2022年9月9日金曜日

IPO分析(ファインズ)

 【事業内容】

 創業以来、中小企業事業者や個人事業主などのSMBの領域向けに、モバイルサイトや予約管理システムなどのデジタル化を推進していくサービスを提供しておりました。また、2015年から動画事業に先行投資を行い、動画を制作するだけでなく、視聴データの分析・改善ができるカスタマーサクセス体制を構築してまいりました。現在では動画を活用したDXを提供しております。その結果、当社の累計取引社数は、19,322社となっております。


(1)Videoクラウド事業

 主に動画制作サービス、動画配信プラットフォームサービス(Videoクラウド)、DXコンサルティングの3つのサービスを提供しております。当事業の特長は、動画制作を行うだけでなく、専用のプラットフォーム上での配信、分析・改善、データ活用からDXの推進に至るまで、一気通貫したサービス提供を行うことができる点にあります。特に、動画の価値を最大限に発揮することができるVideoクラウドに注力しております。Videoクラウドは、基本機能として企業独自のViewer(再生機能)と正確な視聴データの蓄積・分析を行うことや、拡張機能として次世代型動画であるインタラクティブ動画への対応が可能です。さらには、Videoクラウドから抽出できる動画の視聴データ及び顧客のマーケティングデータを活用したDXコンサルティングサービスを行っております。

 当事業の特長は以下のとおりであります。

①豊富な動画制作サービスの取引実績数

 当社のVideoクラウド事業における動画制作サービス取引社数は、7,735社となっております。動画には「短時間で多くの情報を伝えられる」「記憶定着の効果が高い」「知覚情報を伝えられる」という3つの強みがあり、さらに、情報や視聴データを蓄積して資産化することが可能となっています。そのため、コロナ禍でテレワークが普及する中、「付加価値の向上(広告・プロモーション、営業資料、サービス紹介、ブランディング、社員総会、展示会、導入事例紹介、ウェビナー等)」と「業務の効率化(マニュアル・ナレッジ共有、カスタマーサクセス、社内報・コミュニケーション、教育・研修、インターンシップ、会社説明、工場・社内バーチャルツアー、IR・株主総会等)」の両面で動画の活用シーンが広がりを見せております。


②XR領域の拡張機能

 Videoクラウドでは、動画の再生機能やデータの取得などの基本機能に加え、XR領域への拡張機能として最新の動画手法であるインタラクティブ及びVR(360°)動画を実装することが可能となっております。従来の動画では、企業側は視聴者に対して、再生開始から終了まで一方的な情報発信をすることしかできませんでした。そのため、ニーズが潜在的な視聴者には早期に離脱され、動画を思うように視聴してもらえないなどの弱点がありました。しかしながら、インタラクティブ動画では、企業と視聴者が双方向でコミュニケーションを取ることが可能となりました。視聴者が動画の中で興味のある箇所をタップすることで、さらに情報を掘り下げて理解することができ、視聴者が個人の興味関心に合わせて、ストーリーを自ら選択していくことができます。また、シナリオがリアルタイムで変化する仕掛けとなっており、動画の中でアンケートの回収や、気になった商品やサービスの購入及び問い合わせまでのプロセスを一気通貫で完了させることが可能です。このような双方向コミュニケーション型動画によって、ユーザーに新しい顧客体験をもたらします。さらに、従来不透明であった「動画の効果を可視化」することが可能となっており、動画の中で視聴者が「どこに興味を持ったのか」などの興味関心のデータを詳細に取ることができるようになりました。


③DXコンサルティング

 動画を起点としたマーケティングDXコンサルティングを行っております。SMBの多くの企業では、マーケティング領域における動画の活用に関してのノウハウはもちろん、DX推進においても「何から始めていいのかわからない」「データを活用できずに放置されている」などの課題を持たれているものと認識しております。そのため、データの活用コンサルティングを中心に、サイト制作、デジタルマーケティング、採用支援におけるDX推進のためのコンサルティングサービスを展開しております。また、SMBの領域では事業規模が限られているという性質上、一つの課題を解決していく過程において、周辺領域の課題解決需要まで発展するケースもあります。そのため、カスタマーサクセス部門を構え、顧客と継続的な関係性を構築することで顧客のDXを推進することに努めております。


(2)店舗クラウド事業

①予約サービスの構築・運用

 店舗と利用ユーザーの間をつなぎ、ユーザーが会員登録をしなくても、24時間予約可能な予約・顧客管理システム「TSUNAGU」及び「いつあき」の提供を行っております。「TSUNAGU」は来店したユーザー情報の管理台帳機能やメルマガ配信機能により、再来店を促進しながら24時間いつでも、簡単に、予約管理及び顧客管理が可能なシステムとなっております。「いつあき」はさらに機能を簡素化し、シンプルに予約まで完結できる操作性により、スピードと便利さを強みとすることで、主に小規模事業者のDXを支援しているサービスとなっております。予約システムについては、直接的な市場環境のデータは少ないものの、国内における個人のインターネットの利用率は82.9%となっており、インターネットの利活用が広がりを見せる中、店舗のオンライン予約についても一定数のニーズが存在するものと認識しております。小規模事業者におけるITを導入する際の課題として、「導入の効果がわからない・評価できない」「コストが負担できない」に続き、「従業員がITを使いこなせない」が33.7%、「ITの旗振り役がいない」が26.0%となっており、ITリテラシーの不足やIT人材の不足により、予約・顧客管理システムについては、機能面が豊富なサービスよりも最低限の操作性や機能面の方が導入しやすいと考える事業者は一定数存在するものと考えております。また、小規模事業者に向け、直近3年間の売上高の傾向を間接業務のIT導入度別で行った調査結果において、売上高の傾向が増加傾向だと判断している割合は、IT未導入の場合24.9%であるのに対して、IT導入を積極的に行っている場合39.6%であることから14.7%の差があるという結果も出ております。当サービスを導入いただくことで店舗のDXを推進することが可能になると考えております。


②販売代理事業

 株式会社EPARKリラク&エステが展開するリラクゼーション・エステ・整体院に特化したオンラインプラットフォーム「EPARKリラク&エステ」と連携した「PeakManager(予約管理システム)」の販売代理業を行っております。EPARKリラク&エステでは、オンラインプラットフォームを通じて店舗クライアントの集客及び経営・業務効率の改善を支援しており、PeakManagerでは、予約管理機能・売上管理・分析機能・顧客管理機能・メール配信機能等、充実した機能をご提供しております。


(事業の優位性)

①データを活用し、安定して案件を獲得できる販売体制

 主に中小企業がメインのターゲットであり、案件の獲得を代理店やパートナーに依存することなく、見込み顧客へアプローチ、その後リードナーチャリングを行い、案件化に至るまで、自社のみで行える直販体制を構築し、安定的に案件を獲得することが可能となっていると考えております。まず、マーケティング専門チームが、RPAを活用して効率的に見込み顧客を抽出・リスト化しております。そして、国内6拠点(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡)において、160名以上のノウハウを持ったコンサルタントが在籍し、付加価値の高いコンサルティング提案を行うことで、潜在的なニーズの顧客層から案件を獲得できる直販体制を有しております。また、失注した案件についても、企業ごとにスコアリングを行い、スコアに合わせたリードナーチャリングを行うことによって、再度アプローチを図るための仕組みを構築しております。このように、当社は見込み顧客のセグメントに応じたマーケティングを行うことで、リスクを分散するとともに、規模・業種・業態を問わず幅広い企業にアプローチすることが可能です。

 また、当社では豊富な取引実績から得られた顧客の経営課題やクリエイティブのデータベースを蓄積・分析しております。この取り組みにより、ナレッジを共有でき付加価値の高い提案の再現性を持たせることや、属人化しにくい早期教育体制を構築にもつながっており、今後セールスコンサルタント人員が増加していったとしても、継続的に案件獲得ができる体制を構築しております。

 

②一気通貫したサービス提供による高収益体制

 機能別の分業体制を構築することで、営業活動から制作、その後のDXを推進するサポートまで、一気通貫したサービス提供を行っております。コンサルタントは顧客の課題に合わせたソリューション提案に専念し、クリエイティブ部門では、ディレクションや制作などそれぞれの専門分野の知識やノウハウを深化させることに専念できるようにしております。また、カスタマーサクセス部門では、Videoクラウドに蓄積された視聴データだけでなく、顧客のWebサイトなどのマーケティングデータをもとに課題の共有と改善を繰り返し続けることで、顧客のDXを推進することに専念しております。さらに、顧客のニーズや課題は独自のデータベース上でリアルタイムに共有できるようになっており、社内の部門間でも仮説検証のサイクルを回しながらナレッジ共有を行うことで、高品質なサービス提供とコンサルタントによる付加価値の高い提案を実現させることが可能と考えております。加えてクリエイティブ部門においては、独自のデータベース内にディレクションから制作まで、豊富な実績によるノウハウが蓄積されており、高品質化と内製化を推進することで、収益性の向上に努めております。 


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/06 単独会社予想 2,979 735 732 502

2022/06 単独実績 2,595 591 601 420

2021/06 単独実績 2,199 373 382 256

2020/06 単独実績 1,937 204 209 129


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/06 単独会社予想 113.52 - 0.00


上場時発行済株数 4,490,000株(別に潜在株式266,800株)

公開株数 1,173,000株(公募250,000株、売り出し770,000株、オーバーアロットメント153,000株)

調達資金使途 採用費・教育費、広告宣伝費、研究開発費


PER:15.9

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:21.1億

公募時時価:81億

​   

【株主構成】 

三輪幸将 代表取締役社長 2,280,000 50.59% 90日

武吉広大 旧会社の元代表取締役社長 800,000 17.75% 90日

(株)EPARK 資本業務提携先 760,000 16.86% 90日

白木政宏 取締役 200,000 4.44% 90日

ファインズ従業員持株会 特別利害関係者など 115,700 2.57% 180日

中台昭二 従業員 47,000 1.04% 90日

赤池直樹 取締役執行役員 39,700 0.88% 90日

塩田広大 執行役員 39,000 0.87% 90日

佐藤翔太 執行役員 25,000 0.55% 90日

森田創 執行役員 23,800 0.53% 90日


本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人である武吉広大及び株式会社EPARK、貸株人である三輪幸将、当社株主である白木政宏、中䑓昭二、赤池直樹、塩田広大及び佐藤翔太は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2022年12月26日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと及びグリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等を除く。)を行わない旨合意しております。

 また、当社の株主であるファインズ従業員持株会は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2023年3月26日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等を行わない旨合意しております。

【代表者】

代表者名 三輪 幸将(上場時38歳2カ月)/1984年生

本店所在地 東京都渋谷区渋谷

設立年 2019年

従業員数 263人 (2022/07/31現在)(平均28.1歳、年収489.5万円)

事業内容 動画制作サービス、動画配信プラットフォームサービス(Videoクラウド)、DX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルティング

URL https://e-tenki.co.jp/

株主数 17人 (目論見書より)

資本金 13,879,000円 (2022/08/24現在)

代表者生年月日 1984年07月14日生まれ

代表者略歴

2008年06月 株式会社フリーセル (現 ブランディングテクノロジー株式会社)入社

2011年04月 株式会社ファインズ(旧 株式会社ファインズ)入社

2015年06月 株式会社ファインズ (旧 株式会社ファインズ)常務取締役就任

2018年02月 アドメイク株式会社代表取締役社長就任

2018年06月 株式会社ファインズ (旧 株式会社ファインズ)代表取締役社長就任

2019年03月 株式会社エスピーシー(現 当社) 代表取締役社長就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 野村 - -

引受証券 みずほ - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 東洋 - -

引受証券 岡三 - -

引受証券 松井 - -

引受証券 マネックス - -


【参考類似企業】今期予想PER

2329 東北新社 10.6倍 (連結予想)

2402 アマナ - (連結予想)

3791 IGポート 20.8倍 (連結予想)

4308 Jストリーム 12.8倍 (連結予想)

4317 レイ 6.8倍 (連結予想)

4712 KeyH 12.5倍 (連結予想)

6737 EIZO 13.2倍 (連結予想)

6879 IMAGICAG19.2倍 (連結予想)


【私見】

 業種としては動画事業などのサービスで取引数も多く業種としての面白さはあります。業績の伸びも良く、PERからも割高感はないのですが、成長性からは市場規模などを考えると何倍になる銘柄ではないかと思います。VCなしで需給は問題ないのですが、吸収金額はやや大きめで、初値高騰とまではいかないでしょう。


想定価額:1610円

仮条件上限:1800円

初値予想:2600円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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