2023年4月15日土曜日

IPO分析(Ridge-i)

【事業内容】

​ 様々な社会課題・顧客課題をAI・ディープラーニング等の先端技術を用いて解消するために、現場に入り込んだコンサルテーションに始まり、アセスメント、開発、導入、顧客による運用まで視野に入れた、実用的なソリューションを提供するテクノロジーカンパニーです。

 カスタムAIソリューション事業として、AI活用コンサルティング・AI開発サービスと、そのサービスで培った知見やアルゴリズムを活用したAIライセンス提供サービスを行っております。また、宇宙関連市場の拡大を見込み、データの取り扱いに専門的なノウハウが必要な人工衛星データのAI解析サービスも行っております。


(1) 事業の概要

 カスタムAIソリューション事業として、コンサルテーション・プランニングからサービスの実現までを支援するフルカスタムAIの受託研究開発を実施しています。業界のキープレイヤーとの協業によって、個社課題にとどまらずに、業界全体のAI・DX化を進めるAI活用コンサルティング・AI開発サービスを行っており、現状はこのサービスが大半を占めております。次に、そのAI活用コンサルティング・AI開発サービスで培った高品質のAIエンジンを、顧客のサービスやSaaSなどのプラットフォーマーへ迅速に提供する、AIライセンス提供サービスを行っております。

 また、データの取り扱いに専門的なノウハウが必要な人工衛星データの解析や関連するアルゴリズムを開発するサービスを行っております。

 これらのサービスを展開することで、顧客企業の様々なAI活用に関する課題を解決するためのAIサービスを、戦略策定から開発、保守運用、そしてライセンス提供による顧客企業との共同事業化までを行っております。当社の事業は、AI活用コンサルティング・AI開発サービスを中心としたフロー収益を主とし、個別の顧客企業ごとのプロジェクト提供により知見と独自のアルゴリズムを蓄積して、それらを応用してAIライセンス提供サービスとしてストック収益を得るビジネスモデルとなっております。

 当社の顧客企業については、特定の業界に特化しておりませんが、AIの活用ニーズが高く、またコアなビジネスの現場で利用されるソリューションの開発のため大手製造業が多くなっております。

 カスタムAIソリューション事業において、AI・エンジニアリング・ビジネスの3つの強みに精通したプロフェッショナルが、1つの課題にワンチームとなって挑む体制になっております。これにより、コンサルティングから開発まで一気通貫でのサービス提供が可能となっております。特に日本においてはAI導入率が低い状況ですが、当社は各プロフェッショナルが連携することでコンサルティング及び開発フェーズの切れ目でプロジェクトが止まらないようにしております。


(2) 展開するサービス

① AI活用コンサルティング・AI開発サービス

 AIの活用ニーズを持つ企業に対して目的・課題に合わせたAIソリューションの提案をもとにコンサルティングや開発を行うビジネスです。当社は、顧客企業が現場で効果を体感できるまで開発から導入展開までを一気通貫でサービスを行っております。


(a) 実運用まで支援

 先端技術の導入、データを主軸としたビジネス・オペレーション変革には既存システムの変更など大きな困難が伴い、プロジェクト期間中でも朝礼暮改で新しい手法を取り入れる局面も出てまいります。当社ではクライアントとの強い信頼関係を醸成することで、経営レベルでの意思決定支援から現場での開発スタッフとの連携、そして運用スタッフへの技術や知識の移転まで一貫して支援し、開発期間中の方向転換などを柔軟に調整しながら、クライアント内での継続的な運用と実用性の高い価値の創造を実現しております。


(b) AI×既存技術×人による運用

 AI(機械学習・深層学習)ですべての課題が解決できるとは考えておりません。AI技術、ルールベースの既存技術(注1)、人による運用のすべてが調和したときに、クライアントにとっての持続的な価値創造が実現できます。当社が行うコンサルティングでは、それぞれの技術特性と限界を見極めた上で、システム導入に留まらない最適なビジネス・オペレーションの実現を支援しております。


(c) フルカスタムAI

 AIでは、目的に応じて様々な手法を選定し組み合わせる必要があります。公開API(注2)や、大手プラットフォームのアプリケーションも日々進化しておりますが、個別ニーズをすべてカバーすることはできません。当社では、クライアントの目的に応じて最適な精度・計算速度・冗長性などのトレードオフを見極めながら、ベストなバランスの性能をもつカスタマイズAIを提供しております。


2.公開API

 まず、APIとはアプリケーション・プログラミング・インターフェースの略で、あるアプリケーションの機能や管理するデータ等を他のアプリケーションから呼び出して利用するための接続仕様・仕組みを指します。公開APIとは、そうした接続仕様・仕組みを他の企業に公開することを意味します。


(d) AI開発テーマ

 特定の業界に特化していないため、様々な業界のテーマに対してソシューションを提案しております。ただし、これまでの実績によりAIの活用ニーズが高い日本の製造業の顧客が多くなっております。当社のAI開発の特徴として、製造業を中心に熟練者・ベテランがもっている技術や知見をAIに実装することで、省人化・後継者問題の解消・業界全体の品質を上げていくことをテーマとしたものが多くあります。


(e) AI/DXプロジェクトのアプローチと流れ

 当社のアプローチの特徴は、顧客企業の目的・業界・課題・プロセスの深い理解を行った上で、様々なデータと技術を組み合わせたAIソリューションの提案をもとに開発を行うことにあります。また、プロジェクトによっては、顧客企業の投資対効果の実現と当社のストック収益を見据えた長期的なパートナーシップに基づきAIサービスの共同開発を行っております。

 当社のAI/DXプロジェクト流れは、戦略策定、データ収集及びアセスメント、開発及びシステム連携、運用保守となっております。戦略策定は、AIの正しい共通理解の醸成を行いながら顧客企業のDX戦略、業務改善、AI実行テーマの選定支援を行っており、AI知識のあるコンサルタントが顧客企業の業界知見や現場課題を深く理解しつつ支援を行っております。その戦略策定をもとにコンサルタントとAIエンジニアが協力してデータ収集及びアセスメントを行っており、当社が多く扱う画像データだけでなく、それ以外の様々なデータを組み合わせたAIを組み込んだシステムの全体像を設計します。次にアセスメントに基づいてPoC(実証実験)や本格開発を行います。本格開発はAIに精通した人材を含むエンジニアが中心となり、運用までを含めた全体設計支援を行いながら顧客企業のシステムと連携したAI開発により実用化を目指します。最後の運用保守では、AI稼働状況のモニタリングツールの開発、運用プロセス策定や運用に向けたツールの整備、顧客企業のAI教育など、開発したAIの運用を顧客企業が行うためのシステム開発と支援を行っております。


(f) AIソリューションの技術と実績

 顧客のニーズに応じて、主にディープラーニング等の技術を中心に、顧客の課題や目的に合わせてディープラーニング以外の技術も組み合わせたAIソリューションの開発を行っており、画像・動画・音声など複数のデータ種類に対応したAIの開発実績があります。

 直近では、1つのディープラーニング技術だけでは解けない課題も多くなってきており、マルチモーダルAIの開発に取り組んでおります。

 マルチモーダルAIとは、複数種類のデータと複数のAI技術を組み合わせて1つのAIソリューションとするものです。当社の顧客企業からは、製造現場のベテランの知見や作業をディープラーニング等の技術を組み合わせて再現したい、といった1つのディープラーニングでは解けない課題がでてきております。こうした課題には、画像や音声など複数データと複数のAI技術を組み合わせたマルチモーダルAIが必要となります。当社はこれまで画像データや動画データの取扱いに実績と強みを持っていますが、音声や数値データにも対応してきており、今までは解決できなかった課題がマルチモーダルAIにより解決できる可能性があります。

 また、当社はデータ取得に必要なセンシング方法についてもパートナー企業と協力することで、顧客企業のニーズに合ったデータ取得ができるように様々なデータ種類に対応するセンシング機器の取扱いの知見を増やしております。加えて、計算環境や出力方法も顧客企業に合った方法をソリューションとして提案できるようにしております。このように、最新技術を柔軟に取り入れたマルチモーダルAIにより顧客の課題に対応することに当社の特徴があります。

 

② AIライセンス提供サービス

 AI活用コンサルティング・AI開発サービスにおいて、AIの知見や経験をもとにして顧客との事業連携・製品開発を通じたカスタマイズ開発を行っております。このカスタマイズ開発や顧客との連携で培った高難易度のAI技術やノウハウをもとにして、その顧客が位置する業界の共通ニーズを狙ったAIエンジンの利用ライセンスやプロダクトの提供を行っております。このため、当社のAIエンジンやプロダクトの提供については、パートナー企業の製品やサービスとともに顧客企業へ提供されるものが主となっております。

 このサービスでは主に2つのサービス提供方法があります。1つはAI開発サービスを提供した顧客企業が直接利用し、顧客企業の利用に合わせてAI利用ライセンス代を対価として受け取るものと、もう1つはすでにサービスを持っているプラットフォーム企業にAIエンジンを提供し、ユーザー企業の利用量に応じて対価を受け取るものがあります。


 ③ 人工衛星データのAI解析サービス

 人工衛星データAI解析サービスとして、人工衛星データの収集からAIによる解析を行っております。地球を網羅的に捉える衛星データと、顧客が保有する地上データを組み合わせた独自の教師データを作成し、AIにより解析したレポートの提供を行っております。また、継続的に人工衛星データを解析したい顧客に対しては、解析ツールの開発も行っております。これによって、自然災害や社会活動などの環境リスクを可視化しビジネスニーズやSDGsに関する活動に貢献することを目指しております。

 今後は、人工衛星解析市場の拡大に合わせ、環境テーマ等の様々なニーズを先読みし、官公庁と民間へのアプローチの両輪でサービスを展開していく方針です。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/07 単独中間実績 436 83 83 57

2023/07 単独会社予想 1,000 161 161 113

2022/07 単独実績 968 56 109 150

2021/07 単独実績 419 -156 -147 -148


2023/07 単独会社予想 32.69 - 0.00


上場時発行済株数 3,794,130株(別に潜在株式231,350株)

公開株数 679,600株(公募330,000株、売り出し261,000株、オーバーアロットメント88,600株)

調達資金使途 人材関連費用、研究開発費、設備関連費用


PER:53.5

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:11.9億

公募時時価:66億

​   

【株主構成】 

柳原尚史 代表取締役社長 1,350,000 36.53% 180日

(株)柳原ホールディングス 社長が議決権の過半数所有 700,000 18.94% 180日

(株)バルカー 資本業務提携先 416,666 11.28% 180日

小松平佳 取締役 375,000 10.14% 180日

(株)SMBC信託(金外信 未来創生2号F 投資業(ファンド) 217,391 5.88% 90日・1.5倍

グローバル・ブレイン7号投組 投資業(ファンド) 138,043 3.74% 90日・1.5倍

オリックス(株) 資本業務提携先 108,695 2.94% 180日

杉山一成 従業員 105,000 2.84% 180日

(株)荏原製作所 特別利害関係者など 83,333 2.25% 180日

中井努 取締役 70,000 1.89% 180日


 本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、貸株人かつ売出人である柳原尚史、売出人である株式会社柳原ホールディングス、小松平佳及び杉山一成並びに当社株主である株式会社バルカー及び株式会社荏原製作所は、SMBC日興証券株式会社(以下「主幹事会社」という。)に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2023年10月22日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。) 及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。

 当社株主である株式会社SMBC信託銀行(特定運用金外信託 未来創生2号ファンド)、グローバル・ブレイン7号投資事業有限責任組合及びオリックス株式会社は、主幹事会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して90日目の2023年7月24日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式 及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等(ただし、その売却価格が募集における発行価格又は売出しにおける売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)を行わない旨を約束しております。

【代表者】

代表者名 柳原 尚史(上場時42歳2カ月)/1981年生

本店所在地 東京都千代田区大手町

設立年 2016年

従業員数 32人 (2023/01/31現在)(平均34.4歳、年収819.6万円)

事業内容 AI(人工知能)・ディープラーニング技術のコンサルティングおよび開発、共同事業、ライセンス、保守モデル、自社開発などによるプロダクトの提供、人工衛星データを活用したAI解析ソリューションの提供

URL https://ridge-i.com

株主数 9人 (目論見書より)

資本金 100,000,000円 (2023/03/23現在)

代表者生年月日 1981年02月05日生まれ

代表者略歴

年月 概要

2003年04月 NTTコミュニケーションズ株式会社 入社

2006年08月 HSBC Services Japan 入社

2010年02月 大和証券キャピタルマーケッツ株式会社(現 大和証券株式会社) 入社 10月:Daiwa Capital Markets Hong Kong 入社(香港現地法人に転籍)

2012年07月 ブラックロック・ジャパン株式会社 入社

2015年08月 Asian Frontier株式会社 (現 株式会社Gran Manibus)入社

2016年07月 当社 創設 代表取締役社長(現任)


【幹事団】

主幹事証券 SMBC日興 - -

引受証券 みずほ - -

引受証券 SBI - -

引受証券 極東 - -

引受証券 水戸 - -

引受証券 松井 - -

引受証券 楽天 - -


【参考類似企業】今期予想PER(4/4)

3993 PKSHA 111.1倍 (連結予想)

4011 ヘッドウォータ 108.4倍 (連結予想)

4259 エクサウィザー - (連結見込)

4268 エッジテクノ 65.4倍 (単独予想)

4382 HEROZ - (連結予想)

4418 JDSC 999,999.9倍 (連結予想)

5026 トリプルアイス 253.7倍 (連結予想)

5132 pluszero 170.7倍 (単独予想)

7046 TDSE 33.2倍 (単独見込)


【私見】

 AI・ディープラーニング技術のコンサルということで人気業種で、技術力も高く中期で評価できる銘柄です。業績はこれからでしょうが、PKSHAなどのPER100あたりの評価をしても充分だと思います。2社のファンドのロック切れは気になりますが、規模的にもそこまで気にしなくて良いかと思っています。空白期間ができると思いますので、PER100超でセカンダリー参戦するかどうかが焦点になりそうです。


想定価額:1660円

仮条件上限:1750円

初値予想:4500円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立~やや強気

総合評価:4

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