2023年11月29日水曜日

IPO分析(ブルーイノベーション)

 【事業内容】

​ 当社は、複数の自律移動ロボット(ドローンやAGV(Automated Guided Vehicle)などを指す)を遠隔で制御し、統合管理するためのソフトウェアプラットフォームであるBlue Earth Platform(以下、BEP)を基軸に、人が実施していた設備の点検、物流等の業務を、ドローンやAGVで代替して実施することにより効率化や安全化、省力化を図ることを目的としたソリューションの提供を行っております。

 BEPとは、センサモジュールとソフトウェア(アプリ、クラウド)で構成された当社開発の統合的なシステム上のプラットフォームのサービス総称です。顧客の課題に対応して、ドローンの機体とセンサ、並びにソフトウェア開発の適切な組み合わせを、BEPの環境下で開発した上でソリューションとして提供していることから、各ソリューション名に「BEP」の名称を冠しております。「BEP」の環境下で、顧客の要望に合わせて、ドローン等の自律移動ロボットの移動・遠隔制御・デバイスとの連携等の「動かす」こと、ドローン等の取得した情報の保存・連携・監視等の「集める」こと、ドローン等の運行管理・挙動の解析等の「管理する」ことを実現しております。

 特に足元では、社会課題として、インフラ老朽化による点検需要の増加が著しく、弊社としても点検ソリューションが主要事業となっております。点検業界においては、人件費高騰に伴う点検コストの増加、一方で危険作業におけるノウハウの属人化や労働力不足が発生しているものと当社は認識しており、それに対して、当社はドローン導入のソリューションを提供することで、業務の安全化、効率化、低コスト化の実現という価値を提供しております。また、併せてドローンパイロットの育成に関する教育ソリューション事業も行っており、ソリューションの提供に加えて点検等に必要なパイロットの提供にも関わっております。その他、物流、オフィスにおけるドローン、AGVを利用したソリューションの提供も行っており、将来的には、BEPにドローン、AGVの全てが接続されて、自律した運用を実現することで、スマートで新しいまちづくりの実現を目指して事業を展開しております。


 当社の事業は、ドローン関連事業の単一セグメントであるため、以下に当社の主要なサービスの内容を記載いたします。

1.事業ドメインの全体像

 主にドローンを基軸として、点検、教育、物流及びネクスト(新規ソリューション創造)の4つのソリューションを提供しております。2022年度における各ソリューションの売上比率は、点検が36%、教育が27%(基礎教育19%、応用教育8%)、物流が28%、ネクストが9%です。

 

(1) 点検ソリューション

 ドローンを活用しプラント施設の点検を提供する「BEPインスペクション」、ドローンを活用し送電線点検を提供する「BEPライン」、AGVを活用してプラントや製造工場等の自動巡回点検を提供する「BEPサーベイランス」があり、また、それぞれのBEPのソリューションパッケージのソフトウェアサービスでは、撮影した映像や移動ログ、解析データを提供するサービスも含まれます。


(2) 教育ソリューション

 ドローン操縦の基礎教育を提供する「BEPベーシック」、ドローンを活用した様々なソリューションの教育を提供する応用教育、ドローンパイロットに必要な情報を提供するドローン専用飛行支援地図サービス「SORAPASS」を提供します。


(3) 物流ソリューション

 物流用ドローンが離発着するドローンポートを製品化した「BEPポート」の実証サービスを提供します。


(4) ネクストソリューション

 次なる事業の柱になる新規ソリューションの創造を行っており、複数台数・複数機種の掃除ロボットを活用したオフィス清掃を提供する「BEPクリーン」等を現在開発し、実証サービスを提供しています。

 当社は、上記各ソリューションについて、BEPを軸としたパッケージを作り顧客にソリューション提供しており、具体的に各ソリューションのBEPパッケージの導入コンサルティング、実証実験から、導入講習、トライアル導入、本格導入、保守メンテナンスを、販売または継続収益形態(ドローン機体のリース契約または点検サービスの月額課金形態)によるサービス提供を行っております。

上として計上しております。


2.サービス内容

 各ソリューションによる詳細なサービス内容は以下のとおりです。

(1)点検ソリューション

 プラント点検「BEPインスペクション」、送電線点検「BEPライン」及び自動巡回点検「BEPサーベイランス」を提供しております。「BEPインスペクション」は、全国の石油化学プラント、製鉄所、水力・火力発電所、ゴミ処理場等の屋内施設を中心に、現在までに250以上の現場で点検運用サービスを導入し、50台以上のドローン・ソフトウェアを販売しております。「BEPライン」は、東京電力などと開発した送電線検知可能なセンサモジュールとソフトウェアを電力会社向けに販売、提供しております。「BEPサーベイランス」は、火力・水力発電所、鉄道車両等の屋内施設に対し、実証実験とAGV・ソフトウェアのトライアルセットを販売しております。点検ソリューションは、東京電力や九州電力をはじめとした一般電気事業者などに対し実証実験を実施しており、そのうち数社についてはトライアル導入、本格導入へと順次展開していっております。


(2)教育ソリューション

 JUIDAと連携して以下のサービスを提供しております。

① 基礎教育「BEPベーシック」

 日本におけるドローンの新たな産業・市場の創造支援と産業の健全な発展への貢献を目的として、2014年7月に設立された業界団体のJUIDAに設立当初から参画し、設立メンバーとして法人・個人会員管理業務をサポートしてまいりました。JUIDAは27,000を超える会員数を有する団体へと成長し、世界20カ国以上、30以上の機関と基本合意書を締結し、ドローン教育として日本初ドローン関連ISO規格(ISO23665)発行に成功している国内の有力なドローンの業界団体です。当社は、JUIDAと連携して、民間独自のカリキュラムによるドローン教育を提供しており、2022年に施行されたドローンの国家ライセンスがスタートしたことで、JUIDAは国の登録講習機関等監査実施団体となり、国が認定する登録講習機関(ドローンスクール)を監査する立場となり、当社は国の認定する登録講習機関(ドローンスクール)として、今までの民間独自の講習に加え国家ライセンスの講習も提供しております。


② 応用教育

 プラント点検や基地局点検など点検サービスの実用化に伴い、ソリューション特化型のドローン教育講習のニーズが各企業で高まっております。当社には、法人向け教育プログラム作成、講師提供、認定資格の提供、パイロット管理システムなど、JUIDAとの連携で培った一貫した教育パッケージがあり、これをベースに顧客ごとに、各ソリューション向けの教育プログラムを作成し、コンサルティング料もしくは講習会の業務受託としてサービス提供しております。作成した教育プログラムを顧客と共に顧客内(支社など)、業界内で導入展開すると共に、JUIDAのプラント点検上級操縦技能証明証のように、JUIDA監修の元で業界内での標準化を図り、導入展開を加速する活動も行っております。現在、林野庁、大手通信キャリア、電力施設メンテナンス会社等に提供した実績があります。


③ ドローン専用飛行支援地図サービス「SORAPASS」

 ドローン専用飛行支援地図サービス「SORAPASS」を、約5万人以上のSORAPASS会員(アカウント登録者数)に向けて、基本は無料で一部保険等の有料サービス(継続課金形態)を組み合わせたフリーミアムモデルとしてサービス提供しております。SORAPASSは、国内向けのドローンパイロットのプラットフォーム(BEPに連結されたシステム)であり、飛行禁止区域MAP、気象情報の把握や飛行申請サポート、ドローンレンタル(有料)、保険などの申請(有料)、パイロット・機体・飛行実績の管理など、ドローン飛行に必要なサービスを提供しております。

 

(3)物流ソリューション

 国土交通省や地方自治体、物流サービスプロバイダに対して、ドローンが離発着するドローンポートシステム「BEPポート」の開発と導入実証実験を、コンサルティング料もしくは実証実験に関する業務受託としてサービス提供しております。東京都江戸川区、江東区、静岡県東伊豆町、高知県香南市、大分県日田市で実証実験を実施しております。

 2016年より、国土交通省と共に物流用ドローンポートの開発に着手し、現在、ISO(国際標準化機構)において、TC20/SC16(無人航空機システム)エキスパート、TC20/SC17(空港インフラ)エキスパート、及びvertiport(垂直離着陸用飛行場:ドローンポートと同義)のワーキングドラフト5491のコンビーナ(委員長)を務めております。2023年6月に、150kg以下の物流ドローンにおけるドローンポートの国際標準化(ISO5491発行)に成功し、当社が業界のパイオニアとして推進している事業になります。


(4)ネクストソリューション

 次なる事業の柱になる新規ソリューションの創造を行っております。

 現時点では、iRobot Corporation(以下、「iRobot社」)と提携して、複数フロアのあるオフィスやホテル、店舗に対し、BEPを活用してルンバ等を群制御する清掃サービス「BEPクリーン」を開発し、実証サービスを提供しています。2022年には大手不動産会社やゼネコン等でそれぞれ実証実験を行い、その後トライアルサービスとして、ルンバはリース契約として提供し、専用のソフトウェア(複数台の遠隔制御・一元管理、清掃状況監視、異常発生通知、清掃結果)・保守メンテナンスは継続課金形態に移行している顧客もおります。

 当社は世界で3,500万台以上の販売実績のある清掃ロボットメーカーであるiRobot社と提携し、BEPを活用してゴミ収集ロボットのルンバや拭き掃除ロボットのブラーバを群制御することで、複数フロアのあるオフィスやホテル、店舗などへの清掃サービスを提供可能にしていることが特徴であります。


3.当社の強み

(1)屋内点検など、特殊環境下における高い技術力

 屋内施設のように一般のドローンでは飛行できない非GPS環境での点検や、屋外においてもGPS(衛星測位システム)のみでは高精度に点検できない特殊環境での点検に強みがあります。例えば、市販のドローンは、屋外でGPSのサポートを受けて自動飛行するのが一般的ですが、屋内等の特殊環境下ではGPSが入らず、自動飛行できない課題がありました。当社では、特殊環境に合わせたセンサを選定し、複数のセンサを組合わせて最適な自己位置を推定する技術(マルチセンサポジショニング:センサフュージョンのアルゴリズム)に強みがあり、当社のセンサモジュールを市販の一般的なドローンへ搭載することで、非GPS環境下でも自動飛行が実現可能になります。当社のセンサモジュール搭載のドローンは、当社のサーバー・アプリと連動し、遠隔で飛行制御の指示が可能になり、ドローンの撮影データ、飛行ログ等のデータ管理も可能になります。

 また、当社は、世界で競争環境の激しいハードウェアメーカーではなく、どのハードウェアデバイス(ドローン、AGV、ロボット等)とも繋がることが可能なソフトウェアの開発と提供を行っております。自社ハードウェアにこだわらず、各顧客の特殊環境下に合わせたドローン及びセンサの選定、チューニング及びソフトウェアの開発を行うことにより、最適なドローンのソリューションを提供することが当社の強みとなっております。


(2)パイロット育成ノウハウとネットワーク

 JUIDAや官公庁との連携により、法規制や実業務に即したソリューション特化型カリキュラムの共同開発に加え、全国のパイロットのスキルなど管理するシステムや実運用に向けたノウハウを全国に展開しております。また、全国でトータル9万人以上のパイロットネットワークと繋がり、点検ソリューション等のドローンのソリューション提供時において、同時に数十箇所の複数拠点のドローン運用が同時に可能であることが、当社の強みであり、ドローン教育の事業を有することがユニークな業界内のポジショニングにつながっております。

 また、当社はJUIDAと連携し、改正航空法施工の1年前にドローン安全ガイドラインを策定し、ドローンの国家資格制度が始まる7年前から操縦技能証明・安全運航管理者証明発行を開始する等、常に業界内で先行して行動し、国策の前例となり貢献してきた経緯があります。

 業界をリードする動きができている背景として、当社は、技術、法規制、人材育成の3分野でパートナー連携し、市場を創出する取り組みをしていることが挙げられます。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/12 単独3Q累計実績 747 -274 -268 -271

2023/12 単独会社予想 1,255 -298 -297 -299

2022/12 単独実績 908 -349 -341 -345

2021/12 単独実績 725 -391 -393 -394


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/12 単独会社予想 -90.58 - -


上場時発行済株数 3,829,351株(別に潜在株式345,640株)

公開株数 857,200株(公募550,000株、売り出し196,200株、オーバーアロットメント111,000株)

調達資金使途 ドローンなどの購入費用、研究開発費、人件費、PRマーケティング費用、借入金返済


PER:

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:11.3億

公募時時価:51億

​   

【株主構成】 

熊田貴之 代表取締役社長最高執行役員 1,620,000 44.69% 180日

けいはんな学研都市ATRベンチャ投組 投資業(ファンド) 682,802 18.84% 90日・1.5倍

熊田雅之 代表取締役の血族、取締役副社長執行役員 195,000 5.38% 180日

TBSイノベーション・パートナーズ1号投組 投資業(ファンド) 128,571 3.55% 90日・1.5倍

(株)レスターホールディングス 特別利害関係者など 100,000 2.76% 90日・1.5倍

大成(株) 特別利害関係者など 100,000 2.76% 90日・1.5倍

(株)SBI新生銀行 投資業(ファンド) 75,000 2.07% 90日・1.5倍

日本郵政キャピタル(株) 投資業(ファンド) 55,555 1.53% 90日・1.5倍

FUSO-SBI Innovation Fund 投資業(ファンド) 50,000 1.38% 90日・1.5倍

大成温調(株) 特別利害関係者など 50,000 1.38% 90日・1.5倍

三菱UFJキャピタル7号投組 投資業(ファンド) 50,000 1.38% 90日・1.5倍


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人である熊田貴之及び熊田雅之は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後180日目の日までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等を除く。)を行わない旨を合意しております。

 また、当社の株主であるけいはんな学研都市ATRベンチャーNVCC投資事業有限責任組合、TBSイノベーション・パートナーズ1号投資事業組合、株式会社レスターホールディングス、大成株式会社、株式会社SBI新生銀行、日本郵政キャピタル株式会社、FUSO-SBI Innovation Fund、大成温調株式会社、三菱UFJキャピタル7号投資事業有限責任組合、クリニファー株式会社、TIS株式会社、阪大ベンチャーNVCC1号投資事業有限責任組合、五光ピッキングロジサービス株式会社及び小林章三郎は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後90日目の日までの期間、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること及び売却価格が本募集等における発行価格又は売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う株式会社東京証券取引所取引での売却等を除く。)を行わない旨を合意しております。

 加えて、当社の新株予約権を保有する熊田明日香、酒井和也、柴﨑誠、野島威、千田泰弘、千葉剛、松尾卓、岩田拡也、株式会社国際電気通信基礎技術研究所、Lopes Raphaël Julien Clement、遠藤将利、佐々木千明、熊本裕子、藤原友佳梨及びWieczorkowski Jakub Filipは、主幹事会社に対し、ロックアップ期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した普通株式の売却を行わない旨を合意しております。

【代表者】

代表者名 熊田 貴之(上場時47歳3カ月)/1976年生

本店所在地 東京都文京区本郷

設立年 1999年

従業員数 66人 (2023/09/30現在)(平均41.5歳、年収670.9万円)

事業内容 複数のドローン・ロボットを遠隔で制御し、統合管理するためのデバイス統合プラットフォーム「BlueEarthPlatform(BEP)」をベースに、点検・教育・物流などのサービスを開発・提供

URL https://www.blue-i.co.jp/

株主数 18人 (目論見書より)

資本金 214,998,000円 (2023/11/08現在)

代表者生年月日 1976年08月27日生まれ

代表者略歴

2004年04月 株式会社水圏科学コンサルタント入社

2010年04月 当社入社COO

2012年06月 当社代表取締役社長(現任)

2022年06月 当社最高執行役員(現任)


【幹事団】

主幹事証券 大和 - -

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 岡三 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 松井 - -


【参考類似企業】時価総額(11/14)

6232 ACSL 158億円


【私見】

 ドローン銘柄として、ACSL以来の2社目の上場でドーローン・ロボット銘柄として業種妙味はあります。業績は赤字で、今後の黒字化見通しが不透明な点で評価は落ちますが、ACSLも赤字が続き気にするほどではないでしょう。規模はASCLの1/3ほどで上値余地は大きく、1.5倍でロックが外れるVCが多いのは注意が必要です。VCの割合価額も上で、売り出しがないことから、ロックラインよりももっと上での売却を想定しているのかと思います。


想定価額:1300円

仮条件上限:1320円

初値予想:2600円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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