2025年2月5日水曜日

IPO分析(フライヤー)

 【事業内容】

 当社の運営する「本の要約サービス flier(フライヤー)」は、本を読みたいけれども読み切れない、自分に本当に合った本が見つけられないという2つの課題の解決を支援するサービスとして生まれました。年間6,000冊以上発刊されるビジネス書から厳選された本の要約コンテンツや動画、特集記事などを提供するサービスとして、創業時より一貫して継続運営しています。要約は1冊約10分で読める分量としていて、読むだけでなく、音声再生にも対応しています。通勤時間、休憩時間、就寝前などのすきま時間を有効活用し、教養やビジネススキルを身につけることができます。

 全ての要約コンテンツは出版社や著者などの本の作り手の許諾を得たのち、できあがった原稿も全て出版社などに確認いただいています。信頼性の高い媒体である本を元に、関係者の確認を経た要約を提供していることは、当社の独自性を特徴づけています。


(1) 当社のビジネスモデルについて

 「本の要約サービス flier(フライヤー)」は、クラウドサービスの形で提供しております。法人あるいは個人から継続的に対価を受領するサブスクリプション(月額課金)モデルです。法人向けには、社内利用促進や利用状況確認のための機能を合わせて提供するクラウドサービス「flier business」で、課金形態はサブスクリプションのSaaS(Software as a Service)型のビジネスモデルとなっています。2025年2月第3四半期において全社売上高の2/3超を占める法人顧客向けの事業(エンタープライズ事業セグメント)が当社の事業の中核を担っています。また、個人顧客向けの事業(コンシューマ事業セグメント)はビジネスパーソンを中心とした個人の自己研鑽に資するサービスとして安定的な成長を実現するとともに、当社ブランドの認知度向上に大きく貢献しています。

 顧客ターゲットはそれぞれ、個人顧客向けでは学習欲の高いアーリーアダプター層、法人向けは学習欲の高い層に加え、あまり意欲的ではない学習欲中程度以下のボリュームゾーンも含めてターゲットとしています。個人顧客向けは、終身雇用制度の終焉、フリーランスの増加、雇用の流動化のトレンドの中で学習欲の高い層が増加していくことが予想されるため、コンテンツの質をさらに磨き続けることで継続的な利用や新規利用を促します。法人向けでは、企業が社員の定着・優秀人材確保のために、継続的な研修・学びの機会を求めており、社員教育・研修を担当する人事研修担当者を通じて、間接的にボリュームゾーンへアプローチすることで、サービスの裾野を広げていきます。


(2) 主要な事業の概要

<エンタープライズ事業セグメント>

 企業における人材育成や福利厚生などを目的として従業員向けに提供する法人向け事業が中核となっています。そのほかにもインターネットカフェや公共図書館などの施設向けの事業、法人向けの研修事業、組織の人材投資に対する成果を見える化するスコアリングサービス「flier成長組織ナビ」等の新規サービスも積極的に展開しております。上記グラフの通り、エンタープライズ事業セグメントは直近の2年で約2倍の売上高となり、全体の2/3以上を占めるまでに拡大しています。累計法人契約社数は1,152社となっています。

◆ 「flier business」(法人向け)

 「本の要約サービスflier」を活用した人材育成サービスです。提供アカウント数に応じた月額固定費をお支払いいただくSaaSのサブスクリプション型のビジネスモデルで、従業員の自律的学習の推進や学びの文化形成などを目的として導入されています。また、事業の拡大に向け代理店網の開拓や様々な企業との協業を積極的に推進しています。


◆ 施設向け事業

 施設のWi-Fiにスマートフォンを接続することにより、その施設内での要約閲覧が可能になるサービスとして「本の要約サービス flier(フライヤー)」をカスタマイズしています。施設の滞在時間をより価値が高い時間にすることで施設の場の力をより高めることにつながります。他にも書店等で本のPOP(注1)にQRコードを添付することで、その本の要約が閲覧できる機能を提供しています。2024年11月末現在、全国の200店超の書店においてフライヤーの本の閲覧実績に基づいた特集陳列コーナーの「フライヤー棚」を提供しています。本取り組みは出版社・著者とのリレーション強化において、重要な役割を担っています。収益形態は主に「flier business」同様SaaSのサブスクリプション型のビジネスモデルとなっています。


◆ 法人向け研修事業

 主にflier businessの利用企業向けに研修を提供しています。リーダー層向けに本を主題にして他企業の同階層の人とともに越境型学習を行い自分なりのリーダーシップを見つける「越境マネジメントプログラム」、第一線の講師の方と集中的に学ぶ講座、著者によるセミナーなどがラインナップされています。実施された研修単位で料金が発生する収益形態となっています。


◆ 「flier成長組織ナビ」

 「flier成長組織ナビ」は、従業員一人ひとりの成長環境を確保するための要素を独自に調査・分析し、従業員と企業を成長に導く新しい概念のサーベイです。「制度・関係性・循環・学びの姿勢・成長実感」という5つの項目から、「成長組織スコア」を構成し、人が育ち成長する「成長組織」への変革を支援します。提供初年度である2025年2月期は無償トライアルを開始し、今後収益化を計画しています。


<コンシューマ事業セグメント>

◆ 「本の要約サービス flier」(個人向け)

 話題のビジネス書や名著・ベストセラーを1冊約10分の要約で楽しめる自己研鑽サービスとして、個人向けに「本の要約サービス flier」を提供しています。要約が読み放題の月額2,200円(税込)のゴールドプラン、月5冊まで好きな要約が読める月額550円(税込)のシルバープラン、20冊程度のサンプルの要約が閲覧できるフリープランがあります。なお、要約の9割以上は音声で聞くこともできます。エンタープライズ事業セグメントの「flier business」と同様に、月額課金のサブスクリプションモデルとなっています。


◆ 「flier book labo」「flier book camp」(オンラインコミュニティ)

 コンシューマ向けに読書好きが集まるオンライン読書コミュニティの「flier book labo」を運営しています(月額5,500円(税込))。会員同士の交流のほか、著者などの著名パーソナリティが開催する読者会や短期講座「flier book camp」(16,500円(税込)/講座※)を開催。2024年11月末現在、「flier book labo」に協力いただいている著名パーソナリティは2024年11月末現在で60名となり、「flier book labo」は本という共通の興味を持つ仲間と刺激し合う場を築いています。


◆ 「flier公式チャンネル」(広告事業)

 本を軸にしたディープなインタビュー番組として、学びを深める多様な動画コンテンツを配信しています。アカデミア・クリエイター・ビジネスなど幅広い分野のトップランナーや著名人をゲストに迎え、今ビジネスパーソンに知ってもらいたい「学び」の動画を提供しています。


(3) 「本の要約サービス flier」コンテンツ概要

 当社のサービスでは、本の要約コンテンツ、動画コンテンツ、特集コンテンツの主に3種類の自社作成コンテンツを提供しています。

本の要約コンテンツを作成するにあたり、ビジネスパーソンが今おさえるべき話題の本やロングセラーの本を社内外の有識者を集めた選書委員会にて選出し、出版社や著者等の権利者の許諾を得て、要約を作成します。要約は、50名以上の外部の専門性の高いライターが主に作成し、当社編集者が確認・校正したものを権利者に確認いただいた上で、ユーザに公開します。全ての要約コンテンツがこの流れで作成され、その後の確認を進めることにより、信頼性を高めることに努めています。2024年11月末現在、提携出版社数は190社超に及びます。そして、提供している要約の数は、毎日1冊以上、年間では400冊程度を追加しており、2024年11月末現在で3,800冊超となっています。

 動画コンテンツは、著名人の人生に大きな影響を与えた本をその方自身が紹介するDigTalkシリーズと、ビジネスパーソンが知るべきリベラルアーツを専門家に語っていただくサブ・アカデミアシリーズなどを展開しています。その他に、著名人へのインタビュー記事や、当社編集部による本の推薦記事、出版社からの推薦記事などの特集コンテンツを展開しています。

 

(4) 当社の強み

 エンタープライズ事業セグメント、コンシューマ事業セグメントともにサブスクリプションモデルの収入となっており、主力であるエンタープライズ事業の解約率(Net Revenue Churn Rate)は1.06%と低く抑えられているため、将来の収益が見通しやすいという点は強みであると考えております。エンタープライズ事業セグメント、コンシューマ事業セグメント合わせた累計会員数は121万人、メールマガジンの購読者数は約57万人となっており、拡大傾向にあります。

 ユーザ数の拡大により、出版社・著者等の知の生産者にとっての魅力が高まり、魅力が高まることにより出版社・著者等の協力関係が強固となり、より多くの質の高いコンテンツを発信することができ、コンテンツがサービスの魅力を量と質ともに高めることで、さらにユーザ数の拡大に寄与します。これらは相互に作用しながら、資産として蓄積されることで高い参入障壁を形成しフライヤーの競争優位を築いているものと認識しています。

 さらに、出版社および著者やユーザ企業との関係が継続的に拡大する傾向があることから、新しい企画や取り組み時にも活かしやすいという点も強みであると考えております。加えて、特にエンタープライズ事業セグメントにおいては、ユニットエコノミクス(売上案件ごとの顧客獲得コストに対する将来期待収益(ライフタイムバリュー))が約7倍を記録しており、営業活動においても費用に対して高い収益効果を実現している収益構造となっている点が強みであると考えております。

https://mediado.jp/medicome/organization/8089/


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2025/02 単独3Q累計実績 701 -12 -12 -12

2025/02 単独会社予想 946 2 -5 8

2024/02 単独実績 785 -132 -136 -136

2023/02 単独実績 634 -267 -271 -272


決算期 種別 EPS BPS 配当

2025/02 単独会社予想 2.77 63.09 0.00


上場時発行済株数 3,318,760株(別に潜在株式452,200株)

公開株数 755,300株(公募275,000株、売り出し381,800株、オーバーアロットメント98,500株)

調達資金使途 人員増強、借入金返済


PER:238

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:7.8億

公募時時価:49億

​  

【株主構成】 

(株)メディアドゥ 親会社 1,996,200 57.10% 360日 売出71,500株

大賀康史 代表取締役CEO 389,000 11.13% 360日 売出35,000株

(株)マイナビ 特別利害関係者など 258,760 7.40%  売出258,700株

XTech2号投組 投資業(ファンド) 183,940 5.26% 180日・1.5倍

みずほ成長支援第4号投組 投資業(ファンド) 63,380 1.81% 180日・1.5倍

望月剛 取締役CFO 56,120 1.61% 360日

(株)インソース 特別利害関係者など 55,440 1.59% 180日・1.5倍 売出16,600株

(株)CARTA VENTURES 投資業(ファンド) 55,440 1.59% 180日・1.5倍

大分VCサクセスファンド6号投組 投資業(ファンド) 45,280 1.30%

(株)ケイプランニング 特別利害関係者など 27,160 0.78%

エッグフォワード(株) 特別利害関係者など 27,160 0.78% 180日・1.5倍

三菱UFJキャピタル9号投組 投資業(ファンド) 27,160 0.78%


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である大賀康史、売出人である株式会社メディアドゥ並びに当社株主である望月剛、株式会社WINGS及び佐藤純は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後360日目の2026年2月14日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)等を行わない旨合意しております。

 また、売出人である株式会社インソース、当社株主であるXTech2号投資事業有限責任組合、みずほ成長支援第4号投資事業有限責任組合、株式会社CARTA VENTURES、エッグフォワード株式会社、未来創造投資事業有限責任組合及び株式会社エアトリは、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の2025年8月18日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し及びその売却価格が「第1 募集事項」における発行価格の1.5倍以上であって、東京証券取引所における初値が形成された後に主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等を除く。)等を行わない旨合意しております。

【代表者】

代表者生年月日  1978年12月01日生まれ

2003年05月      アクセンチュア株式会社 入社

2010年05月      フロンティア・マネジメント株式会社 入社

2013年06月      当社設立 代表取締役CEO(現任)

2019年07月      株式会社 REAH Technologies 取締役


【幹事団】

主幹事証券 みずほ - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 松井 - -

引受証券 岡三 - -

引受証券 水戸 - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 極東 - -


【参考類似企業】今期予想PER(1/21)

2464 Aoba-BBT 14.4倍 (連結予想)

264A Schoo 32.8倍 (単独予想)

291A リスキル 18.4倍 (単独予想)

3678 メディアドゥ 16.9倍 (連結予想)

6096 レアジョブ 48.0倍 (連結予想)

6200 インソース 23.7倍 (連結予想)

7043 アルー - (連結見込)

7049 識学 16.9倍 (連結予想)

7353 KIYO 23.6倍 (単独予想)

7367 セルム 10.8倍 (連結予想)

9345 ビズメイツ 13.8倍 (連結予想)

9610 ウィルソンWLW - (連結予想)


【私見】

 メディアドゥの子会社で、ビジネスモデルとしては面白く、コンサル出身の社長でIPOの意識は高く評価はできます。業績は赤字縮小で、今期黒字化見通しで、来期はどのくらいの黒字になるか決算が注目です。法人向けの研修業務などもあることから、直近のSchooが上昇したように、魅力はあります。1.5倍のロックラインが外れるVCが40万株弱あるので、1000円のラインからは需給が崩れることが予想されますが、そこを超えれば時価総額からも魅力はあります。


想定価額:660円

仮条件上限:680円

初値予想:950円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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