2021年7月1日木曜日

IPO分析(ラキール)

 【事業内容】

(1)LaKeel事業

①シェアリングエコノミー時代の到来と企業システムが直面する2つの問題点

  企業システムの運用において、従来は各企業がデータセンターを所有し、その自社センター内に多くのサーバーを所有することで企業経営を支えてきました。しかし、近年のアマゾン、マイクロソフト、グーグルなどの大手クラウド事業者の出現により、各企業はコンピュータの運用をこれら大手クラウド事業者のサービスに乗せ換える動きが顕著になり、コンピュータを自社で所有する企業は大きく減少傾向にあります。

 一方で、これら大手クラウド事業者サービスの利用を開始すると、新たな問題点が明らかになりました。1つは、その大手クラウドサービスの技術を熟知しないと、そのサービス上で思うようなシステムの開発・改変が出来ないという問題です。これは技術者の不足も相俟って大手企業といえども簡単には解決出来ない課題です。また、もう1つは、大手クラウドベンダー1社に絞ると効率的な運用を可能にするものの、1社のサービス内容の変更により経済合理性が崩れるなど、全てを依存するのは危険ではないか、との指摘もなされる様になりました。


②当社が提供する解決策

上記の問題点を解決するために、当社はLaKeel DXを開発しました。LaKeel DXはアプリケーション開発を効率的に行うための環境です。LaKeel DXを活用することで、ユーザー企業はサーバーやネットワーク機器を準備することなく、アマゾン、マイクロソフト、グーグル等の大手クラウド事業者が提供する、主にサーバー運用のためのクラウドプラットフォームの上で、アプリケーションの開発・運用を行うことができます。

LaKeel DXはさまざまなクラウド事業者のサービスに対応しているため、ユーザー企業は大手クラウド事業者のサービス(安価なコンピュータリソース、安全な環境など)を享受しつつも、他の大手クラウド事業者への乗り換えが困難になることなく、状況に応じて最適な選択肢を得ることが可能になります。


③シェアリングエコノミー時代に相応しい開発手法

 デジタルトランスフォーメーションが叫ばれる時代において、各企業は新たなビジネスモデルの創出、それに伴うITシステムの構築が必須となっています。これまでの企業のシステム開発においては、『小さな機能ごとの部品を組み合わせる』という開発手法は存在しておらず、ひとつひとつのシステム全体を手作りで構築していました。また、企業のシステムは自社固有のシステムであるべき、という考え方の下で自社所有が一般的でした。

 当社のLaKeel DXは、企業のシステム開発を可能とする細かな部品(ファイル管理、検索、マスタ連携といった機能)を数多く用意しており、これらを自在に組み合わせることで必要な業務機能の実現(システム開発)が可能となります。この開発技術で当社は特許を取得しました。

 勿論、LaKeel DX上でユーザー企業の情報システム部が機能部品を開発することも可能です。ユーザー企業は、この組み合わせ自在な機能部品を利用することで、大手クラウド事業者固有の技術に精通することなく、デジタルトランスフォーメーションに対するアプローチを採ることが可能になります。そして、これらを組み合わせることで『使えば使うほど便利になる仕組み』を実現するのがLaKeel DXです。従って、より少ない技術者によるシステムの開発・改変が可能となります。

 同時に、ユーザー企業は必要な機能部品などの利用料を払うだけで必要な機能の入手が可能となり、将来ビジネスモデルが変更になり、その時点で不要となるシステムの減価償却を継続する、という必要がなくなります。

 LaKeel DXは2019年5月にリリースした製品で、開発・販売の歴史が浅く現時点では主力の製品サービスではありませんが、以上のような背景から今後当社グループが最も注力していくサービスです。


(2)当社グループの事業モデル

①プロフェッショナルサービス

 現在の主力サービスであるプロフェッショナルサービスは、主に大手建設会社、大手不動産会社、大手金融機関等向けの基幹システムを対象に、システム開発サービス、システム保守サービスを展開しております。なお、本サービスの一部をビジネスパートナーに委託しております。


②プロダクトサービス

1)製品サービス

 LaKeel DX上で稼働する多くの製品を順次リリースしています。ユーザー企業は、これら製品を自社資産として所有することなく、必要な期間・必要な機能分の利用料を支払うことで、よりスピーディに新たな機能を活用し、自社の業務を支えるITサービスにおけるシェアリングエコノミーのメリットを受けることが可能となります。

 これらの製品には、業務アプリケーションだけでなく、それを構成している機能部品群、LaKeel DX上で自在に部品を組み合わせて開発を行う基盤、製品や開発された機能部品群を最適に運用する基盤が含まれています。


2)コンサルティングサービス

a. LaKeel DXコンサル

 LaKeel DXを最大限に活用する為のコンサルティングサービスを提供することで、ユーザー企業の推進するデジタルトランスフォーメーションの実現とITを通じた経営戦略への貢献の最大化を図ります。

b. LaKeel DX Dataコンサル

 LaKeel DXに上に収集された膨大なデータを分析し、これを経営判断に活かすためのサービスです。

 

(3)当社グループの事業の収益モデル

①プロフェッショナルサービス

 システム開発及びシステム保守を提供するモデルです。新規顧客向けのシステム開発案件はフロービジネスです。また、既存顧客向けのシステム開発案件、及び保守案件は持続的な安定収益をもたらすリカーリング型レベニューモデル(*8)です。それらの売上の比率は以下の通りとなっており、リカーリング型レベニューモデルがサービス全体の大半を占め、安定した収益確保に貢献しております。


2)コンサルティングサービス

 サービスの提供によりその対価を受領するフロービジネスで、製品サービスの成長に伴い、収益が増加するモデルです。  


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(連結実績)2019.12 5,665 178 182 86

(連結実績)2020.12 5,331 254 243 139

(連結予想)2021.12 5,809 402 346 223

(連結1Q実績)2021.12 1,274 62 46 18


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(連結予想)2021.12 32.94 323.89 0

調達資金使途 開発費、技術系人材の採用・育成費、広告宣伝費、借入金の返済


上場時発行済み株数 7,228,500株 (別に潜在株式965,000株)

公開株数 1,449,000株(公募840,000株、売り出し420,000株、オーバーアロットメント189,000株)


PER:42.5

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:20.2億

公募時時価:101億


【株主構成】 

久保努 代表取締役社長など 3,400,000 46.24 90日

KST有限責任事業組合 社外協力者が設立した共同出資組合 1,100,000 14.96 90日  

ラキール従業員持株会 特別利害関係者など 724,100 9.85 90日

(同)シングル・マインド 新株予約権信託の受託者 400,000 5.44

平間恒浩 取締役、執行役員など 392,500 5.34 90日

(株)Kコーポレーション 役員らが議決権の過半数を所有する会社 245,600 3.34 90日

西村浩 取締役、執行役員など 192,500 2.62 90日

川上嘉章 取締役、執行役員 147,800 2.01 90日

雄谷淳 取締役、執行役員など 128,900 1.75 90日

川西幹 子会社の元取締役 100,000 1.36 90日

金子英樹 元取締役 100,000 1.36 90日

TH COMPANY(株) 役員らが議決権の過半数を所有する会社 90,000 1.22 90日


本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人であるKST有限責任事業組合及び貸株人である久保努並びに当社株主である平間恒浩、株式会社Kコーポレーション、西村浩、川上嘉章、雄谷淳、TH COMPANY株式会社、浅野勝己、古川勝博、鈴木弘昭及び中山宗男は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2021年10月13日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)を行わない旨合意しております。

 また、当社の株主であるラキール従業員持株会は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2022年1月11日までの期間中、主幹事会社からの事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等を行わない旨合意しております。

 加えて、当社は主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2022年1月11日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の発行、当社普通株式に転換若しくは交換される有価証券の発行又は当社普通株式を取得若しくは受領する権利を付与された有価証券の発行等(ただし、本募集、株式分割、ストック・オプションとしての新株予約権の発行及びオーバーアロットメントによる売出しに関連し、2021年6月11日開催の当社取締役会において決議された主幹事会社を割当先とする第三者割当増資等を除く。)を行わない旨合意しております。

 

【代表者】

代表者名 久保 努(上場時56歳9カ月)/1964年生

本店所在地 東京都港区愛宕

設立年 2017年

従業員数 399人 (5/31現在)(平均35.5歳、年収561.6万円)、連結472人

株主数 13人 (目論見書より)

資本金 341,062,000円 (6/11現在)

代表者生年月日 1964年09月27日生まれ

代表者略歴

1988年04月 (株)エイ・エス・ティ(現日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(株))入社

1999年02月 (株)イーシー・ワンSI事業部長

2003年06月 (株)イーシー・ワン常務取締役

2005年06月 旧(株)レジェンド・アプリケーションズ設立 代表取締役社長

2012年01月 (株)ワークスアプリケーションズ執行役員

2015年12月 同社取締役

2017年10月 LAI HOLDING(株)(現(株)ラキール)設立 代表取締役社長(現任)

2018年12月 (株)ZEST取締役


【幹事団】

主幹事証券 野村 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 あかつき - -

引受証券 東洋 - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 丸三 - -


【参考類似企業】


【私見】

 クラウド・DXなど流行りの業種ではあるものの、特筆した優位性はなさそうで初値人気・セカンダリー不発の流れが予想されます。業績も売上はイメージ以上には伸びておらず、PERからも割安感はなく、初値で上がってしまえば成長が追い付くには時間がかかりそうです。需給は良いので売り要素は少なそうですが、吸収金額・時価総額は適度に大きく、150憶前後が落ち着き所なのかと予想します。


想定価額:1300円

仮条件上限:1400円

初値予想:3200円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3.5

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