2022年7月12日火曜日

IPO分析(エアークローゼット)

 【事業内容】

​(1) 事業概要

 国内在住の女性に対して、スタイリストが一人一人の顧客の好みに合わせた洋服を選定(パーソナルスタイリング)し個宅に向けて配送しレンタルするサービス「airCloset」を主として提供しています。「airCloset」は非対面で顧客にパーソナルスタイリングを提供する事業として2015年2月にリリース致しました。当サービスは洋服を循環的に活用するシェアリングエコノミーの要素や継続課金制のサブスクリプション型のビジネスモデルを採用していることが特徴です。「airCloset」はメーカー、ブランド等のアパレル事業者と顧客とを引き合わせるプラットフォームとしての機能を有しており、かつ、レンタル中の洋服で気に入ったものについては購入することも可能な機能を備えています。洋服を着ることに関わる移動や選択・メンテナンスや購入(所有)までさまざまな機能を統合したFaaS形式サービスです。「airCloset」リリース以降も継続的にPDCAサイクルを回すことで、機能改善及び新規機能の追加を行ってまいりました。代表的な機能改善及び新規機能追加の例としては、顧客が好みのスタイリストを指名できる「スタイリスト指名オプション」機能の追加や、レギュラープランの2倍の量の洋服をレンタルできる「ダブルレンタルオプション」、洋服と合わせたアクセサリーをレンタルできる「アクセサリーオプション」の追加などが挙げられます。

 事業構造は洋服を仕入れ、パーソナルスタイリングによって付加価値を高めて提供することでレンタル利用料および販売売上(買取料)にて収益化を目指すビジネスと言い換えることもできます。

 また、当社では「airCloset」で蓄積したノウハウや運用上収集している様々なデータを活用し、洋服の「購入」機会にスタイリストのアドバイスを受けられる「airCloset Fitting」、パーソナルスタイリングが実地で体験できる店舗型サービス「airCloset × ABLE」、生活家電や寝具など比較的高額なライフスタイル商材を試して購入する「airCloset Mall」などの事業を提供しています。今後も、当社の事業を推進することにより、アパレル業界、日本の経済社会に対する貢献をしたいと考えております。


(2) サービス概要

① ファッションレンタルサービス「airCloset」について

 「airCloset」は国内居住の女性をターゲットに、一人一人の顧客の好みに合わせてスタイリストが選定した洋服をレンタルするサービスとして2015年2月より提供開始しております。洋服のスタイリングを含む顧客とスタイリストのコミュニケーションは非対面のオンラインで行われることが特徴です。レギュラープランでは、月額定額制で、1度に3着の洋服をコーディネートし、顧客の指定する住所に郵送します。顧客は受け取った洋服を職場や女子会・ママ会といった日常シーンで着用し、楽しむことが可能です。着用を終えた洋服は専用の返送方法にて当社委託先の倉庫に返却し、返却を確認できた時点でまた次の洋服を当該顧客に配送するというサイクルを繰り返します。返却された洋服のクリーニング・メンテナンスは利用料金の範囲内で当社委託先の協力会社にて行うため、顧客に不要な手間をかけさせない点にも工夫があります。また、レンタルされた洋服は顧客の手元での着用時または返却後に在庫として存在する場合には、会員特別価格にて購入することもできるため、レンタル衣類の試着サービスとしてだけでなく、洋服の新たな購入方法としても利用されています。


「airCloset」の顧客の年齢層は20代から50代女性と幅広く、特に30代後半から40代が中心となっています(2021年10月時点)。中でも働く女性が93.5%(2022年3月時点)、子供を持つ女性が55.8%(2022年4月時点)を占める等、仕事や育児に時間が割かれており、自身の洋服選びの時間に悩む女性が賢くファッションを楽しむために利用しているケースが多く見られます。世帯所得についても1,000万円超の顧客が30%強と多くみられます(2021年10月時点)。また、2022年4月実施の顧客アンケートでは、時間的制約や手段的制約によって買い物に行きたくてもいけない(71.6%)、洋服のコーディネートや着こなしに迷ったことがある(92.0%)などの顧客層の悩みが抽出されており、これらの課題を解決するためのサービスとしても活用されています。


 当サービスの主な収益構造は、「airCloset」サービスの提供による顧客から得られる月額の会費収入です。会費収入は主に9,800円/月のレギュラープラン、6,800円/月のライトプランと12,800円/月のライトプラスプランそれぞれのプランに利用登録をした会員を通じて得られるものであり、サブスクリプション型で提供しています。これらに加えてレギュラープランの2倍の洋服レンタル機会を得られるダブルレンタルオプション(8,800円/月)や洋服だけでなくアクセサリーをレンタル対象に追加できるアクセサリーオプション(1,000円/回)、好みのスタイリストを直接指名できるスタイリスト指名オプション(500円/回)、コーディネートに用いる洋服のブランドを指定できるブランドセレクトオプションなどのアップセル・クロスセル(※)によるさらなる収益機会の獲得を見込むことが出来ます。なお、レギュラープランは返却する都度、何度でも次の洋服がレンタルできるプラン、ライトプランは月に1度、3着1セットの洋服をレンタルできるプラン、ライトプラスプランはXS~3Lの大きめサイズの洋服が月に1度、5着1セットでレンタルできるプランとして提供しています。また、個人ではなく法人単位のレンタルサービスも提供しております。

 また、月額の会費収入とは別に、レンタル中の商品を現状有姿で買い取る際に得られる販売収入、レンタル提供が終了したアイテムを販売する「エコセール」(会員様限定)、各顧客への洋服の配送の際に行う企業広告のサンプリングや梱包資材へのデザイン広告等を請け負う広告収入などがあります。


② パーソナルスタイリングECプラットフォーム「airCloset Fitting」について

 「airCloset Fitting」はレンタル体験を経た上で洋服の購入に結びつける「airCloset」とは異なり、顧客が洋服の購入を検討する際にスタイリストがその顧客の好みに即した洋服を選定し、直接的に「購入」を促すことを目的としたサービスとして2017年10月にリリース致しました。取り扱う商品は新品の洋服であり、「airCloset」で蓄積したパーソナルスタイリングノウハウを応用しています。「airCloset Fitting」の収益構造は、商品の購入の有無にかかわらず顧客から受領するスタイリング料金と商品の購入時に生じる販売売上の2つにより構成されています。また、「airCloset Fitting」にて活用した在庫を「airCloset」の在庫に転用しレンタルサービスに供することで、洋服の仕入れの効率化にも寄与しています。なお、洋服のスタイリングを含む顧客とスタイリストのコミュニケーションは「airCloset」と同様に非対面のオンラインで行われます。


③ ファッションレンタルショップ「airCloset×ABLE」について

 不動産大手の株式会社エイブルとの共同により2016年10月より、パーソナルスタイリングサービスとファッションレンタルサービスを同時に体験できる店舗型の施設「airCloset×ABLE」を運営しています。「airCloset×ABLE」では、来店した顧客に対し、店舗に配置しているスタイリストが対面で洋服に関する相談を受け、同店舗に保有している洋服の中からスタイリングを提案し、顧客が気に入った場合にはその洋服をその場で着用もしくはレンタルして持ち出すことが出来る仕組みとなっています。「airCloset×ABLE」の収益構造は主として来店顧客から受領するレンタル料金であり、レンタル期間に応じた価格設定を行っています。


④ メーカー公認月額制レンタルモール「airCloset Mall」について

 2020年4月に、生活家電等のライフスタイル商材を取り扱うメーカーにサブスクリプション型のレンタル型販売ビジネスの基盤を提供するサービスとして「airCloset Mall」をリリース致しました。本サービスは当社と各メーカーがプラットフォーム利用契約を直接締結し、顧客へ契約に基づく商品をレンタルし、試用したうえで購入を促す販売チャネルを提供します。メーカーは商品の納品から最短1週間でサブスクリプションのレンタル型販売ビジネスを始めることができ、顧客は目当ての商品を自宅で試用してから購入を検討することが出来るメリットがあります。また本サービスは「airCloset」で蓄積したフルフィルメント(※)ノウハウを応用した物流プラットフォームとしてメーカーと顧客の間で機能しています。「airCloset Mall」の収益構造はメーカーから個別契約にて定めた金額を受領するプラットフォーム利用料と顧客から受領するレンタル売り上げの一部及び購入に結びついた場合の販売売上の一部(レベニューシェア)によって構成されます。


■ 「airCloset」の料金体系

 「airCloset」がパーソナルスタイリングにより提供する顧客体験(UX:User Experience)には、先に試して気に入った洋服だけを購入する価値やデザインの新旧やブランドネームによることなく自身にとって「似合う」洋服を購入する価値、また洋服を購入するだけでなくレンタルサービスそのものを楽しむ価値の3つの新しい価値が含まれます。具体的には、月額会員の半数は「airCloset」を通じて洋服を購入した経験があり、その販売率は期間中の配送着数に対して約5%、売上は総売上全体の約13%に達しています(2021年6月期実績)。また、ブランドやデザインの型式は顧客評価や販売率に関わらず、顧客自身が現状有姿の商品そのものの品質を好んだ際に購入されています。別のアンケートでは、普段購入していないブランドの洋服を「airCloset」を通じて体験した、という顧客が約90%いることも分かっています(2021年2月時点調査)。さらに、利用期間が6か月を超えるロイヤル会員が全会員数の53%を占めており(2021年6月末)、洋服の購入後も継続して当社サービスを利用していることも分かっています。サービスを利用するたびに体験価値が重ねられるため、月額会員の退会率は登録当初から約3か月を境に緩やかになり、顧客獲得コスト(CAC:Customer Acquisition Cost)を1.8か月で回収し、CAC回収後も長期的に収益を生み出す体制を確立しております。なお、月額会員の平均顧客単価は9,302円/月(2021年6月期実績)となっております。

  なお、2017年6月期以降の当サービスの各四半期末日における月額会員数獲得規模の四半期推移は以下の通りです。事業初年度より継続的に成長し、新型コロナウイルス感染症の影響下にあっても、会員増加を実現しています。2017年6月期から2021年6月期までの期間の月額会員年間獲得数の平均成長率(CAGR)は48.6%となっております。また、同期間での売上高成長率は47.8%です。

 また、「airCloset」には上記の月額会員のほか、メールアドレスを登録し当社からサービス関連情報を受け取ることのできる無料会員という会員属性が存在します。無料会員はレンタルサービスの利用はできませんが、当社の実施するセール等の機会に洋服を購入することが可能です。無料会員は月額会員への転換の見込みのある顧客として事業成長の先行指標となっております。継続的なマーケティング活動を通じて認知度の向上に取り組んでおり、特に、春・秋にサービスへのニーズが高まることから、重点的にマーケティング活動を実施しております。この結果、2021年6月末時点では月額会員29,660人、2022年3月末時点で月額会員32,297人と月額会員数は順調に成長し、無料会員70万人が登録されています。

 

【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2022/06 単独3Q累計実績 2,420 -115 -124 -433

2022/06 単独会社予想 3,352 -51 -65 -423

2021/06 単独実績 2,887 38 29 -344

2020/06 単独実績 2,173 -411 -419 -715


上場時発行済株数 8,109,000株(別に潜在株式392,000株)

公開株数 1,000,100株(公募733,000株、売り出し136,700株、オーバーアロットメント130,400株)

調達資金使途 マーケティング関連費用、レンタル用資産購入資金、採用強化による人件費


2022/06 単独会社予想 -73.88 - 0.00


PER:

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:8.7億

公募時時価:71億

​   


【株主構成】 

天沼聡 代表取締役社長CEO 1,388,800 17.88%  180日

Monoful Pte. Ltd. 特別利害関係者など 1,109,600 14.28% 90日・1.5倍

寺田倉庫(株) 資本提携先 848,000 10.92% 180日

住友商事(株) 特別利害関係者など 800,000 10.30% 180日

SIG Asia Fund IV, LLLP ベンチャーキャピタル(ファンド) 800,000 10.30% 90日・1.5倍

ジャフコSV4共有投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 680,000 8.75% 90日・1.5倍

前川祐介 取締役副社長 311,200 4.01% 180日

Samurai Incubate Fund 4号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 272,000 3.50% 180日

小谷翔一 取締役 160,000 2.06% 180日

SMBCベンチャーキャピタル6号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 160,000 2.06% 90日・1.5倍


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、貸株人である天沼聰、売出人であるSamurai Incubate Fund 4号投資事業有限責任組合、小谷翔一並びに当社株主である寺田倉庫株式会社、住友商事株式会社、前川祐介、中園化学株式会社、株式会社Award、株式会社エイブル&パートナーズ及び当社新株予約権者である石川桂太、辻亮佑、森本奈央人、市塚諒、中村将彰、月原優子、安田和央は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の2023年1月24日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)等を行わない旨合意しております。

 また、売出人であるD4V1号投資事業有限責任組合並びに当社株主であるMonoful Pte. Ltd.、SIG Asia Fund IV, LLLP、ジャフコSV4共有投資事業有限責任組合、SMBCベンチャーキャピタル6号投資事業有限責任組合、SMBCベンチャーキャピタル3号投資事業有限責任組合、株式会社セゾン・ベンチャーズ、三菱UFJキャピタル7号投資事業有限責任組合、ジャフコ グループ株式会社は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後90日目の2022年10月26日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し及びその売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等を除く。)を行わない旨合意しております。


  ​

【代表者】

代表者名 天沼 聡(上場時42歳11カ月)/1979年生

本店所在地 東京都港区南青山

設立年 2014年

従業員数 66人 (2022/05/31現在)(平均30.4歳、年収489.3万円)

事業内容 月額制ファッションレンタルサービス「airCloset」の運営

URL https://corp.air-closet.com/

株主数 18人 (目論見書より)

資本金 1,116,273,000円 (2022/06/24現在)

代表者生年月日 1979年08月01日生まれ

代表者略歴

2003年04月 アビームコンサルティング(株) 入社

2011年09月 楽天(株) 入社

2014年07月 当社代表取締役社長兼CEO就任(現任)

2016年02月 (一社)シェアリングエコノミー協会 幹事就任 (現任)

2018年12月 (一社)日本パーソナルスタイリング振興協会 理事就任(現任)

2018年12月 (一社)日本サブスクリプションビジネス振興会 理事就任


【幹事団】

主幹事証券 みずほ - -

引受証券 大和 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 いちよし - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 岡三 - -

引受証券 東海東京 - -

引受証券 松井 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 楽天 - -


【参考類似企業】今期予想PER(7/1)

2685 アダストリア 15.6倍 (連結予想)

2726 パルGHD 16.7倍 (連結予想)

2778 パレモ・HD 7.2倍 (連結予想)

2792 ハニーズHLD 10.7倍 (連結見込)

3092 ZOZO 20.2倍 (連結予想)

3185 夢展望 - (連結予想)

3189 ANAP - (連結予想)

3192 白鳩 39.7倍 (単独予想)

3320 クロスプラス 26.3倍 (連結予想)

3396 フェリシモ 10.1倍 (連結予想)

3415 トウキョベース 16.8倍 (連結予想)

3548 バロック 16.3倍 (連結予想)

3607 クラウディアH 4.0倍 (連結予想)

3608 TSIHD 20.3倍 (連結予想)

7606 Uアローズ 19.4倍 (連結予想)

8011 三陽商 11.9倍 (連結予想)

8143 ラピーヌ 5.1倍 (連結予想)

8227 しまむら 12.0倍 (連結予想)

9997 ベルーナ 6.8倍 (連結予想)


【私見】

 業種としては初物で面白みはあり、参入もしやすそうですが先行の優位性は多少ありそうです。業績は今期赤字なので評価しがたいです。吸収金額は小さめですが、1.5倍のロック切れVCの数が大量で、セカンダリー参戦はリスクが非常に高いと予想します。


想定価額:870円

仮条件上限:800円

初値予想:1000円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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