【スケジュール】
(1) 事業の特徴
①概要
・企業理念と行動規範
当社は、「SLCトランスポーター※1創薬の新たな可能性を追求し、グローバルベンチャーとして世界中の人々が抱えるアンメット・メディカル・ニーズに応える革新的新薬の開発を通じ、人々が健康を維持し、希望を持ち続けることに貢献します」を企業理念として掲げております。
当社は当該理念のもと、革新的な医薬品の創出に取り組み、持続的な企業成長と社会的価値の向上を目指しております。
また、当社は、企業理念の実現のために、以下の3つを行動規範として定めております。
1.グローバルベンチャーとして挑戦する情熱
2.サイエンスの追求
3.コンプライアンスの徹底遵守
・事業構造とグローバル開発体制
当社は、グローバル市場を対象とする創薬ベンチャーとして、革新的な医薬品の研究開発を推進しております。当社の事業は研究開発を中心とした創薬事業の単一セグメントで構成されており、米国FDAをはじめ主要規制当局の承認取得を目指して臨床開発を実施しております。
図1:ジェイファーマの事業モデル
国際開発を確実に進めるため、豊富な海外経験を持つ経営陣・研究開発人材を中核に体制を整備し、欧米のCROやコンサルタントに加え、最先端のアカデミアと連携しております。主な委託・共同研究先は、米国Georgetown大学(多発性硬化症)、Mayo Clinic(特定疾患領域)、Turku PET Centre(多発性硬化症)などです。
さらに、グローバルに活躍する専門家から継続的な助言を受け、開発戦略と研究活動の高度化を図り、研究開発成果の創出につなげてまいります。
当社のアドバイザーの例
アドバイザー名 | タイトル | 助言を受ける疾患領域 | 専門 |
古瀬純司, M.D., Ph.D. | 神奈川県立がんセンター総長 | 胆道がん | 臨床 |
Dr. Eric Rowinsky, M.D. | Cancer Therapeutic Development and Regulatory Consultant | 胆道がん | 臨床・薬事 |
Dr. Michael Szarek, Ph.D. | Research Professor, University of Colorado and Mount Sinai New York; Venrock | 胆道がん | 統計学・薬事 |
Dr. Jeff Huang, Ph.D. | Associate Professor, Georgetown University | 多発性硬化症 | 基礎研究 |
Dr. Pavan Bhargava, M.D. | Associate Professor Johns Hopkins Hospital | 多発性硬化症 | 臨床 |
Dr. Laura Airas, M.D., Ph.D. | Professor of Neuroimmunology, University of Turku | 多発性硬化症 | 画像診断、臨床 |
※Dr. Eric Rowinsky, M.D. と Dr. Michael Szarek, Ph.D. は、当社との直接のアドバイザリー契約ではなく、米国の薬事・開発コンサルティング会社を通じての間接的な契約
※Dr. Laura Airas, M.D., Ph.D. は当社と Turku University Hospital との間の委託研究契約に署名する Principal Investigator
こうした体制の具体的な成果として、リード化合物「ナンブランラト」は2022年4月に米国FDAよりオーファンドラッグ指定を取得しております。また、国内第2相臨床試験のデータを基に米国FDAと協議の上、2025年12月にグローバル第3相臨床試験の開始に至りました。国内臨床データに基づき米国FDAのレビューを経てグローバル第3相臨床試験へ進む事例は多くはなく、当社としては一定の進展であると評価しております。
さらに、2剤目JPH034も、2026年2月に米国FDAによるIND安全性審査が完了し、当社が申請した臨床試験計画の実施を可能とする旨の連絡を受領いたしました。これらの進捗は、当社の開発推進力及び国際対応力を示す一要素であると考えております。
・LAT1とLAT1阻害剤
溶質輸送体(Solute Carrier; SLC)トランスポーターは、生体膜を介して多様な溶質を運ぶヒト最大級の膜タンパク質群で、これまでに400種類以上が報告されております(例:Cell. 2015, 162, 478–487)。がん・自己免疫疾患※2、代謝性疾患※3、神経変性疾患※4など幅広い領域で治療標的として提案される一方、米国FDA承認薬の標的遺伝子※5に占めるSLCトランスポーターは依然5%未満※6と未開拓領域が大きく、創薬ターゲットとして検討余地が残されている領域であると当社は認識しております。
当社創業者である遠藤仁(現杏林大学名誉教授)はトランスポーター研究の第一人者として12種類の新規トランスポーターを発見し特許化しました。当社は創業者が発見したSLCトランスポーターの一つであるL型アミノ酸トランスポーター1(LAT1)※1に注力し、その活性を抑制するLAT1阻害剤を開発しております。LAT1はがん細胞や活性化免疫細胞で高発現し、腫瘍増殖や自己免疫における免疫活性化に関与することが示されております。当社化合物はがん及び自己免疫領域で新たな治療選択肢となる可能性を示しております。
LAT1は世界中の研究者から関心を集めており(図2)、当社は創業者が2019年まで保有したLAT1遺伝子特許を背景に、国際的に早期段階から臨床開発を進めております。ヒトでの有効性や安全性について良好な結果が得られており、年1回開催されるがん治療に関する世界最高峰の学会の一つである米国臨床腫瘍学会(ASCO)では複数回の口頭発表を実施しており、国内外から共同研究又は共同開発に関する問い合わせを受けております。
図2:LAT1関連論文数推移
・ジェイファーマが考える低分子創薬の未来
当社は、LAT1阻害剤の開発において、新モダリティ※7も含めた中で、低分子化合物に特化した創薬を推進しております。低分子薬剤は経口投与可能なものが多く、細胞膜を通過して細胞内標的に作用できるという特性から、100年以上にわたり製薬の中心的な役割を担ってきました。現在も多くの疾患で中核的な選択肢の一つとして高いシェアを維持しております。
承認実績にも優位性が表れており、2017年~2022年に米国FDAが承認した新規化学物質293件のうち約62%(182件)が低分子薬※8です。さらに、AIやIn Silico技術※9の進展により創薬効率は飛躍的に向上しております。実際、AI創薬スタートアップの約45%が低分子に特化※8しており、スピードとコストで他技術を凌駕する局面が増えております。これらを踏まえ、低分子創薬は引き続き創薬手法の重要な選択肢の一つであると当社は認識しております。
この環境下で当社は、低分子の強みを最大限に活かし、LAT1阻害剤のグローバル承認を目指すことで、持続的成長と医療ニーズへの対応に資することを目指してまいります。
・First-in-ClassとBest-in-Class
First-in-Classは、新しい作用機序で未充足領域に挑み医学のフロンティアを拓く薬剤を指します。他方、Best-in-Classは、既存機序の枠内で有効性・安全性・利便性を磨き上げ、臨床性能や製剤性を最適化して最高水準の価値を実現する薬剤を指します。
当社は、未知を切り拓く開拓力(First-in-Class)と、既存技術を極める実行力(Best-in-Class)の双方を兼備することで、新しい領域において大きな事業機会を創出できると考えております。実際に、LAT1阻害剤領域で早期から臨床開発を行ってきた経験を基盤に、この開拓的立場を維持しつつ、蓄積した知見でBest-in-Class創出にも取り組み、事業基盤の一段の強化を目指します。
② LAT1阻害剤の可能性
・LAT1と固形がん
LAT1はSLCトランスポータースーパーファミリー※10に属し、がん細胞の成長・増殖に不可欠な大型中性アミノ酸の取り込みを担っております※11。
図3:LAT1の構造※12
(a) LAT1-4F2hc複合体の図(4F2hcはオレンジ、LAT1は青色)
(b) LAT1トランスポーターの膜トポロジー
がん化に伴い細胞膜上のLAT1発現が亢進し、アミノ酸取り込みが増大します。実際に、胆道がん、膵臓がん、脳腫瘍など多くの固形がんで過剰発現が確認され※13、リンパ節転移、細胞増殖、血管新生、短い生存期間と相関します※14。
腫瘍微小環境※15では、がん細胞のLAT1依存的な特定アミノ酸過剰取り込みによりその細胞外アミノ酸が枯渇し、T細胞※16の活性化・分化・機能維持に必要な代謝基材が不足するとされております。結果として、T細胞の増殖・生存・エフェクター機能※17の低下によりT細胞は本来の抗腫瘍機能を維持できず、免疫回避に関与する可能性が示唆されております。
このためLAT1阻害剤は、(1) がん細胞のアミノ酸獲得を制限し増殖を直接抑制する可能性に加え、(2) 免疫細胞の抗腫瘍機能の回復を促す可能性があると考えられております※18。
図4:全生存期間(OS)※19とLAT1遺伝子発現※20
実際、LAT1阻害剤は、細胞・動物レベルで有効性が示され(例:Cancer Sci., 2016, 107, 1499–1505; Cancer Sci., 2009, 101, 173–179; Scientific Reports, 2023, 13, Article number 13943)、当社の国内第1相/第2相臨床試験では胆道がん・大腸がんで有効性が示唆される結果が得られております※21。
・LAT1と自己免疫疾患
これまでの多くの研究から、LAT1は一部の自己免疫疾患の新規治療標的となり得ることが示されております。LAT1はmTOR経路※22を介して免疫細胞の増殖や炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)の放出を制御しており、LAT1の遺伝学的抑制やLAT1阻害剤の投与により、過剰活性化した免疫細胞からのサイトカイン産生が低減することが示されております(例:J Immunol., 2013, 191, 4080-4085; EMBO Mol Med., 2025, 17, 1631–1665)。
この知見に基づき、LAT1機能の抑制は過剰免疫反応を鎮める新たな治療アプローチとなる可能性があります※23。特に、多発性硬化症のような神経に炎症が生じる自己免疫疾患では、LAT1抑制により炎症や酸化ストレス起因の神経損傷を抑える効果が期待され、神経炎症性疾患に対する一つのアプローチとなる可能性があると考えられております※24。
・LAT1と希少疾患
LAT1は、希少疾患に対する新たな治療候補としても複数の研究で有望視されております。特定のアミノ酸関連希少疾患は、LAT1を含むSLCファミリーのアミノ酸トランスポーターの異常によって発症し、腸管・腎臓・脳・肝臓におけるアミノ酸輸送機能の障害が主な病態要因となっております※25。
米国FDAでは、Rare Disease Innovation Hubの設立、条件付き承認制度の検討、さらにはOrphan Cures Actによるインセンティブ拡充などを通じて、希少疾患治療薬の開発を後押しする施策が講じられております※26。これらの施策によって希少疾患領域での新規治療薬の研究開発は加速しており、LAT1を標的とした希少疾患を対象とする創薬も、こうした規制当局の支援を背景にアンメット・メディカル・ニーズに応える治療薬として開発を進められる可能性を有しております。
(2) 開発パイプライン
①パイプラインの概要
当社が現在臨床開発を進めている化合物は、ナンブランラト(JPH203)とJPH034の2剤です。
図5:ナンブランラトとJPH034
ナンブランラトは、LAT1を標的として見出した新規の低分子化合物であり、LAT1内部のアミノ酸ポケットに競合的に結合することでその活性を阻害します。正常細胞に発現するLAT2には作用せず、LAT1を選択的に阻害します※27。
図6:ナンブランラトのLAT1選択的な阻害活性※27
図7:クライオ電子顕微鏡(cryo-EM)構造解析※28
ナンブランラト(JPH203)がLAT1に競合的に結合する様子
また、特有の組織分布※29を示すことから、現在は胆道がん(2次療法※30及び1次療法)ならびに大腸がんを対象とした開発を進めております。さらに、将来的な適応拡大を見据え、希少疾患を対象とする非臨床研究にも着手しております。
図8:サルにおけるナンブランラトの薬物濃度※31
血液中に比べ胆汁中に非常に高い濃度で分布する
(Cmax※32、AUC※33)
一方、JPH034は高い脳内移行性を有する点が特長であり、中枢神経系の自己免疫疾患である再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症やグリオーマを対象疾患とした開発を推進しております。
加えて、当社はBest-in-Classを目指す次世代LAT1阻害剤の創薬研究にも取り組んでおり、すでに候補化合物を特定しております。これにより、ナンブランラト及びJPH034に続く新たな成長ドライバーを確立し、持続的な事業拡大を目指して取り組んでまいります。
図9:当社の開発パイプライン
②臨床開発が進む主要開発パイプライン(胆道がん、再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症)
②-a. 胆道がん(ナンブランラト)
・胆道がんの市場規模と5年生存率
胆道がんは、日本及び欧州5か国(イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン)でそれぞれ年間約2万人、米国で年間約1.4万人が新たに診断される疾患であります※34。早期には自覚症状が乏しいため、多くの患者は進行期に至ってから診断されるのが現状です。
進行期の胆道がんは治療選択肢が限られており、5年生存率は25%未満と、膵臓がんに次いで生存率が低いがん種です※35。こうした背景から、胆道がんはアンメット・メディカル・ニーズが非常に高い疾患であり、新たな治療法の開発が求められています。
・胆道がんとLAT1
胆道がんにおいて、LAT1の発現量を基準に患者群を比較したところ、LAT1高発現群では生存期間が有意に短いことが確認されました※36。
図10:胆道がんにおける全生存期間(OS)比較(LAT1高発現 vs. LAT1低発現)※36
この結果は、LAT1の高発現が胆道がん患者における予後を推測する指標となり得ることを示すとともに、LAT1が新たな分子標的治療の候補として検討されている背景の一つとなっています※37。
・胆道がんの現在の治療環境
胆道がんは、日本では肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆嚢がん、十二指腸乳頭部がんの4つに分類されますが、欧米では十二指腸乳頭部がんを除く3つが胆道がんとして扱われております。1次療法では化学療法に加え、抗PD-1抗体薬や抗PD-L1抗体薬※38が全サブタイプにおいて用いられており、現在の標準療法は化学療法と抗PD-1/PD-L1抗体薬の併用療法です。しかしながら、この治療を受けた患者のうち24か月後に生存しているのは25%以下※39にとどまっており、依然として大きなアンメット・メディカル・ニーズが存在しております※40。特に、治療開始から25週以降は抗PD-L1抗体単剤、あるいは抗PD-1抗体+ゲムシタビンによる維持療法へ移行しますが、その間の病勢進行が課題となっております。
2次療法では分子標的薬※41が用いられ、米国では3種類の承認薬があります。しかし、これらの薬剤が有効な遺伝子変異(IDH1変異、FGFR2陽性、HER2陽性)を持つのは2次療法に進む患者の約30%に限られ(図11)※42、残り約70%の患者には有効な承認薬が存在しないのが現状です(欧州・米国での状況であり、日本では2次療法で使用可能な承認薬が存在します)。
図11:胆道がんの治療選択肢
(当社作成。なお、ナンブランラトに関する記載は、承認取得又は販売開始を前提とするものではありません。)
ナンブランラトは、抗PD-1/PD-L1抗体との併用効果が動物モデルにおいて確認されており※43、1次療法において25週目以降の維持療法にアドオンすることで、標準療法と競合しない形で治療選択肢の拡充に資する可能性があります。
さらに2次療法においては、これまでの臨床試験の結果から、既存の承認薬が存在しない約70%の患者に対し、有効な治療選択肢の一つとなる可能性が示唆されております。安全性にも優れていることから、患者に最後まで寄り添える治療薬となる可能性を秘めております。
・ナンブランラトの臨床試験結果
当社は、ナンブランラトの国内第2相臨床試験を実施しました。本試験は、胆道がん2次療法以降の患者211名をスクリーニングし、105名を無作為に割り付けた大規模な二重盲検無作為化プラセボ比較試験であり、2022年に終了しました(ナンブランラト群70名(うち1名は不適格な疾患が発見されたため解析から除外され、解析対象となったのは69名)、プラセボ群35名※44が解析対象)。当試験の結果、ナンブランラトの投与により、統計学的有意差をもって腫瘍が大きくなるまでの期間を延長し、また特定の患者群において生存期間についても良好な改善効果があることが確認されました。
図12:国内第2相臨床試験のデザイン
2023年1月に開催されたASCO GI 2023(米国臨床腫瘍学会・消化器がんシンポジウム)において、ナンブランラトが前治療歴のある進行性・難治性胆道がん患者に対し、無増悪生存期間(PFS)※45でプラセボ群に対して統計学的有意差を示し、主要評価項目を達成した結果が口頭発表されました(ハザード比※46=0.56、95%信頼区間:0.34–0.90、p=0.02)※47。薬物有害反応(副作用)の発生率はナンブランラト群41.4%、プラセボ群57.1%であり、グレード3以上の有害事象はナンブランラト群30.0%、プラセボ群22.9%でした。いずれの群においても投与中止・減量や死亡に至る事象は認められず、安全性が確認されました。特にグレード3以上の有害事象率は、胆道がん2次療法で使用されることのあるFOLFOX(69%)※48や1次療法の標準治療であるデュルバルマブ+シスプラチン/ゲムシタビン(76%)※49と比べても低く、ナンブランラトの良好な安全性プロファイルが示されました。この特性により、長期的治療が可能であり、現在は緩和ケアを選択している患者層への市場拡大の可能性も期待されます。
図13:胆道がん治療薬別有害事象比較※50
さらに、2023年6月のASCO Annual Meeting(米国臨床腫瘍学会年次総会)のClinical Science Symposiumでは、同試験のサブグループ解析が口頭発表されました。発表では、LAT1高発現群(ハザード比=0.44、95%信頼区間:0.23-0.85、p=0.01)、及び肝外胆管がん・胆嚢がん群(ハザード比=0.22、95%信頼区間: 0.10-0.49、p<0.001)において、統計的にさらに有意差を示したことが説明されました※51。
ASCOはがん治療において世界最高峰の学会の一つとされており、当学会における口頭発表は採択率が数%に限られることから、2023年に2回に渡りナンブランラトの臨床試験結果の口頭発表の機会が得られたことは、当社のデータが国際的に高く評価されていることを示しております。加えて、この試験結果は米国癌学会発行の学術誌「Clinical Cancer Research」(2024年9月15日号)に掲載されました。
直近では、ESMO Congress 2025において、全生存期間(OS)のサブグループ解析結果がポスター発表されました※52。本発表のサブグループ解析では、胆道がんのサブタイプのうち十二指腸乳頭部がん(欧米においては胆道がんに含まれない)を除く3つのサブタイプを対象とした解析においてハザード比=0.76(95%信頼区間:0.46–1.26)を示しました。加えて、2次療法患者群のみ(3次療法以降の患者群を除外)に限定した解析ではハザード比=0.55(95%信頼区間:0.09–3.54)、手術未実施患者群ではハザード比=0.53(95%信頼区間:0.28–1.01)と、良好なOS改善効果が確認されました。
図14:ナンブランラト第2相臨床試験 OSハザード比のサブグループ解析※52
*IHC: 肝内胆管がん、EHC: 肝外胆管がん、GBC: 胆嚢がん
# 95%信頼区間: 真の値がその区間内に含まれる確率が95%であると推定される範囲
さらに、同ポスター発表では、同試験のデータを用いた曝露-反応解析も紹介されました※52。これは、薬剤の体内曝露量と有効性の関係を評価する解析であり、その結果、累積曝露量(Accumulated AUC)とOSの間に正の相関が認められました。また、累積曝露量(Accumulated AUC)が大きい程、腫瘍縮小の傾向が見られました。
図15:ナンブランラトの曝露-反応解析※52
・進行中の臨床試験: 米国FDAレビューの下でグローバル第3相臨床試験
当社は現在、米国FDAのレビュー下でグローバル第3相臨床試験を進めております。本試験には、胆道がん患者にとって「灯」となることを願い、「Beacon-BTC」と名称を付しております。
図16:グローバル第3相臨床試験(Beacon-BTC)の患者向けイメージ
本試験は、第2相臨床試験で得られた成果を踏まえ、主要評価項目を全生存期間(OS)とし、より高い効果を期待すべく対象患者の厳格なエンリッチメント※53を行います。具体的には、対象とする胆道がんサブタイプを欧米における胆道がんの定義に合わせる(十二指腸乳頭部がんを除外)とともに治療ラインを2次療法に限定し、3次療法以降の患者は対象外としております。また、Treatment Beyond Progression(TBP)を適用し、病勢進行後も治療を継続できる設計とすることで、より長期間の投与を可能としております。さらに米国では外科手術が適用される患者が少なく※54、対象患者の多くが、第2相臨床試験で効果が高かった手術未実施例となることが想定されます。第2相臨床試験の解析結果に基づくこれらの戦略により、試験の成功確率を高められると考えております。
Beacon-BTC試験は2つのパートで構成されます。
・パート Aでは、用法・用量設定を目的に、用法用量の異なる3種類のナンブランラト投与群と
最善支持療法群(Physician’s Best Choice(PBC)群※55)の4群(各30例)を比較。
・パート Bでは、パート Aで選択された用法用量のナンブランラト群と最善支持療法群の2群(各180例)を比較。
図17:グローバル第3相臨床試験(Beacon-BTC)のデザイン
当臨床試験開始に向けて当社は、米国FDAとの緊密な対話を重ねてまいりました。2022年4月にはオーファンドラッグ指定を取得し、2024年9月にはIND申請が承認されました。さらに2025年5月にはCMC(化学・製造・品質管理)について肯定的な評価を受け、商業製造スケールでの品質基準を満たしていることを当社として確認しております。
これらの進展を経て、当社は、胆道がん治療における新たな選択肢の確立を目指して、2025年12月にBeacon-BTC試験を開始致しました。なお、試験の具体的条件及び実施体制等は、規制当局との協議や治験実施上の要請等により変更となる可能性があります。
・準備中の臨床試験:ナンブランラトと免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の併用療法
切除不能・再発胆道がんの1次治療では、ゲムシタビン+シスプラチンに免疫チェックポイント阻害剤(ICI:デュルバルマブまたはペムブロリズマブ)を併用する治療法が標準治療とされております。この治療では、24週間経過後にICI単独(ペムブロリズマブの場合はICI+ゲムシタビン)による維持療法へ移行しますが、維持療法中の病勢進行が課題となっております。
当社はこの課題に対し、ICI維持療法にナンブランラトを追加する新たな治療アプローチの開発を推進しております。本アプローチは、腫瘍微小環境における免疫抑制を解除し、ICIの効果を増強することを目的としております。前臨床モデルにおいては、ナンブランラト単剤で腫瘍免疫環境を改善する作用が確認され、さらにICIとの併用によってICI単独では得られない抗腫瘍効果が示されております※56。
胆道がんは依然として治療選択肢が限られている領域であり、ナンブランラトを1次療法に適応拡大することにより、より多くの胆道がん患者への治療貢献が可能となります。この併用療法は、プラチナ製剤※57ベースの化学療法に伴う強い副作用がないため長期投与が可能であると考えられ、既存の標準療法とも競合しないことから、本併用療法は、将来的な適応拡大の選択肢の一つとなり得る可能性があると当社は考えております。将来的には、胆道がんにとどまらず、他のICI抵抗性がん種への適応拡大も視野に入れております。
今後の計画として、今年度以降に胆道がん1次療法を対象としたICI+ナンブランラト併用の医師主導試験が開始される見込みです。本試験では、デュルバルマブ+シスプラチン/ゲムシタビンの併用療法を受け、デュルバルマブ単剤維持療法へ移行する患者を対象に、デュルバルマブ+ナンブランラト併用療法へ切り替えることで、その有効性と安全性を検証します。
図18:ICI維持療法におけるデュルバルマブとナンブランラトの併用
②-b. 再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症(JPH034)
・多発性硬化症とは
多発性硬化症は、若年成人に最も多く見られる慢性の炎症性脱髄性神経疾患であり、厚生労働省の指定難病に含まれております。診断時の平均年齢は32歳と比較的若く※58、全世界で毎年6万人以上が新たに診断され※59、現在は約290万人の患者が存在しております※60。
本疾患では、免疫反応による炎症により神経細胞の軸索※61を覆うミエリン※62が損傷(脱髄)※63し、その結果、神経信号の伝達が遅延または途絶します。そのため、感覚障害、視覚障害、運動麻痺など多様な神経症状が現れ、患者は四肢の不自由を抱え、車椅子での生活を余儀なくされることも少なくありません。
患者の約85%は再発寛解型※58で発症し、再発期と寛解期を繰り返しながら進行し、10~15年かけて2次性進行型へ移行します※64。MRI所見(MRIで測定される炎症性病変)は疾患の初期から見られ、MRI所見が生じる際は血液脳関門※65の機能破綻により末梢の免疫細胞(T細胞・B細胞※66)が脳内へ侵入し、脱髄と不可逆的な組織損傷を引き起こします※67※64。
一方で、2次性進行型に移行すると、MRI所見の頻度は減少し、MRI所見がない間は末梢免疫細胞の浸潤は見られなくなるものの、脳内では「くすぶり炎症(smoldering inflammation)」が持続し、病状が進行します※68。この段階では、末梢のT細胞やB細胞を標的とする既存薬の効果は乏しく※69、再発を伴わない2次性進行型に対する治療選択肢は依然として限られているのが現状です。
図19:多発性硬化症の臨床経過
・くすぶり炎症とミクログリアとLAT1
2次性進行型で中心的な病態とされる「くすぶり炎症(smoldering inflammation)」は、脳内に常在する免疫細胞であるミクログリア※70が引き起こすと考えられております※68。そのため、この病態に対処するには、従来のように末梢免疫細胞を標的とするのではなく、薬剤が脳内に移行してミクログリアの活性を直接抑制する治療アプローチが求められていると当社は認識しております。
近年、このアプローチに基づき開発された代表例が、中枢移行性の高いBTK阻害剤※71トレブルチニブです。開発元であるサノフィ社は、再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症を対象とする第3相臨床試験を終了しNDA(新薬承認申請)を米国FDAに提出したものの、Complete Response Letter(CRL)を受領した旨を公表しており、現在引き続きFDAと協議し前進の道筋を検討する方針を示しています※72。
一方で、ミクログリアの活性化にはLAT1が必須アミノ酸輸送を介して関与することが知られております※73。この知見を踏まえると、中枢移行性を有するLAT1阻害剤によりミクログリアを標的とし、その活性を抑制することで、2次性進行型多発性硬化症に対する新たな治療法となる可能性が示唆されます。
図20:既存薬 vs. 脳移行型新薬候補の比較
(当社作成。なお、脳移行型新薬候補に関する記載は前臨床段階を含む研究開発中の情報であり、
将来の臨床成績又は承認取得を示唆するものではありません。)
・中枢移行性LAT1阻害剤:JPH034
当社が開発中のJPH034は、高い脳内移行性を有するLAT1阻害剤です。本剤は脳内へ移行し、ミクログリアを標的とすることで、既存薬が限定的である「再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症」に対する新たな治療アプローチとなり得る可能性を持っております※24※74。
研究開発パートナーである米国Georgetown大学が実施したマウスモデル試験では、JPH034が脳内病変部のミクログリアを再プログラムし、再生促進型の状態へ導くことにより、中枢神経系の局所炎症を抑制することが確認されました※75。この作用機序により、既存治療薬とは異なるアプローチの治療戦略を検討しております。
さらに、JPH034は良好な経口バイオアベイラビリティ※76とPKプロファイル※77を有しており、長期治療を必要とする多発性硬化症患者にとって、1日1回の経口投与が可能となる潜在的な利便性を有すると当社は考えております。
・開発状況と準備中の臨床試験
当社が開発を進めるJPH034(再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症を対象)は、競争が極めて厳しく評価水準も高いことで知られる米国 National Multiple Sclerosis Society(NMSS)のFast Forward Research Grantに選出され、60万米ドルの補助金交付を受けております。さらに、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の創薬ベンチャーエコシステムにも採択され、IPOまで利用可能な最大20億円規模の補助金を確保しております。
知財面では、当社は米国Georgetown大学が保有するLAT1阻害剤の中枢性炎症性疾患(多発性硬化症を含む)に関する用途特許の独占的通常実施権をグローバルに取得し、開発・商業化における権利保護の強化を目指しております。
研究開発面では、米国Georgetown大学によるマウスモデル試験により、LAT1阻害剤による臨床スコアの改善、免疫調整・神経保護作用、視覚誘発電位(VEP)遅延の改善などを確認しました※24。また、Turku PET Centreとの委託臨床研究を進めており、中枢神経系の炎症要因の一つであるミクログリアの活性化とLAT1の発現が脱髄病巣レベルで共存することを確認しました※24。
また、AMED補助金を活用して第1相試験用治験薬の製造完了後、2026年2月に米国FDAによるIND安全性審査が完了し、当社が申請した臨床試験計画の実施を可能とする旨の連絡を受領いたしました。本第1相臨床試験につきましては、2025年度第4四半期以降の試験開始を予定しております。
・市場規模
2次性進行型多発性硬化症の市場規模は、2024年で約56億米ドル、2033年には約98億米ドルに達すると推計されております※78。その成長要因としては、再発寛解型からの移行による患者数の増加、診断技術の進歩による診断率向上、さらに効果の高い新薬の上市が挙げられます※78。
このように大きな市場規模を背景に、多発性硬化症領域ではグローバル大手製薬企業が積極的にライセンス契約を締結してきた実績があります。例えば、2023年4月にContineum Therapeutics社がJanssen Pharmaceutica社に導出したPIPE-307は、第1相臨床試験を完了し第2相試験開始を控えた段階の化合物でありながら、契約一時金5,000万米ドル、マイルストン収入最大10億米ドル、ロイヤルティ最大10%台後半という大規模な契約条件となっております※79。先に述べたトレブルチニブと同様にPIPE-307も高い中枢移行性を有しており、これらの事例は、当社が開発を進める中枢移行型LAT1阻害剤JPH034についても、適切な開発進展を経ることで将来的なライセンス交渉の参考となると考えられます。
図21:多発性硬化症(MS)治療薬のライセンス契約の事例※80
③その他の開発パイプライン
・その他の臨床開発
当社は現在、ナンブランラトの胆道がん2次療法(単剤療法)及び1次療法(ICIとの併用療法)、JPH034の再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症を重点的に開発しております。これに加えて、KRAS変異大腸がん※81(ナンブランラト)及びグリオーマ(JPH034)についても開発を進めてまいります。
ナンブランラトは、非臨床及び臨床データに基づき、大腸がんに対する適応拡大の可能性が示されております。特に、転移性大腸がんの約40%を占める※82KRAS変異型では既存薬の効果が限定的である※83一方、LAT1の高発現が患者予後不良と強く関連する臨床データが報告されております※84。また、ナンブランラトがKRAS変異大腸がん細胞株において有意な増殖抑制効果を示す非臨床試験結果も公表されております※85。さらに、複数の固形がんを対象とした第1相臨床試験では、大腸がん患者6例中2例で「安定(SD)」が確認されており※86、今後の臨床開発に向け、一定の示唆が得られております。このように当社としてもKRAS変異大腸がんに対するナンブランラトの開発可能性を見出していたところ、米国の大学より共同研究開発の提案を受け、現在は同大学にて医師主導臨床試験の開始に向けた補助金申請をしております。
一方、グリオーマについては、米国の大規模研究機関からの提案を受け、グリオーマにおけるLAT1関与の複数の報告※87及びJPH034の高い脳内移行性を根拠に開発に着手しました。現在は、当該研究機関に対して当社開発品を提供し、前臨床段階での検討が進行中です。
大腸がんとグリオーマの市場規模※88
大腸がん全体 | 199.5億米ドル(2034年予測) |
グリオーマ全体 | 75.1億米ドル(2031年予測) |
当社は、胆道がん2次・1次療法及び再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症を最優先とし、それ以外の臨床開発については資金状況やコストを踏まえ、適切なリスク管理のもとで段階的に推進してまいります。
・希少疾患を対象とする非臨床試験
一部のアミノ酸代謝性希少疾患は、LAT1を含むSLCファミリーのアミノ酸トランスポーター異常によって発症し、腸管・腎臓・肝臓におけるアミノ酸輸送機能の障害が主な病態要因とされております※25。
当社は、ナンブランラトが肝臓・胆管・大腸などに高濃度で分布する特有の組織分布に着目し、ある希少疾患の動物モデルにおいて有効性を示唆する結果を得ました※89。この成果を踏まえ、当該適応症に関する用途特許を申請中であり、ナンブランラトの適応拡大に向けた新たな可能性を追求しております。
・Best-in-Class の次世代LAT1阻害剤の創薬研究
当社は、高度な専門知識と経験を備えた人材を採用することで、創薬研究チームを強化し、Best-in-Classを目指す次世代LAT1阻害剤の研究開発を本格的に進めております。
既に、ナンブランラトと同等程度又はそれ以上の特性を有する可能性のある候補化合物を特定しており、現在はその構造最適化を進めるとともに、非臨床評価を進めております。当社はこの取り組みを通じて、次世代化合物の創出を推進しております。
(3) 事業系統図
<製薬企業等から受領する対価の体系>
契約一時金 | ライセンス契約の締結時に、契約に基づき当社が収入として得るもの。 |
マイルストン収入 | 開発又は販売に関して予め定義するマイルストンを達成した際に、契約で定められた金額を当社が収入として得るもの。 |
ロイヤルティ収入 | 当社がライセンスした製品について、当該製品が承認を受け販売が開始された後、その売上高に対して契約で定める一定の割合を乗じて算出される金額を収入として得るもの。 |
【業績等】
PBR:
配当利回り:
公募時吸い上げ資金:33.5億
公募時時価:160億
【株主構成】
本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、当社株主(新株予約権者含む。)である大原薬品工業株式会社、スペラファーマ株式会社、藤本裕、遠藤仁、吉武益広、株式会社トランスポーター、株式会社エスアールディホールディングス、株式会社エスアールディ、上嶋康秀、森俊介、神戸天然物化学株式会社、KISCO株式会社、関口和生、及びその他当社株主又は当社新株予約権者15名は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)より起算して6ヶ月を経過する2026年9月24日までの期間(以下「ロックアップ期間①」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等は行わない旨合意しております。
また、売出人かつ貸株人であるEight Roads Ventures Japan II L.P.、売出人であるF-Prime Capital Partners Life Sciences Fund VI LP、貸株人であるJICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合、並びに当社株主であるNewton Biocapital I Pricaf privée SA、MSIVCグローバルアカデミックシーズ投資事業有限責任組合、OUVC1号投資事業有限責任組合、Kepple Liquidity1号投資事業有限責任組合、SIIFIC ウエルネス投資事業有限責任組合、QR2号ファンド投資事業有限責任組合、ライフサイエンス3号投資事業有限責任組合、QB第一号投資事業有限責任組合、SBI新生企業投資株式会社、岩手新事業創造ファンド1号投資事業有限責任組合、西武しんきんキャピタル企業投資3号投資事業有限責任組合、KSP4号投資事業有限責任組合、響きパートナーズ株式会社、岩手新事業創造ファンド2号投資事業有限責任組合、大樹生命保険株式会社、みずほ成長支援第3号投資事業有限責任組合及びその他当社株主3名は、主幹事会社に対して、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2026年6月22日までの期間(以下「ロックアップ期間②」といい、ロックアップ期間①と合わせて以下、「ロックアップ期間」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びその売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等を除く。)を行わない旨合意しております。
【代表者】
【幹事団】
仮条件上限:900円
セカンダリー期待度・・・やや弱気
総合評価:2.5
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