【事業内容】
(1) 当社グループについて
当該ビジョンを達成するために、当社グループは、2008年より世界に先駆けて小型衛星の開発に取り組んでまいりました。現在は、AxelLiner事業とAxelGlobe事業の2つの事業を運営しております。AxelLiner事業は創業以来約17年にわたり蓄積してきた経験・ノウハウを基盤とし、小型衛星の開発・製造・打上げ後の運用に関して、打上げ機の手配や許認可の取得等の非技術的な手続きも含めて顧客向け小型衛星プロジェクトの開発・運用サービスを提供しております。AxelGlobe事業は当社グループが保有・運用する光学地球観測衛星コンステレーションが取得した画像データを販売、又はそれらの画像を加工・分析して情報を抽出し、ソリューションとして顧客にサービス提供しております。農業や土地管理をはじめ、環境や金融、報道等、他産業での用途にも拡大しております。
(2) 基盤となる小型衛星に関する技術
・小型衛星の特徴と技術の源泉
当社グループは2008年の創業以来一貫して小型衛星事業に取り組んでおり、ベースとなる技術は、創業者である中村友哉及び永島隆の指導教員であった中須賀真一氏が教授を務める東京大学大学院工学系研究科、及び創業者である宮下直己氏の指導教員であった松永三郎氏(故人)が当時准教授を務めていた東京工業大学(現・東京科学大学)理工学研究科機械宇宙システム専攻において研究開発されていた複数の超小型衛星プロジェクトから生み出されたものです。
当時、一般に人工衛星と言えば、質量1トンを超える大型衛星が主流であり、時に5年以上にも及ぶ長い開発期間や宇宙用の部品を用いることによる高額な調達費用のため、政府系機関による開発が一般的でした。当社グループが手掛ける小型衛星は独自ノウハウにより、宇宙でも利用可能な民生部品を積極的に選定・活用したり、信頼性を損なわない範囲で各種環境試験を簡略化することによって、低コストでの設計製造、及び契約の締結から宇宙での利用開始までの期間の短縮を実現しました。
これにより民間企業が自社衛星として人工衛星を保有する可能性が切り拓かれるほか、衛星コンステレーションによる同一地点の高頻度観測や冗長性の確保といった新しい価値を提供することが可能となりました。
・小型衛星に関する実績
創業以来、「WNISAT-1」「ほどよし1号機」「RAPIS-1」等の顧客向け人工衛星に加え、当社グループのAxelGlobe事業向け人工衛星である「GRUS」5機を含む合計11機の小型衛星を製造した実績を有しております。
株式会社アクセルスペースを設立後、大学で培ってきた技術・経験を活かし、質量約10キログラムの日本初の超小型民間気象衛星「WNISAT-1」の開発を株式会社ウェザーニューズより受託、2013年に打上げ、2024年2月まで運用を行いました。「WNISAT-1」の開発と並行する形で、2009年より内閣府総合科学技術会議による最先端研究開発支援プログラムの1テーマである「日本初の『ほどよし信頼性工学』を導入した超小型衛星による新しい宇宙開発・利用パラダイムの構築」の一環として「ほどよし1号機」の開発を主導、2014年に打上げ、2025年3月まで運用を行いました。その後「ほどよし1号機」の実績を生かし「WNISAT-1」の後続機である「WNISAT-1R」を開発し2017年に打上げ、2025年5月まで運用を行いました。2016年にはJAXAとの間で技術実証衛星である「小型実証衛星1号機(RAPIS-1)」の開発・運用に関する契約を締結し、2019年にイプシロンロケット4号機にて打上げました。なお、日本において、政府系機関の衛星開発をスタートアップ企業が受託するのは初めてのことでした。「RAPIS-1」については約1年半にわたって軌道上運用を継続し、全ての実証ミッションを成功裡に終えたのち、停波しております。
これら顧客のための人工衛星開発に加え、AxelGlobe事業に用いる地球観測衛星「GRUS-1A」を2018年に1機、2021年には「GRUS-1B, C, D, E」を4機同時に打上げることで、5機による地球観測衛星コンステレーションのサービスを日本で初めて開始しております。なお、姿勢制御に不具合の発生した「GRUS-1E」の商用運用を停止しておりましたが、本書提出日現在、商用運用復旧に向けた作業を進めております。
このように、多様な衛星を短期間に複数打上げ、並行して運用する経験を積んでまいりました。多様なミッションを通じて、小型衛星を構成する機器(コンポーネント)に関するサプライチェーンの確立、コストと信頼性のバランスを考慮したシステム設計、打上げ事業者や政府系機関との交渉等、プロジェクト推進に関わるあらゆる技術的・非技術的ノウハウを蓄積してまいりました。
・当社グループの小型衛星の開発・製造・運用技術の特徴
当社グループの人工衛星の開発・製造・運用には次のような技術力があり、これらの技術力を用いた短期・低コストでの小型衛星開発を行えることが当社の強みです。また、実績が重視される衛星開発の中で、当社グループで運用している「GRUS-1」及び「PYXIS」を除き、上記のいずれの人工衛星プロジェクトにおいても、総合評価方式による一般競争入札及び顧客からの指名により人工衛星の開発に対して相応の対価を得ていることからも、当社グループの人工衛星開発能力の高さが評価されているものと認識しております。
[1] 小型衛星ミッションのために最適化した独自の設計基準と製造体制
当社グループの創業者らは大学生時代から小型衛星開発の研究を重ね、小型衛星のミッション遂行に必要となる設計思想及び設計製造ノウハウを獲得しております。当社グループの創業後、これらの設計・製造ノウハウを、大学レベルで必要とされるミッション遂行に必要な水準から、人工衛星ビジネスをするために必要十分となる独自の水準にまで向上させております。これにより、従来の人工衛星製造の業界において常識だった多くの開発工数や試験工数を削減・簡素化したほか、宇宙空間での利用を前提としていない民生部品の積極採用も行い、開発コストを大幅に削減しつつも、事業用途に耐え得る品質を維持する開発手法の確立に成功しております。
[2] 自動運用システム
当社グループが手掛けている一般的な地球周回衛星では、地上に置かれているアンテナ(地上局)と通信可能な時間帯は投入軌道によって自動で決まり、夜間・休日関係なく運用が発生します。従来行われていた人力による衛星運用では、こうした変則的な拘束時間に加え、運用ミスが許されないことによるストレスが高く、多大な人的コストがかかっておりました。当社グループでは創業以来、こうした運用にかかる手間・ミスを避けるため、人工衛星の運用の無人化・自動化を目指した運用システムを開発し、2018年に打上げた「GRUS-1A」より適用を開始しました。現在ではクラウド上の自動運用システムが人工衛星の監視・運用の大半を無人で実施し、軌道上の衛星に発生した軽微な不具合は自動復旧するなど効率的な衛星運用を実施しているほか、人工衛星に送付するコマンドは事前に設定された運用計画に基づき全てプログラムが生成するなど、運用ミスを防ぐ工夫をしております。さらに、他物体との衝突リスクが顕在化した時には自動で衝突回避運用を実行する機能の実装も進めております。人工衛星運用の自動化は当社グループの創業当時より強く掲げた目標であり、人工衛星に搭載するソフトウエアと地上側の人工衛星運用ソフトウエアの両者を内製し、それらを相互に連携させることで高度な運用自動化を実現しております。このように人工衛星の開発と運用をワンストップで提供できることは、設計・製造・運用全ての経験を有した事業者のみが実現できることであり、特に人工衛星の運用経験のない顧客を取り込めるようになる点で、強い競争力となると考えております。
[3] 民生部品の積極的な利用をはじめとした独自のサプライチェーン網の構築
宇宙は地上とは異なる過酷な環境(真空、宇宙放射線、大きな温度変動等)であるため、一般には宇宙環境を想定して製造されていない民生部品をそのまま利用することはできません。当社グループは最先端の半導体などの民生部品から宇宙利用できるものを独自に選定するノウハウ・技術を有しております。これによって例えば衛星搭載のメイン計算機ボードを内製化しており、安価でありつつも小型かつ高性能な衛星の実現に貢献しております。こうしたノウハウの積み重ねにより、当社グループは、外部機器の調達と自社開発品を組み合わせた独自のサプライチェーン網を構築しております。また、長納期かつ高額な調達機器に関しても、外部メーカーと共同開発に取り組み、当社グループが宇宙利用の経験とノウハウ等を提供することで、安価で短納期な部品を開発するなど、更なる原価低減に向けた施策も進めております。一方で近年では数千機を超えるいわゆるメガコンステレーションの誕生から、小型衛星向けのコンポーネントの開発が活発となっており、徐々に安価で高性能なコンポーネントも市場に流通し始めております。当社グループは内製と外部パートナーとの共同開発、外部調達をバランスよく併用することで技術・コスト両面で競争力のある製品開発を進めております。
(3) AxelLiner事業
顧客向け小型衛星プロジェクトの開発・製造・打上げ・運用を提供しております。
AxelLiner事業の前身となる、創業当初から取り組んできた顧客専用衛星開発では、顧客の要望に応じた小型衛星の設計から製造・運用までを提供してまいりました。その実績として、「WNISAT-1」、「ほどよし1号機」、「WNISAT-1R」、「RAPIS-1」が挙げられます。
現在の主要顧客は政府系機関で、2024年5月期はAxelLiner事業の売上高の95%を占めております。また、同時期の売上高は国内100%になります。政府系機関より委託を受け、取り組んでいるプロジェクトのうち、主なものは以下のとおりであります。
(4) AxelGlobe事業
当社グループが運用する衛星にて撮影した画像データを販売及び衛星画像を使ったサービスを提供しており、現在5機の「GRUS-1」により顧客が求める世界中の地点の衛星データを高頻度かつ安価に提供ができることを最大の強みとしております。
AxelGlobe事業を構成する小型衛星「GRUS-1」において提供する衛星画像の地上分解能(画像における1ピクセルに相当する地上の幅)は2.5mと、地上の航空機1機レベルの識別が可能であり、撮影幅は55km(直下視の場合)、撮影長は最大約1,000㎞と世界的に見ても商用衛星としては幅広い画像を一度に取得することができます。
一般的な衛星画像としては、一眼レフカメラのように人の目で見たように写る光学画像と、電波を用いた合成開口レーダー(SAR; Synthetic Aperture Radar)画像の大きく分けて2種類がありますが、「GRUS-1」が取得する画像は光学画像となります。照射した電波の反射強度を白黒の画像として表現しているSAR画像と比較し、「GRUS-1」が取得する光学画像は普段目にしている写真と同種の画像であり、直感的に理解しやすく誰にでも使いやすいという特徴があります。光学画像には悪天候時や夜間の撮影ができないという弱点がありますが、広域を撮影できる、複数波長のデータがあるため情報量が多い、面積あたりの画像単価が低い等のSAR画像にはないメリットもあります。衛星自身が電波を発して観測を行うSAR衛星に対し、光学衛星はSAR衛星のように衛星自身が電波を照射しない、受動的な観測手法であるため消費電力が少なく、その分一つの衛星でより広い面積を撮影することが可能です。また、衛星開発コストも低く抑えられ、比較的安価に通常の写真のような扱いやすい衛星画像をユーザーへ届けられる特徴があります。実際にサービスを利用する顧客セグメントは幅広く、2024年5月期のAxelGlobe事業の売上高の約66%は民間企業であり、官民問わず幅広い事業者にサービスを提供しております。
また、同時期の国内外売上高比率は国内約67%、国外約33%になります。販売チャネルについては、国内外50社以上の販売代理店と契約しておりますが、国内においては直販による営業活動も強化し、衛星画像にAI技術等を用いて解析した情報を付加した解析サービスや、衛星画像を用いた課題解決を行うコンサルテーションサービスも合わせて提供しております。これらのサービスを充実させていくために、様々な非宇宙産業のキープレイヤーとの協業に向けた取組みを積極的に進めております。
事業の特徴
[1]顧客要望に合わせた高い衛星利用効率
提供する衛星画像は基本的に顧客の要望があった場所を撮影するタスキングを基本としており、事前にあらゆる箇所を撮影し、アーカイブとして提供するビジネスモデルと比較して死蔵されるデータを少なくすることが可能です。
[2]一度に広範囲にわたる撮影
撮影幅55㎞(直下視の場合)、撮影長最大約1,000kmの広範囲を一度に撮影することが可能です。長距離にわたる海岸線や、広域の農地や森林のモニタリングにも適しております。
[3]高頻度での撮影
同一地点を2~3日に1回撮影が可能です。顧客のニーズにより、1回/月、3回/月、6回/月の撮影リクエストを受け付けております(タスキング画像販売)。特定のエリアを定期的にモニタリングすることができるため、時間による変化をタイムリーに把握し、適切な事業判断に活用できます。
サービスラインナップ
[1]AxelGlobe タスキング(タスキング画像販売)
顧客が指定する期間・エリアを1回だけ撮影することが可能なサービスです。世界中のどこでも撮影可能な人工衛星の特徴を生かし、指定した期間内で1箇所又は複数箇所の撮影を依頼、撮像後のデータを入手することができます。また予め設定された比率を超える雲が検出された場合は無償にて再撮影を行います。これらの依頼・データのダウンロードはAxelGlobeのウェブプラットフォームへのアクセスにより実行できるほか、APIを利用し、他社ITサービスとの連携も可能です。
[2]AxelGlobe モニタリング(モニタリングサービス)
小型衛星コンステレーションを保有することから実現できたモニタリングサービスです。顧客が指定するエリアについて、顧客が指定した期間、低頻度(月1回)~高頻度(月6回程度)の中で顧客が希望する頻度を選び、契約プランに応じて衛星画像を撮影、販売するサービスです。AxelGlobe タスキングと同じく、契約からデータのダウンロードまでAxelGlobeのプラットフォーム及びAPIを通じてアクセス可能です。
[3]AxelGlobe エマージェンシー(緊急撮影サービス)
災害の発生直後など、一刻を争う情報の取得ニーズに対応するサービスです。衛星コンステレーションによる高頻度観測により世界中どこでも、そして非常に広域にわたる影響について迅速に事態の確認が可能です。システム構成上最短で撮影3時間前まで撮影リクエストの受付を行い、撮影後の優先的なデータのダウンリンク(衛星から地上に向けて電波を送信すること)を行います。2024年1月1日に発生し、石川県で最大震度7を記録した「令和6年能登半島地震」においても、国際災害チャーターへのデータ提供を行いました。
[4]AxelGlobe アーカイブ(アーカイブ画像販売)
過去に撮影した当社グループの衛星画像の中から、顧客のリクエストに応じて画像を販売するサービスです。画像の撮影タイミングを問わないことから、より安価に衛星データを活用することが可能です。
[5]AxelGlobe モザイク(モザイク画像生成)
広域の画像を撮影した場合、あるいはこれらの画像を組み合わせた広域地図を作ろうとした場合、どうしても雲の映り込みが生じます。AxelGlobeモザイクは同地点を複数回撮影し、それぞれの画像のうち、雲が写っていない箇所を組み合わせ、地図などの作成に必要な雲の写っていない衛星画像(モザイク画像)をオンデマンドで提供するサービスです。数千km2から数百万km2の範囲をカバーしており、関心ある分野・地域ごとに柔軟にモザイク画像の生成をご依頼いただけます。複数の画像を組み合わせておりますが、それぞれの画像間の境界をシームレスに補正し、また色味の補正なども行うことで、視覚的な分析に適した画像を作成します。
[6]撮影サブスクリプションサービス(シャッター権販売)
顧客が撮影場所を自由に決めることのできるサービスです。本サービス以外では撮影画像は購入を前提としておりますが、本サービスの場合、サムネイルを確認して必要な画像のみダウンロードすることができる(要追加費用)ため、費用を抑えながら関心地点の撮影ができます。また、撮影画像については一定期間、他の顧客には公開されないようにすることが可能です。
[7]解析・コンサルテーションサービス
撮影した衛星画像に特定の画像処理を加えて、高付加価値の画像を提供するサービスです。特に、植物の育成状況を分析する植生分析に強みがあります。単に衛星画像を提供するだけではなく、衛星画像の活用についてのコンサルテーションも個別に行っております。当社グループの衛星画像データに、他のデータを掛け合わせることで新たなビジネスの創造や、研究開発に利用されております。
サービス利用事例
AxelGlobeが提供するサービスを活用できる主な産業・用途として、農業、インフラモニタリング、環境、報道、安全保障、宇宙状況把握、マッピングが挙げられます。衛星は世界中のあらゆる地域を撮影できるため、これらの産業・用途に対してサービスをグローバルに提供していくことが可能です。具体的には、次に示すように活用されております。
[1]農業
衛星画像はただ目で見るだけでなく、得られている波長データごとの演算・分析を行うことにより作物の生育状況を解析することができます(当社グループの「GRUS-1」による衛星画像は赤、緑、青、近赤外、レッドエッジ、パンクロマティックと呼ばれる6つの波長帯域によるデータを取得しております)。生育の状況を「GRUS-1」などの衛星画像から確認、分析を行うことで、収穫適期の把握や水・肥料の管理が効率的にできるようになります。また、森林の育成状況に関する情報が樹種判断等の管理にも利用されております。その他季節ごとの植生の状況について分析することで、耕作放棄地を発見することや、農作物の経済指標作成等、多様な用途での活用が可能です。
[2]インフラモニタリング
広範囲を一度に撮影可能であり、かつ定期的に撮影できる衛星画像は、対象地域の工事進捗や異常を容易に確認することを可能にします。また、容易に現地に行くことのできない遠隔地も撮影対象とすることができるため、長距離にわたるパイプラインや外洋に浮かぶプラント、メガソーラーなど、大規模なインフラのモニタリングや工事進捗の把握の効率化に活用可能です。
[3]環境
人が立ち入りにくい地帯の広範囲かつ日々の変化迅速な環境モニタリングや、森林の違法伐採などの変化、河川における堆積物の変化による流域のモニタリングなどを自動検出することができるため、業務効率化に活用可能です。このほか、地上からの実測データなども組み合わせつつ、森林域における樹種ごとの地上部バイオマスの推定などを行い、森林の管理精度の向上や生物多様性保護への貢献にもつなげることができると考えております。
[4]報道
報道で衛星画像が活用される場面は近年増加しております。画像そのものではなくシャッター権を販売することで、世界中どこでも関心のある地域を自由に決め、都度指定して撮影することが可能です。また必要な画像のみ追加費用で購入できるようにすることで、従来と比較して、費用を抑えた形で衛星データを活用することができます。
近年はSNSが発達し、また、生成AIの発展等により誰でも画像を容易に作成できるようになったため、偽の画像を使ったフェイク情報の拡散リスクが叫ばれております。このような中、衛星画像はファクトを示すデータとしての価値が高まると見込んでおります。
[5]安全保障
人工衛星は世界中を領空の制約に縛られることなく観測することができるため、地上から立ち入ることができない場所でも、何が起きているかを一定程度知ることができます。こうした情報は、安全保障の観点において極めて重要な役割を果たします。
[6]宇宙状況把握(SSA:Space Situational Awareness)
軌道上に打上げられる衛星の数が近年急速に増加しており、スペースデブリ(宇宙ゴミ)への関心も高まっております。軌道上物体の衝突によってスペースデブリが急増するのを防ぐため、宇宙交通整理(STM:Space Traffic Management)についての議論も始まっておりますが、こうした議論を進めるにあたり、軌道上の状況を正確に把握することは欠かせません。地上からの望遠鏡やレーダーでの監視に加え、軌道上の衛星から他の物体を直接観測するニーズが出てきております。
次の画像はオーストラリアのHIGH EARTH ORBIT ROBOTICS PTY LTD(HEO Robotics社)の要請により2024年2月に「GRUS⁻1」が撮影した、軌道上を漂う日本のH-IIAロケット2段目の画像になります。ロケットの1段目や補助ブースター、フェアリング(衛星を保護するカバー)等は海に落下しますが、2段目は衛星を切り離して役割を終えた後も、このように数年から数十年間、軌道上に残存し続けます。
[7]マッピング
衛星による広範囲な観測は、道路・建物、土地、湾岸線などの把握や、地図の作成・更新や都市開発に活用が可能です。
異なる時期に撮影された衛星画像とAIによる画像分析から、変化量の大きなポイントを抽出し、広範囲なエリアの中から、更新などの対応が必要なポイントを効率的に特定することができます。
また、複数回撮影した同一地点の画像を用いて、雲のない衛星画像データ(モザイク画像)の組成と提供を実現しております。
【業績等】
決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益
2026/05 連結会社予想 3,646 -3,999 -3,876 -3,879
2025/05 連結実績 1,586 -2,495 -1,824 -1,950
2024/05 連結実績 2,110 -2,538 -2,509 -3,174
2023/05 連結実績 1,313 -1,735 -1,330 -1,342
決算期 種別 EPS BPS 配当
2026/05 連結会社予想 -69.81 93.29 0.00
上場時発行済株数 64,050,900株(別に潜在株式5,396,000株)
公開株数 23,000,000株(公募20,660,900株、オーバーアロットメント2,339,100株)
調達資金使途 衛星の設備資金、マーケティング費用、採用費
募集を行う地域
欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。
PER:
PBR:
配当利回り:
公募時吸い上げ資金:79億
公募時時価:221億
親受け
UntroD野村クロスオーバーインパクトファンド投資事業有限責任組合・・・取得金額800百万円に相当する株式数を上限として要請を行う予定。
JICVGIオポチュニティファンド1号投資事業有限責任組合・・・取得金額500百万円に相当する株式数を上限として要請を行う予定。
NVCC9号投資事業有限責任組合・・・取得金額200百万円に相当する株式数を上限として要請を行う予定。
リアルテック グロースファンド1号投資事業有限責任組合・・・取得金額200百万円に相当する株式数を上限として要請を行う予定。
M2投資事業組合・・・取得金額150百万円に相当する株式数を上限として要請を行う予定。
株式会社リバネス・・・取得金額50百万円に相当する株式数を上限として要請を行う予定。
アクセルスペースグループ従業員持株会・・・取得金額100百万円に相当する株式数を上限として要請を行う予定。
合計20億
【株主構成】
31VENTURES-G・ブレイン-グロースI 投資業(ファンド) 5,935,400 12.17% 90日・1.5倍
SMBC-GBグロース1号投組 投資業(ファンド) 5,013,000 10.28%
中村友哉 代表取締役など 3,450,000 7.07% 180日
永島隆 子会社の従業員 2,680,000 5.49% 180日
宮下直己 子会社の元取締役 2,260,000 4.63% 180日
SMBC信託銀行宇宙フロンティアファンド 投資業(ファンド) 2,194,400 4.50% 90日・1.5倍
(株)Space Compass 資本業務提携先 1,916,000 3.93% 180日
Kepple Liquidity1号投組 投資業(ファンド) 1,691,600 3.47% 90日・1.5倍
SBI Ventures Three(同) 投資業(ファンド) 1,494,600 3.06% 90日・1.5倍
ジャパン・コインベスト3号投組 投資業(ファンド) 1,371,600 2.81% 90日・1.5倍
JPインベストメント1号投組 投資業(ファンド) 1,371,600 2.81% 90日・1.5倍
本募集に関し、貸株人である中村友哉、当社株主である永島隆、宮下直己、株式会社Space Compass、京セラ株式会社、国立研究開発法人科学技術振興機構、合同会社J&TC Frontier、東京海上日動火災保険株式会社、株式会社ウェザーニューズ及びその他12名並びに当社新株予約権者である40名は、SMBC日興証券株式会社(以下「主幹事会社」という。)に対して、本募集に係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2026年2月8日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。
当社株主である31VENTURES-グローバル・ブレイン-グロースⅠ合同会社、株式会社SMBC信託銀行(特定運用金外信託口 宇宙フロンティアファンド)、Kepple Liquidity1号投資事業有限責任組合、SBI Ventures Three合同会社、ジャパン・コインベスト3号投資事業有限責任組合、JPインベストメント1号投資事業有限責任組合、野尻悠太、三井物産株式会社、協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合、株式会社日本政策投資銀行、SMBCベンチャーキャピタル2号投資事業有限責任組合、EEIクリーンテック投資事業有限責任組合、第一生命保険株式会社、三菱UFJキャピタル7号投資事業有限責任組合、西武しんきんキャピタル企業投資3号投資事業有限責任組合、AH-GB未来創造投資事業有限責任組合、日揮みらい投資事業有限責任組合、富国-GB投資事業有限責任組合、有限会社TomyK、SBI Ventures Two株式会社、テクノロジーベンチャーズ4号投資事業有限責任組合及びその他1名は、主幹事会社に対して、本募集に係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して90日目の2025年11月10日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等(ただし、その売却価格が募集における発行価格又は売出しにおける売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う売却等は除く。)を行わない旨を約束しております。
【代表者】
代表者名 中村 友哉(上場時45歳7カ月)/1979年生
本店所在地 東京都中央区日本橋本町
設立年 2020年
従業員数 32人 (2025/05/31現在)(平均42.4歳、年収712.7万円)、連結182人
事業内容 小型衛星の設計・製造・打ち上げ・運用サービス(AxelLiner事業)および光学衛星画像の販売および衛星画像を用いたソリューションサービスの提供(AxelGlobe事業)
URL https://www.axelspacehd.com/ja/
株主数 50人 (目論見書より)
資本金 100,000,000円 (2025/07/10現在)
【幹事団】
主幹事証券 SMBC日興 17,999,200 87.12%
引受証券 大和 1,597,100 7.73%
引受証券 SBI 456,300 2.21%
引受証券 みずほ 456,300 2.21%
引受証券 東海東京 76,000 0.37%
引受証券 極東 76,000 0.37%
【参考類似企業】今期予想PER(7/15)
186A アストロスケール - (連結予想) 時価1000億
290A Syns - (連結予想) 時価1400億
5595 QPS研究 199.6倍 (単独予想) 時価1000億
9348 ispace - (連結予想) 時価600億
【私見】
宇宙銘柄第5弾のIPOで、東大発の宇宙VCで政府系への売上が大半となることから国策銘柄であることは評価できます。宇宙銘柄は以前よりは真新しさはないものの、時価総額は1000億は維持しており、将来に向けた期待の高さを現わしています。親受けを除くと、吸収金額はそこまで大きくなく、赤字ではあるものの、時価総額は既存の宇宙銘柄と比べても小さいので上値余地は十分あるでしょう。直近IPOがあまり良くなく、夏休み時期と重なることからも静かな動きになるかもしれませんが、初値段階では人気は高いでしょう。
想定価額:345円
仮条件上限:375円
初値予想:800円
ブック申し込み度・・・強気
セカンダリー期待度・・・中立
総合評価:4
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