2022年9月21日水曜日

IPO分析(FIXER)

 【事業内容】

​ クラウドネイティブなエンタープライズシステム構築に強みを持つ、Microsoft Azureに特化したクラウドインテグレータです。エンタープライズシステムの最大の特徴はデータの永続性が求められることにあり、具体的には信頼性・可用性・保守性・保全性・機密性といった要件の充足が求められます。クラウドインテグレータとはクラウドに特化して情報システムの設計・構築・運用等の全工程を一貫して請け負う事業を意味します

 また、クラウドインテグレーションを起点に、マネージドサービスやSaaSのサービス展開も進めており、クラウドインテグレータにとらわれない、さらなる事業展開を企図しております。


<これまでの実績>

 パブリッククラウドのMicrosoft Azureが日本で本格的にサービスを開始する以前の2008年に設立し、2010年に同サービスが日本で正式に開始すると同時に、エンタープライズシステムのクラウド化の事例を複数手掛けてきました。

 主要なパブリッククラウドのうち、当社は主としてMicrosoft Azureを取り扱っております。日本国内で正式にリリースされる以前から同サービスの技術検証に着手し、正式リリースから今日に至るまで導入実績を積み重ねてきました。

 Microsoft 米国本社からもその実績を高く評価いただき、2015年にはMicrosoft Azureの販社資格である Cloud Solution Provider (CSP) Program の設立時に、国内第1号として認定を受けました(制度設立の2015年7月で、世界で26社のうちの1社)。また、2017年にはその一年に各国で最も成果を残したパートナーに贈られるアワード Country Partner of the Year を受賞しました。そして、2021年にはクラウドネイティブな開発手法によって最も高い価値をもたらしたパートナーとして、世界100カ国・4,400社のパートナーの中から、Microsoft Partner of the Year Awardを Cloud Native App Development カテゴリーで受賞いたしました。日本企業としては初の同賞受賞となります。

 また、当社にはMicrosoft Azure認定資格の取得者数が147名在籍しております。これらのMicrosoft Azureに関する知識及びノウハウを持ち合わせた人材が、各開発案件の中で協働することにより、継続的な競争優位性の確保につながっている認識であります。


<事業間の関係性>

 当社は①プロジェクト型サービス(新規システム開発や既存システムのクラウド移行)によってクラウドネイティブなシステムを構築し、クラウドサービスのライセンスの②リセール、③マネージドサービス(保守・運用)を提供いたします。さらに、④SaaSでの事業も展開しております。


① プロジェクト型サービス

 顧客の要件・要望に基づくシステムを新たに開発したり、既存のシステムをクラウドに移行したりするサービスを行っております。

 ウォーターフォールに代表される旧態依然としたソフトウエア開発プロセスでは、設計者が顧客に相談する形で、ソフトウエアの仕様が調整されていました。この相談の中で顧客の要求により定義された技術仕様は、開発フェーズで開発者が矛盾に気づいたとしても、さかのぼって訂正・修正することは許されませんでした。この前工程にさかのぼって仕様を見直せない開発手法が、開発者から見て合理性のない設計と技術仕様を生み、その矛盾を成立させるための不必要な調整は余分なコストと開発遅延の原因となっていました。

 また、開発の上流工程で要件定義を担当する会社と開発の下流工程を担当する会社が別な法人である場合、両社の間に主従関係が生まれ、下流工程の開発者が上流工程で作成されたドキュメントの矛盾に対する指摘を行えないまま開発が進み、ビジネス的には価値の低いソフトウエアが作られてきました。

 ウォーターフォール型で開発を進めていた時代の、オンプレミスのシステム基盤は高額で、導入期間も数ヶ月以上の時間を要したため、インフラ機器選定の失敗による損失を回避するため、前工程の要件定義に多大な時間とコストがかけられていました。

 これに対してクラウドのシステム基盤は、必要なリソースを従量制で調達でき、不要になったインフラは利用を停止することで即座に廃棄することができます。このクラウドによるシステム基盤調達の柔軟性により、プロジェクト初期段階から実際にシステムが稼働する本番環境に近いインフラ上で、高速に開発を繰り返しながらシステム利用者のユーザーニーズを満たす「アジャイル開発」を実現することができるようになりました。

 当社のプロジェクト型サービスでは「新規システム開発」「クラウド移行(マイグレーション)」の案件にかかわらず、プロジェクト初期段階から柔軟なシステム基盤の調達と構築を実現しております。この柔軟性のあるシステム基盤を前提に、設計・開発から運用までを一気通貫で提供するクラウドネイティブな開発手法により、期間やコストの増大リスクを低減しております。


 クラウドネイティブな開発手法を前提に、顧客との直接契約による「プライム案件」の獲得に注力しております。プロジェクト型サービスには、以下のような事例があります。

・株式会社北國銀行「北國クラウドバンキング」をMicrosoft Azure上で新規構築し、正式稼働後は当社のマネージドサービスで運用を継続しております。


・厚生労働省「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)」の新規システム開発においては、クラウドネイティブな手法の採用により、着手から約3週間で初回納品を実現できました。また、全国の利用者のためのヘルプデスクを開設し、運用サポートを実施しております。


・国立がん研究センター「全国がん登録」のクラウド移行においては、Microsoft Cloud Adoption Framework for Azure(CAF) に基づく戦略の立案により、クラウド移行を実施しました。


② リセール

 パブリッククラウドベンダー(主にMicrosoft・一部AWS)や、各種ソフトウエアサービスを提供しているベンダーから、クラウドやソフトウエアライセンスを仕入れ、顧客に販売しております。

 当社が主要なリセール商材として扱っているMicrosoft Azureに関しては、Microsoftとの契約に基づいて定められた価格にて仕入及び販売を行っております。特に当社が保守・運用を継続している厚生労働省向けのエンタープライズシステムにおいては、付随するライセンスを全国の行政機関等に提供しており、その契約数は2022年7月31日時点で8万ライセンスを超えております。

 なお、リセールは単純な仕入れ・販売を行うだけでは、MicrosoftやAmazonによって日々バージョンアップされるサービスを顧客が取り込めない機会損失の原因になりかねないため、最新の技術情報とともに顧客サポートの品質を高め、付加価値の向上に努めてまいります。


③ マネージドサービス

 一般的な保守・運用サービスに加え、クラウド環境で発生する課題解決まで対応するマネージドサービスをcloud.configのブランドで展開しております。現在は、Microsoft Azureを中心とするパブリッククラウドサービスの設計・構築、24時間365日の運用(監視・障害一次対応)サービスを提供しております。

顧客企業はMicrosoft Cloud Adoption Framework for Azureに基づく、Azure Expert MSP監査をクリアした当社マネージドサービスを利用することでクラウド基盤における典型的な失敗を回避し、車輪の再発明(パブリッククラウドのサービスやOSSとして既に提供されているものや既に構築済みのシステムを、もう一度構築してしまうこと)による無駄なコストを抑止することができます。

 顧客の業種・業態ごとに求められる運用要件を都度サービスとして取り入れ、進化してまいりました。サービス開始当初はWebサイト基盤からサービスを開始しましたが、コマーシャル動画配信やソーシャルゲームに求められる大量トランザクションを処理する可用性・拡張性、金融機関や行政機関に求められるセキュリティといった運用要件を強化してまいりました。

 このようにクラウドの特性にあわせて進化した当社のマネージドサービスをご利用いただくことで、顧客企業はパブリッククラウドをより効果的・効率的に活用できます。

 なお、マネージドサービスはエンタープライズシステムの保守・運用を行う「ストック型」の契約モデルのビジネスであるため、システムのライフサイクルの間、売上を維持・継続することが期待できます。当社の専門性を活かしたサポートにご満足をいただき、他システムにもご採用いただくことにより、顧客内売上が拡大していきます。

 

 ④ SaaS

 プロジェクト型サービスで開発したシステムや、マネージドサービスの保守・運用で把握した顧客ニーズの高い機能をプラットフォーム化し、SaaS型のサービスとして提供しております。

 現在は、電話やSMSを発信する自動架電サービス、メタバース基盤をSaaS型で提供しております。

 自動架電サービスは、マネージドサービスで使用していた障害検知時の電話・SMS通知を汎用化したもので、厚生労働省のHER-SYSにおける新型コロナウイルス感染者の健康観察でも採用されました。

 メタバース基盤は、バーチャル空間上でイベントを実施する際に必要な機能をSaaS型で提供しております。メタバース基盤はイベントに必要な個別の空間を初期構築する「フロー型」と、一度構築した空間をさまざまなイベント等で継続的に利用する「ストック型」ビジネスの両方の性格を有しております。

  


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/08 単独会社予想 7,718 1,415 1,414 932

2022/08 単独会社予想 10,602 2,190 2,187 1,367

2021/08 単独実績 3,606 317 314 196

2020/08 単独実績 2,960 337 328 142


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/08 単独会社予想 65.62 - 0.00


上場時発行済株数 14,263,200株(別に潜在株式1,336,200株)

公開株数 2,300,000株(公募600,000株、売り出し1,400,000株、オーバーアロットメント300,000株)

調達資金使途 開発費用、マーケティング費用、人員体制強化費用


PER:20.6

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:30.8億

公募時時価:191億

​   

【株主構成】 以下90日

松岡清一 代表取締役社長 9,970,200 66.47%

北村健 特別利害関係者など 1,800,000 12.00%

平田実 新株予約権信託の受託者 945,000 6.30%

(株)mam 代表取締役社長が全株所有 663,300 4.42%

(株)SMBC信託(金外信 未来創生2号F ベンチャーキャピタル(ファンド) 555,300 3.70%

FIXER従業員持株会 特別利害関係者など 372,300 2.48%

Wing2号成長支援投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 166,500 1.11%

(株)北国銀行 取引先 111,000 0.74%

磐前豪 取締役 28,200 0.19%

野村隆志 取締役 24,000 0.16%

中尾公一 執行役員 24,000 0.16%


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、貸株人及び売出人である松岡清一、売出人である北村健並びに当社株主である株式会社mam、株式会社SMBC信託銀行(特定運用金外信託 未来創生2号ファンド)、Wing2号成長支援投資事業有限責任組合、株式会社北國銀行及び磐前豪は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2023年1月3日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)を行わない旨合意しております。

 また、当社株主であるFIXER従業員持株会は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2023年4月3日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等は行わない旨合意しております。

 加えて、当社新株予約権者である平田実、野村隆志、中尾公一、丸山儀明、千賀大司、小林勲、名古屋聡介、岡安英俊及びその他61名は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2023年1月3日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等を行わない旨合意しております。​


【代表者】

代表者名 松岡 清一(上場時52歳11カ月)/1969年生

本店所在地 東京都港区芝浦

設立年 2008年

従業員数 195人 (2022/07/31現在)(平均28.3歳、年収523.7万円)

事業内容 クラウド環境で動作するシステム開発、クラウド環境の設計や運用・保守、監視サービスなど

URL https://www.fixer.co.jp/

株主数 8人 (目論見書より)

資本金 650,546,000円 (2022/09/01現在)

社員数 195人(2022年07月31日現在)

代表者生年月日 1969年10月12日生まれ

代表者略歴

1994年04月 野村システムズ関西株式会社(現NRIネットコム株式会社)入社

2009年11月 当社 代表取締役社長(現)

2013年10月 一般社団法人Azure Council Experts代表理事(現)



【幹事団】

主幹事証券 野村 - -

引受証券 みずほ - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 松井 - -


【参考類似企業】今期予想PER(9/6)

3844 コムチュア 23.7倍 (連結予想)

3915 テラスカイ - (連結予想)

4178 Sイノベション 23.5倍 (連結予想)

4270 BeeX 20.8倍 (単独予想)

4396 システムサポ 14.7倍 (連結予想)

5036 日ビジシス 20.5倍 (単独予想)


【私見】 

 厚生労働省の新型コロナウイルス感染者情報管理・共有システム「HER-SYS(ハーシス)」の関連業務を行っていることから注目度高い銘柄です。業績の伸びは物凄く、来期予測は減少することを考慮した予測でしたが、COCO廃止により更に厳しくなったかとは思います。しかし、実績は上げたことから、上場を機に更なる成長を見込めば、長期的にはもう一回り大きなサイズになっても良いかと思います。また、需給はVCにはロックがかっており、売り要素も少ないことは評価できます。当初はセカンダリーの可能性もあると思いましたが、COCO廃止により評価は下がり、評価が難しい銘柄です。


想定価額:1280円

仮条件上限:1340円

初値予想:1900円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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