2021年10月1日金曜日

IPO分析(PHCホールディングス)

 【事業内容】

(1)糖尿病マネジメントドメイン

 糖尿病をはじめとする生活習慣病の増加に伴い、早期診断、効果的な治療が求められる中、当社グループの糖尿病マネジメントドメインは、特許権を有するバイオセンシング技術、自社設計の製造ラインによって効率化・合理化された生産技術に加え販売相手先の特性に応じたマーケティングを通し、高精度で簡便な検査・分析機器の開発・製造・販売を行っております。

 主な製品は、血糖自己測定システムを中心とする糖尿病ケア製品、POC(Point of Care)生化学分析装置、呼気一酸化窒素測定装置及び病院・診療所用血糖値測定システム等のPOCT製品並びに電動式医薬品注入器等であります。血糖自己測定システムは、現在の世界標準として採用されている酵素を用いたグルコースの測定技術を製品化したことを起源とし、子会社であるPHCにて開発・製造し、主に同じく子会社であるADCHD及びその販売子会社が34か国に事業拠点を設け、世界110か国以上の医療機関・薬局等に販売しておりますが、製品の一部を海外製造子会社であるPT PHC Indonesia(以下、「PHCI」)にて製造しております。なお、POCT製品については、基本的にはPHCにて開発・製造・販売を行っております。また、国内の血糖自己測定システム、POCT製品や電動式医薬品注入器等の一部製品については、OEM販売を行っております。また、多くの事業提携を通じて製品及びソリューションの開発・提供を行っており、2020年8月にはSenseonics Holdings,Inc.と提携し、CGM(Continuous Glucose Monitoring(以下、「CGM」))のグローバル販売契約を締結しております。


(2)ヘルスケアソリューションドメイン

 高齢化や生活習慣病増加等によりヘルスケアITへのニーズが高まる中、1972年から医科システムを開発販売してきたことを強みとし、医療情報システム分野のIT製品を開発販売し、地域医療情報の連携や医療情報の活用による医療の質の向上を目指しております。また、2019年8月に三菱ケミカルホールディングスグループより臨床検査事業分野の大手であるLSIMを買収することで臨床検査領域への事業拡大、ヘルスケアソリューションドメインの事業強化を図っております。

 ヘルスケアソリューションドメインは、メディコム事業部とLSIM事業部の2つの事業部で構成されています。メディコム事業部の主な製品は、診療所向け及び病院向けの医科医事システム、電子カルテシステム、保険薬局向けの電子薬歴システム等であります。子会社であるPHCにて開発・製造し、主に子会社であるPHCメディコム株式会社(以下、「PHCM」)を通じて日本国内に販売及び保守サービスを行っております。保守サービスの一部は、関連会社の株式会社SHINKOに外注しております。

 LSIM事業部の主な製品・サービスは、臨床検査事業として臨床検査受託、病院業務運営支援、食品・調理加工品検査、施設衛生検査、診断薬機器事業として全自動臨床検査システム、POC機器、創薬支援事業として非臨床試験、臨床試験(治験)、また日本で唯一のWADA(World Anti-Doping Agency)公認のドーピング検査を提供しております。日本国内に主要4拠点(東京都板橋区(志村)、成田、鹿島、熊本)を有し、全国に60の営業拠点と34の登録衛生検査所のネットワークを保有し、日本全国で事業を展開しております。


(3)診断・ライフサイエンスドメイン

 再生医療分野をはじめとするライフサイエンスの大学や研究機関で必要とされる機器、創薬・研究領域での細菌・細胞の培養やクリーンな環境を維持するために必要な機器、医療・介護現場の調剤やフードソリューション機器等の開発・製造・販売を行っております。また、2019年6月にサーモフィッシャーサイエンティフィックより病理事業を買収、当該部門を母体としたEprediaグループを設立し、本ドメインの強化を図っております。

 診断・ライフサイエンスドメインは、バイオメディカ事業部と病理事業部の2つの事業部で構成されています。バイオメディカ事業部の主な製品は、超低温フリーザー、メディカルフリーザー、薬用保冷庫、CO2インキュベーター、クリーンベンチ、バイオハザード対策用キャビネット、乾熱滅菌器、適温配膳車、自動錠剤包装機等であります。子会社であるPHCにて開発・製造し、国内顧客に対しては特約店を通じ販売する一方、海外市場へは当社の子会社であるPHC Corporation of North America(以下、「PHCNA」)、PHC Europe B.V.(以下、「PHCEU」)、PHC上海有限会社(以下、「PHCSH」)及びSciMed (ASIA) Pte Ltd(以下、「SciMed」)を通じて、グローバルな販売及びサービス体制を構築しております。国内の保守サービスの一部は、関連会社の株式会社SHINKOに外注しております。また、製品の一部は、海外製造子会社であるPHCIにて製造しております。

 病理事業部の主な製品は、自動包埋装置、パラフィンブロック作製装置、ミクロトーム、自動染色装置、カバースリッパー、検体管理システム、マイクロスライドガラスや染色試薬等であります。同事業部にて開発・製造し、国内顧客に対してはPHC(エプレディア事業推進部)を通じて、海外に関してもEpredia傘下の販売子会社を通じて、販売、保守サービスを展開しております。


【業績等】

業績動向(百万円) 売上収益 営業利益 税引き前利益 純利益

(連結実績)2020.3 272,637 13,177 5,611 5,276

(連結実績)2021.3 306,071 17,599 22,788 16,906

(連結予想)2022.3 319,045 20,035 17,517 13,511

(連結1Q実績)2022.3 80,909 5,634 14,112 10,384


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(連結予想)2022.3 113.68 1,163.63 23

調達資金使途 設備投資、借入金の返済


上場時発行済み株数 122,170,815株 (別に潜在株式5,784,179株)

公開株数 53,429,400株(公募5,807,500株、売り出し40,652,900株、オーバーアロットメント6,969,000株)


 国内募集、引受人の買取引受による国内売出し及びオーバーアロットメントによる国内売出しと同時に、米国及び欧州を中心とする海外市場における募集及び売出しが、Goldman Sachs International、J.P. Morgan Securities plc、KKR Capital Markets LLC、Merrill Lynch International、Mizuho International plc、Morgan Stanley & Co. International plc及びSMBC Nikko Capital Markets Limitedを共同主幹事会社兼ジョイント・ブックランナーとする海外引受会社の総額個別買取引受けにより行われる予定であります。

 本件募集による新株式発行の募集株式総数は5,807,500株の予定であり、国内募集株式数2,613,300株及び海外募集株式数3,194,200株を目処に募集を行う予定ですが、その最終的な株式数の内訳は、需要状況等を勘案した上で発行価格等決定日に決定されます。また、本件売出しの売出株式総数は40,652,900株の予定であり、国内売出株式数18,293,700株及び海外売出株式数22,359,200株を目処に売出しを行う予定ですが、その最終的な株式数の内訳は、需要状況等を勘案した上で売出価格等決定日に決定されます。また、海外募集及び海外売出しに伴い、その需要状況等を勘案し、SMBC Nikko Capital Markets Limitedが貸株人から3,833,000株を上限としてSMBC日興証券株式会社を経由して借入れる当社普通株式の海外市場における売出しが追加的に行われる場合があります。



PER:19.7

PBR:3.17

配当利回り:0.6%

公募時吸い上げ資金:1976億

公募時時価:4520億

    

【株主構成】 以下180日

KKR PHC Investment L.P. 親会社 55,804,244 45.77

三井物産(株) その他の関係会社 24,594,240 20.17

(株)生命科学インスティテュート 特別利害関係者など 15,348,237 12.59

パナソニック(株) 特別利害関係者など 13,158,136 10.79

LCA 3 Moonshot LP ベンチャーキャピタル(ファンド) 5,714,286 4.69

従業員持ち株会 特別利害関係者など 1,014,190 0.83

平嶋竜一 執行役員 258,820 0.21

宮崎正次 代表取締役副社長COOなど 255,226 0.21

大塚孝之 執行役員、子会社取締役および監査役 239,730 0.20

山根健司 特別利害関係者など 236,000 0.19

丸橋祐次 子会社の取締役および監査役 214,329 0.18

高橋治 子会社の取締役および監査役 194,030 0.16


 グローバル・オファリングに関連して、売出人かつ貸株人であるKKR PHC Investment L.P.及び三井物産株式会社、売出人である株式会社生命科学インスティテュート、パナソニック株式会社及びLCA 3 Moonshot LP、当社株主であるジョン・マロッタ、宮﨑正次、フレデリック・ライデンバック、平嶋竜一、森本恭史、ロバート・シャーム、大塚孝之、渡部晴夫及び中村伸朗並びに当社の新株予約権その他長期インセンティブ報酬被付与者である池内孝一、イーフラム・スター、蛯名淳、山口快樹及びジョン・スウィーニーについては、元引受契約締結日から上場日(当日を含む。)後180日目(2022年4月11日)までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、ジョイント・グローバル・コーディネーターの事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(但し、引受人の買取引受による国内売出し、海外売出し、オーバーアロットメントによる国内売出し又はオーバーアロットメントによる海外売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと、国内グリーンシューオプション及び海外グリーンシューオプションの行使に基づく当社普通株式の売却等を除く。)を行わない旨を約束する書面をジョイント・グローバル・コーディネーターに対して差し入れる予定であります。

 LCA 3 Moonshot LP(以下「対象者」という。)は、取引銀行に対して、債務の担保として、対象者が保有する株式数5,714,286株のうち4,714,286株を提供しており、当該株式には質権が設定されております。対象者が取引銀行に対する債務を履行しなかった場合、ロックアップ期間にかかわらず、取引銀行により質権対象株式の売却が行われる可能性があります。


 【代表者】

代表者名 ジョン・マロッタ(上場時42歳0カ月)/1979年生

本店所在地 東京都港区西新橋

設立年 2013年

従業員数 181人 (7/31現在)(平均47.8歳、年収904.7万円)、連結9630人

株主数 36人 (目論見書より)

資本金 36,409,120,000円 (9/7現在)

代表者生年月日 1979年09月28日生まれ

代表者略歴

2002年08月 Janssen Pharmaceutical K.K. 入社 Sales Representative

2004年06月 Synthes Orthopedics 入社 Trauma Sales Representative and Consultant

2010年04月 Emerge Medical(現、Cardinal Health Inc.)入社 President, Chief Executive Officer (CEO) and Chairman of the Board

2014年09月 Cardinal Health Inc. 入社 Vice President, Orthopedics

2016年10月 Danaher Corporation 入社 General Manager and Vice President of KavoKerr Restoratives Business Unit

2018年06月 Mesa Labs入社 Senior Vice President 10月:Danaher Corporation 入社 Senior Vice President, Dental Platform: Procurement, Supply Chain, IT, LatAm, Envista Business System (EBS)

2019年09月 Envista Holdlings Corporation(Danaher Corporationからスピンオフ), Senior Vice President, Procurement, Supply Chain, IT, LatAm, Envista Business System (EBS)

2020年07月 当社代表取締役社長CEO(現任) 8月:Epredia Holdings Ltd. 取締役(現任) 12月:当社代表取締役社長CEO(現任)


【幹事団】

主幹事証券 SMBC日興 - -

主幹事証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

主幹事証券 野村 - -

主幹事証券 みずほ - -

主幹事証券 BofA - -

主幹事証券 ゴールドマン・サックス - -

主幹事証券 JPモルガン - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 マネックス - -


【参考類似企業】今期予想PER(9/21)

4538  扶桑薬 33.3倍(単独予想 )

4543  テルモ 43.7倍(連結予想 )

6849  日光電 27.7倍(連結予想 )

6869  シスメックス 76.8倍(連結予想 )

6960  フクダ電 14.8倍(連結予想 )

7702  JMS 12.1倍(連結予想 )

7747  アサヒインテク 83.8倍(連結予想 )

7749  メディキット 18.2倍(連結予想 )

7775  大研医器 21.2倍(単独予想 )

8086  ニプロ 13.1倍(連結予想 )


【私見】

 糖尿病を中心としたヘルスケア関連の銘柄で業種としては安定性はありますが、ファンドの売出し案件で人気化する可能性は低そうです。業績は良く、PERからは妥当な水準で公募近辺が適正価額なのかと思います。規模は非常に大きいのですが、海外配分があり、VCを含む既存株主にはロックがかかっているので、大きく割れるようなことがあればセカンダリーの可能性もあるかと思います。


想定価額:3700円

仮条件上限:3500円

初値予想:3500円

ブック申し込み度・・・中立

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3


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