2022年9月1日木曜日

IPO分析(eWeLL)

 【事業内容】

(1)クラウドサービス

①サービスの概要

 主として訪問看護ステーションに対して、訪問看護ステーションの業務全般にわたる課題解決に対処するための各種サービスを提供しております。

 顧客の生産性向上に貢献するSaaS型業務支援ツール( CRM機能を有する「iBow」、保険請求を行う機能を有する訪問看護専用レセプトシステム「iBow レセプト」、訪問看護に特化した訪問看護専用勤怠システム「iBow KINTAI」)を提供し、自社を中心に要件定義、機能設計(開発部分は外注を活用)から販売、運用サポートまでの一連のプロセスを対応するとともに、システム開発で培ってきたノウハウを活用して徹底して見やすさと使いやすさを重視し、訪問看護ステーションにおいて業務効率をはかる機能を備えたツールを主要な料金プランでは基本料金と従量課金制で提供しております。


②訪問看護業界のDX推進に貢献する「iBow」

 訪問看護ステーションで働く看護師等が、在宅療養中の患者宅に訪問しケアを実施する度に記録書類を作成する義務があることに着目し、患者宅で記録書類の作成、過去のカルテ等の確認が簡単にできることで訪問看護師等が本来提供する業務に専念することができ、訪問看護ステーションが収益を新たに生み出せるのではないかと考え、顧客である現場で働く看護師等の意見を聴取し、UI/UXにこだわってシステムを開発してまいりました。また何が必要かを徹底的に追求するため、自社でも訪問看護ステーションを立ち上げ(現在は閉鎖)対応してまいりました。

 当社が創業した2012年には各種記録が手書きで行われていた訪問看護業界に ICT(注10)の活用を提案し、未だ半数以上が紙カルテに手書きをしているというアナログな業界に、DXを推進すべく事業展開しております。訪問看護ステーションの業務効率の向上に貢献するとともに、記録される情報をデータ化し蓄積することを推進しております。


③サービスラインアップ

 訪問看護市場向けに、「iBow」、「iBow レセプト」、「iBow KINTAI」を提供し、当社は訪問看護業界における総合的なプラットフォーマーとして、確かな地位を築くことを目指しております。


④ビジネスモデルによる安定した収益基盤

 サブスクリプション型で顧客にサービスを提供しております。一般的なイニシャル(初期費用)やID課金という形態はとらず、主要な料金プランでは1ステーション毎に定める月額基本料金に加え、看護師等が患者宅に訪問する訪問1件あたり幾らの利用料金をいただく従量課金で収益を得ており、顧客である訪問看護ステーションの収入が増えることで当社の収益も増えるwin-winの関係を築いております。


⑤情報セキュリティ管理への取り組み

 当社のサービスを通じて顧客は個人情報および医療情報を取り扱います。当社の提供するサービスは、インターネットを利用しているため、自然災害、事故、不正アクセス等によって通信ネットワークの切断、サーバー等ネットワーク機器に作動不能等のシステム障害が発生する可能性があります。稼働状況の定期的なモニタリングや異常発生時の対応方法の明確化等、システム障害の発生防止のための対策を講じております。

 当社は、外部クラウドサーバーにて提供しており、安定的な稼働が当社の事業運営上、重要な事項となっております。当社では継続的に稼働しているかを常時監視しており、障害の発生またはその予兆を検知した場合には、当社の役職員に連絡が入り、早急に復旧するための体制を整えております。国内に点在する複数の地理的リージョンで運用されております。

 当社では、情報セキュリティに関する取り組みとして、情報セキュリティ管理に関する規程の制定、社内教育を実施し、情報管理への意識向上を図るとともに、情報セキュリティマネジメントシステムISMS認証を取得し、情報セキュリティ体制および情報流出防止対策を構築しております。

 

⑥訪問看護ステーション向けサービス提供事業の競争優位性

 設立時点において既に訪問看護業界にも定着していたレセプトシステム(勘定系システム)ではなく、紙カルテに手書きをしているというアナログな訪問看護業界のDXを推進すべく、「iBow」( CRM系システム)を提供しております。

 当社は訪問看護ステーションで働く方々が日々の業務で必要なことをデジタル化し、その情報をもとにレセプトシステムへデータが流れる仕組みを提供しておりますが、一般的にはレセプトシステムがメインであり、CRM系機能が主ではなくレセプトシステムの付帯機能となっていることが多く見受けられます。

 当社の提供するサービスにより、訪問看護師等が日々業務を効率的に行うことが可能となるため、看護師等が訪問する件数が増えることやステーションの管理者がレセプト以外の他の業務を遂行しやすいなど違いとなって表れることが期待できます。当社は、現場第一主義を掲げ、常にUI/UXを追求しております。

 また、この仕組みは訪問看護ステーションによる不正請求の防止にも効果を発揮します。日々の情報をもとにレセプト情報を作成する当社の仕組みでは記録がないと処理できませんが、レセプトありきのシステムでは記録を後から記録する仕組みもあり、不正につながる可能性もあります。訪問看護ステーションが図らずも不正請求が生じにくいシステムを提供することで、適正な業務支援を行っております。


 当社の主力サービス「iBow」のターゲットである日本全国の訪問看護ステーション数は、14,304ステーション存在し、「iBow」の契約ステーション数は1,885社で、訪問看護ステーション全体に占める当社の市場シェアは13.2%であります。訪問看護ステーションにおいて ICTの普及率はまだまだ低く、レセプト請求システムを除くと56.9%が手書きの状況であります。2020年以降新型コロナウイルスが猛威を振るうなかで、訪問看護の業界においても、集合して申し送りをしない、直行直帰を行う等、看護師等が極力接触を避けるための方策としてモバイル等の活用に積極化してきていることから、 ICTの普及率は上昇傾向にあると考えております。このような中で、早くからモバイルを活用したサービスの提供を行ってきた当社としては、未利用企業の新規開拓促進により、さらなる高い市場シェア獲得を目指しております。


(2)BPOサービス

①サービスの概要

 「iBow 事務管理代行サービス」を提供しております。事務管理代行サービスでは、訪問看護ステーションにおける事業運営上避けては通れない、レセプト業務(保険医療機関や利用者への請求データの作成業務)を当社が代行して対応するものであります。正しいレセプト業務を行うために必要である医療・介護保険情報の登録や、医師からの指示書情報の登録を代行すること、また請求諸元となる電子カルテ情報の確認等を当社が行うことで、顧客における人的リソースを収益獲得に集中することに貢献できるものとしてサービスを提供しております。

 主なサービスの内容は、「利用者情報の登録代行」「日々の記録、各種説明等の確認」「レセプトの作成」「審査結果の対応」「利用者請求書/領収証データ作成」等になります。


②サービス優位性

 一般的に医療保険でのレセプト業務とは、組合健保や協会けんぽ、市区町村等の健康保険の保険者に診療報酬を請求する業務のことを指します。「レセプト」とは、保険者に請求する診療報酬明細書であります。「診療報酬」とは、診療に要した費用のことで、診療報酬点数表に基づいて点数で算出されます。「医療費」は診療報酬点数から1点=10円として金額で算出されます。日本では国民皆保険制度により、加入者が診察を受けるときは最大で医療費の3割を患者が負担し、残りの7割は健康保険組合等を運営する保険者が負担する仕組みとなっています。

 訪問看護ステーションのレセプト請求業務は、医療保険の診療報酬計算、療養費明細書請求、介護保険の介護報酬計算と請求、自費訪問(保険外でのサービスとなります。訪問看護ステーションは混合診療可能)の計算と請求でありますが、患者の主病名、状態に応じて、医療保険、介護保険の制度を利用することになり、また患者および患家からの要望があった場合には自費の訪問も行います。また医療保険、介護保険だけではなく、患者の世帯収入や患者の年齢、主病名等に応じて、国の補助である公費の利用や、社会福祉保障制度等も活用されます。

 このように医療、介護保険の切り替えを確認するのはもちろんのこと、様々な制度を活用しながら、正しく保険者に医療費および介護費を請求し、自己負担分を患者へ請求する業務がレセプト業務であります。一人の患者の医療および介護保険毎に保険者への請求を計算し、請求を行いますが、その請求計算や入力に間違いが一箇所でもあった場合は、その患者の保険請求全額が返戻となって差し戻され、支払われなくなります。よって正確なレセプト請求を行うことが、指定訪問看護ステーションとしての収入を支え、また安定した経営を行う重要な業務となるため、訪問看護ステーションでは重要視されています。

 当社の「iBow」を訪問看護ステーションが利用することで、複雑な医療、介護の制度が違う請求対応や、患者毎に異なる加算算定、保険者への請求漏れや不正請求等の問題が解消することになり、管理者(看護師)の業務負担の軽減を実現することができ、管理者が看護ケアに集中し訪問看護に向き合う時間を確保することができるようになるため、訪問看護ステーションの訪問件数向上につながります。また複雑で難しいレセプト業務を担当する専門的な事務員がなかなか確保することができないステーションにとっては課題解消の選択肢になります。


③収益構造

 提供価格は、顧客の総売上の一定割合(最低利用料金100,000円、利用料金:顧客の総売上の一定割合)をいただくこととしており、顧客の収入が増えることで当社の収益も増える仕組みとしております。「iBow 事務管理代行サービス」は、2021年1月より本格的にサービス提供を開始し、2021年12月末における契約ステーション数は34ステーションであり、さらなる拡大を目指しております。


 ​【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2022/12 単独中間実績 739 337 335 230

2022/12 単独会社予想 1,512 562 522 352

2021/12 単独実績 1,192 401 403 340

2020/12 単独実績 790 201 203 184


決算期 種別 EPS BPS 配当

2022/12 単独会社予想 52.80 140.83 0.00


PER:32.2

PBR:

PSR:7.9

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:27.0億

公募時時価:118億

​   

上場時発行済株数 6,939,500株(別に潜在株式677,775株)

公開株数 1,591,000株(公募50,000株、売り出し1,333,500株、オーバーアロットメント207,500株)

調達資金使途 設備投資、借入金の返済


売出しを行う地域

欧州およびアジアを中心とする海外市場(ただし、米国およびカナダを除く。)


【株主構成】 

中野剛人 代表取締役社長 2,962,500 39.15% 180日

北村亜沙子 常務取締役 1,239,000 16.37% 180日

住友商事(株) 特別利害関係者など 1,033,500 13.66% 180日

(同)RSPファンド6号 ベンチャーキャピタル(ファンド) 979,500 12.94% 180日

島田亨 取締役 412,500 5.45% 180日

松下智樹 特別利害関係者など 372,000 4.92% 180日

SMBCベンチャーキャピタル3号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 258,000 3.41%

(株)シグマクシス・インベストメント ベンチャーキャピタル(ファンド) 102,000 1.35% 180日

江尻裕一 特別利害関係者など 49,500 0.65%

中尾充 特別利害関係者など 30,000 0.40% 180日


 本募集ならびに引受人の買取引受による売出しに関連して、当社の大株主でありその所有する当社普通株式の一部を売り出す中野剛人、住友商事株式会社、合同会社RSPファンド6号、ならびに当社の大株主である北村亜沙子、島田亨、松下智樹、株式会社シグマクシス・インベストメント、中尾充および那珂通雅は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後180日目(2023年3月14日)までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出しおよびグリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等を除く。)を行わない旨を合意しております。

 また、当社の新株予約権を保有する中野剛人、北村亜沙子、木内慎二、浦吉修およびその他36名は、主幹事に対し、ロックアップ期間までの期間、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社新株予約権および新株予約権の行使により取得した当社普通株式の売却等を行わない旨を合意しております。


【代表者】

代表者名 中野 剛人(上場時49歳0カ月)/1973年生

本店所在地 大阪府大阪市中央区備後町

設立年 2012年

従業員数 64人 (2022/06/30現在)(平均36.8歳、年収461.4万円)

事業内容 在宅医療分野における業務支援事業{訪問看護ステーション向けSaaS(Software as a Service)型業務支援ツール(電子カルテシステム「iBow」)などを提供する事業、診療報酬請求業務を代行する「iBow事務管理代行サービス」など}

URL https://ewell.co.jp/

株主数 11人 (目論見書より)

資本金 286,807,000円 (2022/08/12現在)

代表者生年月日 1973年09月16日生まれ

代表者略歴

1991年04月 (株)サンエース入社

2012年01月 葬祭式場バルティ枚方東入社

2012年06月 当社設立 代表取締役社長就任

2018年04月 当社取締役会長就任

2018年10月 当社代表取締役社長就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 大和 - -

引受証券 野村 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 松井 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 極東 - -


【参考類似企業】今期予想PER(8/15)

2175 SMS 49.7倍 (連結予想)

2413 エムスリー 58.4倍 (連結予想)

2667 イメージワン 219.7倍 (単独予想)

3671 ソフトマックス 10.8倍 (単独予想)

3733 ソフトウェアサー 10.8倍 (連結予想)

3902 MDV 44.1倍 (連結予想)

3939 カナミックN 41.1倍 (連結予想)

4320 CEHD 16.0倍 (連結予想)

4480 メドレー 174.0倍 (連結予想)

4820 EMシステムズ 35.5倍 (連結予想)


【私見】

 訪問看護ステーション向けSaaS型支援ということで、市場シェアも13%あり、業種妙味はあります。業績も非常に良く、利益率は高く、売出が多いのは気になりますが、海外売出しもあり評価はできます。吸い上げ規模はやや大きめで、SaaS系として高PERは容認されますが、公募時点で32と平均並みで、PSRも8近くと割安感は感じません。ロックなしVCも1社なので需給としてはさほど心配ありませんが、2倍近くに初値が高騰した場合は高い位置では狙うのはリスクを感じます。


想定価額:1450円

仮条件上限:1700円

初値予想:2800円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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