2022年9月30日金曜日

IPO分析(ソシオネクスト)

 【事業内容】

​ ロジック半導体市場の中で、「ソリューションSoC」という新しくかつ独自のビジネスモデルのもとで顧客にカスタムSoCを開発・提供しているファブレスの半導体ベンダーです。SoCは、System on chipの略語で、装置やシステムの動作に必要な機能を1つのチップ(半導体)に実装したものです。当社グループは、このSoCのうち、特定の顧客固有に設計されるカスタムSoCを中心に事業を行っています。新しいサービス・製品の差別化のために独自の先端SoCを開発しようとする顧客のパートナーとして、また、IP、EDAツール、ソフトウエアからプロセス、アセンブリ、テストに至るまでの最新の技術を提供するサプライヤーと協働して、顧客更にはその先にいる世界中の人々に新しい価値を提供し、豊かな社会を実現することを目指しています。

 従来、顧客から受領したSoCの仕様に基づき物理設計のみを担う従来型のASICや、分野・アプリケーションを限定して機能・目的を特化させた汎用的なASSPを中心に事業を展開しておりましたが、2019年3月期以降、従来型のASIC及びASSPに加え、自社製品における差別化を求める顧客に対して、顧客とともに仕様の策定や論理設計を行い、先端テクノロジを組み合わせて顧客にとって最適なSoCを提供するビジネスモデルへのシフトを進め、この「ソリューションSoC」を中心に事業を展開しております。

 カスタムSoCには主として3つのビジネスモデルが存在します。まず従来型ASICでは、アーキテクチャ設計、企画・仕様設計及び論理設計等SoC設計における上流設計を顧客自身が行い、それ以降の工程を外部のカスタムSoCベンダーが担当します。そのため、従来型ASICは上流設計を自ら行う能力を有する顧客に利用が限定されます。他方、当社グループのソリューションSoCでは、当社グループが顧客とともにこれらの上流設計を行うため、上流設計を行う能力を保有していない顧客にも製品を提供することができます。また、ASSPをベースにカスタマイズされたASICを提供するモデルでは、ベンダー自身のASSPをベースとしてカスタマイズするため、カスタマイズの幅が限定されるとともに、顧客からはベンダーロックインへの警戒感が生じることとなります。これに対し、ソリューションSoCでは、外部ベンダーが提供する最先端の技術も活用し、顧客に最適なSoCを提供しつつ、ベンダーロックインを回避することができます。

 近年、半導体製造技術の進展やこれを使った5Gネットワーク、クラウド、AI等様々な革新的技術の普及と融合により、自動運転、AR/VR等今までにない新たなサービスや製品が次々と出現しています。それらのサービス/製品を開発する企業は、自社のサービス/製品の差別化のために先端テクノロジを活用した高性能かつ拡張性の高い独自のSoCを必要としています。

 一方で、半導体産業においては、プロセス技術、パッケージ技術、テスト技術のほか、IP、EDAツール、ソフトウエアまでも含めてそれぞれを専業にする企業が出現し、常に最先端のイノベーティブな技術が生み出され、誰もがその最先端の技術を市場から入手することが可能なエコシステムへと進化を遂げています。その一方で、それらの様々な技術を選択し、組み合わせて顧客にとって最適なSoCを設計開発する難易度は上昇しています。

 そのため、独自のSoCを必要とする多くの企業は、SoCのアーキテクチャに対する知識はもとより、SoCが搭載される最終製品やサービスに関する理解が深く、差別化のために、先端のハードウエアからソフトウエアに至るまでの技術を組み合わせて最適なソリューションを提案できるパートナーを求めています。

 こうした市場の変化の中、当社グループは、ソフトウエアまでも含めた設計開発能力を有し、適切な選択で顧客と共同して技術的課題を解決できるエンジニアリソース群を抱えていることに加えて、量産・品質保証・SCMまでトータルにサポートできる総合力を有しているといった強みを持っております。これにより、従来型のASIC、ASSP及びASSPをベースにカスタマイズされたASICでは満足できない顧客に対して、顧客とともにSoCの仕様を決めていく共同開発プロセスを通じて、顧客にとってより最適なカスタムSoCを提供することができるビジネスモデルとして「ソリューションSoC」を確立しました。また、こうした新たな最先端の市場で経験を積み重ね、ノウハウを蓄積すると同時に、競争力をさらに強化するため、差別化のための先端技術や種々の技術の組み合わせとその実証にも積極的に投資するとともに、事業部ごとの壁を取り除き、開発機能ごとに集約し、その中から各プロジェクトに必要なリソースを割り当てていくフラットな研究開発体制へと移行しました。これらの結果、7nm以下の先端プロセスノード(半導体の製造技術(半導体プロセス)の世代を表す指標。1nmは100万分の1mmであり、nm数が小さくなるほど先端のテクノロジを表す。)を活用する案件がNRE売上に占める割合は、2018年3月期の1%から2022年3月期には43%へと拡大しました。

 また、ビジネスモデルのシフトに加え、注力する事業領域に関しても、それまでのテレビ等のコンシューマ向け中心の分野から、「オートモーティブ」「ネットワーク/データセンター」「スマートデバイス」といった先端成長分野へと大幅な転換を果たしました。その結果、これらの先端分野がNRE売上に占める割合は、2018年3月期の50%から2022年3月期には86%へと拡大しました。

 現在、当社グループは、「オートモーティブ」におけるAD(自動運転)/ADAS(先進運転支援システム)や車載センシング、「ネットワーク/データセンター」における5G携帯基地局やAIアクセラレータ、「スマートデバイス」におけるAR/VR等の先端成長分野で商談を獲得し、開発実績を積み上げ、一部の製品においては既に量産化を開始しています。また、当社グループは、これらの3分野に加え、現在安定的な収益を計上しているFA、テスター等の「インダストリアル」分野や、特異な技術で今後の成長が期待できる電波式測距センサー等の「IoT&レーダーセンシング」分野でも事業を展開しています。

 半導体製品が顧客に採用され量産に至るまでには一般的に長期間掛かります。特にソリューションSoCについては、その複雑さやカスタム製品であるがゆえに、商談獲得後の設計開発及び顧客の評価完了までに通常2年以上の期間が掛かり、製品を量産化し、更には量産を終了するまでには相当の期間を要するビジネスであります。このため、顧客の基幹部品を長期間にわたって開発、供給する責任を有する企業として、強固な財務基盤(2022年3月期末における自己資本比率75.7%、現預金462億円)のもと事業を行っております。

 設計開発段階において、顧客から設計開発に要する費用の大半をNRE売上として段階的に受領し、量産段階において、当社グループの売上全体の大半を占める製品売上を受領しております。また、当社グループは、水平分業が進む半導体業界のメリットを最大限活かすべく、工場を持たないファブレスの事業形態を採っております。製品の製造についてはTSMCを始めとするファウンドリやOSAT等の専業メーカに委託しております。

 顧客の最先端の製品やサービスには、常に新たなSoCが求められ、そのような先端SoCを求める顧客や市場も変化し続けます。当社グループもこの変化をいち早く捉えるべく、先行開発投資や開発力の強化を進め、今後も常に持続的な成長を目指します。

 


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/03 連結1Q実績 39,934 5,594 6,644 5,058

2023/03 連結会社予想 170,000 17,000 17,000 13,000

2022/03 連結実績 117,009 8,463 9,050 7,480

2021/03 連結実績 99,746 1,552 1,969 1,460


2023/03 連結会社予想 386.14 3,065.16 160.00


上場時発行済株数 33,666,666株(別に潜在株式2,625,350株)

公開株数 13,588,600株(売り出し11,816,200株、オーバーアロットメント1,772,400株)

調達資金使途 -


PER:9.5

PBR:1.2

配当利回り:4.4%

公募時吸い上げ資金:496億

公募時時価:1228億

​   

【株主構成】 

富士通(株) その他の関係会社 14,400,000 39.68% 180日

(株)日本政策投資銀行 特別利害関係者など 13,466,666 37.10% 180日

パナソニックホールディングス(株) その他の関係会社 5,800,000 15.99% 180日

肥塚雅博 代表取締役会長兼社長兼CEO 21,725 0.06%

西口泰夫 前代表取締役会長、元顧問 21,600 0.06%

岡本吉史 前代表取締役社長、顧問 15,025 0.04%

井上あまね 元代表取締役社長 14,400 0.04%

大槻浩一 取締役執行役員副社長 12,875 0.04%

佐久間剛 取締役 12,325 0.03%

野崎勉 元取締役、元監査役 10,800 0.03%


グローバル・オファリングに関連して、売出人かつ貸株人である株式会社日本政策投資銀行、富士通株式会社及びパナソニックホールディングス株式会社は、元引受契約締結日から上場日(当日を含む。)後180日目(2023年4月9日)までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、ジョイント・グローバル・コーディネーターの事前の書面による同意なしには、当社普通株式等の譲渡又は処分等(但し、引受人の買取引受による国内売出し、海外売出し、オーバーアロットメントによる国内売出し及びオーバーアロットメントによる海外売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと並びに国内グリーンシューオプション及び海外グリーンシューオプションが行使されたことに基づいて当社普通株式を売却すること等を除く。)を行わない旨を約束する書面をジョイント・グローバル・コーディネーターに対して差し入れる予定であります。


 【代表者】

代表者名 肥塚 雅博(上場時70歳9カ月)/1951年生

本店所在地 神奈川県横浜市港北区新横浜

設立年 2014年

従業員数 3人 (2022/07/31現在)(平均49.2歳、年収799万円)、連結2549人

事業内容 ファブレス形態によるSoC(System on Chip)の設計・開発および販売

URL https://www.socionext.com/jp/

株主数 2177人 (目論見書より)

資本金 30,200,000,000円 (2022/09/06現在)

代表者生年月日 1951年12月14日生まれ

代表者略歴

年月 概要

1974年04月 通商産業省(現 経済産業省) 入省

2008年09月 三井住友海上火災保険株式会社 顧問

2009年08月 富士通株式会社 顧問

2013年05月 同社 取締役執行役員副会長/CSO

2014年09月 当社(準備会社) 代表取締役

2016年04月 株式会社富士通総研 代表取締役会長

2018年04月 当社 代表取締役会長兼CEO

2022年03月 当社 代表取締役会長兼社長兼CEO(現任)



【幹事団】

主幹事証券 SMBC日興 - -

主幹事証券 野村 - -

引受証券 大和 - -

引受証券 みずほ - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 マネックス - -


【参考類似企業】今期予想PER(9/12)

00001 米アップル 24.0倍 (連結予想)

00002 米ブロードコム 12.7倍 (連結予想)

00003 米マーベル 18.4倍 (連結予想)

3652 DMP 214.2倍 (連結予想)

6702 富士通 11.7倍 (連結予想)

6730 アクセル 20.7倍 (連結予想)

6752 パナソニックH 10.3倍 (連結予想)

6769 ザイン 16.7倍 (連結予想)

6875 メガチップス 10.7倍 (連結予想)


【私見】

 業種は、ファブレス半導体ベンダーで、業種としては悪くないのですが、出口案件ではあるので人気薄ではあるかと思います。ですが、VC売出し案件ではなく、パナソニック・富士通連合なので安心感はあります。業績評価では、米のブロードコムと米マーベルが比較対象で、PERからは割安感を感じます。配当利回りも4.4%と高水準で下値不安はないと思います。海外売出しが30%と少なめなのが気になりましたが、海外配分も5%増え、最近の傾向である売出し株数が増え、仮条件も想定価額を上回ったことはプラス材料で、4000円以上の評価はしても良いと思っています。初値人気は低い場合はセカンダリー参戦も視野に入れてます。


想定価額:3480円

仮条件上限:3650円

初値予想:3900円

ブック申し込み度・・・中立~やや強気

セカンダリー期待度・・・中立~やや強気

総合評価:3.5

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