2022年7月21日木曜日

IPO分析(クラシコム)

 【事業内容】

 当社の運営する「北欧、暮らしの道具店」は、2007年にヴィンテージの北欧食器等を扱うECサイトとして始まりました。北欧に関係するものが占める割合は小さくなりましたが、販売する商品だけでなく、ユーザーとのつながりをつくり、深めるために提供しているコンテンツについても、すべて「暮らしを自分らしく、美しいものにすること」、「日常のささやかな幸せを大事にすること」といった、当社が強く共感した北欧カルチャーの本質に根ざしてつくられております。


 (1) ビジネスラインについて

① D2Cドメイン

 「北欧、暮らしの道具店」の提供している世界観に共感するお客様に対し、暮らしにフィットする商品を販売しております。当社の収益の大半を生み出しているのは当ドメインであります。

 当社とユーザーとの間にはECモールやECプラットフォームが介在しておらず、自社サイトを通じて直接商品を提供しております。

 このように、ユーザーと直接接点を持ち、直接商品を提供することで関係性を築いている状態であることから、当ドメインの事業活動を「D2C(Direct to Customer)」と表現しております。

 取扱商品は、アパレル・キッチン・インテリア雑貨が主力であり、自社企画のオリジナル商品(※)が売上高の約50%を占めております。現在は、北欧関連商品の割合は少なくなっているものの、「北欧」の価値観に影響を受けて始めた事業であり、今においてもその精神は受け継がれていることから、サイト名に「北欧」を冠しております。


② ブランドソリューションドメイン

 「北欧、暮らしの道具店」の強いブランドとコアな顧客基盤に加え、商品を紹介する読み物をはじめとした多様なコンテンツ制作で培った高い企画制作能力を活用し、クライアント企業のブランドが「選ばれ続けるブランド」になるためのソリューションを提供し、ナショナルブランド(全国で自社の製品を販売し、大規模に販促や宣伝活動に力を入れている広告主が展開しているブランド)を中心に、多くのブランドを継続的に支援しております。(ナショナルブランドとのお取り組み実績:100ブランド超(※))

 主な取り組みとしては、クライアントのブランドや商品を「北欧、暮らしの道具店」サイト上で、当社の読み物の一つとして掲載する「BRAND NOTE」があります。当社のスタッフ等が実際にブランドの商品を暮らしに取り入れている様子などを紹介するコンテンツを作成しております。

 その他に、動画コンテンツとしてブランドを紹介する「BRAND MOVIE」や、D2Cドメインの商品発送時に、クライアントの商品を同梱する「BRAND GIFT」などの取り組みを行っております。


(2) 「北欧、暮らしの道具店」の強みの源泉

 事業開始以来ユーザーとのダイレクトなつながりを大切にし、「北欧、暮らしの道具店」サイトを始めとした様々な媒体で、WEB記事、オリジナルドラマやドキュメンタリー、ラジオ番組や音楽プレイリスト、全国劇場公開されたオリジナルの映画など、多様なコンテンツを生み出し、発信し続けており、この活動をコンテンツパブリッシャーと呼んでおります。ライフカルチャー(世界観)の源泉として、「北欧、暮らしの道具店」の世界観を表現する多様なコンテンツを生み出し、様々なチャネルから発信し続けるコンテンツパブリッシャーとしての活動が、当社の強みとなっております。

 ライフカルチャープラットフォームの構造としては、3つの層で構成されており、「ビジネスライン」は「カルチャーアセット」と「エンゲージメントチャネル」によって支えられております。

 カルチャーアセットは、コンテンツパブリッシャーとしての活動を行うことによって生み出されたコンテンツやブランド、データという蓄積された無形の資産の集まりを表しており、ライフカルチャープラットフォーム事業を行うために最も重要な資産と考えております。

 コンテンツについては後述しますが、顧客に当社のライフカルチャー(世界観)を浸透させ、長期にわたるロイヤルティを醸成する強力な資産であります。ブランドとは、当社との関わりを通して、「北欧、暮らしの道具店」を認知する人の頭の中につくり上げられたイメージであります。またデータとは、お買い物をするときのユーザーの行動履歴や購買履歴などのデータであり、あらゆる事業活動の効率を高める羅針盤として意思決定に活用しております。

 エンゲージメントチャネルは、SNS(Earnedチャネル)から、アプリ、WEBサイト、メールマガジンといった自社チャネル(Ownedチャネル)にいたる多様なチャネルを指します。上記チャネルを通じて当社とユーザーがダイレクトにつながっております。

 「フィットする暮らし」づくりに貢献するようなコンテンツが蓄積され、エンゲージメントチャネルによってユーザーへ発信することで、ユーザーからのエンゲージメント(=好きでいてくれること、支持してくれること)が高まり、ユーザーが「フォロー」という形で当社とコミュニケーションする機会を提供してくれます。これにより毎日のようにコンテンツを提供することでエンゲージメントの高まったユーザーがD2Cドメインの商品の購入に至り、収益が生まれます。

 ビジネスラインであるD2Cドメイン、ブランドソリューションドメインの2つの事業領域は、幅広いチャネルと蓄積されたカルチャーアセットの土台の上で展開しております。ビジネスがユーザーと結びついているのではなく、ライフカルチャーがユーザーと結びついていると考えております。当社は、ライフカルチャーに共感したユーザーが喜んでくださるビジネスを、ライフカルチャープラットフォームとして展開しております。


当社がユーザーに提供しているコンテンツは、具体的には下記のとおりであります。

(商品とそれにまつわるユーザー体験)

 「お客様に自分自身のものさしで商品を選んでほしい」という想いを伝え、共感したお客様に、購入した商品を生活に取り入れていただくことが「フィットする暮らし」づくりにつながると考えております。

 例えば当店でお気に入りのグラスを見つけて購入する際、お客様自身の生活にどのように取り入れられるのか想像を膨らましてもらう。お買い物をして手元に届いたあとは、単に水を飲むための器としてだけでなく、そのグラスを使う瞬間は特別な気持ちになっている。商品の提供とは、お客様にこのような価値を提供していることと考えており、すなわちサイト上でのお買い物体験そのものをコンテンツとして捉えております。そして、お買い物いただいた商品をお客様の暮らし、ファッション、インテリアに取り入れていただくという行為も、広義のコンテンツだと考えております。


 (読み物)

 平日は毎日5本程度、月間で100本程度の記事を読み物として「北欧、暮らしの道具店」上で提供しております。読み物の内容には、ECで取り扱っている商品について、バイヤーやプランナーが込めた想いを紹介するもの、スタッフが自身の生活について綴るコラム、何らかのテーマに沿った特集記事などがあります。特集記事では、食事にまつわるものや、レシピを紹介するもの、インテリアを取り上げたものなど、「暮らし」を軸にしながら、多岐にわたったテーマを扱っております。記事には当社スタッフが作成するものと、スタッフは記事の企画を行い、外部のライターに指示することで作成するものがあります。「北欧、暮らしの道具店」サイトなどインターネット上の読み物だけではなく、お買い物いただいたお客様に小冊子の提供をすることもあります。


 (動画)

 少し変わった家族構成の4人のまわりの出来事をドラマにした「青葉家のテーブル」や、一人暮らしの女性が「自分のお城」のワンルームの部屋を好きな雑貨でいっぱいにし、テーマミュージックとともに料理をする「ひとりごとエプロン」などを通して、「北欧、暮らしの道具店」の「世界観」を詰め込んだ短編ドラマを制作しております。また、様々な人たちの朝の習慣を動画として収めた「モーニングルーティン」や、生き様に迫る「うんともすんとも日和」などのドキュメンタリーも制作し、公開しております。これらの動画はYouTube上に無料で公開されており、2022年3月現在、チャンネル登録者数は50万人に達しております。

 オリジナルドラマである「青葉家のテーブル」については映画化し、2021年6月に全国の劇場で公開されました。


(SNS)

 LINE公式アカウント、Instagram、FacebookなどのSNSやメールマガジンの運営を、マーケティングの手段としてだけでなく、コンテンツの形態の一つであると考えております。SNSの投稿内容は、「北欧、暮らしの道具店」のサイト上のコンテンツを、各媒体に合わせた形に編集して紹介しているものや、各媒体独自の記事を作成することもあります。


(ラジオ)

当社取締役で「北欧、暮らしの道具店」店長の佐藤と、スタッフのよしべこと青木がお届けするインターネットラジオ「チャポンと行こう!」や、過去に記事として紹介していたエッセイをスタッフが朗読する「エッセイラジオ」をSpotifyやApple musicなどの音楽サービス上で公開しております。


 (音楽)

SpotifyやApple music内に提供されている音楽プレイリストの作成機能を利用して、音楽が好きなスタッフが中心となって、「わたしの朝習慣」や「仕事と、音楽と。」などのテーマに即したプレイリストを作成して公開しております。


「北欧、暮らしの道具店」は、独自のライフカルチャー(世界観)があふれる温泉を体験できるリゾートパークのようなプラットフォームです。温泉を楽しむためにやってきたお客様に、リゾートパークでさらに素晴らしい体験をしていただくことで、「もっと長く滞在したい」「この体験を持ち帰りたい」というニーズが生まれ、そのニーズに応えるべく旅館やお土産屋さん(ビジネスライン)が賑わい、さらに気軽にお越しいただけるように交通網(エンゲージメントチャネル)が整えられていきます。たとえ、リゾートパークが賑わったとしても、肝心の温泉が枯れてしまっては元も子もありません。一番大切なのは、お客様が入りたいと思えるような温泉を枯らさないことであります。これからも、当社はこの「温泉」=ライフカルチャーを大事に守りながら、よりお客様の日常に寄り添えるよう利便性を強化して、さらに長い時間をともに過ごしたいと思われるリゾートパーク=プラットフォームに成長させていきたいと考えております。


 エンゲージメントアカウント数の増加は、多くのユーザーからエンゲージメントを獲得していることを示しております。そのエンゲージメントが、一段深まった形で蓄積されていることが、累積会員数の増加に現れております。(会員:「北欧、暮らしの道具店」での商品購入時に必要な顧客情報を登録した状態のこと)そして、会員が購入することにより、D2Cドメインの収益につながります。

 エンゲージメントアカウント数とは、公式SNSのフォロワー数、YouTubeチャンネル登録数、アプリのダウンロード数、メルマガ会員数等の合計であり、定期的に当社がリーチできる状態のユーザー数に相当するものと考えております。なお、一人のユーザーが複数登録している場合は、重複してカウントされます。

 「北欧、暮らしの道具店」のエンゲージメントアカウント数推移、累計会員数推移、年間購入者数推移は、それぞれ以下のとおりであります。

 


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2022/07 単独3Q累計実績 3,863 616 626 414

2022/07 単独会社予想 5,149 829 834 550

2021/07 単独実績 4,532 779 797 570

2020/07 単独実績 3,472 532 561 374


決算期 種別 EPS BPS 配当

2022/07 単独会社予想 85.98 359.87 0.00


上場時発行済株数 7,070,000株

公開株数 2,458,700株(公募670,000株、売り出し1,468,000株、オーバーアロットメント320,700株)

調達資金使途 人件費・採用費、広告宣伝費


PER:16.5

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:34.9億

公募時時価:100億

​   


【株主構成】 以下360日

青木耕平 代表取締役 4,832,000 75.50%

佐藤友子 取締役執行役員、代表取締役の実妹 1,280,000 20.00%

青木祐一郎 代表取締役の血族 288,000 4.50%


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である青木耕平、売出人である佐藤友子は、共同主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後360日目の2023年7月30日までの期間中、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)等を行わない旨合意しております。

 また、当社は共同主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の2023年1月31日までの期間中、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の発行、当社普通株式に転換若しくは交換される有価証券の発行又は当社普通株式を取得若しくは受領する権利を付与された有価証券の発行(ただし、本募集、株式分割及びオーバーアロットメントによる売出しに関連し、2022年7月1日開催の当社取締役会において決議されたみずほ証券株式会社を割当先とする第三者割当増資等を除く。)等を行わない旨合意しております。

【代表者】

代表者名 青木 耕平(上場時49歳11カ月)/1972年生

本店所在地 東京都国立市東

設立年 2006年

従業員数 77人 (2022/05/31現在)(平均34.2歳、年収647.4万円)

事業内容 EC(電子商取引)サイト「北欧、暮らしの道具店」における服飾雑貨などの販売事業

URL https://kurashi.com/

株主数 4人 (目論見書より)

資本金 8,000,000円 (2022/07/01現在)

代表者生年月日 1972年08月08日生まれ

代表者略歴

2002年09月 (株)ジャパンエレベーターサービス(現ジャパンエレベーターサービスホールディングス(株))入社

2005年11月 (株)日本リフツエンジニアリング入社

2006年02月 エレベーターコミュニケーションズ(株)共同創業者兼取締役

2006年09月 当社設立代表取締役(現任)



【幹事団】

主幹事証券 みずほ - -

主幹事証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 松井 - -

引受証券 いちよし - -


【参考類似企業】今期予想PER(7/5)

3071 ストリーム 6.7倍 (連結予想)

3185 夢展望 - (連結予想)

3192 白鳩 40.5倍 (単独予想)

3195 ジェネパ 19.3倍 (連結予想)

3396 フェリシモ 10.0倍 (連結予想)

3542 VEGA 303.5倍 (単独予想)

8005 スクロール 7.9倍 (連結予想)

8165 千趣会 - (連結予想)

9997 ベルーナ 6.9倍 (連結予想)


【私見】

 北欧を中心とした雑貨等の販売で、独自性があることは評価できますが、同業もあり市場規模からも高い評価できません。売上・利益の伸びは良いですが、PERからは適度で上値はそう大きくはないと思います。株主の人数も少なく、売り要素は少ないのですが、吸収金額は大きく買いは少ないと予想します。


想定価額:1420円

仮条件上限:1420円

初値予想:1420円

ブック申し込み度・・・中立

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3

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