2021年10月25日月曜日

IPO分析(Photosynth)

 【事業内容】

 (1)Akerun事業の概要

 当社グループの中核事業であるAkerun®事業は、キーレス社会の実現に向けて、クラウドとインターネットでつながるスマートロック等のエッジ端末による個人認証とセキュリティを主軸とした関連サービスを法人向け、住宅向けに展開しております。


 Akerun事業の特徴は主に以下の3点であります。

① サブスクリプションモデルによるHESaaSとして提供

 Akerun事業の特徴の1つ目は、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたサブスクリプションモデルであるHESaaSとしての提供形態であります。

 Akerun事業で展開される各サービスは、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせ、月単位/年単位などで課金されるサブスクリプションモデルによるレンタルサービスとして提供しております。

 サブスクリプションモデルによるユーザーの導入障壁の低減や後述のAkerun事業における強みなどを背景に、ARR(Annual Recurring Revenue:毎年繰り返し得られる年次経常収益)は順調に拡大しております。さらに、このARRを支えるサブスクリプション収益の比率も事業収益全体の約90%を実現しております。

 また、運用の手軽さや利便性により、MRR(Monthly Recurring Revenue:毎月繰り返し得られる月次経常収益)ベースのChurn Rate(サービスに関する解約率)は平常時で1%台半ばの低い水準に抑えられております。

 当社グループは、事業収益に占めるサブスクリプション収益の高い比率、低い解約率などを実現する、継続的な収益を生み出すリカーリングビジネスにより、MRR及びARRの最大化を通じた持続可能な成長を実現しております。

② 堅牢なアクセス認証基盤及びクラウドセキュリティシステム

 Akerun事業の特徴の2つ目は、クラウド上に構築するアクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence®」

 この認証基盤における認証プロセスは、特許を取得している独自の通信方式やSSL、AES256などのセキュアな通信技術でセッションごとに暗号化することで高度なセキュリティを担保しております。また、認証や処理のロジックをエッジ端末とクラウド上のサーバーに集約することで、個人情報などの機密情報のエクスポージャーを減少させ、セキュリティ上の堅牢性をさらに高めております。

 この高度なセキュリティ環境を背景としたユーザー認証方式を確立したことで、信頼性と堅牢性に優れたユーザー認証と関連サービスの展開が可能になっております。

③ アクセス認証基盤を活用した認証プラットフォームとしての価値

 Akerun事業の特徴の3つ目は、企業規模を問わない広範なユーザー基盤に裏付けられた認証プラットフォームがもたらす、社会インフラとしての価値であります。これまでのサービス展開を通じて、2021年3月時点で現契約社数は3,700社、登録アカウント数は91万ユーザーを擁しております。実際に、Akerun事業を支える中核サービスである法人向けの「Akerun入退室管理システム®」は、「クラウド型入退室管理システムの導入社数/シェア」、「スマートロックの利用者数/シェア」、「法人向けスマートロックの導入社数/シェア」の3分野でそれぞれ国内No.1を獲得するなど、クラウド型入退室管理システム及びスマートロックの市場をけん引する実績を有しております。


(2)オフィス領域におけるAkerun事業

① サービス構成

 Akerun事業を支える中核サービスである法人向けの「Akerun入退室管理システム」は、鍵の物理的開閉やデータ通信などを担うハードウェア機器と、認証、鍵権限の管理、履歴の閲覧などを行う、スマートデバイス向けアプリケーション及びWebアプリケーション等のソフトウェアで構成されております。

Ⅰ.ハードウェアの特徴

 「Akerun入退室管理システム」で提供されるハードウェアには、サムターン錠に対応する「Akerun Pro」と、電気錠や自動ドア、フラッパーゲート等の電気制御の扉に対応する「Akerunコントローラー」があります。

 Akerun Proは、工事なしで既存の扉に後付け可能なスマートロックであります。扉の既存のサムターン錠に設置するだけで、取り付け工事不要、初期費用0円で導入できるため、従来の入退室管理システムと比較して導入にかかる工数や費用を大きく低減しております。

 Akerunコントローラーは、既存の自動ドアや電磁錠などの電気錠に後付けで導入でき、簡易的な工事のみで導入し、運用できるハードウェアであります。電気制御で鍵の開閉を行う電気錠に対応することで、「Akerun入退室管理システム」の適用範囲をさらに拡大し、さらに多くのオフィスや施設のニーズに対応することが可能になっております。

 また、Akerun Pro及びAkerunコントローラーに共通のハードウェアとして、ICカードリーダーも付帯しております。ICカードリーダーを活用することで、ユーザーが日常的に使用している交通系ICカードや社員証、ビル入館カードなどFeliCa及びMifareの各規格に対応するICカードによる認証を通じた施錠・解錠が可能となっております。なお、「Akerun入退室管理システム」を構成する各ハードウェアは、当社グループで開発、設計し、製造は外部に委託しております。

 

Ⅱ.ソフトウェアの特徴

 「Akerun入退室管理システム」は、ソフトウェアにより以下の機能を提供しております。

A.Web管理ツールによる鍵権限の柔軟な設定

 Web管理ツールを通じて、ユーザーが入退室できる日時などを柔軟に設定することが可能となっております。これにより、ユーザーごとの要件に応じた入退室権限など、ニーズに合わせた柔軟な鍵権限の運用が可能になっております。また、Web管理ツールは、クラウド型サービスの特徴を生かし、労務関連の法制度の改正やオフィスに求められる要件の変化など、社会状況の変化や市場トレンドに合わせて継続的にアップデートすることが可能となっております。


B.システムから取得するデータの利活用

 IoTを活用したクラウド型入退室管理システムの特徴を生かし、ユーザーの利用履歴を永続的に保持し、Web管理ツールなどでいつでも確認できる機能を備えております。さらに、この履歴のビッグデータとしての活用により、セキュリティの機能だけでなく、ユーザーの動静を把握・確認するための空間管理やサービス利用のエビデンスとしての活用など、さらなる価値提供が可能になっております。


C.APIによる外部システムとの柔軟な連携

 サービスとしての拡張性を高めるために、外部システムとの連携が可能なAPIを公開しております。これにより、外部システムからの入退室履歴などの各種情報の取得や遠隔での解錠・施錠の操作などが可能になります。また、ユーザーのシステムやサービスと「Akerun入退室管理システム」と連携させたり、又は当社グループ及び外部のパートナー企業でAPI連携させた勤怠管理、生体認証などの認証システム、会員管理システム、決済システム、IoT監視カメラなどとの共同ソリューションを活用したりすることも可能となっております。


③ サービスの強み

 当社グループは、市場における優位性として要件の厳しい法人向け事業で培った広範な実績、高水準の利用体験を可能にするハードウェアの開発及び無線通信やセキュリティにおけるソフトウェアの開発に強みを有しております。


(3)住宅領域におけるAkerun事業

①サービス提供のスキーム

 住宅領域では、サービスや製品の提供にあたり、建築用錠前の提供で国内大手の美和ロック株式会社(以下、美和ロック)との合弁会社となる株式会社MIWA Akerun Technologiesを2021年1月に設立しております。当社が51%、美和ロックが49%を出資するこの合弁会社を通じて、当社は住宅向けサービスの基盤となるクラウド上の認証基盤やスマートデバイス向けアプリケーションの開発、美和ロックはAkerunと連携する住宅向けスマートロックの開発と提供、そして合弁会社が住宅向けサービスの開発と提供をそれぞれ担います。

 当社のクラウド上の認証基盤及びスマートデバイス向けアプリケーションといったソフトウェア技術における信頼性と実績、美和ロックの住宅向けスマートロック製品に関するハードウェア技術の堅牢性と実績、そして合弁会社によるスマートロックを起点とした住宅向けサービスの開発と提供という各社のそれぞれの強みを組み合わせることで、ユーザーの安全・安心の実現とともに包括的なサービスを提供し、これまで以上に利便性の高い生活の実現に貢献できるものと考えております。

②サービスの強み

 住宅領域におけるAkerun事業では、美和ロックとの合弁会社を通じて両社の強みを生かした事業を展開してまいります。具体的には、建築用錠前で国内大手である美和ロックがこれまでに培ってきた、不動産ディベロッパーや工務店などとの広範な営業チャネルを最大限活用してまいります。これにより、賃貸・分譲の集合住宅や戸建住宅の施工段階から住宅用スマートロックを提案することで、幅広い住宅への導入を目指してまいります。


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(単独実績)2019.12 778 -693 -708 -713

(単独実績)2020.12 1,175 -667 -683 -1,184

(連結予想)2021.12 1,511 -1,028 -1,070 -1,062

(連結中間実績)2021.12 716 -312 -316 -317


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(連結予想)2021.12 -77.04 143.76 0

調達資金使途 広告宣伝費、賃貸用資産への投資、ソフトウエア開発費、借入金の返済


上場時発行済み株数 15,235,400株 (別に潜在株式1,609,600株)

公開株数 7,260,200株(公募700,000株、売り出し5,613,300株、オーバーアロットメント946,900株)


・売出しを行う地域

欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)


PER:

PSR:15.2

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:108億

公募時時価:228億

    


【株主構成】 

河瀬航大 代表取締役社長 2,962,800 18.35 180日

グロービス5号ファンド投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 1,583,600 9.81 90日・1.5倍

農林中央金庫 特別利害関係者など 1,202,000 7.45

コタエル信託(株) 新株予約権の受託者 914,200 5.66

ジャフコSV4共有投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 883,200 5.47 90日・1.5倍

Fidelity Funds ベンチャーキャピタル(ファンド) 700,000 4.34

Globis Fund V, L. P. ベンチャーキャピタル(ファンド) 676,000 4.19 90日・1.5倍

DCIハイテク製造業成長支援投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 674,800 4.18 90日・1.5倍

(株)ガイアックス ベンチャーキャピタル(ファンド) 616,000 3.82 180日

東京都ベンチャー企業成長支援投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 562,400 3.48 90日・1.5倍

Fidelity Japan Trust ベンチャーキャピタル(ファンド) 500,000 3.10


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である河瀬航大、売出人である上坂宏明、丹野悠哉、小林奨、本間和弘、株式会社ガイアックス、CBC株式会社、齋藤孝一及び髙橋謙輔、並びに当社の株主である、Kawase&Co.合同会社、井上英輔、及川卓也、MF-GB2号投資事業有限責任組合及び株式会社MSERRNTは、共同主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後180日目(2022年5月3日)までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)を行わない旨を合意しております。

 また、売出人である、グロービス5号ファンド投資事業有限責任組合、ジャフコSV4共有投資事業有限責任組合、Globis Fund V, L. P.、DCIハイテク製造業成長支援投資事業有限責任組合、東京都ベンチャー企業成長支援投資事業有限責任組合、YJ2号投資事業組合、株式会社新生銀行、LINE Ventures Japan有限責任事業組合、株式会社アイティーファーム、株式会社ベータカタリスト及び中村崇則は、共同主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後90日目(2022年2月2日)までの期間、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及び売却価格が本募集等における発行価格又は売出価格の1.5倍以上であって、大和証券株式会社を通して行う株式会社東京証券取引所取引での売却等は除く。)を行わない旨を合意しております。

 さらに、当社の新株予約権を保有する河瀬航大、上坂宏明、丹野悠哉、髙橋謙輔、土田幸介、石井大樹、板倉大樹、秋田浩平、村上航一、大波周一、藤井綱良、奥村森生、遠山孝司、星朋樹及びその他58名は、共同主幹事会社に対し、ロックアップ期間中、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式の売却等を行わない旨を合意しております。

 上記のほか、当社は、取引所の定める有価証券上場規程施行規則の規定に基づき、上場前の第三者割当等による募集株式の割当等に関し、割当を受けた者(農林中央金庫、Fidelity Funds、Fidelity Japan Trust PLC、NTTインベストメント・パートナーズファンド3号投資事業有限責任組合、BSP第3号投資事業有限責任組合、MF-GB投資事業有限責任組合、凸版印刷株式会社、Scrum Ventures Fund III L.P.、MF-GB2号投資事業有限責任組合、NREGイノベーション1号投資事業有限責任組合、SBI4&5投資事業有限責任組合、つくばエクシード投資事業有限責任組合、JR東日本スタートアップ株式会社、コクヨ株式会社及びSBI4&5投資事業有限責任組合2号)及び当社新株予約権の割当を受けた者(コタエル信託株式会社(受託者)、当社の役員及び従業員)との間で継続所有等の確約を行っております。


【代表者】

代表者名 河瀬 航大(上場時33歳1カ月)/1988年生

本店所在地 東京都港区芝

設立年 2014年

従業員数 149人 (8/31現在)(平均33.9歳、年収574.4万円)、連結149人

株主数 39人 (目論見書より)

資本金 1,039,630,000円 (9/30現在)

代表者生年月日 1988年09月19日生まれ

代表者略歴

2011年04月 (株)ガイアックス入社

2014年09月 当社設立 代表取締役社長(現任)


【幹事団】

主幹事証券 大和 - -

主幹事証券 クレディスイス - -

引受証券 みずほ - -

引受証券 SBI - -

引受証券 いちよし - -


【参考類似企業】今期予想PER(10/5)

3434  アルファCo 11.5倍(連結予想 )

6436  アマノ 21.6倍(連結予想 )

6501  日立 11.1倍(連結予想 )

6701  NEC 23.9倍(連結予想 )

6758  ソニーG 20.8倍(連結予想 )

9735  セコム 19.9倍(連結予想 )


【私見】

 スマートロックとしては初物上場で業種妙味は非常にあります。赤字ですが、この業種としては先行投資で問題ないでしょう。問題は需給で、グロービス、ジャフコ、フィデリテーなどVC勢ぞろいで、条件付きロックや継続保有など条件は付いていますが厳しい状況で、機関投資家の買い次第でしょう。気になるのは仮条件の上限が想定価額と同一で、機関の評価はそこまで高くなかったの可能性はあり、直近のセーフィーのような評価はできないと思います。海外配分もあるので、それなりに買い需要はあるかとは思いますが、競争も激しい業界で、PSR20の時価総額300憶・2000円がMAXと予想します。

 

想定価額:1500円

仮条件上限:1500円

初値予想:1900円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3.5


6 件のコメント:

  1. 上場してませんが、ビットキーがこの分野で脅威ですね!
    ここは初物ですが、買いにくいですね!

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  2. BBは申し込みましたが、VCの見切りを考えるとセカンは入らない予定です。

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  3. よく見たら、VCは90%放出ですね!

    ただ国内500万株は重そうです。

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  4. 海外は3割のみということで機関投資家の評価は低いようですね。
    苦戦が予想されます。

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  5. 粗利は相当高いですが、
    競合多く、有利な点は見られません。

    構造計画が上場してるので、実は初物ではないようですし。

    様子見します。

    いつもお返事ありがとうございます。

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  6. 初物かと思いましたが、よく調べてみると初物ではなかったので評価は下がりました。

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