2022年6月17日金曜日

IPO分析(マイクロアド)

 【事業内容】

 ​データプラットフォーム事業の単一セグメントである為、セグメントごとの記載はしておりません。セグメントを構成する主要なサービスとして、(1)データソリューションサービス、(2)海外コンサルティングサービス、(3)デジタルサイネージサービスの3つのサービスによって事業展開しております。

 また、3つのサービスに対して、労働集約的なビジネスモデルである「コンサルティング」と、プロダクト販売による収穫逓増型のビジネスモデルである「データプロダクト」の二つに分類することで、それぞれのビジネスモデルに応じた経営戦略の立案や収益性の分析を行っております。それぞれのビジネスモデルと、提供するサービスの関係は下図のとおりです。特に当社では収益性の高い「データプロダクト」のビジネスモデルに属する「UNIVERSE」へ注力しており、当該領域のプロダクト開発への投資を積極的に行うことで、データプラットフォーム事業の拡大を目指してまいります。

 ビジネスモデル「データプロダクト」は、企業のマーケティング課題を解決するための、デジタル広告ソリューション群になります。外部から仕入れたデータを活用し、消費者の行動特性をとらえ、その行動データに基づいた広告配信を行うことで、企業の様々なマーケティング課題の解決を目指します。「データプロダクト」のビジネスモデルの構造は下図の通りです。

 ビジネスモデル「コンサルティング」は、企業のデジタルマーケティングにおける課題を解決する為に当社グループの製品に加え、他社の製品を組み合わせることで、企業のマーケティング活動における、より広範なソリューションを提供しております。「コンサルティング」のビジネスモデルの構造は下図の通りです。


当社のデータプラットフォーム事業を構成する、3つのサービスそれぞれの特徴は以下のとおりです。

(1)データソリューションサービス

1.UNIVERSE

 消費者の購買行動や消費行動のプロセスは、業界や業種によって多種多様であり、消費者は多様なプロセスを経て、企業の製品やサービスの認知・購買に至ります。UNIVERSEは、そのような多様な購買・消費行動を分析し、その分析データを活用して、顧客企業の様々なマーケティングの課題解決を行うサービスです。UNIVERSEでは、自社開発した二つのプラットフォームによって構成されております。

 一つ目がデータプラットフォームである「UNIVERSE DATA PLATFORM」になります。「UNIVERSE DATA PLATFORM」では、消費者のライフスタイルの変化をとらえるデータや、消費者の性別・年齢等を推定したデモグラフィックデータなどの一般的なデータ群と、様々な購買・消費行動をとらえるための、業界・業種に特化したデータ群が蓄積されております。具体的なデータ例としては、自動車購買までの消費行動を分析する際に活用するデータとして、各種自動車関連のインターネットメディアの閲覧履歴等のデータや、飲料・食品業界の消費行動を分析する際に活用するデータとして、コンビニ、スーパーマーケット等の実店舗での決済データやポイント利用データ等になります。これらのデータは、2022年3月時点で211の外部データ保有企業・メディアからデータを収集・集約して構成されております。その大量のデータを組み合わせて分析を行うことで、消費者の様々な購買消費行動の分析を行います。

 二つ目が広告プラットフォームである「UNIVERSE Ads」になります。顧客企業のマーケティング課題を解決する為に「UNIVERSE DATA PLATFORM」によって分析されたデータを活用し、UNIVERSE Adsを通して適切な消費者に広告配信を行います。UNIVERSE Adsは「RTB(Real Time Bidding)」という技術を用いて、消費者毎にリアルタイムに最適な広告を選択し、オークション形式で広告配信を行うプラットフォームです。UNIVERSE Adsでは社内外の様々なSSPと接続することで、多くの消費者へ広告配信を行うことが可能です。広告配信技術であるRTBでは、オークションによって広告配信金額が決定する為、顧客企業のマーケティングの費用対効果を最大化する為には、最適な消費者に、最適な金額でオークションへの入札を行う必要があります。そこで、UNIVERSE Adsでは、AIを活用した最適化アルゴリズムを導入しております。AIによる分析では、企業の製品・サービスのカテゴリ、掲載面の品質やコンテンツの内容、配信を行う時間、広告クリエイティブの種類(静止画・動画・ネイティブ広告等)など、広告の費用対効果を決定づける数十の変数を解析し、最適なアルゴリズムのモデルを構築することで、リアルタイムに最適解を導き出し、広告配信(入札)を行っております。この独自のAIアルゴリズムは配信・入札アルゴリズムを改善するための専任のデータサイエンティストが、様々なモデルの比較検討を行いながら日々改良を重ねております。加えて、UNIVERSE DATA PLATFORMとのリアルタイムなデータ連携によって、特定の製品カテゴリの比較検討を開始した消費者や、最終的な購買検討段階に移行した消費者、特定商品の購買意欲が急激に高まった瞬間など、消費者ひとりひとりの製品認知・購買プロセスの段階に応じて広告配信を行うことで、顧客企業のマーケティング課題を解決します。

 顧客企業へのサービス提供を行う際には、業界・業種毎のプロダクトとして、二つのプラットフォームを組み合わせた製品を多数展開しております。主要なプロダクトとして、BtoB業種に特化した「シラレル」、飲料・食品業界に特化した「Pantry」、医療・製薬業界に特化した「IASO」、自動車業界に特化した「IGNITION」、エンタメ業界に特化した「Circus」などがあります。これらのプロダクトを顧客企業が利用し、広告配信を行う上で、「UNIVERSE」のアカウントを発行いたします。なお、当社プロダクトを利用する企業は、その企業が提供する製品ブランドやサービス毎に広告宣伝費を設定しているケースが多いため、単一企業であっても製品ブランドやサービス毎に複数のアカウントを発行しております。


2.国内コンサルティングサービス

 メディア企業向けの広告収益最大化サービス「MicroAd COMPASS」と、企業の総合的なマーケティング課題の解決を行う「マーケティングコンサルティング」の二つのサービスがあります。

・「MicroAd COMPASS」

 インターネット広告を掲載するメディア企業向けの広告収益最大化サービスとして、「MicroAd COMPASS」の提供を行っております。MicroAd COMPASSは2022年2月時点で2,100を超えるインターネットメディアに導入されており、RTBを通じて様々なDSPと接続しております。RTBによるオークションによってリアルタイムに最も収益が見込まれる広告を瞬時に選択することで、メディア企業の広告収益の拡大に貢献しております。MicroAd COMPASSでは、メディア企業へ支払われる広告収益の一部をプラットフォーム利用料として自社の収益としています。


・マーケティングコンサルティング

 企業のデジタルマーケティングのコンサルティングサービスとして、株式会社マイクロアドと株式会社エンハンスがサービス提供を行っております。当社グループが提供する各種データソリューションを活用し、企業の課題解決に向けた総合的なデジタルマーケティングのコンサルティングを行うことで、企業の製品・サービスの売上拡大に貢献しております。株式会社マイクロアドでは、広告主企業に対するコンサルティングサービスを提供し、広告主企業から支払われる広告配信費の一部を販売代理手数料として収益を上げています。株式会社エンハンスでは、主にメディア企業の広告収益拡大に向けたコンサルティングサービスを提供し、コンサルティングフィーとして収益を上げています。


(2)海外コンサルティングサービス

 企業のデジタルマーケティングにおける総合的な課題解決を行うコンサルティングサービスとして、現地企業及び進出済日系企業にサービス提供を行っております。具体的な内容としては、各企業に対する現地でのプロモーション施策の立案、広告枠の買付け及び運用、広告クリエイティブの制作などになります。

 また、台湾においては、そのサービスの一環として、独自のネイティブ広告プラットフォーム「COMPASS-FIT」の提供、及び自社運営の訪日インバウンドWebメディア「Japaholic」でのタイアップ広告などマーケティングサービスの提供を行っております。

 海外コンサルティングサービスでは顧客企業に対するメディア買付業務、メディア運用業務、クリエイティブ制作業務などの各対価を収益としております。台湾での自社独自サービスは、当社子会社同様にデジタルマーケティングサービスを提供する競合他社に対しての営業上の差別化要因となる点、FacebookやGoogle及び台湾現地企業が提供するサービスを販売した場合と比較して自社サービスを販売した方が粗利率が高く収益性に優れる点を理由に展開しており、今後も強化していく方針であります。


(3)デジタルサイネージサービス

 屋外広告や、交通広告のデジタル化の促進と、インターネットを通じたネットワーク化による一元的な広告配信サービスとして、株式会社マイクロアドデジタルサイネージによる「MONOLITHS」の提供を行っております。「MONOLITHS」はデジタルサイネージを設置しているロケーションオーナー向けのCMSで、ロケーションオーナーは「MONOLITHS」によりデジタルサイネージに掲出するコンテンツをWebブラウザよりリアルタイムで配信管理することができます。「MONOLITHS」の機能の一つとして広告配信機能があり、ロケーションオーナーは「MONOLITHS」の管理画面上より広告枠の設定が可能で、ロケーションオーナー独自でデジタルサイネージ広告事業を展開する際のアドサーバーとしての機能と、その広告枠をアドネットワークの広告在庫として提供する機能を有しています。

 株式会社マイクロアドデジタルサイネージは「MONOLITHS」を通じた広告在庫をアドネットワーク化しており、これらの広告枠を広告主企業や広告代理店に販売しております。「MONOLITHS」アドネットワークは、天気、気温などの外部データとの連携が可能で、従来の屋外広告・交通広告では実現が難しかった天気、気温などの変化によってサイネージに掲出する広告内容をリアルタイムに変更させるなどの配信管理が可能です。また、広告業界の流れとしてPC,スマートフォンといったデバイスのみならずデジタルサイネージ広告枠への既存DSP経由での広告配信もスタートしており、その際には「MONOLITHS」はSSPとしての役割を果たします。

現在「MONOLITHS」は複数のDSPとの接続を果たしており、今後もその接続先を拡充していく計画です。

「MONOLITHS」を通じて広告配信可能なデジタルサイネージは、主要都市の大型屋外ビジョン、ドラッグストア、スーパー、美容サロン等の商業施設、バスやタクシーなどの交通広告と多様なロケーションで、2022年3月時点で13万面を超える規模に拡大しております。デジタルサイネージサービスにおいては、広告主及び広告代理店からロケーションオーナーへ支払われる広告収益の一部をプラットフォーム利用料とし、また、ロケーションオーナーからのCMS利用料を、自社の収益としています。


 【業績等】

業績動向(単位:百万円)

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2022/09 連結予想 12,228 564 510 130

2022/09 連結中間実績 6,122 431 395 241

2021/09 連結実績 11,671 186 153 -38

2020/09 連結実績 10,917 254 258 43


決算期 種別 EPS BPS 配当

2022/09 連結予想 15.50 214.41 0.00


上場時発行済株数 8,921,000株(別に潜在株式804,200株)

公開株数 2,661,100株(公募669,000株、売り出し1,645,000株、オーバーアロットメント347,100株)

調達資金使途 人材採用費、システム開発資金


PER:90.9

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:37.5億

公募時時価:126億

​   

【株主構成】 

(株)サイバーエージェント 親会社 5,202,800 57.45% 180日

ソフトバンク(株) その他の関係会社 1,630,000 18.00% 90日

(株)SWAY 役員らが議決権の過半数を所有する会社 650,000 7.18% 180日

SCSK(株) 資本業務提携先 411,200 4.54% 180日

田中宏幸 常務取締役など 166,000 1.83% 180日

渡辺健太郎 代表取締役社長など 150,000 1.66% 180日

マイクロアド従業員持株会 特別利害関係者など 142,800 1.58% 180日

穴原誠一郎 子会社の代表取締役 88,000 0.97% 180日

榎原良樹 取締役など 60,200 0.66% 180日

瀧本岳 特別利害関係者など 46,000 0.51%

 ​

 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である株式会社サイバーエージェント、売出人である株式会社SWAY、当社株主であるSCSK株式会社並びに当社株主かつ当社新株予約権者である田中宏幸、渡辺健太郎、穴原誠一郎及び榎原良樹は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2022年12月25日までの期間(以下「ロックアップ期間①」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式(当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式を含む)の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと及びグリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等は除く。)等は行わない旨合意しております。

 また、売出人であるソフトバンク株式会社は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2022年9月26日までの期間(以下「ロックアップ期間②」といい、ロックアップ期間①とあわせて以下、「ロックアップ期間」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等は行わない旨合意しております。

 

【代表者】

代表者名 渡辺 健太郎(上場時48歳5カ月)/1974年生

本店所在地 東京都渋谷区桜丘町

設立年 2007年

従業員数 195人 (2022/04/30現在)(平均30.7歳、年収648.1万円)、連結362人

事業内容 データプラットフォーム事業

URL https://www.microad.co.jp/

株主数 11人 (目論見書より)

資本金 482,545,000円 (2022/05/26現在)

代表者生年月日 1974年01月16日生まれ

代表者略歴

1997年04月 (株)大塚商会 入社

1999年03月 (株)サイバーエージェント 入社

1999年07月 同社大阪支社支社長

2003年10月 同社ブログクリック事業責任者

2005年10月 同社アメーバ事業本部本部

2006年12月 同社取締役 就任

2007年07月 当社設立 代表取締役 就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 SBI - -

引受証券 大和 - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 松井 - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 東海東京 - -

引受証券 アイザワ - -

引受証券 極東 - -

引受証券 丸三 - -

引受証券 水戸 - -

引受証券 むさし - -


【参考類似企業】今期予想PER(6/10)

2497 UNITED 7.9倍 (連結予想)

3688 CARTAHD 12.0倍 (連結予想)

3906 ALBERT 48.0倍 (単独予想)

4751 サイバエージ 28.4倍 (連結予想)

6094 フリークアウト 32.3倍 (連結予想)

6185 SMN 36.1倍 (連結予想)

6562 ジーニー 29.2倍 (連結予想)

7072 インテM 181.6倍 (連結予想)


【私見】

 業種としてはデータプラットフォーム事業で真新しさはありませんが、SAの子会社で、SBも2位株主といったところは面白さを感じます。売上規模は大きいのですが、割安感は感じず上値余地は大きないと予想します。需給からは売り圧力なないのですが、SBI主幹事で売りたい人は多くても、買いたい人は少なく公募近辺の動きと予想します。


想定価額:1380円

仮条件上限:1410円

初値予想:1500円

ブック申し込み度・・・中立

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3

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