2025年9月10日水曜日

IPO分析(オリオンビール)

 【事業内容】

 第二次世界大戦後の復興の最中、実業家の具志堅宗精が「郷土の若者に勇気と希望を与えたい」との思いから1957年に「沖縄ビール株式会社」として立ち上げた会社です。「オリオンビール」という社名は、沖縄県民に募集して選ばれた名称です。「オリオン座は南の星であり沖縄のイメージにマッチしていること、また星は人々の夢や憧れを象徴する」ことを選定理由として、採用されました。その後、1966年に初の海外展開となる台湾へのビール輸出、1975年のホテルロイヤルオリオン開業、2014年のホテルオリオンモトブリゾート&スパの開業、と沖縄の発展と共に当社グループは事業を拡大して参りました。また2002年のアサヒビール株式会社との資本業務提携により、沖縄県内への同社商品の提供と併せて、沖縄県外への当社製品の販売を開始し、現在に至るまで酒類飲料の重要なパートナーとして良好な関係を築いております。

 当社グループは、「魅力ある商品・体験を県民や観光客にお届けし、沖縄と共に持続的な成長を実現するビジネスモデル」を構築しています。主力商品である「オリオン・ザ・ドラフト」を中心とした多様なラインナップを、当社ブランドを愛する沖縄県民の皆様や観光客の皆様に提供していることに加え、当社ブランドが体感できるホテルへの宿泊、当社が主催するビアフェストの参加、当社のライセンス商品の購入・着用を通じて、沖縄での観光体験を楽しんで頂き、ファン層を拡大する循環成長型のビジネスモデルを目指しています。


(事業概要)

 「オリオン」ブランドを掲げて、酒類清涼飲料事業と観光・ホテル事業(観光客向けのホテルビジネス)を展開しています。酒類清涼飲料事業は、沖縄県民及び観光客の需要回復によりコロナ禍を乗り越え着実に業績を拡大し、また沖縄県外、海外も高成長を実現しています。観光・ホテル事業は、好ロケーションに位置するホテルを有し、今後の観光客の更なる増加を見据えてリニューアル工事を実施、需要増加に備えています。

(1)酒類清涼飲料事業

 当社が手掛ける「オリオン」は、沖縄に根差し共に成長を遂げたビールブランドであり、その主力商品は「オリオン・ザ・ドラフト」です。1960年に誕生した「オリオン・ザ・ドラフト」は、沖縄の大麦、水を使用し製造しており、温暖な気候に合わせたすっきりとした味わいが特徴です。2024年1月に県民により愛されるブランドを目指しブランドリニューアルを実施し、沖縄県内での拡販に努めている他、県外、海外にもブランドの浸透をはかり、業容の拡大をはかっています。

 沖縄県を拠点に酒類清涼飲料の製造・販売を行っております。商品としては、ビール・発泡酒・新ジャンル(総称して、ビール類)、RTD(Ready to Drink:缶チューハイなどすぐに飲めるアルコール飲料)、洋酒、清涼飲料を扱っており、主力製品のオリオンブランドのビールは沖縄県内において高いシェアを誇っております。販売エリアとしては、沖縄県内、沖縄県外、海外(台湾、オーストラリア、韓国、米国、香港、中国など)です。

 連結子会社である株式会社石川酒造場は、泡盛、もろみ酢、リキュール、スピリッツなどの製造・販売を行っております。

当社は、国内外のサプライヤーから原材料の調達を行い当社名護工場(沖縄県名護市)にてビール類の製造を行っております。また、RTDについては製造委託先からの仕入販売を行っております。

 販売チャネルとしては、樽や瓶を主体としてビール類を販売する業務用市場(業務チャネル)、缶を主体としてビール類、RTD類を販売する家庭用市場(量販チャネル)が主な市場であります。それぞれの市場で、主力商品を中心にニーズに合わせたブランド展開を行っており、国内(県内・県外)代理店制度を採っております。また、2020年3月期に立ち上げたECチャネルでは、当社のビール類やRTDの定番品及び限定品、定期便、ギフトセット、オリジナルグッズ、沖縄県産の食品や雑貨などを展開しております。

 また、ブランドライセンスビジネスは、当社のロゴや商品パッケージを使用する権利をライセンシーに提供しております。ライセンシーとの間でライセンス契約を締結し、当社のロゴ等が記載された商品を展開しております。


 酒類清涼飲料事業について、当社グループにおける研究開発、調達、製造、販売などの分野ごとの概要は以下のとおりであります。

a.研究開発

 当社及び株式会社石川酒造場において、新製品の考案、試作、試験、製品の改良を行っております。名護工場(沖縄県名護市)、糸満市観光農園内酒造施設(沖縄県糸満市)、石川酒造場工場(沖縄県中頭郡西原町)を拠点として研究開発を行っております。


b.調達

 原材料・資材等のサプライヤーの選定、発注、検収、取引先管理に至る一連の業務を行っております。


c.製造・保管・品質保証

 生産計画の策定や調整、製造、原料・製品の品質確認、製造委託先の管理、工場の管理を行っております。名護工場(沖縄県名護市)において、ビール類の生産を行っております。名護工場及び沖縄県浦添市に位置する倉庫及び県外委託先の倉庫に製品を保管しております。連結子会社である石川酒造場は自社工場(沖縄県中頭郡西原町)において、泡盛やもろみ酢等の生産を行っております。


d.マーケティング

 消費者ニーズの把握、ブランド戦略の立案、マーケティング活動プランの立案と広告・主要イベント・販促の企画、メディア計画の立案とメディアの購買等を行っております。県内・国内のマーケティング活動に加えて、海外の販売地域でのマーケティングプラン策定も行っております。


e.販売(流通)

 当社において、量販店及び業務店に対する販促活動を行っております。沖縄県内においてオリオンブランドのビール類を販売しております。また、2002年にはアサヒビール株式会社と包括的業務提携関係を構築し、沖縄県内においては、同社から製造ライセンスを受けて当社の名護工場で「アサヒ スーパードライ」を製造、同社から仕入をするビール類及び総合酒類の販売を開始するとともに、沖縄県外(奄美群島除く)のオリオンブランドの量販店向けビール類は、同社を通じて販売を拡大してまいりました。なお、沖縄県外向けのオリオンブランドの業務店向けビール類及びRTD類は、自社で販売しております。

 さらに近年は、台湾、オーストラリア、韓国、米国、香港、中国などの海外市場においてもオリオンブランドのビール類及びRTD製品を販売しております。

 

(2)観光・ホテル事業

 当社は、本書提出日現在、オリオンホテルモトブリゾート&スパ(沖縄県国頭郡本部町)、ホテルルートイン名護(沖縄県名護市)及び商業施設である豊崎ライフスタイルセンターTOMITON(沖縄県豊見城市)などを所有しております。連結子会社であるオリオンホテル株式会社は、オリオンホテルモトブリゾート&スパ(沖縄県国頭郡本部町)及びオリオンホテル那覇(沖縄県那覇市)の運営をしておりますが、オリオンホテル那覇については、2025年5月に土地・建物を譲渡しており、2025年10月以降に事業譲渡を完了予定です。また、連結子会社であるオリオン沖映合同会社は、JR九州ホテルブラッサム那覇(沖縄県那覇市)を所有しておりましたが、2025年3月に当該資産を譲渡しました。オリオン沖映合同会社は、2025年7月に解散・10月に清算を予定しております。

 当社は、地域に根差し、地域と共に発展する観光・ホテル事業の持続可能性をさらに強化することが、沖縄との共存共栄の実現に必要不可欠と考え、最適な事業の進め方を検討する中で、沖縄での40年以上ものホテル経営を通じて多くの地域雇用や消費を生み出してきた実績を有する近鉄グループホールディングス株式会社と、2024年6月10日に資本業務提携を結びました。


観光・ホテル事業に関する当社グループのホテル事業や不動産事業などの分野ごとの概要は以下のとおりであります。

a.ホテル事業

 当社グループが直接運営している2ホテル(オリオンホテルモトブリゾート&スパ、オリオンホテル那覇)の事業戦略立案、中期及び単年度経営計画の立案、経営管理等を行っております。

 ホテル運営の強化に向けて、近鉄グループホールディングス株式会社が有するホテル運営ノウハウを、近鉄グループからの専門人材の派遣、ホテル予約システム等の活用の検討、近鉄グループが展開している様々な会員プログラムの導入の検討を行っております。


b.不動産事業

 当社において、不動産の投資戦略の立案、不動産の売買、賃貸借契約の締結及び管理、運営委託先の管理等を行っております。

当社グループは、2025年7月に開業したテーマパーク「ジャングリア沖縄」(沖縄県国頭郡今帰仁村呉我山)へ土地を賃貸しております。当社は、テーマパーク事業を行う株式会社ジャパンエンターテイメントホールディングスへ出資並びに同社及び同社子会社の株式会社ジャパンエンターテイメントへの取締役派遣を行っております。

 また、近鉄グループホールディングス株式会社との資本業務提携を通して、同社及び当社が沖縄で保有するアセットの活用についての協働検討も行っております。


c.酒類清涼飲料事業とのコラボレーション

 2023年11月、オリオンホテル那覇においてビアダイニングを開設し、当社の名護工場で製造した本格クラフトビールやビールに合う料理の提供、各種イベントを実施しております。2024年4月には、オリオンホテルモトブリゾート&スパにビアバーを開設しました。

 当社グループ会社のオリオンホテル株式会社は、ホテルでの接客や料飲部門の運営管理、スタッフのマネジメント等の経験を豊富に有するマネジャークラスの社員を、当社のビール工場見学施設「オリオンハッピーパーク」へ派遣(出向)しております。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2026/03 連結1Q実績 7,045 1,076 1,084 1,488

2026/03 連結会社予想 30,106 3,945 3,788 3,306

2025/03 連結実績 28,866 3,479 3,447 7,301

2024/03 連結実績 26,009 2,850 2,818 4,649


決算期 種別 EPS BPS 配当

2026/03 連結会社予想 81.01 455.63 40.00


上場時発行済株数 40,813,400株(別に潜在株式3,888,400株)

公開株数 24,923,200株(売り出し21,672,400株、オーバーアロットメント3,250,800株)


PER:10.5

PBR:1.86

配当利回り:4.7%

公募時吸い上げ資金:211億

公募時時価:347億


親受け

株式会社沖縄銀行 取得金額500,000千円を上限として要請を行う予定であります。

株式会社琉球銀行 取得金額500,000千円を上限として要請を行う予定であります。

琉球海運株式会社 取得金額500,000千円を上限として要請を行う予定であります。

株式会社沖縄海邦銀行 取得金額300,000千円を上限として要請を行う予定であります。

オリオンビール従業員持株会 取得金額106,500千円を上限として要請を行う予定であります。

合計19億

​   

 【株主構成】 以下180日

野村キャピタル・パートナーズ第一号投組 投資業(ファンド) 16,165,800 36.16%

CJP MC Holdings, L.P. 投資業(ファンド) 15,531,800 34.75%

アサヒビール(株) 資本業務提携先 4,125,200 9.23%

近鉄グループホールディングス(株) 資本業務提携先 4,119,200 9.21%

村野一 代表取締役社長兼執行役員CEO 482,400 1.08%

Patric Dougan 専務執行役員 440,200 0.98%

オリオンビール従業員持株会 特別利害関係者など 343,400 0.77%

嘉手苅義男 元取締役 282,400 0.63%

吹田龍平太 元取締役 233,000 0.52%

亀田浩 元取締役、執行役員 184,500 0.41%

与那嶺清 元取締役 169,400 0.38%


 引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である野村キャピタル・パートナーズ第一号投資事業有限責任組合及びCJP MC Holdings, L.P.並びに当社株主であるアサヒビール株式会社、近鉄グループホールディングス株式会社、Patric Dougan、オリオンビール従業員持株会、嘉手苅義男、村野一、與那嶺清、吹田龍平太、樫原忠、亀田浩、高江洲守、土谷徳睦、廣瀬光雄、柳内和子、石井芳典、成重剛、玉木裕、樽岡誠、平良昭、矢沼恵一、上原三成及び湖東彰彦は、共同主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2026年3月23日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと、グリーンシューオプションの行使に基づき当社普通株式を野村證券株式会社が取得すること等を除く。)を行わない旨合意しております。


【代表者】

代表者名 村野 一(上場時63歳2カ月)/1962年生

本店所在地 沖縄県豊見城市豊崎

設立年 1957年

従業員数 208人 (2025/07/31現在)(平均41.2歳、年収701万円)、連結414人

事業内容 酒類清涼飲料の製造・販売およびホテルなどの運営

URL https://www.orionbeer.co.jp/

株主数 24人 (目論見書より)

資本金 378,250,000円 (2025/08/21現在)

代表者生年月日 1962年07月19日生まれ

代表者略歴

1985年04月 ソニー株式会社 入社海外営業本部

1991年04月 同社 ユーゴスラビア駐在員事務所代表

1992年04月 ソニーヨーロッパ フランクフルト セールス&マーケティングマネジャー

1994年04月 ソニーハンガリー マネージングディレクター

1998年03月 ソニーサウジアラビア駐在員事務所代表 兼 モダン エレクトロニクス エスタブリッシュメントゼネラルマネジャー

2001年08月 ソニー株式会社 本社グローバルマーケティングシニアマーケティングストラテジスト

2003年02月 ソニーメキシコ 社長

2007年10月 ソニー株式会社 リテール&マーケティングコミュニケーション部 部長


【幹事団】

主幹事証券 野村 - -

主幹事証券 みずほ - -

主幹事証券 SMBC日興 - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 松井 - -


【参考類似企業】参考類似企業

2501 サッポロHD 52.6倍 (連結予想)

2502 アサヒ 16.7倍 (連結予想)

2503 キリンHD 11.6倍 (連結予想)

2573 北海コカ 30.5倍 (連結予想)

2579 コカコーラBJH - (連結予想)

2585 ライフドリンク 31.3倍 (連結予想)

2587 サントリーBF 15.9倍 (連結予想)

2590 DyDo 21.2倍 (連結予想)

2593 伊藤園 25.4倍 (連結予想)


【私見】

 注目度高い銘柄の上場で、ジャングリア開業に伴い沖縄にも注目が集まっていることからも旬なIPOです。仮条件は上げたもののビール業界の同業と比べても割安感はあり、観光事業を加味すると高い位置で見ても良いと思います。更に配当性向50%を打ち出しており、利回りも高いことは魅力です。時価総額も350億ほどと大きくなく、中期のセカンダリーも狙える銘柄だと思います。


想定価額:770円

仮条件上限:850円

初値予想:1300円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・やや強気

総合評価:4

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