2023年12月4日月曜日

IPO分析(雨風太陽)

 【事業内容】

​(1) 当社概要

 代表取締役の髙橋は、2013年、NPO法人東北開墾を立ち上げ、食材付き情報誌「東北食べる通信」を創刊し、2014年にはグッドデザイン金賞を受賞するなど、生産現場の裏側を直接消費者に届ける仕組みに手応えを感じ、一般社団法人日本食べる通信リーグを創設し、「食べる通信」のモデルを日本全国へ展開しました。

 なお、2020年にはNPO法人東北開墾より東北食べる通信事業、一般社団法人日本食べる通信リーグより日本食べる通信リーグ事業の事業譲受を行っております。

 「食べる通信」での成功体験を踏まえ、当社を設立し、2016年からは、生産者から直接購入できるCtoCプラットフォーム「ポケットマルシェ」の運営を行ってまいりました。「ポケットマルシェ」は、生産者と消費者が直接コミュニケーションできる顔の見えるECプラットフォームです。一次産品の出品専用に設計されているため生産者による出品が容易であり、野菜・果物・魚介類を中心としながら、多数の生産者が多様な食材を出品しています。都市圏在住者を中心とする消費者は、バラエティ豊かな四季折々の食材を産地から直接購入でき、直接生産者とコミュニケーションが取れる機能により、顔の見える生産者と継続的な取引が可能です。この生産者と消費者を繋げる仕組みによって、生産者と消費者の間で累計800万回以上のやり取りが発生しており、安定した売上成長と収益の基盤となっています。また、そこで築いた生産者と消費者のネットワークを活用することで、自治体からの委託事業を中心とした企業・自治体向けサービス、生産者から直接返礼品が届く「ポケマルふるさと納税」、地方に長期滞在し生産者の下で自然体験をする「ポケマルおやこ地方留学」を展開しております。

 当社の収益は、「ポケットマルシェ」における商品代金に応じた手数料収入に加え、当社が販売主体であるサブスクリプションサービス・自社で発行する「東北食べる通信」「海苔食べる通信」の売上、「日本食べる通信リーグ」に加盟するその他の食べる通信のシステム利用に対するコミッションフィー、ふるさと納税における自治体・生産者からの手数料収入、企業・自治体向けサービスの委託費、「ポケマルおやこ地方留学」の売上等から構成されています。


(2) サービス概要

・関係人口創出事業

関係人口創出事業では、顔の見える生産者から直接食材を購入することのできるサービスとして、CtoCプラットフォーム「ポケットマルシェ」を筆頭に、定期的に旬の食材が届くサブスクリプションサービス、食材付き情報誌「食べる通信」、ふるさと納税プラットフォーム「ポケマルふるさと納税」を提供しています。また、そうしたサービスで築いた基盤を活用して、企業・自治体向けサービスや都市と地方の間の人流を生み出す「ポケマルおやこ地方留学」を展開しています。

 これらのサービス群は、生産者と消費者が個人として直接繋がることができる点で中間業者を介在するこれまでの流通体系とは異なっており、双方のコミュニケーションが高い継続率につながると同時に、当社の運用コストを抑えることに寄与しています。


①個人向け食品関連サービス

(a) CtoCプラットフォーム「ポケットマルシェ」

 全国の農家・漁師から、直接やりとりをしながら旬の食べ物を買うことができるプラットフォームとして、2016年9月よりサービスを提供しています。生産者からは「自由な値付けで、規格外も1個から販売ができる」「全作業がスマホで完結できる」ところに魅力を感じていただき、2023年9月時点で全国各地の約7,900人の生産者が登録しています。

 また、新鮮で安心安全な食材を生産者から直接購入できる点を評価いただき、2023年9月時点で70万人以上のユーザーが登録しています。当社は、取引に対する販売手数料によって収益を得ております。


(特徴1) 全国各地の多様な食材が揃う

全国各地の生産者約7,900人が登録しており、2022年において毎日平均約260点の新しい商品が出品され、約15,000品の商品が並んでいます。四季折々の最旬の食材が並んでおり、その他のプラットフォームでは入手が難しい希少品種や、大手流通では販売することができない規格外商品も出品されています。また、当社で出品審査を行っており、プラットフォームの安全安心も担保しています。


(特徴2) 直接コミュニケーションができる

[メッセージ機能]

 生産者と消費者がクローズドで1対1のコミュニケーションを取れる機能です。注文の前後に、個別の要望を伝えたり、食材の調理方法や保存方法を生産者に直接質問することも可能であり、相互のコミュニケーションを促進しています。また、生産者からの発送連絡や問い合わせについても、メッセージ機能を使用して行われます。


[コミュニティ機能]

 生産者は、専用のコミュニティウォールを持っており、購入者は、ごちそうさまを伝える、 食べ方を聞く、などの会話ができます。こちらは、サービス開始から、購入者の約3人に1人(2020-2022年平均)がコミュニティへの投稿を行っております。


(b) サブスクリプションサービス

 全国各地の生産者とのネットワークを利用して、さまざまなテーマを設定し、基本的には毎月食材が届くサブスクリプション型のサービスを展開しています。具体的には「にっぽんのチーズ定期便」「王道フルーツ定期便」「旬のお野菜定期便」といった定期便を提供しており、顧客の定期購入代金が売上となります。


(c) 食材付き情報誌「食べる通信」

 生産者を綿密に取材し、食べ物を作っている人のストーリーと、その人が生産した食材が一緒に届く食材付き情報誌「食べる通信」を発刊しています。発行人を各地で募り地域ごとに独自性を持った食べる通信を全国18地域(2023年9月時点)にて発刊しています。

 「東北食べる通信」「海苔食べる通信」は自社で発行しており、購読料が売上となります。一方で、その他の食べる通信については、全国各地の編集主体によって発行されており、当社はシステムの利用対価としてコミッションフィーを受領しています。なお、いずれも共通の購読者管理システムを使用しております。


(d) ふるさと納税プラットフォーム「ポケマルふるさと納税」

 契約自治体の域内で生産されたポケマル出品物の「全生産者の全商品」が自動的に返礼品となり、ポケマルでのいつもの買い物がふるさと納税になるサービスです(特許出願中)。利用にかかる手数料として自治体からの手数料収入、取引に対する生産者からの販売手数料によって収益を得ています。


②企業・自治体向けサービス

(e) 企業・自治体向けサービス

・自治体支援サービス

 中央省庁や地方自治体が持つ一次産業振興予算を用い、生産者や消費者を抱えているポケットマルシェ上で、特定商品の送料無料施策や地域プロモーション等を実施しています。その他にも、生産者ネットワークを活用し、生産者の暮らしや地域の魅力の発信を通じた当該自治体への移住定住促進や、農漁業体験を中心とした自然体験の提供を通じた国内外の旅行客向けの観光プロモーション等を実施しており、自治体からの委託費が売上となります。


・法人向け食材販売

 調理家電と食材をセットにして販売、企業の顧客向けプレゼントキャンペーンや福利厚生サービス、飲食店に食材を提供するなど、他企業との連携にて一定量の食材をまとめて販売することで、食材費や企画費として収益を得ております。


③個人向け旅行関連サービス

(f) ポケマルおやこ地方留学

 全国に広がる生産者ネットワークを活用し、農業体験や漁業体験を中心とした自然体験を提供し、日本のあらゆる地方を観光資源化するサービスです。ターゲットに合わせた体験プログラムの開発を行い、自社サービスとしては小学生向けの「ポケマルおやこ地方留学」、また自治体等と連携しインバウンド向け観光コンテンツ開発などを行っております。

 「ポケマルおやこ地方留学」は、生産地のもとへ親子で訪問して、親はワーケーションをしながら、子供は生産者のもとで自然に触れ、命の大切さを学ぶ地方留学プログラムであり、参加者から収益を得ております。2023年は全国5か所(北海道・岩手・京都・和歌山・福岡)にて開催し、のべ293名が1999日を地方で滞在しました。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/12 単独3Q累計実績 593 -211 -170 -171

2023/12 単独会社予想 955 -247 -181 -185

2022/12 単独実績 635 -475 -321 -322

2021/12 単独実績 445 -649 -564 -568


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/12 単独会社予想 -105.03 151.11 0.00


上場時発行済株数 2,353,050株(別に潜在株式224,000株)

公開株数 598,800株(公募446,300株、売り出し90,000株、オーバーアロットメント62,500株)

調達資金使途 外部連携システムに係る構築費用、広告宣伝費、営業支援システム利用費用、東京オフィス移転費用


PER:

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:5.2億

公募時時価:20億

​   

【株主構成】 

PNB-INSPiRE Ethical Fund1投組 投資業(ファンド) 316,750 14.87% 90日・1.5倍

高橋博之 代表取締役 280,750 13.18% 180日 15,000売出し

小橋工業(株) 役員らが議決権の過半数所有 244,500 11.47% 180日

(株)丸井グループ 特別利害関係者など 166,750 7.83% 180日

大塚泰造 取締役 164,250 7.71% 180日

アグリビジネス投資育成(株)(農林中金信託口) 投資業(ファンド) 77,250 3.63% 90日・1.5倍

本間勇輝 特別利害関係者など 75,250 3.53% 180日

(株)メルカリ 特別利害関係者など 75,000 3.52%  全株売出し

(株)ユーグレナ 特別利害関係者など 75,000 3.52% 180日

永田暁彦 取締役 54,750 2.57% 180日

(株)電通グループ 特別利害関係者など 35,500 1.67% 180日


(親引け先)

KOBASHI HOLDINGS株式会社  取得金額50百万円に相当する株式数を上限 取引関係を今後も維持・発展させていくため

株式会社リバネス 取得金額50百万円に相当する株式数を上限 取引関係を今後も維持・発展させていくため


(増資価額)

23年8月 1800円

23年1月 22年12月 3060円

19年3月7月 1400円


​ 本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、貸株人かつ売出人である髙橋博之、当社株主である小橋工業株式会社、株式会社丸井グループ、大塚泰造、本間勇輝、株式会社ユーグレナ、永田暁彦、株式会社電通グループ、株式会社オレンジページ、山口幹生、小野祐美、株式会社insprout、株式会社フラッグ、アドニス株式会社及び小橋正次郎並びに当社新株予約権者である権藤裕樹、岡本敏男、小林工馬、水谷佑佳、山崎恵美、柳生宗範、高橋優歌、宍戸健太、小山淳子、阿部峻吾、柿内由貴、高岡圭太、細越雄太、酒見悠子、須佐桃、水野香奈江、瀬戸本美里、清水祐希、石本和真、大脇みのり、中村雅行、中嶋正弘、仲野脩、小松万里子及び李慧旻は、SMBC日興証券株式会社(以下「主幹事会社」という。)に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2024年6月14日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。

 当社株主であるPNB-INSPiRE Ethical Fund 1 投資事業有限責任組合、アグリビジネス投資育成株式会社(農林中央金庫信託口)、せとうち観光活性化投資事業有限責任組合、ステージアップファンド投資事業有限責任組合、北斗インベストメンツ株式会社、株式会社OKBキャピタル、岩手新事業創造ファンド2号投資事業有限責任組合及び千葉道場1号投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して90日目の2024年3月16日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等(ただし、その売却価格が募集における発行価格又は売出しにおける売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)を行わない旨を約束しております。


【代表者】

代表者名 高橋博之(上場時49歳4カ月)/1974年生

本店所在地 岩手県花巻市大通

設立年 2015年

従業員数 39人 (2023/09/30現在)(平均35歳、年収522.5万円)

事業内容 CtoCプラットフォーム「ポケットマルシェ」運営、生産者の販路拡大などを目的とした自治体向け支援サービス、生産者のもとで学ぶ地方留学プログラムの提供など

URL https://ame-kaze-taiyo.jp/

株主数 60人 (目論見書より)

資本金 381,507,000円 (2023/11/13現在)

代表者生年月日 1974年07月31日生まれ

代表者略歴

2005年03月 岩手県議会議員

2013年06月 NPO法人東北開墾 代表理事 (現任)

2014年04月 一般社団法人日本食べる通信リーグ 代表理事

2015年02月 当社設立代表取締役(現任)


【幹事団】

主幹事証券 SMBC日興 493,700 92.06%

引受証券 SBI 16,000 2.98%

引受証券 マネックス 10,700 2.00%

引受証券 岡三 5,300 0.99%

引受証券 丸三 5,300 0.99%

引受証券 東洋 5,300 0.99%


【参考類似企業】今期予想PER(11/17)

3182 オイラ大地 12.5倍 (連結予想) 時価520億

3541 農総研  259.6倍 (連結予想) 時価65億

4017 クリーマ 282.0倍 (連結予想)

4385 メルカリ 36.0倍 (連結予想)

4479 マクアケ 1,752.5倍 (単独予想)

7114 フーディソン 36.4倍 (連結予想)

9259 タカヨシ 10.2倍 (単独予想)


【私見】

 岩手県の会社で、代表は元岩手県議会議員で、NPOから初の上場銘柄で話題性のある銘柄です。業種としてはNPO的な要素があり、収益性は薄いかもしれませんが、ふるさと納税の手数料などもあることから安定的な収入もあり、赤字も解消されるのかとも思います。親引けもあり、吸収金額は非常に小さく、ファンドの増資価額も上であることから、1.5倍のロック基準上での売却が想定されそうです。そう考えると、売り要素は少なく、増資価額1400円~1800円あたりが上限ラインと予想します。


想定価額:840円

仮条件上限:870円

初値予想:1500円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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