2019年9月10日火曜日

IPO分析(HPCシステムズ)

【事業内容】
(1)HPC事業
 HPC事業は、科学技術計算用コンピュータに関連するソリューションの提供を行っております。科学技術計算用コンピュータは、高性能コンピュータを駆使して科学技術における問題を計算によって解決する計算科学という分野で使用されておりますが、計算科学は、理論や実験と並ぶ、第三の研究手段に数えられるまでに発展してきております。その中で当社は、計算科学の手法を用いて「理論化学」の問題を取り扱う「計算化学」という分野に強みを持っており、中でもライフサイエンスとマテリアルサイエンス分野を重点事業領域と位置づけ、コンピュータ上で高精度に計算した材料データベースやAIなどを活用して材料開発を行うマテリアルズ・インフォマティクスのアプリケーション開発に力を入れております。
 当社が提供するHPCシステムインテグレーションは、従来のシステム開発業者等が行っている業務系システムやERPシステム等の構築といったITサービスとは領域が異なっており、科学技術計算、モノ作りにおける流体構造シミュレーション、創薬や材料開発に必要な計算化学、ディープラーニング、AI解析、ビッグデータ解析等、顧客の使用目的に応じた知見を必要とする領域に対するシステムインテグレーションであります。こうしたHPCシステムインテグレーションの他にも、科学技術計算用高性能コンピュータの販売、ソフトウェアプログラムの開発・販売、受託計算・研究開発支援及び導入後のサポートまでをワンストップでトータルに行う体制を構築しております。
 具体的には、ユーザが保有、又は想定する様々なシステム構成に対して、ユーザの求める計算科学プログラムをコンピュータ上で実行可能の状態に変換するビルドや、同プログラム性能の最大化を図るための調整を行うことで、コンピュータにおける計算時間を大幅に短縮させる超高速計算や、大量のデータを正確に計算させる大規模・高精度計算を実現している他、HPCユーザである研究者や製品開発者のニーズに合わせて、科学技術計算用のオリジナルソフトウェアプログラムの開発・販売・サポート、計算科学をテーマとするセミナーの開催、科学技術計算の受託や技術支援、プログラム高速化サービスなどを提供しております。その過程で長年にわたって培ってきた全国に所在する大学の研究室や公的研究機関、企業のR&Dセンターや中央研究所などとの関係性を構築していることがHPC事業の強みであります。具体的には、基礎研究の有効活用を模索している大学の研究室等と、応用研究を行っている企業のR&Dセンター等との橋渡しや、基礎研究の成果を探している企業のR&Dセンター等に対して、大学の研究室等の基礎研究成果を紹介するといったように、官と民を結ぶハブの役割を担うことを可能としております。
 その他、多様化する顧客のHPCによる計算ニーズにあわせ、HPCの計算能力をクラウドにて提供するサービスにも取り組んでおります。HPCユーザの計算ニーズは極めて秘密性が高く、計算に長い時間を要することから、従来は各研究室又は各社でHPCを保有することが一般的でした。しかしながら近年ではHPCユーザの裾野が拡大しており、柔軟な利用環境を求めるユーザの要望が増加していること等から、当社では一時的に利用できる解析用HPCリモートサービスや、技術の進歩を捉えてHPCのクラウドサービスも開始しております。
 最近では、HPCとビッグデータやAIが融合し、理論計算からデータ分析、機械学習、そして理論計算といった機能を実現できるシステムの導入が進んでおり、さまざまな分野でAI技術の応用が進められております。当社も、重要な社会インフラへのHPCの適用事例となる5G技術、及び「コネクテッドカー」 に係る研究開発活動のニーズを支える技術者集団として参画しております。
 このように、当社はハードウェアからソフトウェアプログラム、システムインテグレーションサービス、各種研究サポートを一気通貫してワンストップで対応しております。

 (2)CTO事業
 CTO事業は、顧客企業の注文仕様に応じた産業用コンピュータの開発、製造及び販売を行っております。当社の産業用コンピュータは、組込コンピュータとして、各種製造装置や工作機械、計測装置や検査装置の他、インフラシステムにおける監視制御、医療機器、デジタルサイネージなどに搭載され、さまざまな産業分野において活用されております。
 産業用コンピュータは、市販のパソコンが画一仕様の量販品であることと比較すると、要求される仕様も特徴もまたその使用される用途によって千差万別となっております。また、各種産業用装置に組み込まれた産業用コンピュータにおいてトラブルにより使用できない時間(ダウンタイム)が発生した場合、顧客企業にとっての操業ロスに直結することになるため、稼働の安定性等が求められます。当社で開発・製造・販売している産業用コンピュータは、高い処理性能を持ちつつも、顧客企業の製品システムや装置に必要なI/Oインターフェース、苛酷な温度、静電気、電波、振動、ノイズ、ほこりなど設置環境に係る耐環境性、連続稼動や長期使用に耐える頑健性・信頼性、異常動作からの早期復旧力やメンテナンス性、省スペース性など、さまざまに寄せられる顧客企業特有の多種多様な要件の実現に応えております。
 産業用コンピュータメーカーの中には、自社製品の大量生産、市場投入を軸として、定期的なモデルチェンジ等を実施しているメーカーもありますが、当社では顧客要望に応じて設計を行い、最適部品を選定・調達し、生産を行うだけでなく、同一システムを長期間使用する顧客に対しては、国内外のさまざまな電子部品メーカーとのサプライチェーンを築くことで、カスタム要素の強い同一仕様の産業用コンピュータの長期安定供給を実現し保守サービスにもきめ細かく対応しております。このように、産業用コンピュータの仕様設計段階から試作機提案段階、量産前検証段階、量産製造段階、出荷後のサポート対応段階と各段階において一貫した体制を保持し、顧客企業の要望にきめ細かく対応できることが当社の強みとなっております。
 CTO事業の顧客は、自社製品、設備増強の部品としての組込みコンピュータの長期継続供給を前提として採用するため、顧客の製品が販売される期間においては継続的な受注が見込めます。当社は部品の供給パートナーとの関係強化により、産業用コンピュータに特有な部品の長期安定調達力と品揃えを充実させるとともに、販売パートナーとの関係強化を図り、取り扱い製品と取引先の拡充を図っております。
 産業用コンピュータの製造は国内工場(千葉県匝瑳市)で行っております。部品供給パートナーより仕入れた部品の入荷管理、在庫管理から産業用コンピュータの組立、検査、出荷及び品質管理、サポートまでを同工場にて実施しております。また、組立、検査、出荷等に関しては、作業手順書や指示、チェックシートをオンライン化し、作業のトレーサビリティ管理する為の独自開発の生産支援システム「ProMIS: Manufacturing Information System(プロミス)」を使用しており、当該システムの使用により、顧客メーカー毎の要望に沿った製造体制を構築するとともに、顧客メーカーの品質管理部門による工場監査への対応も実施しております。


【業績等】
業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益
(単独実績)2017.6 3,900 244 254 162
(単独実績)2018.6 4,053 282 291 189
(単独実績)2019.6 5,395 369 367 219
(単独予想)2020.6 5,785 469 457 309

1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当
(単独予想)2020.6 75.73 351.57 0
調達資金使途 ソフトウエア開発費、サーバー取得費、工場設備投資、人件費
上場時発行済み株数 4,090,000株 (別に潜在株式311,500株)
公開株数 3,198,500株(公募50,000株、売り出し2,731,400株、オーバーアロットメント417,100株)シンジケート 公開株数2,781,400株 (別に417,100株)

PER:26.2
PBR:
配当利回り:
公募時吸い上げ資金:63.6億
公募時時価:81億
    
【株主構成】
TKHK投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 3,050,500 70.10  180
菱洋エレクトロ(株) 特別利害関係者など 450,000 10.34  180
ナラサキ産業(株) 特別利害関係者など 279,000 6.41  180
小野鉄平 代表取締役 133,000 3.06 180
椎名法子 代表取締役の血族 45,000 1.03 
(株)ハイアテック 代表取締役の血族が議決権の過半数を所有する会社 40,000 0.92
長谷川真樹 取締役 30,000 0.69
関浩行 取締役 28,500 0.65
斎藤正保 取締役 28,500 0.65
広石昭彦 特別利害関係者など 25,500 0.59
本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、売出人かつ貸株人であるTKTH投資事業有限責任組合、貸株人かつ当社役員である小野鉄平、当社株主である菱洋エレクトロ株式会社及びナラサキ産業株式会社、当社株主かつ当社役員である長谷川真樹及び下川健司、当社新株予約権者かつ当社役員である関浩行、齋藤正保及び末松孝規は、SMBC日興証券株式会社(以下「主幹事会社」という。)に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2020年3月23日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)の売却等を行わない旨を約束しております。
また、当社は、主幹事会社に対し、ロックアップ期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利あるいは義務を有する有価証券の発行又は売却(本第三者割当増資に係る新株式発行並びに株式分割による新株式発行等及びストック・オプションに係る新株予約権の発行を除く。)を行わないことに合意しております。

【代表者】
代表者生年月日 1974年01月05日生まれ
2000年08月 State Street Bank and Trust Company 入行
2004年11月 精傑電子科技股份有限公司 設立董事長兼総経理
2006年05月 プロサイド(株) 入社 9月 当社設立により当社に移籍 当社コーポレート本部長兼CFO
2007年02月 当社生産技術本部長兼CFO 12月 当社代表取締役 就任
2012年11月 当社取締役会長 就任
2012年12月 (株)アドテック(現(株)AKIBAホールディングス)代表取締役社長就任
2015年06月 同社代表取締役社長を辞任
2015年09月 当社代表取締役 就任(現任)

【幹事団】
主幹事証券 SMBC日興 - -
引受証券 SBI - -
引受証券 みずほ - -
引受証券 東海東京 - -
引受証券 むさし - -
引受証券 岩井コスモ - -

【参考類似企業】今期予想PER8/26
6702  富士通 15.9倍(連結予想 )

【私見】
 ソフト関連で専門性が高く、AIなどにも関係することから業種としては派手さはありませんが評価はできます。業績も良く、PERとしては上値は充分あります。問題は需給で、日興主幹事では多いロックはかかっているVCの出口案件で、結果はあまり良くはありません。ここも例外ではなく、初値で少し上がれば、セカンダリーとしては妙味は少ないと思います。

想定価額:1930円
仮条件上限:1990円
初値予想:2500円
ブック申し込み度・・・やや強気
セカンダリー期待度・・・中立
総合評価3.5

2 件のコメント:

  1. 今のマザーズで吸収資金が50億超えてしまうと初値後も時間がかかりそうですね。
    ギフティ、Chatwork、HPCなど。

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  2. 需給第一ですね。
    今後年末にかけてこのあたりに買いが入ってくるかですね。

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