2023年7月11日火曜日

IPO分析(エコナビスタ)

 【事業内容】

​ 経営理念「今と未来を見える化し 次世代の安心を創造する」に基づき、ライフリズムナビSleepSensor等各種センサーから得られた睡眠と生活習慣に関するビッグデータに最新の解析技術を適用し、特徴量を可視化(Visualization)、AIを始めとした様々なソフトウェアを開発しております。開発した各種AIをお客さまが使いやすいソリューションに実装し、価値化(Value-ization)することで社会課題解決型のサービスとして提供しております。

 現在の主たる事業といたしましては超高齢社会の進展に伴い現実的な課題が山積する介護業界を中心に、DXの推進による業務効率化とケアの質向上を両立する「ライフリズムナビ+Dr.」、ライフリズムナビ+Dr.で培ったノウハウを在宅介護領域に最適化し事業パートナーを通じて展開するサービス「ライフリズムナビ+HOME」がございます。これらのライフリズムナビ事業は、当社が事業を通して蓄積してまいりました高密度かつ長期間の睡眠データ、バイタルデータをベースに医学的知見を加えた独自の解析技術、創業時から得意とするセンサフュージョン技術を組み合わせ、SaaS型見守りサービスとして提供しております。

 また当社はもう一つの事業ポートフォリオとして受託研究開発事業を設定しており、ライフリズムナビ事業を通じて永続的に蓄積し続けているビッグデータ、ビッグデータの可視化(Visualization)×価値化(Value-ization)技術、そこから生み出される疲労回復度予測AIや認知症予測AIのような健康状態の推移を予測するAIを中核に、介護や医療業界に限らずハウスメーカーやデベロッパーなど住宅関連事業者や衣類・寝具メーカーといった様々な共創パートナーとの連携を実現し、事業領域を限定しない価値創造型の事業として展開しております。


・ライフリズムナビ事業

 当社の特徴としてお客様から取得するビッグデータを起点としたソフトウェアサービスを提供する事業者でありながら、睡眠やバイタルデータを取得しサービスの中核を担うライフリズムナビSleepSensorを内製化した、メーカーポジションであることが挙げられます。一般的にハードウェアの要素技術開発から量産化までの工程は複雑であり、技術的なノウハウが求められる他、製造体制を確立するまでには相当な投資が必要とされます。そのためデータサイエンス領域ではソフトウェアのみ手掛ける企業が多い中、当社ならではのソフトとハードの両方を一貫して開発するスタイルはSleepSensorの計測精度や安定性を高めつつ、スピーディーに実装可能となる競争優位性の高い要素と考えております。当社ではこの開発モデルを様々な業種や事業領域に適用可能で共創の根幹を支えるコアコンピタンスとして設定しております。


 (1)ライフリズムナビ事業の概要

<国内動向について>

 国内の超高齢社会の進展に伴い現時点で65歳以上の高齢者人口割合は約28%を超えており、今後総人口は減少傾向であるものの高齢者の割合は2050年以降も当面同水準と見込まれております。国や自治体の施策により健康寿命延伸の取り組みも進められておりますが、要介護人口は増大する見込みです。

 一方、介護を担う介護職員数は2023年時点ですでに約22万人不足しており、2040年時点では約69万人まで不足分が拡大するとされています。これらの事実から、従来の「人の手による介護」モデルは限界に来ており、最新のロボット技術、ICT技術を駆使して介護を担う現場の負担軽減や介護施設の事業運営効率化等のサポートが必須となりつつあります。そのため内閣官房資料「成長戦略フォローアップ」の重要分野における取組みの中にもデータヘルス、健康・医療・介護のDXの推進について具体的な言及がなされている(注3)ところであります。

 なお、この傾向は介護施設にとどまらず、地域包括ケアシステムの推進とともに拡大していく在宅介護領域においても同様です。しかしながら国内の介護業界には感情側面での「人の手による介護」といったこだわりが存在し、また業界としてICTリテラシー水準が決して高くないという実態もあり、DXが進展しにくいという根深い課題も存在しているのが実情であります。


 <ライフリズムナビ+Dr.の概要>

 ライフリズムナビ+Dr.は各種センサーを活用した高齢者施設向けSaaS型見守りシステムとして提供しております。センサーはスタッフの介護や介助を阻害せず、また介護ベッドの寝心地を損なわない薄型形状のライフリズムナビSleepSensorを始めとして、人感センサー、ドアのあけしめセンサー及び温湿度センサー等の基本的な組み合わせのほか、ご利用者様(各施設事業者様)のニーズに合わせてエアコンの遠隔コントローラ、顔認証カメラ、ナース

 コールの代替機能を持つ呼び出しボタンや見守りコール、体温計・血圧計・血中酸素濃度計などの各種バイタル計測器等も任意に選択可能です。これにより、個室が主体の有料老人ホームや多床室が主体の特別養護老人ホームなど、お客様ごとに最適な組み合わせをご利用可能な形態を取っております。

 各種センサーから取得された睡眠データ、バイタルデータ、環境データ等のビッグデータはクラウド上に蓄積され、当社独自の解析技術により即時処理が施され、その結果をリアルタイムで介護施設のスタッフルームのパソコンや、各スタッフが保有するスマートフォン、タブレットに表示します。これにより施設のスタッフは日勤帯、夜勤帯を問わず各居室の様子を把握することができ、不要な訪室による状態確認業務を削減、業務効率化を実現しております。さらにライフリズムナビ+Dr.は国内大手6社の介護記録システムとAPI連携を実現しており、睡眠データ、各種バイタルデータ、室内環境データ等が自動で記録されます。これまで施設スタッフが日々時間を掛けて手入力をしていた作業を自動化することで、さらなる業務効率化に寄与します。

 またライフリズムナビ+Dr.は様々なアラートを設定可能で、例えばトイレ介助が必要な入居者の方に対しベッド上の体動を継続して検知した場合に通知する「体動アラート」を活用することで、入居者がお一人で離床しトイレに向かおうとする行動の予兆段階でスタッフが把握、訪室し適切な介助を行うことが可能です。これにより施設で発生頻度が高いとされる転倒事故の削減に繋がっております。同様に「体動アラート」を認知症の入居者などオムツを装着している方に適用しますと、排泄後の気持ち悪さからベッド上でオムツを脱ごうとするいわゆる「オムツ外し」を事前に察知することができ、この段階で介助を行うことで寝具の汚染やその交換作業などを回避することも可能です。このような事後の対応を大きく減らすことで業務効率化が実現でき、スタッフにも余裕が生まれ、本来行うべきだった介護に注力することが可能となります。これは施設運営上の大きなメリットであるだけなく、施設スタッフの身体的、心理的負担も軽減し離職率の低減にも繋がっていきます。ライフリズムナビ+Dr.にはこのようなアラート設定が多数用意されており、カスタマーサクセス部による各種アラートの最適な運用に関するサポートも加わることで、多くのお客様にご活用いただいております。

 

<従来課題を解決した、ライフリズムナビSleepSensor>

 ライフリズムナビ+Dr.で使われるセンサーの中で、マットレスの下に設置し睡眠やバイタルデータを取得するライフリズムナビSleepSensorには、当社が開発した技術が活用されています。ライフリズムナビ+Dr.ではこれまでも生体判別のため200種類以上のスクリーニングフィルターを内包したクラウドAIを運用しておりましたが、2022年3月にリリースした自社開発のライフリズムナビSleepSensorから新たにセンサー上にエッジAIを搭載いたしました。クラウド上とハード上、二つのAIが連携し相互に自己学習を繰り返すデュアルAI化を進め、継続的に使用することでセンサーが計測対象者に適合し計測精度を高めていく自己成長型の睡眠センサーとして適用しております。さらに、SleepSensorマット部(特許出願中)にも特徴があり、従来はトレードオフの関係であった検知範囲の拡大と精度の高い睡眠データ・バイタルデータ取得の両立も実現しております。

 尚、これらの技術を適用したライフリズムナビ+Dr.では、センサーを活用した見守りシステムにありがちな「誤反応・誤発報・通知遅延」を大幅に低減するとともに、これまで介護現場のニーズが高いものの適用が困難であったエアーマットとの組み合わせ利用が可能になるなど、顧客視点でより使いやすいサービスとなっております。

 上の図はライフリズムナビ+Dr.を導入した施設において、導入前後における就業状況の変化を表しております。ライフリズムナビ+Dr.導入後は業務効率化により常勤数を1名減らすことができており、さらに残業時間も大きく削減できております。これはライフリズムナビ+Dr.の効果に加え、介護業界のお客様、現場のニーズに寄り添った当社独自のビジネスモデルによる効果も関連していると考えております。ライフリズムナビ事業では介護現場で就業経験を持つ人材が多数所属する当社のカスタマーサクセス部門による、ライフリズムナビ+Dr.導入前からのサポート、導入後の継続的な活用に至るまでの伴走しております。ハードウェア、ソフトウェア、施設内ネットワーク、そして日常の使い方のコツまで、現場のお困りごとに寄り添い続けるといった柔軟なサポート体制を構築しており、ICTやデジタル技術に苦手意識を持つ介護現場のお客様からも使いやすい、無くてはならないツールになった等の声が寄せられております。その結果として2023年4月時点でライフリズムナビ+Dr.の累計利用者数が1万6,500人を超え、導入施設数も200棟以上となりました。年次のChurn Rateも0.02%と、ほぼ解約の無いサービスとして受け入れられております。


<ライフリズムナビ+HOMEの概要>

 当社の事業パートナーである東京ガス株式会社がサービサーとして2021年2月から展開する一般のご家庭用の見守りサービスです。ニーズが顕在化しつつある「離れて暮らす親の日常を心配する子世帯向けサービス」としてスタートしており、東京ガス株式会社がエネルギー事業者として約140年に渡って日々の暮らしに寄り添う中で積み重ねてきたマーケティング技術と、生活者のお困りごとに対するソリューション提供の実績に、当社のライフリズムナビ+Dr.で培った技術、ノウハウを提供し共創することで子世帯の本音に寄り添った新たな価値軸での見守りサービスとして提供されております。また最近では国が推進する地域包括ケアシステムの方針を鑑み、在宅介護領域でのサポートサービスとして、展開の領域を広げております。当社は東京ガス株式会社にセンサー機器を販売するほか、月額利用料等による収益を得ております。


<受託研究開発>

 当社の睡眠/生活習慣データベース、睡眠データ解析技術並びにハードウェア/ソフトウェアの自社開発技術は、介護業界だけでなく、他の事業領域にも適用可能な当社のアセットと捉えております。実際に異業種の企業からお声がけを継続的に頂いており、複数の事業者と具体的な検討を深めているところであります。尚、パートナーと共創することによって得られた知見、技術、さらにサービスを通じて永続的に蓄積される睡眠/生活習慣ビッグデータは常に当社にフィードバックされ、さらなる付加価値として改良と発展を続けます。


(2)中長期的な事業及び収益拡大のイメージ

 当社のライフリズムナビ事業に関する今後の展開として、短・中期的な取り組みとして高齢者施設を対象としたライフリズムナビ+Dr.のシェア拡大に注力し、目標累計販売台数として2万台を設定し取り組みを進めていく予定です。また現在、在宅介護領域への展開を広げつつあるライフリズムナビ+HOMEについて、地域包括ケアシステムの枠組みの中で中・長期的に販売拡大を推進しつつ、さらに睡眠を軸とした新製品・サービスの投入も行うことで収益の拡大を目指してまいります。

 

【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/10 単独中間実績 825 416 415 287

2023/10 単独予想 1,065 385 375 260

2022/10 単独実績 893 302 304 197

2021/10 単独実績 535 131 134 125


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/10 単独予想 51.54 - 0.00


上場時発行済株数 5,776,630株(別に潜在株式1,228,300株)

公開株数 2,415,000株(公募1,000,000株、売り出し1,100,000株、オーバーアロットメント315,000株)

調達資金使途 人材確保費、ハードウエア調達費用、研究開発費


PER:25.2

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:31.4億

公募時時価:75億

​   

【株主構成】 

(株)ココアアセット 役員らが議決権の過半数所有 2,790,250 46.47% 売737,000株 OA315,000 360日

渡辺君人 代表取締役社長 700,000 11.66% 180日

ヒューリック(株) 資本業務提携先 672,750 11.20% 180日

東京ガス(株) 資本業務提携先 622,750 10.37% 180日

梶本修身 取締役会長 363,000 6.05%  売363,000

ソニーグループ(株) 特別利害関係者など 138,880 2.31% 180日

グローリー(株) 資本業務提携先 100,000 1.67%

中元秀一 監査役 100,000 1.67% 180日

野村和弘 取締役CFO 100,000 1.67% 180日

安田輝訓 取締役CTO 100,000 1.67% 180日

Sony Innovation Fund 3 L.P. 投資業(ファンド) 50,000 0.83%

杉崎将茂 取締役 50,000 0.83% 180日

(株)GMS 役員らが議決権の過半数所有 39,000 0.65% 360日

 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である株式会社ココアアセット並びに当社株主である株式会社GMSは、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後360日目の2024年7月19日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すことを除く。)等を行わない旨合意しております。

 また、当社株主であるヒューリック株式会社、東京ガス株式会社及びソニーグループ株式会社並びに当社新株予約権者である渡邉君人、中元秀一、野村和弘、安田輝訓、杉嵜将茂、勝本佑太、池田勇樹、木戸岡大輔、川又大祐、友木屋悟、阿部圭佑、岡田圭介他17名は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の2024年1月21日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等を行わない旨合意しております。


【代表者】

代表者名 渡辺 君人(上場時49歳0カ月)/1974年生

本店所在地 東京都千代田区紀尾井町

設立年 2009年

従業員数 32人 (2023/05/31現在)(平均38.5歳、年収535.2万円)

事業内容 睡眠解析技術を通じた健康状態推移予測AI(人工知能)の開発と、開発したAIを実装した「ライフリズムナビ+Dr.」サービスなど、社会課題解決型ソリューションの提供

URL https://econavista.com/

株主数 8人 (目論見書より)

資本金 416,323,000円 (2023/06/21現在)

代表者略歴

2000年03月 株式会社QRIPT 代表取締役 就任

2017年05月 当社代表取締役社長就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 みずほ 1,997,100 95.10%

引受証券 野村 42,000 2.00%

引受証券 SBI 42,000 2.00%

引受証券 マネックス 6,300 0.30%

引受証券 松井 6,300 0.30%

引受証券 楽天 6,300 0.30%


【参考類似企業】今期予想PER(7/6)

3666 テクノスJPN 13.6倍 (連結予想)

3939 カナミックN 27.1倍 (連結予想)

4263 サスメド - (単独見込)  時価270億

6298 ワイエイシイHD 11.3倍 (連結予想)

6629 テクノHR 15.5倍 (連結予想)

6718 アイホン 12.0倍 (連結予想)


【私見】

 睡眠解析技術による高齢者見守りシステムを展開ということで、AI関連でもあり介護関連でもあることから業種妙味が非常にある銘柄です。業績も利益率が高く、利益はでており、高PERが容認される銘柄だと思います。ソニーや東ガスなど大手企業も株主に名を連ね、VCの売り要素もないので吸収金額はやや大きくても売られる心配のない銘柄です。睡眠関連では赤字のサスメドが時価270億の規模があることからも、上値は大きくセカンダリーも期待したい銘柄です。


想定価額:1100円

仮条件上限:1300円

初値予想:4500円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・やや強気

総合評価:4

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