2023年10月11日水曜日

IPO分析(KOKUSAI ELECTRIC)

 【事業内容】

​ (1)装置ビジネス

 半導体の製造に使用する装置の製造及び販売を行っております。半導体の製造プロセスの概略図をに示します。半導体は、シリコンウェーハ上に、回路を形成していく工程を何度も繰り返して製造していきます。回路形成工程は、回路形成に必要な薄膜等を形成する成膜工程、成膜後に熱をかけて結晶サイズを揃える(アニール)等の熱処理工程、成膜上に回路を形成するパターニングを行うリソグラフィー工程、パターンに沿って膜を取り除くエッチング工程、各工程間でウェーハを洗浄する洗浄工程、各工程間での検査工程で構成されます。シリコンウェーハ上にこれらの工程を数百回繰り返して回路を形成する製造工程を総称して前工程と呼んでおります。そして、前工程の工程ごとに高度な専用技術を要したさまざまな装置が使用されることで半導体が製造されます。当社グループでは、前工程における「成膜」工程の装置を主力製品として、また「熱処理」工程に用いられる装置の製造及び販売をしております。

 「成膜」工程とは、シリコンウェーハの回路形成における回路素材となるポリシリコン膜や絶縁膜等の薄膜を形成する工程を指します。当社グループでは、その成膜工程の中でLP-CVD製品のほかに、ALDに対応した製品を提供しております。

一方、「熱処理」工程とは、熱酸化膜を形成するプロセスや、成膜後に加熱して膜中の結晶サイズを揃える(アニール)プロセス、成膜後に注入した不純物を加熱して均一に拡散するプロセス、また、プラズマを用いて成膜後に膜質を改善する(トリートメント)プロセスなどを指します。当社グループでは、本工程に最適なプロセス技術にて装置提供を行っております。

 これらの工程は、シリコンウェーハの回路形成において重要な役割を担うことから、各装置に、高度な技術と品質の信頼性の高い製品提供が必要となります。

 当社グループが装置メーカーとして取り組んでいる最も重要な課題についてご説明します。それは、デバイス構造の複雑化を原因とする成膜プロセスの生産性の低下、という問題です。三次元(立体)構造になるとデバイスの構造がより深く、複雑になります。それにより成膜が必要な表面積が拡大し、結果ガスの移動距離が長くなり、成膜に要する時間が増加するため、生産性の課題が顕在化します。また、デバイス構造の複雑化から、難易度の高い高品質成膜が要求されており、ALDのニーズが高まっております。当社グループは、このニーズに高難易度成膜と高生産性の両方を実現できるバッチALD技術で、顧客の厳しい要求仕様に応えております。このバッチALD技術は、当社のコア技術による競合優位性の高い技術となっております。そのようなことからも、本分野に高度な技術力を有する当社グループは高いシェアを確保しております。

 顧客からALDのニーズが高まっていると前述しておりますが、ALDはサイクリックなプロセスであり、そのプロセスの中でガスの流入や流出、また膜質を維持するために副産物の除去を行うため時間を要するプロセスになってしまうことが大きな課題になっています。ALD技術とバッチの組み合わせによる補完関係を実現した当社グループのバッチALD技術は、高難易度成膜と高生産性の両立を可能とするものであり、生産性に関するALDの問題の論理的な解決策となります。


 次に当社製品について以下にご紹介いたします。当社製品はバッチ成膜装置とトリートメント(膜質改善)装置をラインアップしており、バッチALDは売上高世界シェア1位、トリートメントは売上高世界シェア2位となっております。


それぞれの製品についてご説明します。

① バッチ成膜装置

 数十枚以上のシリコンウェーハを一括処理することを可能とした成膜装置であり、高生産性が特徴となります。バッチ成膜装置には、高生産性を追究しウェーハ数百枚の一括処理に対応した「ラージバッチ」プラットフォーム(図-2 主要製品概要参照)と、近年においては、複雑化する半導体構造への、難易度が高い高品質成膜の要求仕様に対応した、ウェーハ数十枚の一括処理に対応した「ミニバッチ」プラットフォームがあります。

 このバッチ成膜装置のプラットフォームに使途に応じた反応炉をセットし、最適なプロセスを実現しています。「成膜」工程では、「LP-CVD」、「ALD」など、「熱処理」工程では「熱酸化」「アニール」「拡散」などに適応しております。


② トリートメント(膜質改善)装置

 成膜後にプラズマや加熱により膜中の不純物の除去や粒子を安定させることで膜質を改善させることを目的とした装置です。半導体デバイスの微細化、複雑化に伴い低温環境での成膜需要が高まる中で、低温環境でも膜質を維持するソリューションとして需要が近年拡大しております。

 当社グループで製造・販売しているトリートメント装置には、独自のプラズマ源を用いた「酸窒化・トリートメント装置」のMARORA®、ノンプラズマでヒーターを熱源とした「アニール装置」のTANDUO®などがあります。特に「MARORA®」は複雑な半導体形状に対しても高い生産性と品質でのトリートメントが可能であり、顧客からの需要を集めております。

 当社はトリートメント装置において既に世界2位の市場シェアを有しておりますが、バッチ成膜装置に次ぐ柱として今後も成長させていく計画です。


③ その他(測定器・洗浄装置用のユニット)

 国内関連子会社(株式会社国際電気セミコンダクターサービス)にて、成膜した後に膜の抵抗値を測定する測定検査装置や、他装置メーカー等向けに洗浄装置用の超音波発振器(水の中で振動させて洗浄に使用)ユニットを製品として製造・販売をしています。


(2)サービスビジネス

 当社グループが製造・販売する半導体製造装置においてアフターサービスの提供を行っております。半導体生産工場においては、半導体製造装置が年中無休で稼働しており、半導体製造装置に対し安定的な稼働とともに、耐久性が高い製品の提供が要求されております。当社グループにおいては、これら品質を担保した製品の提供を行っておりますが、これに加え、迅速、かつ、的確にアフターサービスを提供する体制が求められております。

 当社グループでは、このような顧客の要望に応えるべく、より顧客の製造拠点に近い場所にて、サービス拠点を設置したうえで、優秀なエンジニアを配置するとともに、交換パーツを配備することで、装置トラブルに迅速、かつ、的確に対応可能な体制を整えております。


① 部品販売、保守サービス、有償修理

 当社が製造・販売する主要製品に対し、保守メンテナンスするための製品の提供を行っております。加えて、半導体製造装置のための定期的な保守サービスを行っております。また、製品保証契約による修理サービスに加えて、故障時に有償で修理サービスを提供しております。

② 装置の移設・改造

 当社が提供する主要製品に対し、設置後に必要に応じて、装置の移設やプロセスの書き換え、アップグレード等のサービス等を提供しております。

③ ウェーハサイズ200㎜以下の装置と中古装置の販売

 レガシー世代でのバッチ成膜装置を新規・中古いずれも顧客の要望に応じて適切に提供しております。2017年には、200mmバッチ成膜装置に、ウェーハサイズ300mmの先端装置技術を移植した新製品として競争力の高いバッチ成膜装置(VERTEX Revolution®)を市場投入して販売しております。また、SiCを含むパワーデバイス用途向けの販売が増加しており、当社は高温アニール技術を生かして差別化をはかっております。

 半導体設備投資サイクルの変動を受けにくく、かつ消耗品の販売等リカーリングな収益が発生するサービスビジネスは、安定的かつ高マージンな収益が期待されます。当社グループは装置のライフサイクル全体にわたってアフターサービス(部品販売、保守メンテナンス、有償修理、装置の移設・改造等)を提供し続ける体制を整えており、インストール台数の増加と各サービスの強化を通じてサービスビジネスも拡大しております。

 なお、当社グループの2023年3月期におけるビジネスごとの売上収益の構成は装置ビジネスが69%(内バッチ成膜装置が59%、トリートメント装置が10%)、サービスビジネスが31%となっております。当社グループの2022年3月期の売上収益の構成は装置ビジネスが74%(内バッチ成膜装置が64%、トリートメント装置が10%)、サービスビジネスが26%となっております。


【業績等】

決算期 種別 売上収益 営業利益 税引き前利益 純利益

2024/03 連結1Q実績 32,710 3,990 3,727 2,655

2024/03 連結会社予想 180,000 29,109 28,280 20,200

2022/03 連結実績 245,721 56,064 55,895 40,305

2021/03 連結実績 245,425 70,652 69,264 51,339


2024/03 連結会社予想 87.67 - 11.00


上場時発行済株数 230,404,200株(別に潜在株式7,971,198株)

公開株数 67,674,700株(売り出し58,847,600株、オーバーアロットメント8,827,100株)


PER:20.9

PBR:

配当利回り:0.6%

公募時吸い上げ資金:1245億

公募時時価:4239億

​   

【株主構成】 以下180日

KKR HKE Investment L.P. 親会社、投資業(ファンド) 168,700,500 70.77%

Applied Materials Europe B.V. 特別利害関係者など 34,560,000 14.50%

KSP Kokusai Investments, LLC 投資業(ファンド) 15,619,500 6.55%

Qatar Holding LLC 投資業(ファンド) 11,520,000 4.83%

金井史幸 代表取締役社長執行役員 592,923 0.25%

小川雲龍 取締役専務執行役員 349,512 0.15%

柳川秀宏 専務執行役員など 348,432 0.15%

神谷勇二 取締役専務執行役員 313,632 0.13%

塚田和徳 常務執行役員など 309,690 0.13%

金山健司 執行役員 270,765 0.11%


 グローバル・オファリングに関連して、売出人及び貸株人であるケイケイアール・エイチケーイー・インベストメント・エルピー(KKR HKE Investment L.P.)、当社の株主であるアプライド・マテリアルズ・ヨーロッパ・ビーヴィー(Applied Materials Europe B.V.)、ケーエスピー・コクサイ・インベストメンツ・エルエルシー(KSP Kokusai Investments, LLC)、カタール・ホールディング・エルエルシー(Qatar Holding LLC)及び能勢雄章並びに当社の新株予約権者である金井史幸、神谷勇二、小川雲龍、柳川秀宏、塚田和徳、山田正行、河上好隆、山峯直利、金山健司、宮本正巳、橋本卓資及び小山肇は、ジョイント・グローバル・コーディネーターに対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の日(2024年4月21日(当日を含む。))までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、ジョイント・グローバル・コーディネーターの事前の書面による同意なしには、当社普通株式の譲渡又は処分等(ただし、引受人の買取引受けによる国内売出し、海外売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのための当社普通株式の貸渡し、グリーンシューオプションの行使に基づく当社普通株式の売却並びに一定の借入れに関する担保権の設定及び当該担保権の実行に伴う処分等を除く。)を行わない旨を約束する書面を差し入れる予定であります。

 また、グローバル・オファリングに関連して、当社は、ジョイント・グローバル・コーディネーターに対し、ロックアップ期間中、ジョイント・グローバル・コーディネーターの事前の書面による同意なしには、当社普通株式の発行、当社普通株式に転換若しくは交換されうる有価証券の発行又は当社普通株式を取得若しくは受領する権利を表章する有価証券の発行等(ただし、株式分割による新株式発行等を除く。)を行わない旨を約束する書面を差し入れる予定であります。

 上記のとおり、売出人及び貸株人であるケイケイアール・エイチケーイー・インベストメント・エルピー(KKR HKE Investment L.P.)のロックアップにおける除外事由として、一定の借入れに関する担保権の設定及び当該担保権の実行に伴う処分等を行うことができる旨が定められております。かかる将来の借入れに係る借入金額、貸出人その他の条件は現時点において未定であることから、その条件によっては、ロックアップ期間中に、ケイケイアール・エイチケーイー・インベストメント・エルピー(KKR HKE Investment L.P.)が当社普通株式への担保権の設定等を行い、当該担保権の実行等に伴い当社普通株式の処分が行われる結果として、当社普通株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。

【代表者】

代表者名 金井 史幸(上場時67歳1カ月)/1956年生

本店所在地 東京都千代田区神田鍛冶町

設立年 2017年

従業員数 1129人 (2023/08/31現在)(平均44.2歳、年収976万円)、連結2473人

事業内容 半導体製造装置の開発・製造・販売・保守サービスおよびそれに付帯関連する事業

URL https://www.kokusai-electric.com/

株主数 5人 (目論見書より)

資本金 10,005,002,000円 (2023/09/21現在)

代表者略歴

1981年04月 株式会社日立製作所 入社

2001年10月 同社半導体グループ 量産プロセス技術本部 生産技術部長

2003年04月 株式会社ルネサステクノロジ(現ルネサスエレ クトロニクス株式会社)那珂事業所 ウエハプロセス技術統括部 プロセス開発部 担当部長

2009年04月 株式会社日立国際電気 入社、6月:同社 電子機械事業部 富山工場 縦型成膜装置設計部長、10月:同社 電子機械事業部 富山工場 副工場長 兼 縦型成膜装置設計部長

2012年04月 同社 執行役 電子機械事業部 副事業部長 兼 富山工場長

2016年04月 同社 執行役専務 電子機械事業部長 兼 富山事業所長、Kokusai Semiconductor Equipment Corporation Board Director, Chairman & CEO、亜太國際電機股份有限公司 董事長

2017年04月 株式会社日立国際電気 執行役専務 電子機械事業部長

2018年06月 当社(株式会社日立国際電気より分離)代表取締役社長執行役員(現任)


【幹事団】

主幹事証券 野村 - -

主幹事証券 SMBC日興 - -

主幹事証券 みずほ - -

主幹事証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 大和 - -

引受証券 東海東京 - -

主幹事証券 ゴールドマン・サックス - -


【参考類似企業】今期予想PER(10/3)

00001 米アプライド 17.9倍 (連結予想)

00002 米ラムリサーチ 21.4倍 (連結予想)

00003 蘭ASMインタ 28.7倍 (連結予想)

6235 オプトラン 12.5倍 (連結予想)

6384 昭和真空 94.9倍 (連結予想)

6387 サムコ 24.4倍 (単独予想)

6508 明電舎 13.8倍 (連結予想)

6728 アルバック 16.5倍 (連結予想)

6907 ジオマテック 149.5倍 (単独予想)

7224 新明和 11.0倍 (連結予想)

8035 東エレク 31.1倍 (連結予想


【私見】

 半導体関連の大型部の上場で、昨年のソシオネクストを連想しますが、PER1桁台・高配当・外資VCなしのソシオに比べ、外資のVC出口案件の銘柄とは物が違うと思います。世界シェアで1位・2位の技術料は確かで、海外配分6割からも世界的に評価できる技術力だと思います。今期予想が減収減益と物足りなく、その数字からのPERですと割安感もなく、不透明度はあります。来期の決算次第ではありますが、その頃にはロックアップも解除されることから中長期でも買いにくい銘柄ではあります。アームの株価も冴えないことから、公募割れはないにしても大きく上がることもなさそうで、公募やや上で手数料が抜けるくらいのつまらない動きと予想します。


想定価額:1890円

仮条件上限:1840円

初値予想:1880円

ブック申し込み度・・・中立

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3

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