限責任組合、SMBCベンチャーキャピタル4号投資事業有限責任組合、SMBCベンチャーキャピタル5号投資事業有限責任組合、当社従業員12名、SMBCベンチャーキャピタル3号投資事業有限責任組合、シオノギファーマ株式会社及びジャフコSV5スター投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2024年9月11日までの期間(以下「ロックアップ期間③」といい、ロックアップ期間①及びロックアップ期間②とあわせて、以下「ロックアップ期間」という。)中、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなしには、当社普通株式(当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式を含む。)の売却等を行わない旨合意しております。

【代表者】

代表者名 三宅 洋(上場時53歳11カ月)/1970年生

本店所在地 神奈川県藤沢市村岡東

設立年 2017年

従業員数 21人 (2024/03/31現在)(平均45.82歳、年収1103.6万円)

事業内容 RNA(リボ核酸)制御ストレスを標的とするがん治療薬の開発など

URL https://www.chordiatherapeutics.com/

株主数 21人 (目論見書より)

資本金 90,000,000円 (2024/05/10現在)

代表者生年月日 1970年06月25日生まれ

代表者略歴

1998年04月 武田薬品工業株式会社入社

2015年04月 同社がん創薬研究所日本サイトヘッド 就任

2017年11月 当社代表取締役 就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 SBI 7,735,000 85.00%

引受証券 野村 455,000 5.00%

引受証券 みずほ 455,000 5.00%

引受証券 あかつき 45,500 0.50%

引受証券 岩井コスモ 45,500 0.50%

引受証券 岡三 45,500 0.50%

引受証券 極東 45,500 0.50%

引受証券 東洋 45,500 0.50%

引受証券 広田 45,500 0.50%

引受証券 松井 45,500 0.50%

引受証券 丸三 45,500 0.50%

引受証券 水戸 45,500 0.50%

引受証券 楽天 45,500 0.50%


【参考類似企業】時価総額(5/15)

4564 OTS 35億円

4571 NANO 125億円

4572 カルナバイオ 77億円

4575 CANBAS 89億円

4579 ラクオリア 126億円

4582 シンバイオ 75億円

4583 カイオム 68億円

4588 オンコリス 144億円

4597 ソレイジア 51億円

4598 DELTA-P 59億円

4893 ノイル 65億円


【私見】

 武田からスピンアウトした抗がん薬の創薬ベンチャーで、きな臭さはないものの、今期は収入なしと投資の対象としては厳しい印象です。武田の他はVOも多く、ロックはされいるので当面は心配ないですが、将来的な不安はあります。吸収金額は大きくなく、153円という低単価なのでマネーゲーム的な買いはあるかもしれませんが、売上ゼロのバイオ銘柄という時点で投資対象外ではあります。


想定価額:153円

仮条件上限:153円

初値予想:153円

ブック申し込み度・・・やや弱気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:2.5

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