2025年11月14日金曜日

IPO分析(HUMAN MADE)

 【事業内容】

私たちHUMAN MADE Inc.は、人間の閃きと、人間の手が生み出すカルチャーの芽をマンガ、アニメ、ゲームに続く日本を代表するクリエイティブ産業に育てる会社です。当社は、「人間の閃きが生み出し、人間の手が創り出す輝きを、世界へ。」をミッションに掲げています。カルチャーを創り出し、世界中へ届けることによって人々の心を豊かにしていきます。同時に、クリエイターに対しても活躍の場を世界中に広げることを目指しています。

 

当社は、「過去と未来の融合」をテーマとしたオリジナリティあふれるさまざまなアイテムを展開しています。

品質の高い素材やディテールにこだわったもの作りによる商品価値の高いアパレル等の製品((a) プロダクト)を、クリエイティブに造詣の深い世界中の顧客にEC及び店舗チャネル中心に提供する((b) プレイス)ことで、国内外問わず一般のファンの皆様、アーティスト・クリエイター等の著名人から支持されていると考えています。

商品の元々の価値に加え、さまざまな著名人や企業ブランド等とのコラボレーションによりブランド価値がさらに向上し、売れ残りはほぼなく、値引きを一切行わない販売政策を採っています((c) プライス)。また、Instagram等のSNSを活用し費用をかけずにファンへの直接的な広告宣伝((d) プロモーション)が可能であり、これらの組み合わせにより高い利益率を実現しています。

当社のビジネスモデルのイメージ図は、以下となります。なお、当社はブランド事業の単一セグメントです。

 

 


 


 

 

(a) プロダクト(企画及び生産)

「HUMAN MADE」では、“The Future Is In The Past”のコンセプトのもと、ストリートに息づく大胆な発想に日本の妥協なきモノづくり精神と遊び心を織り交ぜ、付加価値の高い商品を企画・デザイン・生産しています。

 

(ⅰ)「HUMAN MADE」ブランドのアイテム

「HUMAN MADE」の商品は大きく分けてアパレルとライフスタイルに区分されます。

アパレルは衣料品、ライフスタイルはインテリア用品やタオル等、幅広い生活雑貨のアイテムで構成されています。

 

図表1:「HUMAN MADE」ブランドのアイテム


 

 

 

(ⅱ) クリエイター、アーティスト、ミュージシャン、国内外ブランド企業等とのコラボレーション

「HUMAN MADE」ブランドとして、「KAWS氏(注)1」、「VERDY氏(注)2」等のクリエイター等とのコラボレーションや、「NIKE」、「Levi`s」といった世界的ブランド企業とのコラボレーションにより、各種商品を展開しています。

(注) 1.KAWS(カウズ)氏は、1974年ニュージャージー生まれのアメリカのグラフィティ・アーティストです。1990年代初めにグラフィティ・アーティストとして頭角を現し、その後1993年から1996年まで School of Visual Artsで学んでおり、×印の目のキャラクターを用いた作品で広く知られ、著名ブランドとも数多くコラボレーションを行っています。

2.VERDY(ヴェルディ)氏は、関西出身の日本人であり、ストリート界で注目を集めている人気のグラフィックアーティストです。「Girls Don’t Cry(ガールズ ドント クライ)」や「Wasted Youth(ウエステッド ユース)」等のブランドを手掛けており、その個性的なロゴやテイストで根強い支持を集めています。

 

 

図表2:コラボレーションの一例


 

 

(b) プレイス(販売チャネル)

当社は直接お客様と接点を持つ自社ECと自社店舗をダイレクトチャネルと位置づけ、重視しています。ECと店舗で特性が異なるため、環境変化に応じて最適なバランスになるように商品の配分を調整しています。

補完的に海外店舗向けの卸売を行っていますが、これは自社チャネルを展開すると効率が悪化するエリアについて、卸売チャネルでカバーする方針によります。

当社の販売チャネル一覧は、以下になります。

 

・自社EC

自社ECはお客様から見た場合は在庫があれば気軽に購入できる利便性があること、当社から見た場合は後述するSNS等を活用したプロモーション戦略との相性が良いこと、低い固定費で効率よく運営ができること、グローバル展開がしやすいことが当社の事業戦略と整合的と考えています。なお、プラットフォーマーへの出店はせず、自社ECのみを運営する方針です。

グローバル展開しているSaaS型ECサービスを活用し、自社ECとして運用することで、低コストで世界の大多数の国に対して販売が可能となっています。

 

・自社店舗

「HUMAN MADE」ブランドの店舗として、日本国内においては、東京都内に3店舗、札幌・京都・大阪・福岡に1店舗ずつ、合計7店舗出店しています。同チャネルは「HUMAN MADE」の世界観を顧客に体験していただき、既存顧客を維持し、新規の顧客にファンになっていただく重要なチャネルと位置付けています。

店舗は、図表4に記載のとおり、4タイプで分類しており、ブランド価値を毀損することのないように展開しています。

 

 

図表3:店舗一覧


 

 

図表4:店舗タイプ

 


 

 

・卸売

欧州、中東、東南アジア等、海外において自社での販売を行うことで効率が低下するようなエリアについては、現地の高級百貨店・セレクトショップに対して卸売を行っています。

また、韓国、中国等の重要な拠点では、厳選したパートナーと契約し、HUMAN MADEブランドのみを扱うモノストアを出店しており、現在、中国、韓国、香港に各1店舗を出店しています。現地パートナーによって運営されている海外のHUMAN MADE店舗向けの売上は卸売上に含まれます。

 

・その他

その他として、飲食店舗の運営と保有するIPのライセンスアウトを行っています。

飲食店舗の運営は、当社のミッションである「人間の閃きが生み出し、人間の手が創り出す輝きを、世界へ。」を実現すべく、魅力的なライフスタイルの提案の一環として手がけています。

自社ブランドのカレーショップ「CURRY UP」及びBlue Bottle Coffee Japan合同会社との協業でHUMAN MADEブランドの店舗内に「BLUE BOTTLE COFFEE」の店舗を設置し、運営しています。

また、当社は自社IPのライセンスアウトを行っています。自社のブランドを展開することができないか、または自社で展開すると効率が悪化するような地域/商品カテゴリに対してライセンスアウトを行うことで収益化を図ることを目的としています。

 

(c) プライス

価格決定力は事業の収益力に与える影響が非常に大きい要素と認識しています。

まず、商品価格の決定にあたっては妥協のない商品を提供したいとの考えから、かかったコストに対して必要な利益等を勘案して価格を決定する考え方を基本としています。このような価格決定を行った場合、同じカテゴリの他社商品の市場価格との差が問題となりますが、価格差を上回る価値をお客様に提供し、お客様の信頼にこたえる方針です。

当社は、商品価値を維持・向上するにあたり、セールや値引き販売を行いません。また、需要見込みに対して供給数を絞り込むことで、一般的なアパレル会社が30%~40%のプロパー消化率と言われているところ、設立から一貫して100%のプロパー消化率(販売した商品のうち、定価で売れた商品の比率)を実現しています。加えて、商品消化率(発売した商品のうち、最終的に販売された商品の比率)もほぼ100%であり、プロパー消化率と合わせ、当社ブランドの人気度を表していると認識しています。

また、商品の企画・デザイン段階から素材等品質や風合い等に拘った商品を作り、お客様の満足度の高い商品を限定的に供給し、販売と同時に完売する(プレミア化)ことが基本的な流れとなっています。

常に需要全体に対して少な目に供給を行うことで、商品価値・価格の維持、適正な在庫量、保管コストの削減につながり、財務面でも在庫回転率や売上総利益率が高い要因の一つとなっています。

商品価値の維持・向上に関するイメージ図は、以下となります。

 


 

(d) プロモーション

当社は、テレビ、雑誌、インターネット等の広告枠を購入して商品広告を行うような一般的な手法は採用していません。クリエイター、アーティスト、ミュージシャンや全世界に向けてグローバルに事業を展開する企業とのコラボレーション等を通じて商品情報を発信しています。

クリエイターやアーティスト等はその分野において既に固有のファンから支持を受けている著名人が多く、グローバル企業とのコラボレーションも全世界における当社ブランドの知名度向上に寄与します。

これらの著名人及び企業は、自らの価値向上にもつながるプロモーションにも積極的に取り組んでくれるほか、グローバル企業側においてもブランドの価値向上や認知度向上につながる広告宣伝として積極的に実施する傾向にあります。「HUMAN MADE」のコアファンとなっている国内外のミュージシャンや俳優等のセレブリティは自身のSNS、InstagramやTikTok等さまざまな機会を通じて自発的な情報発信を行ってくれており、当社にとっての宣伝効果は高く「HUMAN MADE」ブランドの価値向上や認知度向上につながっています。

これらを通じて、当社としては多額のマーケティングコストをかけることなく、ブランド価値向上や顧客認知の増大につながっています。

なお、当社が使用する広告費の中身は、主にSNSで使用する動画制作費用や、ルックブックの撮影費用、プロモーションとして配布する商品原価費用等が大半を占めます。

以下は、当社のアドバイザー兼株主であるPharrell Williams氏(注)による着用及び情報発信の一例です。

 


 

 

(注) Pharrell Williams氏は、当社のアドバイザー兼株主であり、アメリカのアーティスト/プロデューサー/シンガーソングライター/慈善活動家/ファッション・デザイナー/起業家です。いままでに13のグラミー賞を受賞し、2つのアカデミー賞やゴールデングローブ賞、エミー賞にもノミネート。2023年には『LOUIS VUITTON』メンズクリエイティブ・ディレクター就任。2017年に当社に資本参画したのち、2023年に当社アドバイザーに就任しています。

 


【業績等】
決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益
2026/01 単独中間実績 5,986 1,804 1,764 1,143
2026/01 単独会社予想 13,697 3,803 3,635 2,598
2025/01 単独実績 11,258 3,180 3,176 2,127
2024/01 単独実績 8,390 2,248 2,257 1,586

決算期 種別 EPS BPS 配当
2026/01 単独会社予想 117.31 - 0.00

上場時発行済株数 22,911,400株(別に潜在株式591,740株)
公開株数 6,522,100株(公募931,400株、売り出し4,740,000株、オーバーアロットメント850,700株)
調達資金使途 国内新規出店のための敷金と設備資金、新本社内装工事などの設備資金、ECシステムの設備資金、海外人件費と採用費

PER:26.7
PBR:
配当利回り:
公募時吸い上げ資金:204億
公募時時価:717億
​   
 【株主構成】 
(株)NIGOLD 創業者の100%出資会社 9,800,000 43.42% 180日
Pharrell Williams アドバイザー 5,800,000 25.70% 180日
長尾智明 外部協力者、元役員、創業者 4,400,000 19.49% 180日
松沼礼 代表取締役CEO兼COO 660,000 2.92% 360日
柳沢純一 取締役CFO 660,000 2.92% 360日
鳩山玲人 取締役CSO 660,000 2.92% 360日
Brian Donnelly 外部協力者 200,000 0.89% 180日
田中慧 外部協力者 200,000 0.89% 180日
匿名1 従業員 15,580 0.07%
匿名2 従業員 15,000 0.07%

本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である長尾智明、売出人であるPharrell Williams及び株式会社NIGOLD並びに当社新株予約権者であるBrian Donnelly及び田中慧は、共同主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2026年5月25日までの期間中、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと及びグリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を野村證券株式会社が取得すること等を除く。)を行わない旨合意しています。

さらに、売出人である松沼礼、柳澤純一及び鳩山玲人は、共同主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後360日目の2026年11月21日までの期間中、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し等を除く。)を行わない旨合意しています。

また、当社は共同主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2026年5月25日までの期間中、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の発行、当社普通株式に転換若しくは交換される有価証券の発行又は当社普通株式を取得若しくは受領する権利を付与された有価証券の発行等(ただし、本募集、株式分割及びストック・オプションとしての新株予約権の発行等を除く。)を行わない旨合意しています。

なお、上記のいずれの場合においても、共同主幹事会社はその裁量で当該合意の内容を一部若しくは全部につき解除できる権限を有しています。



【代表者】
代表者名 松沼 礼(上場時47歳4カ月)/1978年生
本店所在地 東京都品川区上大崎
設立年 2016年
従業員数 190人 (2025/09/30現在)(平均32.4歳、年収609.2万円)
事業内容 紳士服、婦人服、子供服など各種衣料繊維製品および装飾雑貨の製造、販売他
URL https://humanmade.co.jp/
株主数 6人 (目論見書より)
資本金 87,500,000円 (2025/10/23現在)

代表者生年月日 1978年07月25日生まれ

代表者略歴

2004年02月 ㈱ファーストリテイリング入社

2005年11月 ㈱ユニクロ入社(転籍)

2017年05月 同社グローバルマーケティング部 PR部長兼UT・コラボレーション事業推進部部長

2020年03月 同社ジャパンマーケティング統括部長

2021年07月 当社取締役、8月:当社取締役COO

2022年09月 当社代表取締役社長COO

2024年05月 当社代表取締役CEO兼COO(現任)



【幹事団】
主幹事証券 野村 - -
主幹事証券 みずほ - -
引受証券 大和 - -
引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -
引受証券 SBI - -
引受証券 楽天 - -
引受証券 マネックス - -

【参考類似企業】今期予想PER(10/27)
2685 アンドエスティ 10.5倍 (連結予想)
3083 スターシーズ 18.4倍 (連結予想)
3092 ZOZO 25.2倍 (連結予想)
5892 yutori 40.7倍 (連結予想)
7445 ライトオン 304.7倍 (単独予想)
8127 ヤマトインタ 61.4倍 (連結予想)
9876 コックス 6.3倍 (連結予想)
9983 ファーストリテイ 39.9倍 (連結予想)

【私見】
 セレブブランドのアパレル会社の上場で、人気業種ではありませんが、セレブに特化し、著名デザイナーNIGOが創業で、2位株主でアドバイザーのグラミー賞歌手と話題性たっぷりの会社です。2割ほどの増収・増益を続け、上場資金で東京・大阪の旗艦店を出店し、海外展開も更に広げることから夢は膨らみます。
 問題は時価総額の大きさで、機関投資家の買い意欲は高く仮条件も上がったのでそこそこの人気はありそうです。海外次第で上もあるかもしれませんが、一般受けする価格帯の商品でないことからも未知数ではあります。

想定価額:2920円
仮条件上限:3130円
初値予想:3500円
ブック申し込み度・・・やや強気
セカンダリー期待度・・・中立
総合評価:3.5

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