2023年7月11日火曜日

IPO分析(フラー)

 【事業内容】

​(1) 事業の概要

① デジタルパートナー事業

 デジタル領域全般で「頼られる存在」として顧客に寄り添い、新しい価値を共創する関係を構築していくことを目指しています。顧客の最高のパートナーとして、高い当事者意識を持って、「よいモノをつくりたい」、「ともに価値創造をしたい」、「フラーができることを世に示したい」といったメンバーの思いを結集していくことで、本当に求められるモノを提供する企業でありたいと考えています。

 顧客の課題や目標は、多くの場合、一回の納品により完了するものではありません。当社の事業は、これまで、顧客の「デジタルパートナー」として、年々、顧客基盤を拡大しており、高い取引の継続性を誇っています。

 当社の「パートナー」は、安定した事業基盤や顧客基盤を有する我が国の大手企業が中心です。国内大手企業は、昨今の事業環境の変化から、ビジネスのDXやMXを展望する一方で、IT特にモバイル分野に関する知見やクリエイティブ人材の確保に課題を持つ企業が多く存在します。

 当社はこの課題をワンストップで解決する存在として、他のITベンダーやコンサルティング会社、デザイン会社と一線を画しており、一社一社、パートナーとなる企業を増やしていくことで、事業の拡大を目指しています。


② 主な提供品目

 顧客に提供するソリューションを「クライアントワーク」と「アプリ分析サービス」に区分しており、当社の売上高はこれらにより構成されています。クライアントワークは、スマートフォンアプリ開発等の業務を受託する事業であり、事業開発コンサルティング、システム開発、UI/UXデザインを主な提供品目としています。「アプリ分析サービス」は、スマートフォンアプリ市場における最新の利用状況を集計・分析するサービスであり、「App Apeダッシュボード」「App Apeオーダーメイド分析」を主な提供品目としています。


(2) ソリューションの特徴

① 「ワンチーム」でソリューションを提供

 エンジニア、デザイナー、データサイエンティスト、ディレクターからなるクリエイティブ人材を、顧客ごとに適切に配置し「ワンチーム」でソリューション提供にあたっています。このチーム単位のソリューション提供は、長期にわたり継続することを前提としています。

 顧客とチームとの間、チーム内、チーム間のコミュニケーションを、Slack(注)等の情報ツールを最大限に活用しスムーズに行っています。これにより、コミュニケーション不足によるリスクやロスを極力排するとともに、当社の理想とする「モノづくり」において最も重要なポイントである、プロジェクトにかかわる人々の間の「人の和」「共創の精神」を作り上げています。


② 一気通貫のソリューション

 クライアントワークは、顧客のニーズに応じて、事業開発、サービス企画、UI/UXデザイン、スマートフォンアプリ、Webフロントエンド、サーバーサイドの各アプリケーション開発・保守、クラウドサーバーの運用・監視、事業グロースの支援に至るまで、主に当社の内部リソースを活用し、一気通貫のソリューションを提供することを特徴としています。

 日本の大企業においては、インターネットビジネス、アプリビジネスを立ち上げる際、社内における企画立案作業、コンサルティング会社による戦略立案、デザイン事務所や開発ベンダーによる制作作業など、多くの企業が参加することがありますが、これら立場が異なる複数の企業がプロジェクトに関わることで、進捗の遅延、トータルコストの増加、品質の低下などの問題が発生し、結果として「使われない」サービスが生まれることがあります。

 当社は、一気通貫のソリューションにより、こうした顧客が抱える様々な課題をワンストップで解決することを強みとしています。


③ DX事業開発ソリューション

 多くのアプリ制作実績や、アプリ分析サービスにおいて長年蓄積したノウハウをもとに、顧客のアプリビジネスの企画・草案段階から参画し、ビジネスモデル構築、サービス設計などの担う「事業開発」の分野を強みとしています。

 プロジェクトチーム運営の経験が豊富なディレクターが中心となり、デザイナー、エンジニアなどを含めた当社のクリエイティブ人材が一体となって、具体的かつ実現可能なプロダクトイメージを常に描きながら、アプリを活用した顧客ビジネスのDXと、そのビジネス目標の実現をお手伝いしています。この点は、他のソリューション企業、たとえばシステム開発会社、デザイン制作会社などと比較したときの、当社の独自性、競争力の源泉となっています。

 

④ 「よいデザインを、あたりまえに。」

 あらゆるモノづくりにあたり、「よいデザインを、あたりまえに。」をモットーとして、ユーザーが見るもの、手に触れるもの、感じること、これらユーザー体験が最高のものになることをつねに目指しています。顧客への提案の初期段階、まだつくるモノが明瞭でない段階からデザイナーが積極的に参加し、「どんなユーザー体験を実現したいか」の共有から企画を始める、いわゆる「デザイン思考」の考え方を採用しています。

 企画および制作においてデザイン思考を言語化、具現化するためには、デザイナーに狭義のデザイン領域を超えた高度な知見が求められます。経営レベルのリーダーシップのもとで、最高のユーザー体験を実現するためのデザイナー組織の育成・強化に取り組めることは、当社ソリューションの特徴のひとつとなっています。

 また、デザイン思考の考え方やこれを体現するソリューション提供能力と最新のエンジニアリング能力を併せ持つ点は、他のシステム開発会社あるいはデザイン会社等の競合企業に対する重要な差別化要素であると考えています。

 

⑤ 顧客との直接取引

 取引形態は顧客との直接取引が中心となっています。「一気通貫」の当社の強みを最大限に発揮し、顧客と一体となって最高の価値創造を行うために、大半の案件において当社がプロジェクトの中心に位置し、事業企画、スケジューリング、開発要件の整理などプロジェクトの根幹部分を担うほか、チームのパフォーマンスを最大化するための雰囲気作りやリーダーシップを常に心がけています。

 また、直接取引の場合、当社の実績として、顧客と共同で事例を積極的に情報発信することが可能となります。取引実績のPRは、当社のブランディングのため最も優れたマテリアルになっており、実際の受注獲得につながっています。

 当社は、今後とも、顧客満足と企業価値の最大化のため、顧客が安心して直接取引ができる企業であり続けたいと考えています。


⑥ 当社独自のアプリ分析サービス「App Ape」

 「App Ape」を軸とするアプリ分析サービスは、創業当初から企画していたサービスであり、当社は創業以来本サービスを事業の主軸とし普及に努めてきました。当社はこの「App Ape」を出発点として「アプリのフラー」のブランディングを行い、多くの顧客と向き合ってきた結果、現在の主力事業であるクライアントワークビジネスを立ち上げるに至りました。

 「App Ape」で培ってきた最新のアプリ利用動向についての知見やデータ分析のノウハウは、新規取引開始時の提案活動や事業企画・開発などにおいて広く活用しており、同業他社との間の差別化に貢献しています。


⑦ ソリューションを支えるクリエイティブ人材

 顧客のアプリビジネスを成功に導くためのソリューションを幅広く提供しています。当社は「ヒト」の力によって支えられており、専門人材の採用と育成は、当社の事業活動の維持、成長のための生命線となっています。フラーメンバー一人一人が、アプリ分野での高い能力と知見を備えることで、はじめて顧客の大きな期待に応えることができます。

 また、アプリ分析サービスにおいては、巨大なアプリ利用データを顧客のビジネスに活用できる形にして提案するため、データサイエンス、顧客ニーズの理解、最新のアプリマーケットに関する知見などを終結したこの事業独特のノウハウを必要としています。

 とりわけ、ソリューションの中核となるエンジニア、デザイナー、データサイエンティスト、ディレクターからなるクリエイティブ人材は、社員の約7割を占めており、これらの採用と育成は、当社の事業成長に不可欠な要素です。

 当社の採用は、これまでに提供してきたサービス、新潟地域におけるブランド力、多くの高専生が活躍する企業としての知名度などに支えられ、優秀なクリエイティブ人材の確保を行ってきました。多くの企業で人材確保が課題となっている中で、創業以来醸成してきたヒトの和、人間性の尊重、ワークライフバランスを重視する企業文化、リモートワークなど新しい時代のワークスタイルへの対応により、ヒトを惹きつける会社であり続けたいと考えています。

 

【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/06 単独3Q累計実績 1,143 114 118 90

2023/06 単独会社予想 1,500 108 108 88

2022/06 単独実績 1,245 149 166 225

2021/06 単独実績 1,004 62 62 61


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/06 単独会社予想 55.03 - 0.00


上場時発行済株数 1,679,070株(別に潜在株式142,530株)

公開株数 339,400株(公募80,000株、売り出し215,200株、オーバーアロットメント44,200株)

調達資金使途 事業拡大のための人材確保に係る採用費


PER:24.0

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:4.5億

公募時時価:22億

​   

【株主構成】 

渋谷修太 代表取締役会長 280,000 16.08%  売45,800 180日

B Dash Fund 4号投組 投資業(ファンド) 146,630 8.42% 180日・3倍

Global Catalyst Partners J投組 投資業(ファンド) 138,750 7.97% 180日・1.5倍

(株)朝日ネット 特別利害関係者など 109,090 6.26% 売39,000 180日・1.5倍

いばらき新産業創出ファンド投組 投資業(ファンド) 90,000 5.17% 180日・1.5倍

山本公哉 特別利害関係者など 73,640 4.23% 180日

桜井裕基 取締役副社長CDO 60,000 3.45% 180日

地方創生新潟1号投組 投資業(ファンド) 59,320 3.41% 180日

山崎将司 代表取締役社長 58,000 3.33% 180日

永井裕一 従業員(元従業員含む) 55,000 3.16% 180日

KDDI地方創生事業育成1号投組 投資業(ファンド) 50,000 2.87% 180日・1.5倍


その他売出し

株式会社デジタルホールディングス 34,000株

アステリア株式会社 27,200株

株式会社コロプラ 34,000

TBSイノベーション・パートナーズ1号投資事業組合 27,000株

MF-GB投資事業有限責任組合 15,000株


 本募集並びに引受人の買取引受による売出に関連して、当社株主かつ貸株人である渋谷修太、当社株主である山﨑将司、櫻井裕基、宮毛忠相、塚本幹夫、林浩之、伊津惇、伊藤弘樹、株式会社朝日ネット、株式会社スノーピーク、株式会社セガ、日本交通株式会社、株式会社瀬戸内海放送、株式会社ベクトル、さくらインターネット株式会社、インターウォーズ株式会社、木山産業株式会社、山本公哉、岩瀬大輔、古川健介および川野晃太は、主幹事証券会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後180日目(2024年1月20日)までの期間、主幹事証券会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡しすること及びグリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事証券会社が取得すること等を除く。)を行わない旨を合意しています。

 また、当社株主であるB Dash Fund4号投資事業有限責任組合は主幹事証券会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後90日間(2023年10月22日)までの期間、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及び売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の3倍以上であって、主幹事証券会社を通じて行う株式会社東京証券取引所で行う売却等を除く。)を行わない旨を合意しています。

 また、当社株主である株式会社CARTA VENTURES、朝日メディアラボベンチャーズ株式会社、Global Catalyst Partners Japan投資事業有限責任組合、いばらき新産業創出ファンド投資事業有限責任組合、地方創生新潟1号投資事業有限責任組合、KDDI地方創生事業育成1号投資事業有限責任組合、CatalyST1号投資事業有限責任組合、つくば地域活性化ファンド投資事業有限責任組合、りそなキャピタル4号投資事業組合およびSI創業応援ファンド投資事業有限責任組合は主幹事証券会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後90日間(2023年10月22日)までの期間、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及び売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、主幹事証券会社を通じて行う株式会社東京証券取引所で行う売却等を除く。)を行わない旨を合意しています。


【代表者】

代表者名 渋谷 修太(上場時34歳10カ月)/1988年生山崎 将司(上場時34歳8カ月)/1988年生

本店所在地 新潟県新潟市中央区 (実務の場所:千葉県柏市若柴)

設立年 2011年

従業員数 148人 (2023/04/30現在)(平均31.6歳、年収554.6万円)

事業内容 スマートフォンアプリを中心としたデジタル領域全般における事業開発コンサルティング・UI/UX(利用者接点/利用者体験)デザイン・システム開発、アプリ利用データ分析など

URL https://www.fuller-inc.com/

株主数 47人 (目論見書より)

資本金 37,002,000円 (2023/06/19現在)

代表者略歴

年月 概要

2014年04月 富士通デザイン(株)(現 富士通(株))入社

2015年03月 当社入社

2016年11月 執行役員CDO

2017年07月 執行役員CDO兼スマホビジネス共 創事業本部長

2018年08月 執行役員CDO兼共創グループ長

2019年10月 執行役員CDO兼共創事業本部長

2020年04月 執行役員COO兼共創事業本部長、7月:執行役員COO、9月:代表取締役社長(現任)


【幹事団】

主幹事証券 SBI - -

引受証券 野村 - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 岡三にいがた - -

引受証券 第四 - -

引受証券 松井 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 楽天 - -


【参考類似企業】今期予想PER(6/30)

3625 テックファーム - (連結予想)

4261 アジアクエスト 14.0倍 (連結予想)


【私見】

 アプリ事業で、大きな優位性はなさそうな会社で、中期で大人気になるほどの銘柄ではなさそうです。業績は小粒で成長性はあるものの、ヒット性のものがないと上値はそれほど大きくはないような気はします。吸収金額が非常に小さいことは魅力で初値は高騰すると思いますが、1.5倍でロックが外れるVCもいるのでセカンダリーとしては妙味は少ないと予想します。


想定価額:990円

仮条件上限:1320円

初値予想:3000円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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