2024年3月5日火曜日

IPO分析(トライアルホールディングス)

 【事業内容】

(1)流通小売事業

①多様な店舗フォーマットとワンストップショッピングを可能にする豊富な商品ラインナップ

 中核事業会社である㈱トライアルカンパニーを中心に、『あなたの「生活必需店」。』をストアコンセプトとした『TRIAL』ブランドのディスカウントストアを全国に展開しております。店舗フォーマットはメガセンター、スーパーセンター(SuC)、smart及び小型店の4種のフォーマットで、主力フォーマットであるスーパーセンターを中心に、商圏人口や立地、店舗面積等を考慮して様々なエリアに出店し、エリアのドミナント展開と収益の最大化を進めております。


・メガセンター 約8,000㎡ 地方都市 

 食品から趣味嗜好品までフルラインで商品を取り揃える大型店

生鮮食料品、一般食料品、日用雑貨、家電品、衣料品、園芸・DIY用品、ペット用品、スポーツ用品、インテリアなど約10万点

24店舗

・スーパーセンター(SuC)約4,000㎡郊外

 生鮮食品や加工食品をはじめとする食品及び日用消耗品などの生活必需品を商品構成の中心としながら、家電製品や衣料品などの非食品を取り揃える中型店

生鮮食料品、一般食料品、日用雑貨、家電品、衣料品、園芸・DIY用品、ペット用品、スポーツ用品、インテリアなど約6~7万点

183店舗

・smart 約1,400㎡ 都市部・小商圏

 加工食品や弁当、惣菜を含む生鮮食品など、食品を中心とする商品構成で、メガセンター、SuCが出店困難な都市部・小商圏エリアへの出店が可能なフォーマット

一般食料品、日用雑貨、家電品、衣料品など約3万点

68店舗

・小型店 ~約1,000㎡ 都市部・小商圏

 食品を中心とする商品構成で、SuCからの高頻度配送により新鮮な生鮮食品、惣菜を提供。自動値下げソリューションや顔認証決済などのテクノロジーを活用した高い生産性を実現する次世代型スマートストア「TRIAL GO」等の小型店

一般食料品を中心として、日用雑貨など約7千~2万点

36店舗


 また、商品ラインナップは、生鮮食品などの「食」を強みとして、日用消耗品などの生活必需品から家電製品、アパレル用品からホビー用品などの非食品まで、豊富な品揃えを有しており、24時間営業(一部店舗を除く。)で、何でも・いつでも・欲しいものがお得に買えるワンストップショッピングストアとして、利便性や価格優位性を特徴としております。

 また、当社グループ内に弁当・惣菜製造や生鮮食品の加工を行うプロセスセンターやセントラルキッチン、飲料製造工場を有しており、商品製造のノウハウを増強しております。ナショナルブランド商品を調達して販売するスタイルが主流である一方、プライベートブランド(PB)商品も展開しております。PB商品においては、ナチュラルミネラルウォーターやお茶などの飲料や菓子類及びフリースなどのアパレルが人気商品であり、いずれも高品質で低価格であることが、人気の理由であると考えております。


②ローコストオペレーションを確立したユニークな店舗運営

 1992年にトライアル1号店となる南ヶ丘店(福岡県大野城市)を開店して以来、当社は約30年におよぶディスカウントストアの運営ノウハウを蓄積しており、当社グループにてアライアンス先との物流網の共有化を通じた自社物流による最適化等、効率的な仕入れの確立と徹底したコスト管理、後述するリテールテックを活用した省力化によって、ローコストオペレーションを実現しております。

 また、当社はグループ内に店舗の設計や建築を担う子会社を有しており、新規出店時における新築コストを抑えることができるほか、居抜きによる出店も活用しており、新規出店時による一時的なコスト増加についても低位に抑える戦略が確立されております。

 EDLP(Every Day Low Price)を価格戦略における基本方針としております。EDLPが実現できる背景はEDLC(Every Day Low Cost)、すなわちローコストオペレーションであります。生鮮食品などの生活必需品を中心に、競争力のある価格提案を行い、欲しいものがいつでも安い、地域一番の生活必需店として、お客様に寄り添った店舗運営を確立しております。


③リテールテックを活用した独自のビジネスモデル

 流通小売業をはじめ、あらゆる産業・分野においてデジタルトランスフォーメーション(DX)が浸透しており、様々な企業がIoT/AIなどのデジタル技術を活用することで新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通じた価値の創出に取組んでおりますが、当社は、「テクノロジーと、人の経験知で、世界のリアルコマースを変える。」をビジョンとして、常に革新的な技術開発に取組んできた企業であり、現在も流通小売業(リテール)のデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する『リテールDX』を牽引する先駆者として、業界の改革に取組んでおります。

 1996年のスーパーセンター1号店であるスーパーセンタートライアル 北九州空港バイパス店(北九州市小倉南区)の開店以降、自社開発のPC-POSシステムによって顧客データの蓄積と活用をはじめており、現在は各メーカー企業とお客様の購買情報がスムーズに連携できるデータベースエンジンの運用や商品の自動発注等を可能にする独自のPACERを活用した効率的な店舗オペレーションを実現しております。

 また、当社のシステム開発等を所管する㈱Retail AIを中心に、お客様の更なる買い物体験の向上と店舗運営の省力化を企図とした取組みを加速しております。

 2015年には精算手続きを省力化するスマートショッピングカート(現:Skip Cart)の導入を開始したほか、お客様の動線や商品の在庫を記録するAIカメラや商品の販促等に活用するインストアサイネージを導入するなど、リテールテックを活用した独自性のあるビジネスモデルを構築できているものと考えております。特に、Skip Cartの利用によってお客様のレジ待ち時間が大幅に改善され、お客様の利便性向上につながっております。


<既存店売上高(前期比)>

既存店売上高 2023年6月期 前期比 106.2


<既存店売上高(前年同月比)>

既存店売上高

2023年7月 106.1

2023年8月 106.8

2023年9月 102.6

2023年10月 103.9

2023年11月 105.2

2023年12月 104.3


 さらに当社グループでは、当社グループのみならず流通業界全体が活性化するような仕組みを『リテールDX』を通じて実現させることに注力しており、自社のみならず業界全体を巻き込んだ改革に取組んでおります。

 当該改革の一環として、2021年7月には、当社と福岡県宮若市、九州大学が連携し、産官学協働で『リテールDX』を軸にしたまちづくり「リモートワークタウン ムスブ宮若」プロジェクトを開始しました。同プロジェクトは、『リテールDX』を推進する当社グループと、宮若市及び九州大学が協働して推進する地方創生・まちづくり構想の一つであり、産官学による「リテールDXの拠点づくり」を目指し、リテール企業とメーカー企業が共同で実証実験を行っております。業界全体を巻き込んだ改革意識の醸成として、食品・消費財メーカーの担当者が全国から集まり、『リテールDX』を学び、実践する「宮若ウィーク」というイベントを開催しており、当社グループでは、既成概念にとらわれない、自由な発想を取り入れたイノベーションを誘発する仕組みを設けることで、よりスピード感のある開発を実現し、リテールDXの最先端拠点を目指しています。具体的には取引先である食品・消費財メーカーとともに、共同学習としてリテールAI専門家による講義の提供やリテールDX人材の育成プログラムを開発するほか、DX実践としてSkip Cartやインストアサイネージを活用したマーケティング改革、MD-Linkを活用したデータの共有・可視化によるサプライチェーン全体の最適化について協働しております。


(2)リテールAI事業

 小売事業者や食品・消費財メーカーに対して、お客様の買い物体験の向上やリアル店舗のオペレーション改善、広告・販売促進活動の効率化等に資するプロダクトやソリューションを提供しております。当社では実店舗の運営で発生する現場のニーズを速やかに開発に活かすことができ、また、開発した技術を速やかに現場で実証実験できる体制が最大の特徴であり、実際の小売店舗という現場や流通サプライチェーンのステークホルダーの営業活動などの場面で実活用できるプロダクトやソリューションを開発する「オペレーション・ドリブン」のコンセプトのもと、流通小売事業と連携を図りながら、実店舗で実利用され、効果を生み出すことのできるプロダクトを開発しております。

 主力プロダクトであるSkip Cartは、セルフスキャンによるレジ待ちの解消及びレジ人時の削減やクーポン・レコメンドを活用した実店舗におけるワン・トゥ・ワンマーケティングなど、新しい価値をお客様、小売事業者、食品・消費財メーカーに提供しております。なお、Skip Cartやその他のプロダクトの月額利用料・ライセンス利用料等の収入を得ております。 2023年12月末現在で、Skip Cartの当社グループ外での導入も含む導入店舗数は208店舗、導入台数は19,401台となっております。マンスリーユーザー数は407万人となっております。また、Skip Cartの利用者に占める50歳以上のお客様の割合は57%となっております。

 他にもPOSやID-POS等のデータ分析プラットフォームの「MD-Link」(2023年12月末時点で276社が利用)及びそのインフラ基盤である「e3-SMART」、棚状況の監視等を行う「AIカメラソリューション」、店頭における広告・販売促進ツールである「インストアサイネージ」などのプロダクトやソリューションの開発を行うとともに、グループ内の基幹システムや各種業務システムの開発・運用・保守を行っております。


(3)その他

 「食」のブランディングを通じて本業である流通小売業における「ロイヤルカスタマー」を確立するため旅館施設である「久織亭(くおりてい)」、「虎の湯」、「古民家煉り(ねり)」や2024年2月1日付で東急不動産株式会社より取得した大分及び阿蘇のゴルフ場を含むゴルフ場運営などのリゾート関連事業及び建築・不動産管理等を行っております。

 

【業績等】

決算期   種別       売上高   営業利益             経常利益             純利益

2024/06 連結中間実績      363,304 11,568   11,978   6,943

2024/06 連結会社予想      711,067 18,575   19,045   10,774

2023/06 連結実績             653,112 13,964   14,358   8,084

2022/06 連結実績             595,500 12,046   12,687   7,135


決算期   種別       EPS       BPS       配当

2024/06 連結会社予想      104.26   -            15.00


上場時発行済株数            118,890,400株(別に潜在株式1,897,800株)

公開株数             26,281,000株(公募21,200,000株、売り出し1,653,100株、オーバーアロットメント3,427,900株)

調達資金使途      店舗や物流センター、飲料水工場への設備投資、流通小売り事業でのIT投資、リテールAI事業でのソフトウエア開発、不動産開発


海外募集について

 国内募集、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しと同時に、米国及び欧州を中心とする海外市場(但し、米国においては1933年米国証券法に基づくルール144Aに従った適格機関投資家に対する販売のみとする。)における募集(海外募集)が、Daiwa Capital Markets Europe Limited、Morgan Stanley & Co. International plc及びCitigroup Global Markets Limitedを共同主幹事会社兼ジョイント・ブックランナーとする海外引受会社の総額個別買取引受により行われる予定であります。本件募集による新株式発行の募集株式総数は21,200,000株の予定であり、国内募集株式数12,001,700株及び海外募集株式数9,198,300株を目処に募集を行う予定です。


PER:16.3

PBR:

配当利回り:0.9%

公募時吸い上げ資金:446億

公募時時価:2021億


【株主構成】 以下180日

(株)ティー・エイチ・シー   役員らが議決権の過半数所有        66,000,000          66.52%

(株)Heroic investment     役員らが議決権の過半数所有        9,374,200            9.45%

永田久男             代表取締役会長  1,963,800            1.98%

(株)PALTAC       取引先   1,200,000            1.21%

サントリー(株)            特別利害関係者など        1,000,000            1.01%

三井食品(株)      特別利害関係者など        1,000,000            1.01%

ヤマエ久野(株)        特別利害関係者など        1,000,000            1.01%

加藤産業(株)      特別利害関係者など        600,000 0.60%

北尾吉孝             特別利害関係者など        400,000 0.40%

SBIVenturesTwo(株)       投資業(ファンド)    400,000 0.40%

フクシマガリレイ(株)    取引先   400,000 0.40%


グローバル・オファリングに関連して、貸株人である株式会社Heroic investment、売出人である株式会社肥後銀行、株式会社福岡銀行、株式会社みずほ銀行、吉田淳、山崎敦夫、石橋亮太、百武佳美、阿部俊之、坂本圭司、森俊二、寺﨑雅彦、金光洋、山下和之、中井敦、田坂欣也、笹渕勝、牧草光彦、馬場千昌、矢野博幸、池下光史、上野真之、田中浩也、楢木野仁司、古賀輝幸、塩川直之、梶原茂浩、高橋宏侍、岡薗修、德岡毅、春本徹、松重広一、副島康宏、有光和孝、枝村力、熊坂直也、森田彰、内山智博、玉貞健志、牛原純二及び野中英一、当社株主である株式会社ティー・エイチ・シー、永田久男、株式会社PALTAC、サントリー株式会社、三井食品株式会社、ヤマエ久野株式会社、加藤産業株式会社、SBIVenturesTwo株式会社、フクシマガリレイ株式会社、亀田晃一、伊藤ハム株式会社、三菱食品株式会社、陳鉉淑、アサヒビール株式会社、エスフーズ株式会社、麒麟麦酒株式会社、宝酒造株式会社、株式会社電通グループ、株式会社日本アクセス、竹中洋、日本ハム株式会社、西川晋二、中山福株式会社、野田大輔、東洋水産株式会社、フジパングループ本社株式会社、プリマハム株式会社及びその他444名並びに上記に含まれない当社の新株予約権者である187名は、ジョイント・グローバル・コーディネーターに対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む。)後180日目までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、ジョイント・グローバル・コーディネーターの事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(但し、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために大和証券株式会社に対して当社普通株式の貸付けを行うこと等を除く。)を行わない旨を合意しております。


【代表者】

代表者名             亀田 晃一(上場時59歳11カ月)/1964年生

本店所在地         福岡県福岡市東区(東京オフィス:港区浜松町)

設立年   2015年

従業員数             72人 (2023/12/31現在)(平均40.5歳、年収1087.1万円)、連結6257人

事業内容             小売り、物流、金融・決済、リテールテックなど、各事業を中心とした企業グループの企画・管理・運営(純粋持ち株会社)

URL       https://trial-holdings.inc

株主数   528人 (目論見書より)

資本金   100,000,000円 (2024/02/14現在)

代表者生年月日 1964年03月22日生まれ

代表者略歴

1987年04月     株式会社富士銀行(現 株式会社みずほ銀行)入行

2008年05月     株式会社トライアルカンパニー入社

2008年06月     同社取締役就任

2009年04月     同社専務取締役就任 経営戦略本部長

2012年06月     同社取締役副社長就任

2015年09月     当社代表取締役社長就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券         大和       -            -

主幹事証券         三菱UFJモルガン・スタンレー -            -

主幹事証券         モルガン・スタンレーMUFG    -            -

主幹事証券         シティグループ  -            -

引受証券             野村       -            -

引受証券             みずほ   -            -

引受証券             SBI   -            -

引受証券             FFG   -            -

引受証券             SMBC日興      -            -

引受証券             マネックス         -            -


【参考類似企業】    今期予想PER(1/16)

2791 大黒天 26.1倍 (連結予想) 時価1250億 売上 2700億 経常 87億 純利 54億

3080 ジェーソン 13.7倍 (連結予想)

3160 大光 10.2倍 (連結予想)

8167 リテールPT 16.0倍 (連結予想) 時価830億 売上 2500億 経常 76億 純利 46億

8203 MrMaxHD 8.3倍 (連結予想)

8289 OlympicG 63.3倍 (連結予想)

9890 マキヤ 7.5倍 (連結予想)

9989 サンドラッグ 19.2倍 (連結予想)

8273 イズミ 13.0倍   時価2600億 売上 4750億 経常 310億 純利 190億


【私見】

 九州を中心とした小売業で、リテールDXという強みがあり、DX化されたカートなどマスコミに取り上げられることも多く、優位性はあります。九州・四国のスーパーは元気で、リテールPT・大黒天・イズミなどとの比較から、時価総額2000億というのは現状では適度で、成長力をどこまで評価するか焦点になりそうです。需給面では、既存株主にはロックがかっており、規模は大きいので、いずれはプライム鞍替えを視野に、中期では緩やかに上がっていくのが理想ですが、海外配分が多いと、今の地合いなら初値が高く天井になる可能性もあるでしょう。


想定価額:1550円

仮条件上限:1700円

初値予想:2200円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5


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