2023年10月13日金曜日

IPO分析(ドリーム・アーツ)

 【事業内容】

​(1)クラウド事業

 自社開発したアプリケーションソフトウェアをSaaSの形態で提供する事業。

提供するサービスは、幅広い業界で利用される「ホリゾンタルSaaS」と、特定の業界で利用される「バーティカルSaaS」、および特定顧客向け開発運用一体型サービス「DCR(DX Custom Resolution)」に区分しております。

 企業固有の戦略要件に基づくシステムを開発し、クラウド基盤上で運用しつつ、継続的な機能拡張開発を行う

ホリゾンタルSaaSおよびバーティカルSaaSは月額利用料形式で提供しており、基本利用料で利用開始できますが、利用人数や用途に応じて、ユーザーライセンス、バインダー(データベース)ライセンス、各種オプションなどを組み合わせることが可能です。また、DCRは開発するシステムの要件の個別性が高いため、内容に応じてサービス料を定めております。


①ホリゾンタルSaaS

ホリゾンタルSaaSとして「SmartDB®」及び「InsuiteX®」を提供しております。


(a)SmartDB®(スマート・デービー)

 当社グループが提供する「SmartDB®」は、プログラミング不要の「ノーコード開発ツール」です。直感的な操作と簡易な設定により、非IT人材による業務アプリケーションの開発を可能とすることを目指しております。

 大企業の業務デジタル化が遅れている背景にはIT人材の不足があると考えております。そのため、ノーコード開発ツールによってIT人材不足を解消し、大企業のデジタル化を支援していきたいと考えております。また、ノーコード開発ツールは、業務に精通した現場担当者がシステム開発を推進することによって、要件定義や仕様設計などの開発プロセスを短縮し、開発生産性の向上を図ることができるものと考えております。さらには、現場部門が自ら「業務デジタル化」を推進することで、これまで放置されていたアナログ業務のデジタル化が進み、DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた企業文化や組織風土の変革に取り組みやすい環境をつくることにつながるものと考えております。

 「SmartDB®」は、ノーコード開発ツールでありながら、受託開発にも引けを取らない高度な機能を備えているものと認識しております。そのため、単純なデータベースやワークフローといった標準的なものから、ERPのフロントシステムや、生産管理・在庫管理などの基幹業務を支えるサブシステムに至るまで、幅広い領域で活用することができるものと考えております。

 従来は、こうしたミッションクリティカルシステムの周辺領域もシステムインテグレーターが担うこととされておりましたが、ノーコード開発ツールの活用により、現場主導で開発・運用することが可能となるため、投資効率の向上とビジネス環境への機動的な対応を同時に実現することができるようになります。なお、システムインテグレーターが開発基盤としてノーコード開発ツールを活用し、開発プロセスやシステム運用の効率化を図ることもあります。

 「SmartDB®」の競合優位性は、優良な顧客基盤、豊富な導入実績、大企業における業務デジタル化ノウハウおよび運用ノウハウの蓄積により築かれております。これらの導入実績とノウハウの蓄積は、大規模組織で利用する際に要求される、高度な権限管理や複雑な業務プロセスを構築する機能の網羅的な実装につながっております。また、大企業に対する難易度の高い商談プロセスをマネジメントする営業体制と、業務デジタル化を短期間で成功に導く手厚い導入支援体制(課題ヒアリング、初期設定、操作トレーニング、アプリケーション開発支援、運用・展開方法の検討支援、事務局支援など)も強みとして認識しております。


(主な機能)

 企業内の活動は、起案・起票、承認決裁、決裁情報の保管・活用というプロセスをたどります。そのため企業内で利用する業務アプリケーションは、「入力フォーム」(データを入力するインターフェイス)、「ワークフロー」(入力データの承認・意思決定プロセス)、「データベース」(データの蓄積および活用)という3つの機能で構成されることとなります。SmartDB®は、これらの機能をプログラミングすることなく簡単に開発することを目指しております。

 経費精算などの領域は多くのSaaS企業が提供しておりますが、導入企業において機能が不足していると判断した場合は、その要件を諦めるか、カスタマイズを行う必要があります。SmartDB®は豊富な機能を持つノーコード開発ツールのため、多くの場合でカスタマイズなしに機能要件を満たすことができるものと考えております。

 また、経費精算とワークフローを同時に導入する場合は、複数のSaaSを組み合わせる必要がありますが、SmartDB®は同一システム内で複数の業務アプリケーションを開発し運用することを目指しております。

 従来、ERPフロントシステムは、ERPのカスタマイズによって開発されてきました。このERPフロントシステムをSmartDB®へ移行し、APIを介して連携する仕組みへと変更することで、システムのアップデートをスムーズに行い、システムの陳腐化(レガシー化)を防ぐことができるようになるものと考えております。

 また、各社のビジネスの根幹を担う重要な業務プロセスにおいて、汎用的なソフトウェアやSaaSが存在せず、デジタル化を諦めている領域が数多く存在します。SmartDB®の活用により、多額のシステム投資を必要としない、業務デジタル化の推進を目指してまいります。


(b)InsuiteX®(インスイート・エックス)

 当社グループが提供する「InsuiteX®」は、企業内の従業員が社内情報にアクセスするために訪れる「社内ポータル」を構築するためのツールです。

 新型コロナウイルス感染症の影響で、オフィスワークとリモートワークを組み合わせた新しい働き方が増え、経営ビジョンや事業戦略の浸透、社内ルールやガバナンスの徹底といった組織運営上の課題が浮き彫りになりました。「InsuiteX®」は、経営情報から現場情報に至るまで、企業内のあらゆる情報を集約・発信・共有するプラットフォームとして、大企業の組織運営をサポートすることを目指しております。全社向けだけではなく、組織・個人ごとにポータルを作成し、業務遂行に必要な情報を集約することにより、組織の生産性向上にも貢献していきたいと考えております。「InsuiteX®」は、企業文化・企業体質の強化に向け、単なる情報共有を「意識共有」と呼べるレベルまで発展させることをコンセプトとして開発を進めております。


  ②バーティカルSaaS

 当社グループが提供する「Shopらん®」は、チェーンストアの店舗運営を支援するための情報共有ツールです。

チェーンストア業界では、本部店舗間の情報伝達に問題を抱えていることが多いものと認識しております。「Shopらん®」は本部からの指示を的確に店舗に届け、業務実施率を向上させることで機会損失の発生を防止することを目指しております。また、現場情報をリアルタイムに収集し、店舗運営方針の転換に活かすなど、業界特有の課題に対応した機能を提供することで、現場の生産性向上や業務品質の改善、人材育成などをサポートすることができるものと考えております。


③特定顧客向け開発運用一体型サービス

 当社グループが提供するDCR(DX Custom Resolution)は、企業固有の戦略要件に基づいてシステムを開発し、クラウド基盤上で運用しつつ、継続的な機能拡張開発を行う、特定顧客向け開発・運用一体型のサービスです。初期のシステム開発は、プロフェッショナルサービス事業において開発を請負いますが、運用開始後は月額利用料形式でクラウドサービスとして提供します。

 DCRは特定の顧客に限定し提供しております。収益を確保しながら、最先端テクノロジーの活用による技術力の向上や、新たなプロダクト開発に繋がる顧客ニーズの発掘が期待できるものと考えております。顧客の要件によっては、SmartDB®をDCRシステムのパーツとして組み込むことも想定され、SmartDB®を基盤とする新たなソリューションの開発の可能性を模索してまいります。


(2)オンプレミス事業

 自社開発したアプリケーションソフトウェアを、オンプレミス(注11)環境で利用するパッケージソフトウェア(注12)としてライセンス提供しております。オンプレミス事業の顧客は、クラウド事業の潜在顧客となるため、継続的に当社SaaSへの移行提案を行っております。


①パッケージソフトウェア

 当社グループは、「SmartDB®」および「INSUITE®」の2製品をパッケージソフトウェアとして提供しております。ただし、新規顧客はSaaSをご利用いただくこととしており、パッケージソフトウェアの提供は、従来からオンプレミス環境で利用している既存顧客の追加発注に限定しております。


②ソフトウェアメンテナンス

 パッケージソフトウェアを継続的に利用いただくため、ソフトウェアメンテナンスを提供しております。ソフトウェアメンテナンスには、技術的な問い合わせ対応に加え、バージョンアップ版の提供が含まれます。また、パッケージソフトウェアの拡張機能として開発したプラグインソフトウェアの保守サービスも提供しております。

 

(3)プロフェッショナルサービス事業

 クラウド事業およびオンプレミス事業の各種サービスを提供するため、以下のプロフェッショナルサービスを行っております。本事業では、請負契約もしくは準委任契約に基づくシステム開発および役務提供を行っており、投入した工数に応じて収益を獲得いたします。

  プロフェッショナルサービスの提供により、各種SaaSの活用、適用業務の拡大、高度な業務自動化要件への対応を促進します。特にオンボーディング(導入支援)および利活用コンサルティングは、ノウハウの蓄積を通じて、プログラムの標準化を進めることができるため、迅速で付加価値の高いサービスの提供を目指してまいります。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/12 連結中間実績 2,202 370 367 257

2023/12 連結会社予想 4,250 418 406 287

2022/12 連結実績 3,670 187 181 127

2021/12 連結実績 2,938 -16 -24 10


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/12 連結会社予想 77.48 - 0.00


上場時発行済株数 4,054,600株(別に潜在株式183,000株)

公開株数 910,900株(公募220,000株、売り出し572,100株、オーバーアロットメント118,800株)

調達資金使途 販売促進費、製品開発資金


PER:34.3

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:24.2億

公募時時価:107億

​   

【株主構成】 以下180日

山本孝昭 代表取締役社長 861,000 22.45%

芸夢YAMAMOTO(株) 役員らが議決権の過半数所有 704,400 18.37%

前川賢治 取締役執行役員CWO 347,600 9.06%

芸夢前川(株) 役員らが議決権の過半数所有 284,400 7.42%

牧山公彦 取締役専務執行役員 202,400 5.28%

金井正義 監査役 188,000 4.90%

コタエル信託(株) 新株予約権信託の受託者 183,000 4.77%

(株)ブイ・シー・エヌ 特別利害関係者など 160,000 4.17%

NTTファイナンス(株) 特別利害関係者など 140,000 3.65%

加賀電子(株) 特別利害関係者など 92,000 2.40%

妹尾芳隆 特別利害関係者など 68,000 1.77%


​本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である前川賢治、売出人である山本孝昭、芸夢YAMAMOTO株式会社、芸夢前川株式会社、妹尾芳隆、今村文哉、KIZUNAパートナーズ株式会社、堀謙之、松本由美子、黒田國男、白石麻里、松岡秀紀、林亨及び岩谷哲彦並びに当社株主(新株予約権の保有者を含む。)である牧山公彦、金井正義、コタエル信託株式会社、株式会社ブイ・シー・エヌ、NTTファイナンス株式会社、石田健亮、吉村厚司、野澤二三朝、鈴木寛、ハンスブラウアー、本木一偉、安達尊彦、高橋人也、垣内廉史、株式会社ケイズアイ、稲葉智成、遠藤功、椎野毅、宮永博史、栗木楽、増本大介、野﨑智裕、山下竜大、岩尾俊兵、玉村藍子、久保允誉、菅谷まなみ、宮入正幸、村瀬健太郎、白東強、岡部順子及び上田健は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の2024年4月23日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得することを除く。)等を行わない旨合意しております。


【代表者】

代表者名 山本 孝昭(上場時58歳8カ月)/1965年生

本店所在地 東京都渋谷区恵比寿 恵比寿ガーデンプレイス29階

設立年 1996年

従業員数 226人 (2023/08/31現在)(平均35.9歳、年収634.9万円)、連結264人

事業内容 大企業に特化した業務デジタル化SaaS(Software as a Service)プロダクト(ノーコード開発ツール「SmartDB」など)およびコンサルティング・サービスの提供

URL https://www.dreamarts.co.jp/

株主数 59人 (目論見書より)

資本金 300,000,000円 (2023/09/22現在)

代表者略歴

1988年04月 株式会社アシスト入社

1993年10月 インテルジャパン株式会社 (現インテル株式会社)入社

1996年12月 当社設立 代表取締役社長(現任)

2000年06月 株式会社ブロードバンドコム取締役

2007年08月 夢創信息(大連)有限公司 董事長総経理(現任)

2012年01月 株式会社ドリーム・アーツ沖縄取締役

2021年11月 芸夢YAMAMOTO株式会社設立 代表取締役社長(現任)


【幹事団】

主幹事証券 みずほ - -

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 東海東京 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 SMBC日興 - -


【参考類似企業】今期予想PER(10/5)

3853 アステリア 43.4倍 (連結予想)

4069 BlueMeme 24.9倍 (連結予想)

4776 サイボウズ 56.4倍 (連結予想)


【私見】

 SaaS系の会社で大企業に特化しており、多少の優位性はありますが、類似業種もあるので大きく伸びるかと言われると微妙ではあります。業績は良く、PERは他社に比べれば高くはありませんが、成長性を考えると上もそこまで大きくはないかもしれません。需給面では、VCなしの完全ロックは魅力ですが、吸収金額はやや大きいので2倍になる銘柄ではないと予想します。

想定価額:2660円

仮条件上限:2660円

初値予想:4000円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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