2023年11月24日金曜日

IPO分析(QPS研究所)

 【事業内容】

​ 人工衛星による地球観測データの取得において、現在主流となっている観測手段は光学衛星です。光学衛星は、地球から反射する太陽光を光学カメラやセンサーによって観測します。そのため衛星と観測地点の間に雲のような遮蔽物が入る悪天候時や、観測地点に太陽光が届かない夜間には、観測データの取得が著しく制限されます。

 当社ではこのような課題を解決し、地球のリアルタイム観測が当たり前となった世界を実現するため、①夜間や悪天候時でも撮影が可能であること、及び②常に衛星が上空を飛んでいる状態にするために多数の衛星を打ち上げることの両方を実現するべく、小型SAR衛星の開発及び製造を行い、小型SAR衛星により取得した地球観測データ及び画像の提供を主な事業(以下「地球観測衛星データ事業」という。)としております。

  「宇宙の可能性を広げ、人類の発展に貢献する」という経営理念の下、将来的に36機の小型SAR衛星によるコンステレーションを構築することで、地球上のほぼどこでも任意の地点を平均10分間隔で観測できる、もしくは特定の地域を選んで平均10分ごとに定点観測できる世界の実現を、当社は目指しております。

 衛星コンステレーションとは、多数個の人工衛星が協調動作する様子を星座(英:constellation)に見立てたシステムです。衛星コンステレーションを構築する多数個の人工衛星を打ち上げるには、製造コスト及び打上げコストを大幅に低減させる必要があります。当社が開発する100kg級の小型SAR衛星は、従来の数トン単位の大型SAR衛星とは異なり小型かつ軽量であるため、製造コストや打上げコストを低く抑えることができ、かつ短期間での開発が可能であります。

 当社では、2019年12月に実証試験機である小型SAR衛星1号機(愛称「イザナギ」)を、2021年1月に同じく実証試験機である2号機(愛称「イザナミ」)を打ち上げました。2021年5月には2号機イザナミにより高精細モード(分解能70cm)の地球観測画像の取得に成功し、2021年12月より2号機による地球観測画像の販売を開始いたしました。3号機及び4号機は2022年10月のイプシロン6号機の打上げ失敗により損失を被ったものの、商用機である3号機以降の衛星開発は1号機及び2号機による実証結果を踏まえて改善を施しており、2023年6月に6号機(愛称「アマテル-Ⅲ」)の打上げを成功させ、2号機及び6号機による2機の衛星コンステレーションを構築しました。2024年5月期中には5号機の打上げも予定しており、本書提出日時点では射場へ出荷済です。また7号機及び8号機の開発も進んでおり、画像販売事業は本格化局面を迎えております。

 SAR衛星とは、Synthetic Aperture Rader(和:合成開口レーダー)と呼ばれるリモートセンシング技術を利用した、地球観測のための人工衛星です。SAR衛星は、衛星自身が観測地点に対して電波を発射し、反射した電波によって対象物の大きさや表面の性質、距離等を測定します。観測地点からの太陽光の反射に頼らないSAR衛星は、天候や時間帯に左右されることなく常時地球を観測できる大きな利点を持ちます。その一方で、SAR衛星は電波の送受信に大量の電力消費と大きなアンテナを要するため小型化と解像度はトレードオフの関係にありました。


・ 光学衛星とSAR衛星の比較

 当社の100kg級小型SAR衛星は、当社が特許を保有する展開式パラボラ型アンテナを搭載しております。軽量かつ大口径のアンテナを搭載することで、SAR衛星の小型化と解像度の両立を追求してきた当社は、実証機である2号機において分解能70cm、商用機である6号機においては分解能46cmを実現しました。

 等間隔に設置された骨組み(板バネ)と金属メッシュで構成される当社の2号機までに搭載されていた展開式パラボラ型アンテナは、24本の板バネと精緻な縫製技術によって、大口径にしてわずか10kgという相反するスペックを持ち得ました。アンテナは直径80cmまで畳まれた状態でロケットに取り付けられ、軌道投入後、展開動作の開始からわずか2秒で、板バネが元に戻る力によって直径360cmの大きさに展開します。3号機以降に搭載されているアンテナでは、板バネを36本に増やし、重量も30kg程度まで増加しておりますが、展開後のアンテナ形状が改善したことで画質の大幅な向上を実現しております。

 SAR衛星は自ら照射・受信したマイクロ波の強弱によって地表を観測しています。例えば高層ビルのような背の高い建築物は、地表からビルに反射するものと合わせて、マイクロ波を強く反射するため白く写ります。反対に海や河川のような水面は、遮蔽物もなく表面が滑らかなので、マイクロ波を受信しづらく黒く写ります。なお、通常、観測データの画像化は地上で行われますが、当社小型SAR衛星 商用機には観測データを軌道上で画像化する装置を搭載しており、データ撮影から提供までのリードタイム短縮に貢献しております。

 観測地点の天候や時刻に左右されないSAR衛星の特性は、第一に災害時における被災地の状況確認等の防災・減災の観点から、災害大国と呼ばれる我が国において人々が安心して暮らす上で、欠かせない価値の創出を期待されています。また、安全保障の分野においては、2022年から続くウクライナに対する軍事侵攻に際し、ロシア軍の動向監視に国外のSAR衛星事業者による画像が活用され注目を集めましたが、一般的に海外政府に対する撮影の優先権は必ずしも高くないため、日本国内の衛星事業者が運用するSAR衛星に対する期待は高まっております。

 一方で宇宙開発全般における事業上のリスク、初期投資のスケールや国際的な競争環境等は、当社にとって課題であると同時に他の民間事業者に対する参入障壁にもなっております。こうした背景を受けて、日本政府は2023年6月、宇宙開発戦略本部において「宇宙安全保障構想」を決定し、人工衛星が災害対応や安全保障を支えているという認識を示した上で、JAXAが大学や企業の民間ビジネスに対して投資を可能にする法改正を進める方針を示すなど、宇宙開発において官民連携でイノベーションを加速していく姿勢を、これまで以上に明確に打ち出しています。

 当社では今後の本格的な事業展開に先立ち、日本政府による宇宙開発利用加速化プログラム(以下「スターダストプログラム」という。)に参画し、地震や津波、台風などの自然災害に強い経済社会システムを構築していく取り組みである国土強靭化等の特に公益性の高い分野において、SAR衛星による観測データを提供しております。スターダストプログラムを通じて当社は、JAXAを管轄する文部科学省だけでなく様々な官公庁と連携することで、災害時の対応や電力会社等におけるインフラ管理等、多くの分野で協働の可能性を検討しております。

 当社の地球観測衛星データ事業は上記の特徴から安全保障分野の需要が高く、2022年5月期よりサービスを開始しております。現在は特に安全保障、海洋監視、インフラ管理、防災・森林監視について働きかけており、従来の常識では考えられなかった新たなサービスを創出してまいります。なお当社は地球観測衛星データ事業の単一セグメントであります。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2024/05 単独1Q実績 175 -85 -85 -86

2024/05 単独会社予想 1,447 -470 -709 -713

2023/05 単独実績 372 -314 -323 -1,105

2022/05 単独実績 18 -382 -385 -387


決算期 種別 EPS BPS 配当

2024/05 単独会社予想 -3,509.18 - 0.00


上場時発行済株数 31,802,300株(別に潜在株式3,573,900株)

公開株数 6,578,900株(公募5,720,800株、オーバーアロットメント858,100株)→公開株数 10,256,300株(公募8,918,600株、オーバーアロットメント1,337,700株)

調達資金使途 小型SAR衛星の製造費用


募集を行う地域

欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)


PER:

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:25.0億→40.0億(リアルテックファンド1号投組1,315,700 親受け)

公募時時価:124億

​   

【株主構成】 

大西俊輔 代表取締役社長CEO 4,095,100 13.81% 180日

スカパーJSAT(株) 資本業務提携先 2,857,000 9.63% 180日

(株)INCJ 投資業(ファンド) 2,720,000 9.17% 90日・1.5倍

(株)SMBC信託(金外信 12100440) 投資業(ファンド) 2,400,000 8.09% 90日・1.5倍

八坂哲雄 元取締役、従業員、創業者 2,133,800 7.20% 180日

市来敏光 代表取締役副社長COO 2,095,100  7.06%  180日

(株)SMBC信託(金外信 未来創生2号F 投資業(ファンド) 1,783,000 6.01% 90日・1.5倍

日本工営(株) 資本業務提携先 1,142,900 3.85% 180日

(株)SMBC信託(金外信 未来創生3号F 投資業(ファンド) 715,000 2.41% 90日・1.5倍

リアルテックファンド1号投組 投資業(ファンド) 703,800 2.37% 90日・1.5倍


 本募集に関し、貸株人である大西俊輔、当社株主であるスカパーJSAT株式会社、八坂哲雄、市來敏光、日本工営株式会社及びSMBC日興証券株式会社並びに当社新株予約権者である上津原正彦、古村克明、村山淳一、古賀洋平、高比良亮祐、福田大、原美澤、木村由妃、貞方美穂、Dmytro Faizullin、土井沙織、北村広樹、深井祐介、田中周一、Shadman Sakib、川嶋里奈、李充根、伊藤映美子、山下和志、橋元克巳、山口勇樹、渡邉乃愛及びその他7名は、SMBC日興証券株式会社(以下「主幹事会社」という。)に対して、本募集に係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2024年6月2日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。

 当社株主である株式会社INCJ、株式会社SMBC信託銀行(特定運用金外信託口 契約番号12100440)、株式会社SMBC信託銀行(特定運用金外信託 未来創生2号ファンド)、株式会社SMBC信託銀行(特定運用金外信託 未来創生3号ファンド)、リアルテックファンド1号投資事業有限責任組合、三菱UFJキャピタル6号投資事業有限責任組合、FFGベンチャー投資事業有限責任組合第2号、MSIVC2018V投資事業有限責任組合、MSIVC2016V投資事業有限責任組合、リアルテックファンド3号投資事業有限責任組合、リアルテックファンド2号投資事業有限責任組合、次世代企業成長支援1号投資事業有限責任組合、MSIVC2020V投資事業有限責任組合、FFGベンチャー投資事業有限責任組合第1号、九州アントレプレナークラブ2号投資事業有限責任組合、おおいた中小企業成長ファンド投資事業有限責任組合、SMBC社会課題解決投資事業有限責任組合、みずほ成長支援第4号投資事業有限責任組合、UNICORN2号ファンド投資事業有限責任組合、大分VCサクセスファンド6号投資事業有限責任組合及びその他1名は、主幹事会社に対して、本募集に係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して90日目の2024年3月4日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等(ただし、その売却価格が募集における発行価格又は売出しにおける売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)を行わない旨を約束しております。


【代表者】

代表者名 大西 俊輔(上場時37歳8カ月)/1986年生

本店所在地 東京都福岡市中央区天神

設立年 2005年

従業員数 47人 (2023/09/30現在)(平均45.1歳、年収652.1万円)

事業内容 小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発、製造、小型SAR衛星より取得した画像データ販売

URL https://i-qps.net/

株主数 29人 (目論見書より)

資本金 100,000,000円 (2023/10/31現在)

代表者生年月日 1986年03月07日生まれ

代表者略歴

2013年10月 当社(旧有限会社QPS研究所)  入社

2014年04月 当社 代表取締役社長CEO(現任)

2019年04月 一般社団法人日本航空宇宙学会西部支部 幹事(現任)

2023年08月 九州航空宇宙開発推進協議会 幹事 (現任)


【幹事団】

主幹事証券 SMBC日興 8,294,900 93.01%

引受証券 みずほ 115,900 1.30%

引受証券 SBI 89,100 1.00%

引受証券 東海東京 71,300 0.80%

引受証券 岡三 71,300 0.80%

引受証券 FFG 71,300 0.80%

引受証券 香川 71,300 0.80%

引受証券 楽天 44,500 0.50%

引受証券 松井 44,500 0.50%

引受証券 マネックス 44,500 0.50%


【参考類似企業】今期予想PER

6503 三菱電 15.3倍 (連結予想)

9232 パスコ 5.2倍 (連結予想)

9233 アジア航 8.7倍 (連結見込)

9348 ispace - (連結予想)  時価700億

9412 スカパーJ 13.6倍 (連結予想)


【私見】

 宇宙銘柄第二弾で、SAR衛星銘柄としてアイスペースとは違う意味で初物感のある銘柄で注目度は非常に高い銘柄です。業績は気にかける必要はなく、アイスペースの時価総額700億と比較してどこまで評価するかとVCがどこで売るかが焦点です。売出しなしということからも、1.5倍の585円で売ることは考えられず、増資価額も高いことから高い位置での売りを考えていることが予想されます。12月のIPOは数は多いのですが、人気銘柄は少なく、前半のNO1注目銘柄となりそうです。


想定価額:380円

仮条件上限:390円

初値予想:900円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立〜やや強気

総合評価:4

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