2023年7月12日水曜日

IPO分析(テクニスコ)

 【事業内容】

​ 当社が製造販売する製品群は、「ヒートシンク製品」、「ガラス製品」及び「その他」に区分され、それぞれ以下のとおりとなります。

・ヒートシンク製品

 「ヒートシンク製品」は、電子部品が機能する際に発生する熱を吸収し放熱して、性能低下や故障を防ぐことを目的とした構成部品であり、半導体レーザー向け、パワー半導体向け、MPU向け等の高機能ヒートシンク製品を提供しております。


・ガラス製品

 「ガラス製品」は、光透過性、電気的絶縁性、気密性、耐薬品性などの特徴を持つ電子部品用ガラスに、微細な形状加工や金属回路形成加工を行い、電子デバイスと組み合わせることで電子デバイスの機能性を上げる構成部品で、半導体センサーなどの電子デバイスの小型化、高機能化を可能とするための付加価値を高めた「ガラス製品」が求められており、各種センサー向け、モバイル機器向け、バイオ・医療向け等の精密ガラス製品を提供しております。


・その他

 各種金属材料、シリコン(Si)材料、窒化アルミニウム(AlN)や酸化アルミニウム(Al2O3)などのセラミック材料の加工製品を提供しております。また、ガラスやセラミック加工用のダイヤモンドツールも提供しております。


 産業機器市場、自動車市場、光・無線通信市場、ライフサイエンス市場、航空宇宙市場、環境エネルギー市場向けのヒートシンク製品、ガラス製品及びその他の精密加工部品の製造販売を行っております。製造拠点は、当社の広島工場を中心に、中国子会社であるTECNISCO (SuZhou) CO.,Ltd.の蘇州工場及びシンガポール子会社であるTECNISCO Advanced Materials Pte. Ltd.のシンガポール工場を含めたグループ製造体制を構築しております。

 当社グループが製造販売する製品は、顧客製品の中の構成部品として組み込まれるものであり、基本的には顧客ごとの要求仕様を受託し、試作から量産までにおいて製品化していく受注生産となります。

 「切る」「削る」「磨く」「メタライズ(非金属の表面への金属膜化)」「接合」の加工技術を組み合わせる「クロスエッジ®Technology」を、最先端の開発や生産に活かし、顧客の要望を叶え製品化させる技術力及び実現力が、当社の強みとなります。

 一般的な専業メーカーの場合、例えば「切る」を専業とするメーカーであれば、その後に「磨く」工程や「メタライズ」といった加工工程が必要である場合、それぞれを専業とするメーカーに外注することで最終的に製品化することになります。一方で、当社グループはこれらの複数加工技術を自ら組み合わせて製品を完成させます。これにより、顧客へ、以下の「クロスエッジ®Technology」の特長におけるメリットを提供することが可能と考えております。


 もとは株式会社ディスコの研削切断加工技術を活かした受託加工を提供してまいりました。そのような中、「クロスエッジ®Technology」を展開する契機となったのは、2000年頃の海底ケーブルなどによる長距離光通信網敷設急増での光通信バブルであります。顧客からのニーズも踏まえ、切断だけでない様々な加工の必要性を模索していた時期でもあり、そこで創出した利益をもとに、メタライズ技術である薄膜蒸着設備を導入しました。導入した設備を当社事業に活用していくための技術開発を地道に続け、新たな加工技術を身に付けることができました。その後、顧客からのニーズに応えていくための技術開発を繰り返し、一つ一つ新しい技術をものにしていきました。その過程で、「切る」「削る」「磨く」等それぞれの要素技術において、模倣が難しいコア技術も習得してまいりました。これらコア技術を中心に複数工程を組み合わせることにより、独創的な加工技術を生み出し製品化へとつなげていき、専業メーカーだけでは対応できない技術力を蓄積してまいりました。これにより、当社の強みである「クロスエッジ®Technology」が確立されました。さらに、「クロスエッジ®Technology」の継続的な進化のために要素技術そのものを増やすとともに、それぞれの要素技術のレベルアップを図り、その中でコアとなる技術を増やし進化へとつなげることが重要であり、そのための技術開発に注力しております。

 当社グループは、サービスの付加価値をより高めていくという観点から、従来、高機能ヒートシンクの開発に注力しております。

 一般的なヒートシンクの材料としては銅(Cu)やアルミニウム(Al)がありますが、これら材料の素材は、熱を吸収するための熱伝導(熱の伝わりやすさ)は高い一方で、熱膨張(熱による物質の伸縮)が大きい面があります。高い出力のレーザーを出す半導体素子は非常に高い発熱となるため、CuやAlなどを材料としたヒートシンクでは素子とヒートシンクの伸縮の差により損傷してしまいます。しかし、当社の得意領域である高出力レーザー用のヒートシンクは、高い熱伝導を持つ上で、素子の熱膨張に近い素材である窒化アルミニウム(AlN)とCuを複合構造としたCu/AlN/Cuや、銅タングステン(CuW)を主な材料とした高機能ヒートシンクとして製品化しております。これらの材料は、CuやAlに比較して複数素材からなる複合材であるため、切断、切削やめっきなど加工が難しくなる側面がありますが、顧客からの様々な仕様要求に応えるよう製品化に注力しております。

 さらに、高出力レーザー用途の機器は、年々高性能化、高出力化が進み、より高機能なヒートシンクが求められており、当社グループにおいては、それらのニーズに対応する手段の一つとして、非常に高い熱伝導を持つ銀とダイヤモンドの複合材料として、2016年にシルバーダイヤの製造に関する特許を所有する海外企業と当該特許の使用許諾契約を締結し、製造を当社のシンガポール子会社であるTECNISCO Advanced Materials Pte. Ltd.にて行っております。また、同社(子会社)では製造したシルバーダイヤを素材とした高機能ヒートシンク製品の開発及び製造を行っております。

 シルバーダイヤは素材にダイヤモンドを包有するため、加工が難しい側面を有しておりますが、当社が持つ「クロスエッジ®Technology」を駆使し、次世代高出力レーザー用サブマウントや次世代の無線通信規格である5G・6G通信の通信デバイス用のヒートシンク等、様々な用途に適したシルバーダイヤ製ヒートシンク製品の開発を進めております。

 このように、当社グループでは、これまでの受託加工を中心とした事業展開に加え、自社製造の素材をもとにした自社開発製品を新たな事業展開の柱とすべく、当社が提供するサービス等の付加価値をさらに高めていくこととしております。

 当社グループの加工技術はガラス製品に活かされております。ガラス製品の用途市場は幅広く、自動車における車載エレクトロニクス市場での半導体センサーをはじめ、自動運転技術でのLiDARセンサー、産業機器における制御装置市場での高周波(RF)スイッチや画像センサー、また、医療機器における分析装置市場での内視鏡やDNA/血液分析などの用途に向けた製品として、ガラス貫通配線基板、立体配線ガラス、マイクロ流路ガラス、キャップガラスなどのガラス製品を提供しております。

 当社の加工技術はヒートシンク製品、ガラス製品だけでなく、その他として各種金属、シリコン、セラミックなどの材料などの微細加工にも活かされ、切断、切削の加工を受託しております。また、独自の切断・切削技術への創意工夫の蓄積で得たガラス・セラミック加工用ダイヤモンドツールも製造販売しております。

 2022年6月期において、当社グループの海外販売は、連結売上高の72.9%を占めております。これは、地域別のニーズに即した製品の提供による事業を展開しており、主に中国における高出力の半導体レーザー向けヒートシンクや米国における車載向けガラス製品の販売になります。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2024/06 連結会社予想 6,475 427 420 301

2023/06 連結会社予想 5,265 256 247 129

2022/06 連結実績 5,480 619 887 802

2021/06 連結実績 4,346 154 353 277


決算期 種別 EPS BPS 配当

2024/06 連結会社予想 34.87 - -


上場時発行済株数 8,798,100株

公開株数 2,623,100株(公募2,281,000株、オーバーアロットメント342,100株)

調達資金使途 設備投資(工場の拡張および生産設備の増強)


PER:16.1

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:14.7億

公募時時価:49億

​   

【株主構成】 

(同)XEホールディングス 役員らが議決権の過半数所有 5,018,200 77.00% 90日

関家圭三 代表取締役社長 541,000 8.30% 90日

野村信託銀行(株)(信託口2052276) 代表取締役社長の親権者である吉本愛子の信託分 190,000 2.92% 90日

テクニスコ従業員持株会 特別利害関係者など 175,300 2.69% 

関家慶一郎 代表取締役の血族 80,000 1.23% 90日

関家理子 代表取締役の血族 80,000 1.23% 90日

野村信託銀行(株)(信託口2052277) 代表取締役の血族である関家憲二郎と関家多美子の信託分 80,000 1.23% 90日

野村信託銀行(株)(信託口2052278) 代表取締役の血族である関家憲二郎と関家多美子の信託分 80,000 1.23% 90日

三宅川泰二 特別利害関係者など 60,000 0.92% 

吉岡豊吉 専務取締役 50,000 0.77% 90日

村上友孝 専務取締役 50,000 0.77% 90日

相原正行 常務取締役 50,000 0.77% 90日

平尾誠 常務取締役 50,000 0.77% 90日


 本募集に関連して、貸株人である合同会社XEホールディングス並びに当社株主である関家圭三、関家慶一郎、関家理子、吉岡豊吉、村上友孝、相原正行、平尾誠及び平井隆は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2023年10月23日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すことは除く。)等は行わない旨合意しております。

 また、特定有価証券信託受託者野村信託銀行株式会社(信託口2052276)における委託者兼受益者である吉本愛子、特定有価証券信託受託者野村信託銀行株式会社(信託口2052277)における委託者兼受益者である関家憲二郎の代理人である関家圭三及び関家憲二郎の親権者である吉本愛子並びに特定有価証券信託受託者野村信託銀行株式会社(信託口2052278)における委託者兼受益者である関家多美子の代理人である関家圭三及び関家多美子の親権者である吉本愛子は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2023年10月23日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等を行わない旨及び委託者兼受益者が受託者である野村信託銀行株式会社に同様の行為を行わせない旨合意しております。


【代表者】

代表者名 関家 圭三(上場時58歳4カ月)/1965年生

本店所在地 東京都品川区南品川

設立年 1970年

従業員数 203人 (2023/05/31現在)(平均41.9歳、年収763.7万円)、連結322人

事業内容 精密加工部品事業(ヒートシンク製品およびガラス製品などの製造・販売)

URL https://www.tecnisco.com/

株主数 17人 (目論見書より)

資本金 100,000,000円 (2023/06/21現在)

代表者略歴

1989年07月 株式会社ディスコ入社

1995年06月 同社取締役

2002年07月 同社常務取締役

2005年09月 当社取締役

2009年04月 当社代表取締役社長(現任)


【幹事団】

主幹事証券 野村 2,212,600 97.00%

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー 68,400 3.00%


【参考類似企業】今期予想PER(6/30)

5210 日山村硝 1.6倍 (連結予想)

5214 日電硝 29.4倍 (連結予想)

5801 古河電 13.7倍 (連結予想)

5932 三協立山 10.8倍 (連結見込)

6618 大泉製 34.3倍 (連結予想)

6626 SEMITEC 14.5倍 (連結予想)

6907 ジオマテック 150.8倍 (単独予想)

6957 芝浦電子 13.0倍 (連結予想)

6967 新電工 32.9倍 (連結予想)

7746 岡本硝子 31.6倍 (連結予想)


【私見】

 元はディスコの子会社で、半導体関連の銘柄で、地味ながらも長期では注目したい銘柄です。半導体関連で海外比率7割からも業績の波はあり、半導体とはいっても一部であることからも、成長性には限界があり高PERが容認される業種ではありません。VCなしで需給の心配はない銘柄で、本来であれば緩やかに時間をかけて上がる銘柄だと思いますが、IPOブームで低単価であることからも、初値段階で高騰してしまう可能性が高いと予想します。


想定価額:450円

仮条件上限:560円

初値予想:900円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立~やや強気

総合評価:3.5

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