2021年2月3日水曜日

IPO分析(WACUL)

 【事業内容】

・事業の概要

 デジタルを活用したビジネス変革を推進するデジタルトランスフォーメーション(以下、DX、)に取り組もうと考える企業が増える中、多くの企業はそもそも何から手を付ければ良いかわからない、データがあっても活用方法がわからない等の課題感を持っており、主に知見不足故にDXを推進出来ていないと当社は認識しております。

 当社は世界に偏在する知を創集し、その集合知を誰にでも使える道具へと変え、すべての企業や人に開放することを目指します。当社の主力サービスである「AI analyst」(以下、「AIアナリスト」)はWebサイトに関する知見、各社に閉じていたWebサイトのデータを集め、誰にでもデジタルマーケティングにおける分析と改善が行える道具(ツール)に変えSaaSとして提供しています。

 当社はデジタルマーケティングを中心に、あらゆるビジネスのデータを優れたテクノロジーによって、整理・分析だけでなく課題特定・解決まで行うことで、ビジネスパーソンの生産性を高め、クリエイティビティの最大化を支援しております。

 現在、当社は既存のオペレーションのデジタルによる置き換えにとどまらない「構造的なデジタル変革」を顧客の経済活動において実現すべく、成長著しいDX市場において、(1) データ分析でデジタルマーケティングのPDCAを支援するサービス「AIアナリスト」を中心に、マーケティングのDXを推進するワンストップ・サービス「AIアナリスト・シリーズ」を提供するプロダクト事業と、(2) DX実現のための戦略立案や組織・オペレーション設計等のコンサルティングを行う「DXコンサルティング」、そして企業・学術機関と共にPoC等を行う社内研究所「WACUL テクノロジー&マーケティングラボ」などを持つインキュベーション事業により、主に企業の生産性向上と収益向上に資する課題解決ソリューションの提供を行っています。


1.プロダクト事業

 当社が「AIアナリスト」をリリースする2015年まで属人的かつ高コストに提供してきた“データ分析にもとづくデジタルビジネスの改善活動”を、蓄積された知見をもとにテクノロジーを活用し、自動化したツールである「AIアナリスト・シリーズ」として顧客に提供しています。

 多くの企業は、デジタルを活用してビジネスを変革するDXの重要性を認識しながらも、そもそも何から手をつければいいか分からない、現状を正しく認識できていない、データがあっても分析や示唆の抽出ができない、分析の工数がとれないといった様々な課題を持っていると当社は認識しております。そうした企業は、DXによって大きく事業を成長させられるポテンシャルを持っていても、改善計画の策定・管理(Plan)、改善施策の実行(Do)から施策の成果測定(Check)そして次の改善方針の見直し(Act)というPDCAサイクルを実行できず、そのポテンシャルを発揮することができていないと考えられます。

 「AIアナリスト・シリーズ」は、これまで高いコストをかけてそうしたPDCA活動を外部に委託してきた企業や、内部で膨大な工数をかけていた企業はもちろん、そもそも費用面や知見不足からそういった改善活動を行えなかった企業まで、“データ分析にもとづくデジタルビジネスの改善活動”を求めるすべての企業にむけて提供されています。

 現在、プロダクト事業ではレポーティング、データ分析および改善方針の提案と改善幅予測、また実行された施策の成果検証を行う「AIアナリスト」と、「AIアナリスト」の改善方針に従い、実行を支援するサービスラインナップとして、SEOコンテンツ制作などコンテンツマーケティング支援を行う「AIアナリストSEO」、Webサイトにおけるお問い合わせや購買などのゴールまでを考慮したWeb広告の運用を代行する「AIアナリストAD」などのソリューションを展開しており、「AIアナリスト・シリーズ」と総称しております。

 プロダクト事業のソリューションは、一定期間の利用を前提としたリカーリングレベニュー方式(継続収益方式)を採用しています。そのため、解約されないかぎり継続的に収益をあげることができます。


1-A.AIアナリスト

 「AIアナリスト」は顧客がGoogleアナリティクスから得られる自社Webサイトのアクセス解析データ等をクラウド上で連携するだけでレポートの作成、データ分析結果からの改善提案、実施した改善施策の記録と成果の測定などが可能となる、デジタルマーケティングのPDCAをサポートするプラットフォームです。


 昨今、多くの企業が顧客獲得のために自社Webサイトを保有しています。また、GoogleアナリティクスなどのテクノロジーツールをWebサイトに導入し、自社のWebサイト上における消費者のページ遷移等の行動データを収集し分析することで、Webサイト訪問者の行動の理解とそれに沿ったWebサイトの最適化をおこなうデジタルマーケティング活動を行っています。


 このような中、「AIアナリスト」は、AIが行動データを分析し、レポートとして現状を「見える化」するだけでなく、そこから改善すべき点を示して「分かる化」することに特徴があります。この改善提案機能がある点が、サービスのクオリティ面での大きな差別化につながっていると考えています。


 また、「AIアナリスト」はフリーミアムモデルを採用しており、当社はユーザーに対し無料で「AIアナリスト」の基本機能を開放するかわりに、そのユーザーが保有するWebサイトの行動データを獲得しています。2020年12月末時点で3万4千サイト以上のデータを保有しているため、このビッグデータを元に、類似サイト群からなるベンチマーキング(*9、類似サイト比較)を提供することが可能です。顧客はベンチマークとの比較を通じて、自社の強みと弱みを認識し、成長戦略の策定に活かすことができます。


 一方、コスト面では、「AIアナリスト」はSaaSとして、シングルソース・マルチテナント型(*10)を採用することにより、すべての顧客が共通のソースコードで作られた同一のアプリケーションを使用しています。そのため、当社は常にひとつのソースコードを通じて、機能の強化・拡張を行っていくことができます。開発者はひとつのソースの開発に集中できるので比較的少ないリソース(コスト)で開発することが可能です。そのため、顧客に対しても比較的低価格でのサービス提供が可能となっております。


 さらに、当社は継続的に機能アップデートが実施される体制を構築しており、毎週何かしらの修正がプロダクトに施されるなど、常に最新機能を顧客に提供しております。そのため、顧客に対する提供価値の陳腐化を防ぎ、当社の優位性を維持することが可能です。


 よって、当社は比較的高いコストパフォーマンスで、顧客に対する提供価値の向上に持続的に取り組むことが可能です。


1-B.AIアナリストSEO

 「AIアナリストSEO」は、「AIアナリスト」の改善提案を考慮するなど、一部「AIアナリスト」の持つ機能を活用しながら“コンバージョン(*11)=購買・商談機会の獲得”を意識したコンテンツをサイト運営者に代わって制作する、コンテンツマーケティング支援サービスです。

 近年、多くの企業が自社で保有するWebサイト(オウンドメディア)などを活用し、コンテンツマーケティングに力を入れています。コンテンツマーケティングとは、見込み客の疑問や関心に沿ったコンテンツを提供し、それによって見込み客を引き寄せ、最終的に自社製品やサービスの購買へと導くマーケティング手法です。

 このコンテンツマーケティングにおいて重要となるものが、見込み顧客を誘引する「キーワード選定」、そのコンテンツが狙ったキーワードの検索結果における「コンテンツの検索順位」そして「Webサイト内における設置場所の決定」です。

 当社は「AIアナリスト」を利用する顧客に対して、その改善に日々向き合っているため、コンテンツマーケティングを実施すべきかどうか、実施する際にはどのような形で行うべきかを把握することができ、顧客のシチュエーションに合わせた提案を行っております。


1-C.AIアナリストAD

 Webサイト内のデータを保有・分析できる「AIアナリスト」を提供する当社ならではの強みを活かし、「AIアナリスト」と「AIアナリストAD」を共に導入いただくことで“訪問数を増やすWeb広告”ではなく“コンバージョンを増やすための、Web広告とWebサイトの一体運用”をサイト運営者に代わって行い、広告効率をより高めます。具体的には、Web広告を高いコストパフォーマンスで運用するには、どういった広告からWebサイト内のどのコンテンツに誘導すればよいかまでを踏まえて運用します。こうした取り組みにより、顧客はコンバージョンにつながらない広告費の削減や、広告をクリックした人々がお問い合わせや購入に至る率を向上することができます。


 2.インキュベーション事業

 最先端のデータ分析に基づいたデジタルマーケティングを推進する企業に対し、コンサルティングのサービスを提供しています。さらにアカデミアおよびビジネスの先端をいく人材を顧問とする社内研究所である「WACUL テクノロジー&マーケティングラボ」を2019年2月に社内研究所として立ち上げ、AIやマーケティングを専門とする大学教授などを顧問に迎えるなど、先端テクノロジーの導入と知見の磨き上げに力を入れています。また、そうした活動で得られた知見をソリューションに落とし込む形で「AIアナリスト・シリーズ」などの新規ソリューションの立ち上げおよび「AIアナリスト・シリーズ」の機能拡張に活かしてきております。本事業は、知見の獲得および各種ソリューションの開発・機能強化を目的としているため、2020年2月期において全体に占める売上高の割合は10%未満となっております。

 これまでにも、AIについては2015年に国立大学法人東京大学松尾研究室とのコラボレーションリサーチを実施し、当社としてサイト分析システムで特許を取得しております(特許第6056094号)。また、深層学習など、新たな技術を活用した機能・ソリューション開発も行っており、現在特許を出願中です(特開2018-136845)。さらに、顧客とともに深層学習を用いたアプリ内における行動分析や、顧客の行動分析に基づくWebと店舗の最適なつなぎあわせなどのプロジェクトを実施してきております。

 当社のDXコンサルティングでは、継続的に顧客から「AIアナリスト」を通じて共有される最新のPDCAデータから、過去に成果が出ることの多かった事例を抽象化した“勝ちパターン”を見出し、最も効果の見込める施策を短時間・少工数で提供することが可能です。また、当社はコンサルティング業に源流を持つため、社内のコンサルティングに関する知見の蓄積を活かして、事業全体の再構築や、KPI設計、組織設計、オペレーション構築等のコンサルティングサービスを提供しています。


・当社の事業の特徴

①企業規模や業種・業態によらず、幅広く提供可能なサービスラインナップ

 当社のソリューションは「AIアナリスト」はもちろん「AIアナリスト・シリーズ」すべてが、大企業から中小企業まで企業規模を問わず提供されています。また、ECサイトなどWeb上で購買の完結するビジネスだけでなく、Webで問い合わせをうけた後に営業人員が商談を行い契約まで導くビジネスなど、顧客の業種や業態を問わず提供されております。


②「AIアナリスト」を司令塔とした付帯サービスのクロスセル

 当社は「AIアナリスト」による改善提案だけでなく、その改善提案と紐づく形で実行・実装を行う「AIアナリストSEO」や「AIアナリストAD」といった付帯サービスを顧客にあわせて提案することで、同一顧客に複数ソリューションを提供するクロスセルを行っています。

 顧客は「AIアナリスト」だけでなく改善を実行・実装することができるソリューションを組み合わせて利用することで、スムーズにデジタルマーケティングの改善ができるので、顧客満足度の向上につながり、さらに他のサービスの追加契約につながっています。


③プロダクト事業とインキュベーション事業のシナジー

 当社の事業は、プロダクト事業とインキュベーション事業とが相互に価値向上に貢献しあうという“正のスパイラル”によって、企業のDX実現のための課題解決力を高めることで、市場により高い価値を創出しています。

 当社では、インキュベーション事業で得られた新たな知見を仕組み化し、プロダクト事業で提供するソリューション群の新規機能の追加や既存機能の強化を行います。また逆に、プロダクト事業で得られたデータ基盤はインキュベーション事業で新たな知見の創出を行ううえでの源泉となり、DXコンサルティングでの提案活動に活かされております。こうした2事業の互恵関係による“正のスパイラル”が当社の価値となっています。


④事業成長と参入障壁を実現する独自PDCAデータの蓄積

 当社の「AIアナリスト」は、基本的な機能を無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については料金を課金するフリーミアムモデルで提供されています。そのため、当社はユーザーに対し無料で基本機能を開放するかわりに、そのユーザーのデータを獲得しています。

 当社は多数存在するWeb上の行動データを記録するツールの中でも、日本の上場企業の90.67%が利用し、トップシェアを持つGoogleアナリティクスと連携し、Googleアナリティクス利用者のデータを、顧客からの許可を得た上でGoogleを通じて提供を受けています。このため、Webサイトにタグを埋め込むなどの作業を必要とするWeb行動データ分析ツールでは、タグの埋め込みの開発やデータの蓄積など実際にデータを分析するまでに作業と時間を要しますが、当社の「AIアナリスト」ではそういったリードタイムが必要なく、その場ですぐに分析を始めることが可能です。こうした導入ハードルの低さや高い利便性から、「AIアナリスト」の登録サイト数の増加と当社の保有データの蓄積につながっていると考えています。



【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(単独実績)2019.2 370 -64 -67 -69

(単独実績)2020.2 485 -140 -141 -142

(単独予想)2021.2 708 67 47 38

(単独3Q累計実績)2021.2 497 43 42 37

決算 4月予定


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(単独予想)2021.2 5.70  57.29 0

(単独計画)2022.2 27.18 - 0

調達資金使途 「AIアナリスト」の機能開発投資、人材投資、マーケティング投


上場時発行済み株数 6,892,000株 (別に潜在株式808,500株)

公開株数 803,300株(公募100,000株、売り出し598,600株、オーバーアロットメント104,700株)


PER:38.6

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:8.4憶

公募時時価:72億

    


【株主構成】 

ジャフコSV4共有投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 2,610,000 34.34 90日・1.5倍

大淵亮平 代表取締役社長 1,545,000 20.33 180日

垣内勇威 取締役 1,056,000 13.89 180日

(株)リコー 特別利害関係者など 330,000 4.34 180日

竹本祐也 取締役 315,000 4.14 180日

鈴木達哉 特別利害関係者など 300,000 3.95 180日

梅田裕真 特別利害関係者など 300,000 3.95 180日

中島克彦 特別利害関係者など 180,000 2.37 180日

(株)マイナビ 特別利害関係者など 156,000 2.05 180日

電通デジタル投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 150,000 1.97


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、貸株人及び売出人である大淵亮平、売出人である垣内勇威、鈴木達哉、梅田裕真並びに当社株主である株式会社リコー、株式会社マイナビ、TIS株式会社、竹本祐也、中島克彦、若林龍成、見満周宜及び池田誠也は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の2021年8月17日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)等を行わない旨合意しております。

 また、売出人であるジャフコSV4共有投資事業有限責任組合、電通デジタル投資事業有限責任組合及びみずほ成長支援第2号投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後90日目の2021年5月19日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し及びその売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等を除く。)等を行わない旨合意しております。

  

【代表者】

代表者名 大淵亮平(上場時33歳4カ月)/1987年生

本店所在地 東京都千代田区神田小川町

設立年 2010年

従業員数 49人 (12/31現在)(平均33.7歳、年収557.8万円)

株主数 16人 (目論見書より)

資本金 426,000,000円 (1/15現在)

代表者生年月日 1987年09月24日生まれ

代表者略歴

年月 概要

2010年04月 (株)ボストン・コンサルティング・グループ 入社

2011年09月 当社 取締役

2017年12月 当社 代表取締役社長(現任)


【幹事団】

主幹事証券 みずほ - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 大和 - -

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 いちよし - -

引受証券 マネックス - -


【参考類似企業】

参考類似企業 今期予想PER(1/19)

3690  イルグルム 41.3倍(連結予想 )

3961  シルバエッグ 63.3倍(連結見込 )

3984  ユーザロカル 63.9倍(単独予想 )

4165  プレイド -倍(単独予想 )


【私見】

 今年のテーマの中心であるDX銘柄で、目論見書からもDXとAIの単語が多く業種人気があります。成長性も高く、2月決算のため来期計画のEPSで考えると割高感はありません。規模も小さく初値高騰は確実ですが、セカンダリーとしては筆頭VCのジャフコに1.5倍のロック解除があり、早期の売却傾向が強いことからも初値比3倍程度で寄ってしまうと、参戦するにはリスクが高いかと思います。


想定価額:900円

仮条件上限:1050円

初値予想:3500円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価4

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