2023年10月10日火曜日

IPO分析(全保連)

 【事業内容】

​ (1) ビジネスモデル

① 事業の概要

 家賃債務保証とは、賃貸人に対して、家賃の支払いを保証するサービスであります。(賃借人が賃借料を支払わなかった場合、賃借人に代わって当社が代位弁済し、後日、賃借人から代位弁済した賃借料を回収します。一般的に不動産を賃借する場合、賃借人は賃貸人から連帯保証人を求められます。一方、当社の家賃債務保証サービスは、賃貸人に対して家賃の支払いを保証することになるため、連帯保証人は不要となり、賃借人は賃貸借契約をスムーズに締結することができます。当社は家賃債務保証サービスの対価として賃借人より保証委託料を受領しております。

 当社は保証業務協定契約を締結している不動産管理会社や不動産仲介会社等(以下「協定会社」という。)を介して家賃債務保証サービスを提供しております。これは、賃借人が不動産の賃貸借契約の締結時に家賃債務保証を必要とするためであります。当社は本社・営業拠点を全国の主要都市中心に19拠点配置し、協定会社向けに積極的な営業を行っております。信用力の強化や協定会社のニーズに応えたサービス開発を通じて、49,469拠点、41,078社の幅広い協定会社ネットワークを構築してまいりました。また協定会社との保証業務協定契約は乗り換えが少なく、一定の先行優位性を保持していると考えております。

 また、債務保証を行っているため、一定の貸倒債権が発生します。したがって、貸倒リスクを低減し収益力を高めるためには、賃借人に対する保証可否の審査精度を高める仕組みが重要であります。当社は2023年3月末時点で累計契約件数366万件を超える家賃債務保証の家賃支払履歴を基にしつつ、株式会社日本信用情報機構の信用情報及び一般社団法人全国賃貸保証業協会の家賃代位弁済情報も活用しながら審査精度を高めてまいりました。


(2) 商品の特徴

① 住居用家賃債務保証

 設立当時は、契約時のみ保証委託料を受領する「初回のみプラン」のみを販売しており、それが業界としても主流でした。その後、年次又は月次で保証委託料を受領する「毎年プラン(2009年2月販売開始)」「毎月プラン(2015年9月販売開始)」の販売を促進し、徐々に切り替えが進み、現在ではこれらが主力サービスであります。


a.概算払方式

信託口座を活用し、収納代行会社が賃借料の支払日に立替えて支払うことで、賃貸人の賃借料滞納リスクを解消する仕組み(注1)であります。概算払とは後で精算する条件でおよその見積額を支払うことであり、毎月の家賃は振替指定日に賃貸人・協定会社の口座に入金されます。


b.Z-value

賃借人の入居時に家賃債務保証契約と火災保険等の契約の手続きを同時に行うサービスであります。Z-valueは当社と損害保険会社が協働して開発、電子契約システムや保険会社システムとのAPI連携で実現しております。2023年7月時点でのZ-valueの累計契約件数は7,822件であります。 


c.賃借人事故対応費用保険の付帯

賃借人が孤独死等をした場合の戸室の原状回復のために要した費用や空室期間中の賃料の喪失利益を補償する保険を付帯することで、賃貸人の事故対応費用負担の軽減を可能にするサービスであります。


② 事業用家賃債務保証

 Z-Business NEO

従前の「店舗・事務所プラン」の保証範囲・保証限度額拡充を実現した事業用の家賃債務保証サービスであります。家賃24か月分相当額を保証限度額として、月額賃料、共益費/管理費、駐車場料金、賃貸借契約の更新料等を保証します。


(3) 成長戦略

「住居用領域」においては、引き続き収益・シェアの拡大を図っていくとともに、成長領域である「事業用領域」「新領域」に戦略的に注力し、更なる成長を目指します。DX戦略についても積極的に展開していきます。

 ①保証委託料単価アップを通じた収益性向上

 保証委託料の見直し、採算性の低いサービスの販売を停止し、高付加価値・高単価商品の販売を進めております。住居用保証委託料単価、事業用保証委託料単価及び全国家賃動向の2020年1月の値を100%として相対化した場合、2023年7月の各数値は115.9%、122.7%、100.5%となります。

②住居用領域の市場シェア拡大

 本社の営業要員や既存の拠点網の活用により新規の営業エリアを拡大しております。また、競争激化により体力のない企業の淘汰の可能性もあり、その中でシェアの拡大を図っていきます。

③事業用領域への展開

 事業用保証は、家賃債務保証業者の信用力がより重要となっております。当社は、住居用領域で積み上げた実績、信用力を訴求するとともに、「Z-Business NEO」のリリースや法人審査精度の向上に努めており、事業用領域の成長に向けた取り組みを行っております。なお、下記の図のとおり、事業用家賃債務保証の残高は増加傾向であります。

④新領域への展開

 新領域となる専修学校の学費保証は学校及び学生双方からのニーズは強いと考えております。当社が家賃債務保証事業で培ったノウハウが活用でき、教育支援としての社会的意義も有しており、2023年6月より販売を開始しております。なお、専修学校の学費保証の潜在市場規模は約200億円と想定しております。

⑤積極的なDX戦略展開

 2021年に基幹システムを刷新し、申込・契約のペーパーレス化等、不動産業界のDXに対応可能なシステム基盤を構築しております。直近3期累計で約53億円(資産計上されず費用処理される可能性のある部分を含む)のシステム投資額を戦略的に計上しております。DXに携わる人員数及び全社員に占める人員割合も継続的に増加しており、直近5期(2019年3月期~2023年3月期)のDX人員は14名から24名に増加しております。

API連携による電子申込は、2023年7月末時点において月間6,073件、申込全体の約19%を占める割合となっております。


 【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2024/03 単独1Q実績 6,053 847 832 575

2024/03 単独会社予想 24,754 2,395 2,308 1,612

2023/03 単独実績 23,846 1,904 1,844 773

2022/03 単独実績 21,705 1,699 1,619 1,387


決算期 種別 EPS BPS 配当

2024/03 単独会社予想 79.81 233.00 25.00


売出しを行う地域

欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)


上場時発行済株数 22,998,000株(別に潜在株式4,530,800株)

公開株数 6,849,400株(公募2,549,200株、売り出し3,406,800株、オーバーアロットメント893,400株)

調達資金使途 システム投資


PER:7.5

PBR:2.6

配当利回り:4.2%

公募時吸い上げ資金:41億

公募時時価:138億

​   

【株主構成】以下180日 

AZ-Star3号投組 投資業(ファンド) 8,390,800 35.15%

インベストメントZ1号投組 投資業(ファンド) 4,441,026 18.60%

迫幸治 代表取締役社長執行役員 2,950,000 12.36%

FP公開支援5号投組 投資業(ファンド) 1,358,000 5.69%

茨木英彦 代表取締役副社長執行役員 1,269,000 5.32%

MCo6号投資事業組合 投資業(ファンド) 1,000,000 4.19%

投組センテリュオ 投資業(ファンド) 850,000 3.56%

(株)沖縄海邦銀行 特別利害関係者など 384,615 1.61%

三菱UFJファクター(株) 特別利害関係者など 384,615 1.61%

藤本竜也 取締役常務執行役員 345,000 1.45%

(株)琉球銀行 特別利害関係者など 256,500 1.07%

全保連社員持株会 特別利害関係者など 223,116 0.93%

(株)りゅうせき 特別利害関係者など 128,205 0.54%

兆(株) 特別利害関係者など 128,205 0.54%

(株)JGコーポレーション 特別利害関係者など 128,205 0.54%

レインボーマネジメント(株) 特別利害関係者など 128,205 0.54%

損害保険ジャパン(株) 特別利害関係者など 128,205 0.54%

奄美沖縄投組 投資業(ファンド) 128,205 0.54%

(株)りゅうにちホールディングス 特別利害関係者など 128,205 0.54%

エムエスティ保険サービス(株) 特別利害関係者など 128,205 0.54%


本募集及び引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人であるAZ-Star3号投資事業有限責任組合 、FP公開支援5号投資事業有限責任組合、フレンドリー・パートナーズ株式会社、売出人であるインベストメントZ1号投資事業有限責任組合、当社株主である投資事業有限責任組合センテリュオ、株式会社沖縄海邦銀行、三菱UFJファクター株式会社、株式会社琉球銀行、全保連社員持株会、株式会社りゅうせき、兆株式会社、株式会社JGコーポレーション、レインボーマネジメント株式会社、損害保険ジャパン株式会社、奄美沖縄投資事業有限責任組合、株式会社りゅうにちホールディングス、エムエスティ保険サービス株式会社、株式会社マールベリー・ホールディングス、株式会社ウイズコア、株式会社AGSコンサルティング、株式会社ブルーブックス、当社の株主であり当社の新株予約権を保有する迫幸治及び当社の新株予約権を保有する茨木英彦、MCo6号投資事業組合及び藤本竜也は、共同主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2024年4月21日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと及びグリーンシューオプションが行使されたことに基づいて当社普通株式を売却すること等は除く。)等は行わない旨合意しております。

【代表者】

代表者名 迫 幸治(上場時68歳4カ月)/1955年生

本店所在地 沖縄県那覇市字天久(東京本社:東京都新宿区西新宿)

設立年 2001年

従業員数 622人 (2023/08/31現在)(平均41.6歳、年収578.6万円)

事業内容 家賃債務保証事業

URL https://www.zenhoren.jp/

株主数 23人 (目論見書より)

資本金 279,500,000円 (2023/09/22現在)

代表者略歴

1979年02月 ライフ開業

2001年10月 NPO法人アンビシャス(現 認定NPO法人アンビシャス)理事長(現任)

2001年11月 当社設立 代表取締役社長執行役員(現任)

2009年10月 一般社団法人全国賃貸保証業協会 会長(現任)

2011年01月 NPO法人NORS 理事(現任)

2020年06月 公益財団法人琉球大学後援財団 評議員(現任)

2021年12月 一般社団法人沖縄県事務職育成連携協会理事 (現任)


【幹事団】

主幹事証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

主幹事証券 SMBC日興 - -

引受証券 大和 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 松井 - -


【参考類似企業】 今期予想PER(9/29)

7183 あん保証 9.5倍 (単独予想)

7187 ジェイリース 10.6倍 (連結予想)  時価175億 売上125億 経常26億  配3.6%

7191 イントラスト 16.5倍 (連結予想)  時価200億 売上85億 経常21億  配2%

7196 Casa 15.9倍 (連結予想)


【私見】

 家賃保証業務ということで、類似業種は多く直近でもニホンインシュアの株価が冴えないように業種妙味はありません。ですが、沖縄の会社で、利益規模も大きく、仮条件を大幅に下げたことにより非常に割安感はあります。更に配当利回りも4.3%も魅力です。問題は株主構成で、ロックはかかっているものの、上位株主はVCだらけで人気はでそうもありません。当初の想定価額の730円で算出したPER9.1、配当利回り3.4%、時価総額167億あたりが、ジェイリースとの比較からも上限ラインで、公募割れからのセカンダリー狙いも面白いかもしれません。


想定価額:730円

仮条件上限:600円

初値予想:600円

ブック申し込み度・・・中立

セカンダリー期待度・・・中立(割れはやや強気)

総合評価:3

0 件のコメント:

コメントを投稿