2020年9月8日火曜日

IPO分析(STIフードホールディングス)

 【事業内容】

 水産原料素材の調達から製造・販売までを一貫して行う水産原料に強い食品メーカーとして、食品製造販売事業を行っております。また、本書提出日現在、株式会社極洋は当社の発行済株式総数の約30.00%(1,500千株)を保有しており、同社は当社のその他の関係会社(当社は同社の持分法適用関連会社)に該当しております。

 当社グループの事業は、市場が拡大傾向にある中食ビジネスを中心に、海外及び国内で確立した検品体制のもとに、その他の関係会社である株式会社極洋をはじめとする仕入先から調達した水産原材料を、持続可能か否かという観点と同時に美味しさを追及し、特許技術又はそれに準じる技術を含む独自の製造技術を用いて、3温度帯(冷凍、冷蔵、常温)それぞれにおける消費者向けの最終商品等を製造し、コンビニエンスストアをはじめとする小売チェーン店等へ販売する事業を展開しております。 

(a)食品

 食品のうち、主にコンビニエンスストア向け水産惣菜(焼き魚、煮魚、シメサバ、サラダフィッシュ等)を製造販売する事業を行っており、惣菜における素材の美味しさを最大限に引き出すため、チルド(冷蔵)温度帯で一貫した製造、出荷、販売を行っております。

 具体的には、素材となるサーモン、サバ、イワシ、イカ、タコ、赤魚、ムール貝等は、海外・国内で旬の時期に水揚げされた原料(北米エリアでの買付けは、STI AMERICA Inc.が担っております。)を徹底した検品体制(チリ産の原料に対する検品は、STI CHILE S.A.が担っております。)のもとに調達し、美味しさを逃がさないようにチルド温度帯にて下処理から、骨取り、加熱調理、冷却、包装までの一貫製造を行っております。なお、㈱新東京デリカでは、チルド惣菜に加えて、冷凍惣菜の製造販売も行っております。

 特徴として、商品包装(1食パック)においては、一般的にチルド惣菜の場合は消費期限が約2日間と短く販売チャンスロスやフードロス(廃棄)に繋がる課題を抱えておりますが、当社グループでは商品包装内の空気を配合ガス等に置換する特殊な包装機械を多数導入し、操作方法の工夫を積み重ねることにより消費期限の大幅な延長(約10日間)を実現しております。これによりチルド惣菜の販売が伸長し、当社グループの収益に貢献すると同時に、社会的問題となっているフードロスの削減にも効果を発揮しております。

 水産原材料等を使った缶詰・レトルト製品等(サバ、イワシ、サンマ、牛筋煮込み、チキンのトマトソース煮等)は、当社、㈱新東京デリカ、三洋食品㈱において事業を行っており、従来の保存用商品としての缶詰ではなく、毎日の食卓においておかず(惣菜)として食べられる商品を製造しております。特に、サバ、イワシにおいてはDHAやEPA等の不飽和脂肪酸を多く含むことからヘルシー食品として需要が伸長しております。また、オリーブオイルを豊富に使用した健康志向の新規開発商品も新たな女性顧客層の開拓に繋がっております。また一方で、缶詰食品は内容量すべてが可食部分であり、骨もそのまま食することが可能であることから、たんぱく質やカルシウムを効果的に摂取できるヘルスケア食品としても注目されております。


(b)食材

 主にコンビニエンスストア向けおにぎり・弁当・パスタ・サラダ等に使用される水産食材(サーモンフレーク、イクラ、辛子明太子等)を、食材商社等を通じてデイリー惣菜メーカー向けに製造販売する事業を行っております。

 具体的には、素材となるサーモン、イクラ、辛子明太子等は、海外・国内で旬の時期に水揚げされた原料(北米エリアでの買付けは、STI AMERICA Inc.が担っております。)を徹底した検品体制(チリ産の原料に対する検品は、STI CHILE S.A.が担っております。)のもとに調達しております。

 これらの食材のうち、おにぎりの売れ筋であるサーモンフレークにおいては、特殊な製法により、家庭での焼き立ての味や食感を工場製造において再現しており、日本人のみならず、海外からのインバウンド消費者からも好評を得て、収益に貢献しております。この製法技術については特許を取得しております。

 また、コンビニエンスストア向けおにぎり用イクラにおいては、従来菌管理の問題もあり、おにぎりの具材としての使用は不可能であると考えられておりましたが、当社独自の静菌管理技術を生み出すことに成功し、さらに熟成によりサーモン卵本来の美味しさを引き出すことを実現しております。これにより、着色料・添加物を使用しない安全・安心な食材としてコンビニエンスストア市場に供給することが可能となり、消費者の好評を安定的にいただいております。この製法技術については特許を取得しております。


(2)当社グループの調達及び製造の特徴

 水産原材料をその時々の相場価格で複数の商社・問屋から広く調達することにより、必要なサイズ、必要な数量を安定的に調達できる仕組みを構築しております。

 なお、調達に際しては、原則、当社グループの現地社員が立ち会い、自ら素材の検品及び加工状況の確認を行っております。チリ産養殖素材の調達に際しては、STI CHILE S.A.の担当者が養殖水域の水質及び養殖状況、稚魚から水揚げ前までの期間において投与された抗生物質が残留していないことの分析証明の確認等、徹底したトレーサビリティ(製品・調達原料の製造・流通過程を追跡可能にするための管理体制)の確保と品質管理に取り組んでおります。

 調達原料における事前検品の徹底及びサイズの大小や端材処理に対応することができる用途・製法の開発により、異なる複数の商品化等を実現しております。また、東北・関東・東海・九州エリアにそれぞれ製造拠点を有し、当社グループ工場ごとの異なる得意分野や商品群を総合的に組み合わせることにより、コンビニエンスストア市場等への3温度帯でのさまざまな食品・食材の開発と製造・販売のビジネス展開を実現しております。


(3)機動性・独創性の高い開発力

 消費者及び顧客のニーズをいち早く的確に捉えスピーディーに市場価値の高い独自商品を開発・商品化するために、顧客に最も近い営業担当者が商品開発の中心的役割を担う体制をとっております。営業担当者は日々担当商品の販売動向と顧客のコメント及びニーズを敏感に察知、収集し、それらの情報を基に各生産拠点の開発部門と緊密に連携して商品のリニューアルや新商品開発への準備を行い、当社グループの主要顧客であるコンビニエンスストアの高頻度の商品リニューアルや新商品開発に対し機動的且つ柔軟に提案を繰り返し行い、消費者の動向や嗜好の変化に対応しております。


(4)安全・安心を追求した品質管理

 当社グループは食品メーカーとして当然である安全・安心な食品製造・販売を確実に担保し、社会的責任を果たすため、鮮度分析や酸化分析等、具体的な数値分析に基づく品質管理体制を構築しております。

 また、水産原材料の調達から製造・販売にいたるまでの各プロセスにおいて品質管理並びにトレース管理の仕組みとして、製品のコード番号を見ればその製造場所、製造日、製造時間帯、使用原材料等まで遡って調べることができ、もし不良品が発生した場合であっても、対象となる製造ロットを特定できる体制となっております。

 さらに、世界的な水産資源の持続可能な利用を図るための国際的水産認証であるMSC-CoC認証や、ASC-CoC認証である原材料を優先的に使用しております。

 また、当社グループの商品は、原則すべての商品において内装工程前に印字カメラによる印字検査、非金属の硬質異物を検査するX線検査、金属異物を検査する金属検出機及びウエイトチェッカーによる秤量検査を行い、さらに最終的には目視確認も行うことで品質確保に努めております。



【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(連結実績)2018.12 17,843 678 710 506

(連結実績)2019.12 20,644 531 591 456

(連結予想)2020.12 22,928 708 705 449

(連結中間実績)2020.12 10,705 468 459 282


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(連結予想)2020.12 88.45 -  - 

調達資金使途 新工場の増設、生産設備の増強、システム投資など

 

上場時発行済み株数 5,300,500株 (別に潜在株式500,000株)

公開株数 1,495,500株(公募300,500株、売り出し1,000,000株、オーバーアロットメント195,000株)

シンジケート 公開株数1,300,500株 


PER:21.4

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:24.7億

公募時時価:101億

    

【株主構成】 

(株)十見 役員らが議決権の過半数を所有する会社 1,980,000 36.00 90日

(株)極洋 その他の関係会社 1,500,000 27.27 90日

十見裕 代表取締役社長 1,020,000 18.55 90日

(株)セブン-イレブン・ジャパン 特別利害関係者など 500,000 9.09 90日

川島渉 新株予約権信託の受託者 250,000 4.55

(株)キャメル珈琲 特別利害関係者など 100,000 1.82 90日

柳沢重英 取締役副社長執行役員 30,000 0.55 

山崎敬介 子会社の取締役 15,000 0.27

野田和哉 子会社の取締役 7,500 0.14

小川隆 取締役執行役員 5,000 0.09

野村龍彦 従業員 5,000 0.09

青木健太朗 執行役員 5,000 0.09

中村真理子 従業員 5,000 0.09

渡辺昌代 従業員 5,000 0.09

大田慎司 子会社の取締役 5,000 0.09


 【代表者】

代表者名 十見 裕 (上場時67歳0カ月)/1953年生

本店所在地 東京都港区南青山

設立年 2017年

従業員数 71人 (7/31現在)(平均42.6歳、年収676.9万円)、連結289人

株主数 6人 (目論見書より)


代表者略歴 

1978年04月 伊藤忠アパレル(株)(現 伊藤忠商事(株))入社

2000年03月 STI CHILE S.A. 設立 代表取締役社長就任(現任)

2001年09月 STI AMERICA Inc. 代表取締役会長就任(現任)

2015年10月 三洋食品(株)設立 代表取締役社長就任

2017年03月 (株)新東京エナック 代表取締役会長就任(現任) 11月 当社設立 代表取締役社長就任(現任)

2018年03月 (株)新東京フード 代表取締役会長就任(現任) 8月 (株)新東京デリカ設立 代表取締役社長就任

2019年01月 (株)新東京デリカ 代表取締役会長就任(現任) 3月 三洋食品(株) 代表取締役会長就任(現任)

2020年06月 (株)ヤマトミ 代表取締役社長就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 野村 - -

引受証券 いちよし - -

引受証券 エース - -


【参考類似企業】

参考類似企業 今期予想PER 8/28

1301  極洋 9.6倍(連結予想 )

1332  日水 9.8倍(連結予想 )

1333  マルハニチロ 9.8倍(連結予想 )

2877  日東ベスト 52.0倍(連結予想 )

2883  大冷 37.9倍(単独予想 )

2903  シノブフース 10.8倍(連結予想 )

2904  一正蒲 18.4倍(連結予想 )

2918  わらべや 37.3倍(連結予想 )

3382  7&I-HD 25.1倍(連結予想 )


【私見】

 コンビニ向け水産原料ということで安定性はあるものの、成熟した産業で今後の成長性にはやや疑問です。業績を見てもコンビニの成長と共にここ数年は伸びてきてはいますが、ここから伸ばすには他分野にいかない限り簡単ではないかと思います。親の極洋の時価総額が300億(売上2625憶 経常36憶)、わらべやの260億(売上2135憶 経常27憶)から考えても上値は限定的と予想します。


想定価額:1790円

仮条件上限:1900円

初値予想:2100円

ブック申し込み度・・・中立

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3

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