2021年4月7日水曜日

IPO分析(ステラファーマ)

 【事業内容】

(1)事業の特徴

①BNCTの医療技術

 BNCTは、ホウ素の安定同位体であるB-10とエネルギーの小さな熱中性子の核分裂反応を利用して、がん細胞を選択的に破壊する放射線治療の一手法であります。

 ホウ素の安定同位体であるB-10(天然ホウ素に約20%含まれる)の原子核はエネルギーの低い低速の中性子(熱中性子)をよく吸収し、直ちにヘリウム原子核(4He核(α粒子))とリチウム原子核(7Li核)に分裂します。これら原子核は細胞を破壊する能力が非常に大きい一方で、影響を及ぼす範囲が4~9ミクロン(μm)と極めて短く、また、熱中性子自体の細胞破壊能力は小さいため、B-10を含む物質が、がん細胞に選択的に集積し、そこに熱中性子が照射されると、そのがん細胞は選択的に破壊されます。この原理に基づいて考案された医療技術がBNCTであります。


②ビジネスモデルについて

 当社が、2020年3月に、切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌を効能・効果として、ステボロニン®の医薬品製造販売承認を取得したことに伴い、既に加速器を設置しております総合南東北病院、大阪医科大学附属病院の2つの医療施設においてBNCTによる治療が開始されております。当社は国内において治療が開始されたことに伴い、医薬品卸売業者を介した自販モデルによる収益化を実現しております。

 今後も加速器メーカーとの共同でステボロニン®の適応拡大に向けた研究開発及び臨床試験を継続していくと同時に、当社の製品は加速器メーカーとのコンビネーションプロダクトをベースとしていることから、BNCTの認知度向上と加速器の普及に向けた事業展開も並行的に進めることで、収益拡大を実現していくビジネスモデルであります。


(2)開発品の特徴

①開発品の概要について

 当社が、開発、製造及び販売するステボロニン®(開発品名:SPM-011)は、厚生労働省の実施する先駆け審査指定制度の対象品目に指定されており、2020年3月にBNCT用ホウ素薬剤として世界初となる薬事承認を取得しております。

 BNCTは、その性質上、中性子の発生装置となる医療機器と医薬品を組み合わせた治療法であり、患部に高い選択性で集積し、かつ効果的な反応が得られるホウ素薬剤が必要となります。


②開発品の作用機序について

 天然ホウ素には、中性子数の異なるホウ素10(B-10)とホウ素11(B-11)の2種類が存在し、B-10は約20%の割合で存在しています。BNCTにおいて核分裂反応を起こすホウ素はB-10のみであるため、効果的なホウ素薬剤とするためには、B-10を高純度に濃縮し、より多く含有する製剤を作る必要があります。

 当社の開発品であるステボロニン®は、この高純度(99%以上)B-10を含む「ボロファラン(10B)」を原薬として製造しております。ボロファラン(10B)は、必須アミノ酸であるフェニルアラニン※2又はチロシン※3と構造が似ているため、がん細胞特有のアミノ酸トランスポーターであるLAT-1※4を介してアミノ酸要求性の高いがん細胞に取り込まれます。これにより、がん細胞に選択的にB-10が集積し、かつ中性子線を照射した際により大きな効果を得ることが可能となります。


③開発品の競争優位性について

 B-10を高純度(99%以上)に濃縮する技術は、当社の親会社であるステラケミファ株式会社が国内で唯一(世界でも2社のみ)保有しているものと認識しております。

 当社は、高純度(99%以上)まで濃縮されたB-10を原料として、原薬「ボロファラン(10B)」を製造し、さらにステボロニン®に製剤加工しております。原料については親会社であるステラケミファ株式会社との間で独占期間を定めた取引基本契約を締結し、安定的に原料供給を受ける調達体制をとっております。また製剤処方にかかる特許権を複数取得しており、今後も周辺特許の申請を積極的に行っていく方針であります。ステボロニン®は臨床研究において従来使用されていたフルクトース製剤に比べ安定性に優れ、さらに36ヶ月という長期の品質有効期間を保ち、治療毎に製剤を調製する必要もなく、また「医薬品の製造管理及び品質管理の基準(GMPgrade)」に適合した製剤でもあります。

 この特徴に加え、当社における長年の研究開発期間と相当程度の投資は後発事業者にとっては大きな参入障壁になると考えております。また当社の開発品であるBNCT用ホウ素薬剤「SPM-011」は、厚生労働省の実施する先駆け審査指定制度※5の対象品目に指定されておりましたが、2020年3月にステボロニン®として医薬品製造販売承認を取得したことは後発事業者にとっては、先駆け審査指定制度の対象品目に指定されるための要件の一つとして治療薬の画期性が求められることから、参入障壁となると考えられ、当社の競争優位性は一定程度維持できると認識しております。

 この競争優位性を維持しながら、ステボロニン®を「世界初、日本初」の医薬品として、医療現場へ提供することを目標として事業を推進してまいります。


(3)事業戦略

 当社は、BNCTの医療技術を軸に加速器メーカーと共同でステボロニン®の適応拡大に向けた研究開発及び臨床試験を実施し、開発パイプラインの拡充を進めてまいります。またステボロニン®の医薬品製造販売承認を取得したことに伴い、国内ではBNCTによる医療技術や治療実績の認知度向上と加速器の普及を目指し事業を展開してまいります。 認知度の向上には医療施設や大学等の研究機関への訪問活動を通じてステボロニン®の有効性や安全性に係る医療情報の提供を充実させていくとともに、学会や講演会を通じて、より効果的な事業活動を展開してまいります。

 海外では日本で承認を得た疾患を対象に、米国及び欧州を中心に承認取得を目指すとともに、各国のレギュレーションに通じた製薬企業等との連携によるアライアンスモデルを計画しており、パートナー企業の選定に取り組んでまいります。そして特に成長が見込まれる海外のオンコロジー領域におけるステボロニン®の適応拡大は当社における重要な成長戦略と位置づけ、経営資源の重点配分を行ってまいります。


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(単独実績)2019.3 0 -861 -856 -859

(単独実績)2020.3 0 -951 -959 -962

(単独予想)2021.3 205 -688 -658 -661

(単独3Q累計実績)2021.3 155 -502 -502 -504


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(単独予想)2021.3 -33.01 - 0

調達資金使途 臨床試験などの開発資金、海外展開のため技術移管などに係る開発資金、借入金の返済、人件費


上場時発行済み株数 27,528,800株 (別に潜在株式978,800株)

公開株数 8,500,000株(公募7,391,400株、オーバーアロットメント1,108,600株)


・募集を行う地域

欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)



PER:

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:39.1億

公募時時価:126億

    


【株主構成】 

ステラケミファ(株) 親会社 12,760,000 60.43 180日

(株)INCJ 特別利害関係者など 7,000,000 33.15 90日・1.5倍

住友重機械工業(株) 特別利害関係者など 200,000 0.95 180日

浅野智之 代表取締役会長 185,000 0.88 180日

藪和光 取締役 167,000 0.79 180日

上原幸樹 代表取締役社長 160,000 0.76 180日

(株)スズケン 特別利害関係者など 88,700 0.42

(株)ハイメディック 特別利害関係者など 88,700 0.42

槌谷武 従業員 35,500 0.17

藤井祐一 取締役 33,500 0.16

村上祐子 従業員 33,500 0.16

中島秀紀 従業員 33,500 0.16

林利充 執行役員 33,500 0.16


 本募集に関連して当社株主かつ貸株人であるステラケミファ株式会社並びに当社株主(新株予約権者を含む。)である住友重機械工業株式会社、浅野智之、藪和光、上原幸樹、藤井祐一及び永田清は主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2021年10月18日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却(ただし、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すことを除く。)等を行わない旨合意しております。

 また、当社株主である株式会社INCJは、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後90日目の2021年7月20日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却(ただし、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと及びその売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、東京証券取引所における初値が形成された後に主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等を除く。)等を行わない旨合意しております。

   

【代表者】

代表者名 上原幸樹(上場時43歳10カ月)/1977年生

本店所在地 大阪府大阪市中央区高麗橋

設立年 2007年

従業員数 43人 (2/28現在)(平均44.9歳、年収678万円)

株主数 5人 (目論見書より)

資本金 1,999,964,000円 (3/19現在)

代表者生年月日 1977年06月11日生まれ

代表者略歴

2004年04月 ステラケミファ(株)入社

2007年08月 当社入社 研究開発部長

2012年04月 当社 取締役研究開発部長

2012年11月 当社 取締役開発本部長 兼 安全性管理部長

2015年02月 当社 常務取締役開発本部長 兼 安全性管理部長

2019年06月 当社 常務取締役開発本部長

2020年06月 当社 代表取締役社長(現任)


【幹事団】

主幹事証券 みずほ 5,543,800 75.00

引受証券 大和 886,900 12.00

引受証券 SMBC日興 295,600 4.00

引受証券 いちよし 147,800 2.00

引受証券 エース 147,800 2.00

引受証券 岩井コスモ 147,800 2.00

引受証券 SBI 147,800 2.00

引受証券 楽天 73,900 1.00


【参考類似企業】今期予想PER(3/31)

4109  ステラケミファ 19.0倍(連結予想 )

4587  ペプチド 179.2倍(連結予想 )

6302  住友重 17.2倍(連結予想 )


【私見】

 赤字のバイオというだけで投資対象外になってしまい、直近2年の売上がゼロで、今期は僅かな売上と厳しい状況が続きます。需給面では、海外売出しもありながら大きな規模ではなく、上位株主にはロックないし、1,5倍までのロックは付されているので、公募を大きく割れることはないと予想します。


想定価額:510円

仮条件上限:460円

初値予想:500円

ブック申し込み度・・・やや弱気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価2.5

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