2022年11月1日火曜日

IPO分析(POPER)

 【事業内容】

(1)サービス概要

 学習塾を中心とする教育事業者等のバックオフィス業務の生産性向上に寄与するSaaS型サービスを開発・提供してまいりました。

 具体的には、2015年12月に教育事業者等のバックオフィス業務の効率化及び保護者とのコミュニケーションを強化するSaaS型業務管理プラットフォーム「Comiru」をリリースしました。その後、「Comiru」と連動する形で、リモート教育をより効果的に実現しやすいオンライン授業・自宅学習支援サービス「ComiruAir」を2020年8月に、講師等の労務管理・コミュニケーションサービス「ComiruHR」を2020年12月にリリースし、サービスの拡充に努めてまいりました。


① Saas型業務管理プラットフォーム「Comiru」

 バックオフィス業務の効率化及び保護者とのコミュニケーション強化のために、教育事業者等に活用して頂くSaaS型サービスです。教育事業者等における利用生徒のID数に応じて利用料を頂戴しております。

 教育事業者等は、以下の機能を活用することにより、バックオフィス業務に費やした作業時間や関連コストの削減が期待できます。また、各種経営数値を迅速に集計することができるようになり、早期の意思決定ができるようになります。

 さらに、教育事業者等は、「Comiru」を通じて保護者向けには生徒の教育事業者等での勉強の様子や進捗、今後の学習計画、及び教育事業者等からのお知らせ等を従来の手紙配布よりもタイムリーに配信することが可能となり、保護者満足度の向上に繋がることが期待できます。

 「Comiru」は、教育事業者等の事業規模、利用されたい機能に応じて、「Comiru FREE」、「Comiru BASIC」及び「Comiru PRO」の3プランを提供しております。「Comiru FREE」に関しては、デジタルツールを初めて導入する教育事業者等向けに提供する無料のサービスであり、Web申込み(エントリーフォーム)の作成、見込み顧客管理、口コミ収集&掲載などの生徒集客機能にフォーカスしたサービスです。「Comiru PRO」に関しては、大手教育事業者等向けに基幹システムの機能を提供するサービスであり、一般的に在籍生徒・契約情報・問い合わせ数、請求情報、退塾数、弟妹通学率など、多岐に渡るデータを各教室で保有・管理していましたが、全データを1つのサービスで包括的に本部が一元管理することで、各教室のデータをリアルタイムで集計することが可能となりました。その結果、教室間での数値比較を通じて、状況の芳しくない教室のフォローが可能となります。

 これらにより、導入教育事業者等における業務時間の短縮と運営コストの低減、経営の意思決定の迅速化、及び保護者とのコミュニケーション強化による満足度の向上を実現することが可能となります。


② オンライン授業・自宅学習支援サービス「ComiruAir」

 オンライン授業及び生徒の自宅学習をサポートするSaaS型サービスです。教育事業者等における利用教室数及び利用時間に応じて教育事業者等から利用料を頂戴しております。

 通常のWeb会議ツールの場合、個別生徒に合わせた画面共有やコミュニケーションが難しく、授業前後の連絡や報告も別システムを利用する必要があります。この課題に対し、教育事業者等は「ComiruAir」の以下の機能の利用及び「Comiru」との機能連携により、オンライン授業の利用だけではなく、授業の前後の業務をオンライン化することができ、より効率的なオンライン学習運営を実施することが可能となります。授業自体も生徒それぞれに合わせた画面共有やコミュニケーションが可能となり、講師等と生徒が1対1の個別指導に近い環境を実現することができます。また、生徒の自宅学習のサポートとして、動画コンテンツの視聴履歴の記録や理解度テスト、問題集の質疑応答も「ComiruAir」を通じて応対することが可能となります。


③ 講師等の労務管理・コミュニケーションサービス「ComiruHR」

 講師等のシフト調整、給与労務の集計、及びこれらに関連するコミュニケーションを効率的に行うSaaS型サービスです。教育事業者等における利用講師等ID数に応じて利用料を頂戴しております。

 教育業界の勤務形態に最適化されていない一般的な勤怠管理ツールの場合、教育事業者等に特有の授業種類別、作業種類別の賃金体系や授業時間と連動したシフト調整が難しく、アナログな集計・調整作業が必要となります。「ComiruHR」の以下の機能を利用することにより、他社の勤怠管理ツールではフォローしきれない講師等の勤怠管理や給与管理への「ComiruHR」による一元管理が可能となります。


(3)「Comiru」サービスの特徴

① 教育業界に特化したサービスのUI/UX(注7)

 教育業界の業務管理の特性、あるいは煩雑さから業界横断型のSaaS型サービスでは、最適な管理が難しく、UI/UX面において、改善の余地が残っている状況です。

 教育業界に特化したサービスであり、取り分け教育業界の中でもバックオフィス等の業務が煩雑である学習塾業界にフォーカスして、サービスのUI/UXを進化し続けてまいりました。

 具体的には、当社代表取締役の栗原慎吾をはじめとする社内の学習塾経営経験者の知見に基づき、教育事業者の運営に最適な業務プロセスと各種機能や帳票のフォーマットを洗い出し、サービス化してまいりました。また、サービスローンチ後も、開発部門やカスタマーサクセス部門等を中心に、教育事業者等からの要望や改善要請を常にヒアリングし、絶えずアップデートし続けてきました。その結果、サービスローンチ当初は指導報告書の1機能のみの提供から、2021年10月末現在で教育事業者等の運営に必要な15機能まで拡大し、当社サービスの月間解約率は0.6%以下(2021年10月末現在)に留めることができました。


②教育事業者等の要望等に合わせたスピーディ且つ安定的な開発の実現

 今日のデジタル経済の急速な発展により、様々な業界において、これまで作業効率化の手段であった情報システムが、重要な経営戦略の実現手段の一つとなりつつあります。これによりシステム開発は、コストパフォーマンスだけでなくタイムパフォーマンスも重要視されるようになり、当社では、少人数かつ短期間で情報システムを開発できるアジャイル手法を採用しております。

 一般的にアジャイル手法は、ウォーターフォール型と呼ばれる従来型の手法と比較して、業務分析や要件定義等の上流工程に関する手法が定義されていません。このため、ウォーターフォール型と比較して、プロジェクトの管理が困難であることから、国内企業においては広く活用されていないのが現状です。

 国内のシステムインテグレーターが提供する受託開発サービスの多くは、ウォーターフォール型のスクラッチ開発で実施されることが多く、アジャイル手法を活用する場合でもスクラッチ開発が採用されています。これは国内のシステムインテグレーターのほとんどが、これまでの豊富なシステム開発経験をもとに、ゼロから情報システムを作り上げるスクラッチ開発の膨大なノウハウを蓄積し、それらを活用したシステム開発を実施していることが要因であると考えられます。

 教育事業者等からの要望や改善要請のヒアリングを常に行い、当社サービスに欲しい機能や足りない機能などの情報収集を欠かさず、その要望等をスピードとテストを重視したアジャイル手法による開発で、且つアジャイル手法に不足している上流工程とテスト工程の作業を標準化した安定的なアジャイル手法によるシステム開発を実現しています。


③教育業界における業務効率化・コスト削減及び売上向上への貢献

 教育事業者等が「Comiru」を導入することにより、保護者への連絡や請求、授業編成等のバックオフィス業務にかかる作業時間を削減することができ、請求書の送付、口座振替及びクレジットカード決済費用等の支出の削減も期待できます。

 また、教育事業者等の講師等は、上記業務効率化により捻出された時間を生徒への授業や、保護者とのコミュニケーションの活性化等の時間に充当することが可能となり、その取り組みにより、生徒及び保護者が教育事業者等に対して満足度の向上や信頼関係が構築され、生徒の継続学習期間の延伸、退塾率の低減が期待できます。


④教育事業者等に寄り添った価格設定とAPI化(注12)によるシステムの拡張性

 従来の教育事業者等においては、個社ごとに独自のシステムを開発するしかありませんでした。しかし、独自のシステム開発は多額な開発コストとメンテナンスコストがかかり、IT投資の体力が限られる教育事業者等にとって、大きな負担となっていました。また、独自のシステム開発自体が難しい規模の企業においては、市販のソフトウェアにアナログのプロセスを加えて補う運用がなされてきました。こうした市販のソフトウェアは、価格的に安いものではなく予算の限られる学習塾には広く普及していなかったのが実情です。

 当社は、「Comiru」サービスを幅広い教育事業者等に利用して頂き、業務効率化を図って頂くために、生徒1名につき1IDを付与し、月額300円/ID(「Comiru BASIC」プラン利用時)とし、小規模の教育事業者等でも利用しやすい価格設定となっております。

 また、教育事業者等の社内業務のための独自のシステムやソフトウェア開発にかかる負担軽減及び当社サービスの導入ハードルの抑制のために、「Comiru」サービスの各機能をオープンAPI化しております。これにより、教育事業者等が自社の業務プロセスに合わせて、必要な部分のみ当社サービスを取り入れることができ、カスタマイズ開発を従来よりも簡単に行うことができます。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/10 単独会社予想 903 72 61 56

2022/10 単独会社予想 660 -26 -37 -38

2021/10 単独実績 442 -180 -181 -184

2020/10 単独実績 262 -192 -194 -195


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/10 単独会社予想 14.88 141.82 0.00


上場時発行済株数 3,780,053株(別に潜在株式290,601株)

公開株数 605,300株(公募200,000株、売り出し326,400株、オーバーアロットメント78,900株)

調達資金使途 サービス構築費用、サービスプロモーション費用、借入金返済、採用費・人件費


PER:47.0

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:4.2億

公募時時価:26億


【株主構成】 

栗原慎吾 代表取締役 1,176,000 30.38% 180日

(学)駿河台学園 資本業務提携先 464,490 12.00% 180日

大和ベンチャー1号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 450,000 11.63% 90日・1.5倍

KVPシード・イノベーション1号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 231,000 5.97% 90日・1.5倍

繆仁軍 取締役CTO 177,900 4.60% 180日

(株)DGベンチャーズ ベンチャーキャピタル(ファンド) 150,000 3.88% 90日・1.5倍

ニッセイ・キャピタル9号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 150,000 3.88% 90日・1.5倍

(株)マイナビ ベンチャーキャピタル(ファンド) 120,433 3.11% 90日・1.5倍

ニッセイ・キャピタル10号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 118,110 3.05% 90日・1.5倍

フリービットインベストメント(株) ベンチャーキャピタル(ファンド) 99,240 2.56% 90日・1.5倍


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である栗原慎吾、並びに当社の株主である繆仁軍、林圭介、姚志鵬及び学校法人駿河台学園は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後180日目(2023年5月13日)までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びグリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等を除く。)を行わない旨を合意しております。

 また、売出人である大和ベンチャー1号投資事業有限責任組合、KVPシード・イノベーション1号投資事業有限責任組合、株式会社DGベンチャーズ、株式会社セゾン・ベンチャーズ及び大和スタートアップ支援投資事業有限責任組合、並びに当社の株主であるニッセイ・キャピタル8号投資事業有限責任組合、ニッセイ・キャピタル9号投資事業有限責任組合、ニッセイ・キャピタル10号投資事業有限責任組合、ニッセイ・キャピタル11号投資事業有限責任組合、株式会社マイナビ、フリービットインベストメント株式会社及び勝方正英は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後90日目(2023年2月12日)までの期間、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること及び売却価格が本募集等における発行価格又は売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う株式会社東京証券取引所取引での売却等を除く。)を行わない旨を合意しております。

 さらに、当社の新株予約権を保有する林圭介、姚志鵬、HuangJingyu、ZhouXiong、中田淳一、小島徳尚、佐藤翔、菊池哲平、MaJian、佐久間健太、梅本笙、芝崎晏弘、力丸玲嘉、GuoXianzhe、HaoRuijie、石橋正行、小寺麻里奈、大澤一通、ZhangHanning、峯岳徳、ZhangZhe、折越純志、澤村嘉規、QiTe、MaKe、金堂宏昭、天神達哉、瀬川篤志、WangJianhua、ChangFeifan、WuShaoxiang、BianXin、渡邊拓真、新井拓也、ZhangWei、吉田康浩、佐藤香織及びその他24名は、主幹事会社に対し、ロックアップ期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した普通株式の売却を行わない旨を合意しております。


【代表者】

代表者名 栗原 慎吾(上場時39歳0カ月)/1983年生

本店所在地 東京都中央区日本橋茅場町

設立年 2015年

従業員数 53人 (2022/09/30現在)(平均33歳、年収518.4万円)

事業内容 教育事業者などのバックオフィス業務の効率化および保護者とのコミュニケーションを強化するSaaS(Software as a Service)型業務管理プラットフォーム「Comiru」の開発・提供

URL https://poper.co/

株主数 19人 (目論見書より)

資本金 171,119,000円 (2022/10/11現在)

代表者生年月日 1983年11月02日生まれ

代表者略歴

2007年04月 住友スリーエム株式会社(現 スリーエム ジャパン株式会社)入社

2011年07月 株式会社ソウルドアウト 入社

2012年06月 ST進学教室 入社

2015年01月 当社 設立 代表取締役 就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 大和 - -

引受証券 みずほ - -

引受証券 SBI - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 松井 - -

引受証券 東洋 - -


【参考類似企業】 今期予想PER(10/14)

2334 イオレ - (単独予想)

3933 チエル 13.8倍 (連結予想)

3998 すららNT 19.6倍 (連結予想)

4267 ライトワクス 31.7倍 (連結予想)

4686 ジャスト 16.0倍 (連結予想)

8057 内田洋 9.5倍 (連結予想)


【私見】

 教育関連のSaaS銘柄で、業種としては悪くはありません。業績は今期は赤字で、来期ようやく黒字予想と物足りません。吸収金額・時価総額共に小さいことは良いのですが、株主にはVCが連なり、1.5倍のロック外れがあるので需給として厳しくセカンダリー人気はないでしょう。


想定価額:630円

仮条件上限:700円

初値予想:1000円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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