2023年10月3日火曜日

IPO分析(ケイファーマ)

 【事業内容】

​ 有効な治療法が確立していない神経難病に対して、当社取締役CSO(Chief Science Officer)兼慶應義塾大学医学部生理学教室教授の岡野栄之、及び当社取締役CTO(Chief Technology Officer)兼同大学医学部整形外科学教室教授の中村雅也を中心とした長年の基礎研究の成果を実用化し、一刻も早く臨床の現場に有効な治療法を届けるため、慶應義塾大学医学部発のベンチャー企業として、2016年11月に、「医療イノベーションを実現し、医療分野での社会貢献を果たします」を経営理念として、医薬品および再生医療等製品の研究・開発・製造・販売を事業目的として設立いたしました。

 当社が事業の主要な対象としております中枢神経疾患領域につきましては、筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)など我が国においても難病に指定される疾患が多く存在し、アルツハイマー病に代表される様々な認知症症状に対しても、有効な治療薬の開発が求められております。また、脊髄損傷や脳梗塞などの損傷疾患についても、未だ有効な治療法が確立しておりません。ALSの患者数は、世界では約33万人、国内では約1万人と推定されている一方、脊髄損傷につきましては、国内の亜急性期の脊髄損傷患者数は年間約5千人、慢性期の脊髄損傷患者数は約10~20万人とされております。

 これらの対象患者に対して画期的なイノベーションの実現により有効かつ安全な医療成果を届けるため、当社におきましては、iPS細胞を活用したiPS創薬事業と再生医療事業のハイブリッドで慶應義塾大学医学部等の大学や研究機関と連携して研究開発を推進するとともに、バリューチェーンを構成する各企業とも連携して事業活動を推進しております。なお、当社は医薬品等の研究・開発・製造・販売の単一セグメントであります。


(1)当社の事業領域

 中枢神経疾患領域に対して、iPS細胞を活用したiPS創薬と脊髄損傷等の神経損傷部位に移植する再生医療等製品の開発を主たる事業としております。

①はじめに

 長年、中枢神経領域において、「神経は再生しない」という考え方が一般的でありましたが、当社の創業科学者兼取締役CSOである岡野栄之等の研究チームが、神経幹細胞のバイオマーカーである遺伝子「musashi」を発見し、世界で初めて、ヒト脳の中にも神経幹細胞が存在することを示したことにより、中枢神経領域の再生医療の可能性を見出し、臨床での神経再生が現実的なものとなってきました。

 また、2007年に京都大学山中伸弥教授の研究グループがヒトの皮膚細胞からiPS細胞の樹立に成功したことにより、①iPS細胞を活用した細胞移植治療/再生医療、②iPS細胞による病態解明・薬効評価の可能性が示されました。そこで、慶應義塾大学において岡野栄之と中村雅也の研究チームは、脊髄損傷の治療に対してiPS細胞から分化誘導)した神経細胞を活用する研究を開始し、また、岡野栄之の研究チームは、ALSの患者様由来のiPS細胞から樹立した神経細胞を活用したALS治療薬の開発に着手致しました。


②当社の優位性

 当社取締役CSO兼慶應義塾大学医学部生理学教室教授の岡野栄之、及び当社取締役CTO兼同大学医学部整形外科学教室教授の中村雅也を中心とした長年の基礎研究をもとに事業を展開しており、特に、当社の事業領域である中枢神経疾患領域においては、アカデミアにおいて蓄積してきた知見を軸に、慶應義塾大学等のネットワークを活用して、自社研究所において各種ノウハウや技術(iPS細胞から神経細胞に適切かつ効率的に分化誘導することができる技術、創薬に適した表現型を構築するためのノウハウや技術、再生医療として神経細胞に分化誘導し移植するためのノウハウや技術など)を活用して研究開発を推進しております。


③iPS創薬事業

 創薬の研究開発の手法として、病気の患者由来のiPS細胞から分化誘導した神経細胞を用いた表現型スクリーニングによる化合物・薬剤候補分子の効率的なin vitroスクリーニングを実施しております。具体的には、患者から提供を受けた細胞を用いて疾患の特異的な情報を有するiPS細胞を樹立したうえで、神経細胞に分化誘導し、既存の数多くある化合物ライブラリーの中から、当該iPS細胞から分化誘導した神経細胞に対する各表現型に関して、その量や機能的な活性や反応を定性的又は定量的に測定をすることで、薬剤の候補となる可能性のあるヒット化合物を選別しております。また、併せて、疾患の特異的な情報を有するiPS細胞から分化誘導した神経細胞を用いた疾患のメカニズムの解析や薬剤のターゲットとなりうる物質や遺伝子の解析等を共同研究先である慶應義塾大学医学部とともに進めております。

 iPS創薬の手法は、従来の創薬開発プロセスにおける動物の疾患モデルでの評価を介さず、直接的にヒトの病態を反映した細胞を活用したものであることから、これまでの創薬開発プロセスより短期間で行うことが可能であり、かつ、前臨床の段階においてもヒトの細胞レベルでの病態の変化に対する評価を実施した上で臨床試験に進むことが可能であることから、当社では、アンメットメディカルニーズ領域の疾患に対して効率的かつ合理的に創薬を進めてまいります。

 また、さらに、当社のiPS創薬は、他の疾患のために開発された既存の医薬品・化合物の中から、新しい効果を発見して新しい医薬品の開発を行う方法であるドラッグリポジショニングという創薬手法を活用することにより、新たに化合物を開発することがなく、特に既に上市された医薬品を用いる場合は、既にヒトに対して一定の安全性が確認されていることから、創薬の研究開発に係る費用や時間について、これまでの新薬開発に必要な期間を3~12年、費用を50~60%程度削減できる可能性がございます。


④再生医療事業

 神経損傷疾患である脊髄損傷に対して、自身の細胞から樹立するiPS細胞と比較して、汎用性や市場性が高いと考えております他家iPS細胞から分化誘導した神経前駆細胞を移植することで損傷部位の治療を行う再生医療の研究開発を推進しております。

 脊髄損傷は、スポーツでの怪我や交通事故により脊髄に損傷が及ぶケースや、加齢によって、骨が弱くなり転倒して損傷するケースや頸椎の形状が変化し頚髄に負荷がかかり損傷するケースなどがあり、脊髄が損傷した場合、脊髄が脳からの指令や情報を脳幹を通じて体の各部に伝達する役割を果たすことができず、身体の運動機能や感覚機能が完全に停止又は一部停止する、麻痺の症状が発生することがあります。

 まず、慶應義塾大学医学部との共同研究において、損傷による炎症が低下し、かつ、損傷部位が完全に空洞化する前の移植した神経前駆細胞が生着しやすいと考えられる亜急性期の脊髄損傷についての研究開発を優先して進めております。本書提出日現在、慶應義塾大学医学部において「亜急性期脊髄損傷に対するiPS細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療」の医師主導臨床研究が実施されており、当該臨床研究後に、当社において企業治験を行う予定であります。そのための準備として、最適なiPS細胞の選定や分化誘導法の確立、脊髄損傷モデルマウスの評価、臨床に向けた大量培養方法の検討、各種品質管理項目の検討などを進めており、実用化に向けた取り組みを推進しております。

  また、当社では損傷後一定の期間が経過し損傷部位が完全に空洞化して、その空洞化した部分が移植した神経の伸長を阻害する可能性がある慢性期の脊髄損傷についても未だ有効な治療法がないことから研究開発を進めており、将来的には亜急性期の脊髄損傷に関する研究開発と並行して、亜急性期の脊髄損傷と比較して患者数の多い慢性期の脊髄損傷についての企業治験の検討も進めてまいります。さらに、慢性期脳梗塞、慢性期脳出血、慢性期外傷性中枢神経損傷につきましても、外部の研究機関との連携を踏まえて、前臨床の研究を進める予定にしております。


(2)当社のビジネスモデル

 ビジネスモデルは、慶應義塾大学医学部等の大学機関や医療機関が保有する基礎研究の成果や特許等の知的財産権の独占的な実施許諾権等に基づいた開発パイプライン、又は、当社自らが基礎研究を進めた成果に基づいた開発パイプラインについて、製薬会社等のパートナーと、基礎/探索研究から企業治験の各段階において、共同研究開発や将来の製造販売等の権利の一部又は全部を譲渡するライセンス契約を締結して収入を受領するものであります。

 まず、大学機関や医療機関が保有する知的財産権等を活用して共同研究契約を締結する場合は、当社が情報や技術、研究成果等を受け取る一方で、当社から共同研究費用を支払うことになります。

 次に、製薬会社等のパートナーと共同研究開発を進める場合においては、当社からは当該パートナー企業に対して、情報や技術、研究成果等を提供する一方で、当社は当該パートナー企業から共同研究開発契約を締結した段階で契約一時金を受領します。共同研究契約締結後は、共同研究開発契約を行った対象の開発パイプラインにおいて設定する個別の各目標の達成状況に応じて共同研究の達成マイルストン収入を受領します。

 そして、ライセンス契約においては、当社からは当該パートナー企業に対して、情報や技術、研究成果等を提供する一方で、当社は当該パートナー企業からライセンス契約を締結した段階で契約一時金を受領します。ライセンス契約締結後は、当社はライセンス契約を行った対象の開発パイプラインにおいて設定する個別の各目標の達成状況に応じて共同研究の達成マイルストン収入を受領します。さらに、ライセンス契約の対象の開発パイプラインの上市後は、当社は販売の一部からライセンスのロイヤリティ収入を受領するとともに、販売の達成金額に応じて達成マイルストン収入を受領します。


 【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/12 単独中間実績 1,000 651 651 514

2023/12 単独会社予想 1,000 302 266 180

2022/12 単独実績 0 -353 -359 -392

2021/12 単独実績 0 -219 -220 -228


2023/12 単独会社予想 17.69 1,605.42 0.00


上場時発行済株数 11,559,000株(別に潜在株式1,180,000株)

公開株数 1,932,000株(公募1,680,000株、オーバーアロットメント252,000株)

調達資金使途 研究開発、米国で設立予定の研究所関連資金、運転資金


募集を行う地域

欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)


PER:

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:20億

公募時時価:115億

​  

【株主構成】  

福島弘明 代表取締役社長 2,436,000 22.03% 180日

SBI Ventures Two(株) 投資業(ファンド) 1,516,000 13.71% 90日・1.5倍

岡野栄之 取締役CSO 1,282,000 11.59% 180日

中村雅也 取締役CTO 1,282,000 11.59% 180日

大和日台バイオベンチャー2号投組 投資業(ファンド) 1,143,000 10.34%

テクノロジーベンチャーズ5号投組 投資業(ファンド) 715,000 6.47%

SBIベンチャー投資促進税制投組 投資業(ファンド) 650,000 5.88% 90日・1.5倍

かごしまバリューアップ投組 投資業(ファンド) 641,000 5.80% 90日・1.5倍

松本真佐人 取締役CFO 550,000 4.97%

林哲 従業員 250,000 2.26%

KII2号投組 投資業(ファンド) 142,000 1.28%

古塚正幸 従業員 100,000 0.90%

ICMG共創ファンド1号投組 投資業(ファンド) 72,000 0.65%


 本募集に関連して、貸株人である福島弘明並びに当社株主である岡野栄之及び中村雅也は、株式会社SBI証券(以下「主幹事会社」という。)に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2024年4月13日までの期間(以下「ロックアップ期間①」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等(ただし、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等は除く。)は行わない旨合意しております。

 また、当社株主であるSBI Ventures Two株式会社、SBIベンチャー投資促進税制投資事業有限責任組合及びかごしまバリューアップ投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2024年1月14日までの期間(以下「ロックアップ期間②」といい、ロックアップ期間①とあわせて以下、「ロックアップ期間」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等(ただし、その売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)は行わない旨合意しております。

【代表者】

代表者名 福島 弘明(上場時63歳2カ月)/1960年生

本店所在地 東京都港区六本木

設立年 2016年

従業員数 16人 (2023/08/31現在)(平均44.2歳、年収784.5万円)

事業内容 医薬品の研究・開発・製造・販売、再生医療等製品の研究・開発・製造・販売

URL https://www.kpharma.co.jp/

株主数 10人 (目論見書より)

資本金 100,000,000円 (2023/09/12現在)

代表者略歴

1988年04月 エーザイ株式会社 入社

2006年04月 Eisai Research Institute of Boston, Inc.

2014年05月 慶應義塾大学医学部非常勤講師

2015年08月 慶應義塾大学医学部特任准教授(非常勤)(現任)

2016年11月 当社設立 代表取締役社長(現 任


【幹事団】

主幹事証券 SBI - -

独立幹事証券 岡三 - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 極東 - -

引受証券 松井 - -

引受証券 楽天 - -


【参考参考類似企業】時価総額(9/21)

4583 カイオム 74億円

4592 サンバイオ 421億円

4593 ヘリオス 165億円

4599 ステムリム 432億円

4884 クリングル 40億円

4891 ティムス 85億円類似企業】


【私見】

 慶応発のバイオベンチャーで、売上ゼロだった企業が一変して黒字となったタイミングでの上場でSBI主幹事ならではと思わせる上場です。そうはいっても、赤字のバイオよりは黒字の方が評価は高く、吸収金額、時価総額共に大きくはないので、大きく下がるということはなさそうです。基本、バイオなので見送り予定です。


想定価額:1040円

仮条件上限:1040円

初値予想:1040円

ブック申し込み度・・・やや弱気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:2.5

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