2024年9月7日土曜日

IPO分析(グロースエクスパートナーズ)

 【事業内容】

​ (1)ミッション

 「A Company for Imagination & Innovation 常に変化と成長を続け顧客と社会に革新をもたらす知的創造企業」を企業理念とし、ITを駆使して顧客企業の価値を創造することをミッションとして、大手企業の組織及びITの変革に伴走する「エンタープライズDX事業」を展開しております。

 大手企業(エンタープライズ企業)が、新たな価値創出を実現しながら組織/ITを変革(DX)していく取り組みを「エンタープライズDX」と位置づけ、ヘルスケア、小売・流通、モビリティ、通信、建設、製造、金融など各業界におけるリーディングカンパニーであるエンタープライズ企業を主な顧客とし、顧客のエンタープライズDXを実現する「エンタープライズDX事業」を展開しております。


(2)DX支援における当社の特徴

 顧客自ら事業価値を創造し続ける組織(以後、自走型DX組織)へ変革させるDX支援を特徴としております。顧客のDX支援へのアプローチは、新規デジタルサービス開発や既存IT資産のモダナイズに関するご相談を受け、顧客が蓄積してきたレガシー資産(顧客、ブランド、設備・拠点、サポート体制、人財、既存IT資産、ビッグデータ、サプライチェーンなど)の強みを活用した新しいサービスやビジネスモデルの企画を支援するDXコンサルティングから開始いたします。顧客自身が事業価値定義やそれに基づく新たなサービスを継続的に創出するためのプロセスやノウハウを顧客に提供しております。顧客内の一部署や個別サービスでの成功事例を顧客内で拡大しながら、顧客の自走型DX組織の実現まで伴走しております。関係性が深耕した顧客とはDX推進組織(出島型組織)の共同運営、デジタルサービス共同開発などの共創フェーズに発展しております。

 主たる顧客であるエンタープライズ顧客数は継続的に増加し17社(23年8月期実績)となっております。年間取引金額1億円以上の顧客が8社、うち年間取引金額2億円以上の顧客が4社となっております(いずれも23年8月期実績)。顧客維持率は92.1%(23年8月期実績)とストック性の高い収益構造となっております。既存顧客の関係性深耕により、年間取引金額2億円以上のロイヤルカスタマーを拡大しております。

 

 ①出島型アプローチ

 顧客の自走型DX組織実現支援においては「出島型アプローチ」を特徴としております。「出島型アプローチ」とは、既存の枠組みでは、本質的なイノベーションを起こしにくいという課題感のもと、DX推進のために本社から切り離した『出島』組織を作り、外部の専門性を取り込みながら、組織横断的に活動をすることで企業全体にイノベーションをもたらす取り組みを指します。当社グループでは、出島型アプローチの具体的な進め方として、組織変革/人財育成研修、合同チームでのアジャイル開発、顧客企業への出向、資本/業務提携、出島型の組織や企業を共同運営する等、顧客の状況に合わせた様々な支援手法を提供しております。実際に、一部の重要顧客においては、顧客企業のDX子会社の設立を支援しており、ニプロ株式会社は、2016年にIT子会社「ニプロシステムソフトウェアエンジニアリング株式会社」を、株式会社三越伊勢丹ホールディングスは、2019年にDX推進子会社「株式会社IM Digital Lab」を設立しております。いずれの会社においても、役員の派遣をはじめ、人事制度設計、人財採用/育成、アジャイルチームの創成、新規デジタルサービスの開発と改善、既存IT資産のモダナイズ推進等の支援を行っております。


 ②データ駆動型プラットフォーム

 自走型DX組織を実現するIT基盤の獲得を支援するアプローチとしては、既存システムのデータを活用した新規デジタルサービスを迅速に立ち上げる基盤である「データ駆動型プラットフォーム」の構築を特徴としております。

 大手企業のIT変革にあたっては、クラウドやAIといった最新技術を活用し、デジタルサービスの開発・運用のアジリティを高める必要があります。その一方で、経済産業省が2018年「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」において、“2025年以降レガシーシステムが残り続けることで引き起こされるシステム障害に起因する経済損失は最大12兆円/年にのぼる可能性がある”と指摘しているとおり、既存システムへの対応も不可欠であります。当社グループでは、新たなデジタルサービスのアジャイルな立ち上げと、大企業の既存IT資産のモダナイズを実現する、すなわち、顧客企業が所属する業界のデータモデルやセキュリティモデルを組み込み、既存IT資産のデータを活用するための機能やシステム運用の自動化機能を具備する「データ駆動型プラットフォーム」を構築するノウハウを有しております。また、データ駆動型プラットフォーム上でAIデータ解析を実施し、顧客レガシー資産から新しい事業価値を創造することに取り組んでおります。当社グループの顧客における具体的な事例として、2021年には株式会社三越伊勢丹ホールディングスにおいて百貨店事業のDXを目的とするシステム基盤「三越伊勢丹ビジネスプラットフォーム/DevOps基盤」により開発スピードは4倍になったこと、2022年には大成建設株式会社において7,000社7万人が利用する基幹システムを刷新して建設業務のDXを目的とするシステム基盤「X-grab」を構築したことを公表しております。


(3)成長力の源泉

 当社グループの成長力の源泉は、グローバルDX人財の育成と、DXテクノロジーアセットの蓄積であります。

グローバルDX人財育成においては、大手企業の変革を実現するグローバルDX人財の採用・育成プログラム整備、社員が安心して長く働けるユニークな人事制度・福利厚生制度の整備に積極的に取り組んでおります。その結果、コンサルタント・エンジニア社員数は継続的に増加しており、24年5月末時点で170名となっております。海外出身人財を積極採用し、将来的に海外出身人財比率40%以上を目指しております。DXテクノロジーアセットの蓄積においては、特に「データ駆動型プラットフォーム」を実現する技術的な資産(ソフトウェア・スキル・ノウハウなど)の蓄積を推進しております。


(4)カテゴリー

 ①DX推進支援事業

 大手企業を中心とした顧客向けのDX支援コンサルティング、システム企画・開発・運用サービスであります。「出島型アプローチ」「データ駆動型プラットフォーム」に関する当社の強みをベースにしたDX推進支援を各業界のリーディングカンパニーに提供しております。

 既存システムのデータを活用しながら、新たなデジタルサービスを企画・設計するサービスデザイン手法の構造化を推進して参りました。このサービスデザインフレームワークに沿って、事業の現状を分析して課題・改善点を検討し、既存業務や既存システムとの関係性を踏まえながら、アーキテクチャとカスタマーエクスペリエンスを設計することでノウハウを蓄積しております。

 新規顧客との取引は、このフレームワークに基づくDXコンサルティングサービスや、組織変革・グローバルDX人財育成のための教育サービスからはじめ、顧客メンバーと当社グループメンバーの合同チームでのアジャイル開発を推進することで、顧客内での支援領域を広げ、ビジネスの幅を拡大しております。

 今後、生成AIがローコード開発ツールとして使われるようになることで、開発生産性は大幅に高まると予測しておりますが、そのような状況下では、アジャイル・アーキテクチャ・サービスデザイン・現場導入展開がより重要になり、当該領域に強みを持つ当社グループの優位性は更に高まるものと考えております。

 DXコンサルティングサービスは、グロース・アーキテクチャ&チームス株式会社(以下、「Graat」という。)中心に、システム企画・開発・運用サービスは株式会社GxP(以下、「GxP」という。)中心に提供しております。


②DX支援プロダクト・サービス事業

 組織変革・DX人財育成教育サービスや、顧客自らDXソリューションを開発できる自社及び他社のプロダクトを提供することで、顧客の自走型DX組織の実現を支援しております。また、本事業は、コンサルタント・エンジニア等の人的リソースに依存しない事業でもあります。

 出島型アプローチの支援においては、当社グループで整備している大手企業の変革を実現するグローバルDX人財の育成プログラムを、教育メニューとして顧客にも提供しております。また、顧客がアジャイルチームを定着させるための教育や、前述のサービスデザインフレームワークの教育メニューも複数の顧客に対して提供しております。

 出島型アプローチを支援するプロダクトとして、Atlassian社のコラボレーションソフトウェア群、当社グループが蓄積してきたDX組織運営ナレッジをツール化した自社プロダクト「GxWagora(ワゴラ)」の他、出島型アプローチにおける開発生産性変革ツールとして、既存IT基盤の最新化を支援するFresche社のプロダクト(IBM i(AS/400)資産アセスメントツール)、ローコード開発ツール等の販売・導入支援を行っております。

 また、「データ駆動型プラットフォーム」を実現するシステム基盤を資産化して、DXテクノロジーアセットのライセンス収益化に取り組んでおります。その一環として、基幹(*11)/オンプレミス(*12)に蓄積したデータの活用を支援する自社サービス「GxDiste(ディスティ)」を提供しております。

 当該事業においては、教育メニューはGraat中心に、DXテクノロジーアセットはGxP中心に提供しております。


 ③デジタルサービス共創事業

 顧客とともにデジタルサービスを共同開発し、当社顧客の製品・サービスを利用するユーザーのDXや、当社顧客が属する業界全体のDXを支援する「デジタルサービス共創事業」に取り組んでおります。当社グループ単体ではアプローチできない顧客層にDX支援サービスを提供し、そのサービス利用料等からレベニューシェアを含む売上・利益を得るビジネスモデルとして取り組んでおります。

 ニプロ株式会社との取り組みでは、当社グループも一部開発投資を行い、医療機器の管理を効率化して付加価値を向上するソフトウェアを開発し、ニプロ株式会社の顧客である病院施設への導入拡大に応じてライセンス収益を得るビジネスモデルを確立しております。本ケースは、顧客がレガシー資産から新しい価値を創出するDXに対して当社グループもリスクテイクして取り組み、顧客の事業成長に応じて当社グループも収益を得るモデルケースとなっております。当該事業はGxP中心に推進しております。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2025/08 連結会社予想 5,030 675 741 459

2024/08 連結会社予想 4,377 561 566 362

2023/08 連結実績 3,736 386 396 279

2022/08 連結実績 3,293 290 311 202

決算期 種別 EPS BPS 配当

2025/08 連結会社予想 148.68 902.84 -


上場時発行済株数 3,180,000株(別に潜在株式347,720株)

公開株数 849,700株(公募443,400株、売り出し295,500株、オーバーアロットメント110,800株)

調達資金使途 運転資金(採用費、人件費、地代家賃)、設備資金(事務所増床に係る内装工事費用や敷金)


PER:10.3

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:13.0億

公募時時価:49億

​   

【株主構成】 以下90日

渡辺伸一 代表取締役社長など 1,393,400 45.51%

Watanabe&Partners(株) 役員らが議決権の過半数所有 600,000 19.60%

ニプロ(株) 資本業務提携先 130,000 4.25%

豊田通商(株) 資本業務提携先 130,000 4.25%

奥山秀朗 エンゼル 100,000 3.27%

(株)三越伊勢丹システム・ソリューションズ 資本業務提携先 100,000 3.27%

小野純一 執行役員 66,000 2.16%

河西健太郎 取締役 56,000 1.83%

鈴木雄介 取締役など 32,000 1.05%

鎌田悟 取締役など 26,000 0.85%

安場直史 従業員、子会社取締役 26,000 0.85%

三菱UFJキャピタル8号投組 投資業(ファンド) 20,000 0.65%

(株)アイティーファーム 資本業務提携先 20,000 0.65%

菱洋エレクトロ(株) 資本業務提携先 20,000 0.65%


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、貸株人かつ売出人である渡邉伸一、売出人である奥山秀朗、株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズ、小野純一、株式会社アイティーファーム及び山梨中銀経営コンサルティング株式会社、当社株主であるWatanabe&Partners株式会社、豊田通商株式会社、ニプロ株式会社、河西健太郎、三菱UFJキャピタル8号投資事業有限責任組合、菱洋エレクトロ株式会社、井熊実、浦田努、香川朋啓、鎌田悟、北條育男、黒崎守峰、佐藤直人、白石康治、杉耕作、鈴木雄介、三村泰平、森坂和利、安場直史、和田一洋、新井康生、飯沼克哲、岩瀬慎治郎、大山益弘、進藤明、穂坂学、和智右桂、高江洲睦、西隆次、原田英樹、山田麗子、重廣竜之、杉森圭祐、辻修作及び波多野剛は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)を行わない旨合意しております。

 また、当社新株予約権者である勝山多恵子、北村武明、津田潮里、青木光宏、宮﨑尚、朝比奈亮、吉岡麻莉彩、菅美恵子、髙田康弘、田中徹、保坂好紀、石毛博之、大中浩行、小林千尋、雨宮竜希及び風間香央里は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等を行わない旨合意しております。

加えて、当社株主であるGxPグループ従業員持株会は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始) 日(当日を含む)後180日目の日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等を行わない旨合意しております。


【代表者】

代表者名 渡辺 伸一(上場時55歳5カ月)/1969年生

本店所在地 東京都新宿区西新宿

設立年 2008年

従業員数 229人 (2024/07/31現在)(平均36.2歳、年収624.2万円)、連結229人

事業内容 エンタープライズ向けのDX(デジタルトランスフォーメーション)支援事業

URL https://www.gxp-group.co.jp/

株主数 46人 (目論見書より)

資本金 105,850,000円 (2024/08/21現在)

代表者生年月日 1969年04月02日生まれ

代表者略歴

1990年04月     渡辺冷菓株式会社入社

1996年02月     株式会社エーティーエルシステムズ入社

2002年07月     同社取締役

2008年07月     当社設立 代表取締役社長(現任)

2012年05月     ジーアールソリューションズ株式会社 代表取締役社長

2014年09月     グロース・インク株式会社 取締役

2015年03月     株式会社G’sダイナー 代表取締役社長、株式会社ミエルカ 取締役

2016年06月     ニプロシステムソフトウェアエンジニアリング株式会社 代表取締役社長、8月:株式会社コムデック 代表取締役社長



【幹事団】

主幹事証券 野村 - -

引受証券 大和 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 岡三 - -


【参考類似企業】今期予想PER(8/27)

3816 大和コン 11.8倍 (連結予想)

3924 ランドコンピ 10.6倍 (連結予想)

4386 SIGG 13.9倍 (連結予想)

4486 ユナイト&グロ 10.4倍 (単独予想)

5576 オービーシステ 10.6倍 (連結予想)

9240 デリバリコン 18.2倍 (連結予想)


【私見】

 DX支援ということで業種としては悪くはありませんが、同業も多いことから大きな優位性はなく、業績評価になると思われます。大手相手で安定的な利益も出ており問題はないのですが、同業のPERは10強なので、公募価額としては来期予想も踏まえ妥当な金額と言えます。VCなしの完全ロックアップなので需給面では評価でき、多少のプラスはあるものの、4社同時上場で大きくは買われないと予想します。


想定価額:1320円

仮条件上限:1530円

初値予想:1900円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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