2023年12月14日木曜日

IPO分析(yutori)

【事業内容】

​1.事業の概要

① ブランド運営

 Z世代(1997年から2009年に生まれた世代)を対象としたストリートファッションブランドを発端として、その後はストリートブランドに限らないファッションカテゴリーにおいて、アパレル商材の企画及び販売により規模を拡大してまいりました。新規ブランドの立ち上げのほか、第5期には、M&Aにより「F-LAGSTUF-F(フラグスタフ)」、「Younger Song(ヤンガーソング)」、「Wudge Boy(ワッジボーイ)」などのブランドを取得し、ブランド展開戦略の多様化を図っております。

 また、当社のブランドは以下の4分類にすることができ、多様性に富んだブランドにより、多種多様なユーザーに対し、ファッションの提案をしています。これによりブランドのポートフォリオを構築し、会社全体として特定のブランドに左右されない安定的な売上の構築に努めております。

1.ティーンカルチャー

過去のトレンドアイテムをリバイバルし、現代カルチャーのエッセンスを取り入れながらブランドを展開するブランドカテゴリーです。

2.トレンド

ZOZOTOWNでの販売をメインに、流行をいち早く取り入れた手に取りやすいアイテムを展開するブランドカテゴリーです。

3.デザイナーズ

アパレル業界で著名なデザイナーやスタイリストのもと、コアなファンを獲得するブランドを展開するブランドカテゴリーです。

4.インフルエンサー

インフルエンサーがブランドディレクターを務め、個人の発信力も併せてブランドを運営しているブランドカテゴリーです。


・9090(ナインティナインティ)

・centimeter(センチメーター)

・my Sugar Babe(マイシュガーベイブ)

・Younger Song(ヤンガーソング)

・PAMM(パム)

・Wudge Boy(ワッジボーイ)

・genzai(ゲンザイ)

・nemne(ネンネ)

・HTH(エイチティーエイチ)

・STUDENT APATHY(スチューデントアパシー)

・BADWAY(バッドウェイ)など


② 販売チャネル

 主に当社の複数のブランドを取り扱うプラットフォーム型の自社ECサイトである「YZ Store」、株式会社ZOZOの運営する「ZOZOTOWN」での販売、POPUPやオフライン店舗(以下、「店舗等」という。)での販売、および、国内外のセレクトショップへの卸販売が中心となっております。なお、それぞれの全体の売上に対する構成比は、自社ECサイト51.4%、ZOZOTOWN31.5%、店舗等10.3%、卸販売6.1%(第5期、その他の売上が0.7%)となっております。

 YZ Storeでは複数ブランドを取り扱っており、YZ Store内の複数ブランドのセット購入を提案しております。またYZ Storeのアプリを、2023年4月よりローンチしましたが、既に5.7万ダウンロード(2023年10月時点)を突破しています。さらに、YZ MEMBERS(会員プログラム)として、年間購入金額に応じたランクにより、会員先行セールやシークレットイベント招待、送料無料クーポンなどの特典を受けることができるプログラムも展開しております。

 ZOZOTOWNでは、流行をいち早く取り入れた手に取りやすいアイテムを展開しています。当社商品のZOZOTOWNでのランキング入りを目指して、スピーディーな商品企画を意識しております。

 店舗等では、SNSフォロワー数の多いインフルエンサーを店舗スタッフとして配置し、初期投資を抑えた30~40㎡ほどの小型の店舗で、当社の商品を展開しております。SNS集客の優位性を活かし、収益率の高い店舗を増やすことを目指しております。2023年9月末時点での店舗数は13店舗(POPUP5店舗を含む)であります。

 卸販売では、国内および海外を問わず、より多くの感度の高い顧客にリーチするためにセレクトショップに当社商品を展開しております。


2.事業の特徴

① SNSマーケティング

 広告宣伝としてInstagramやTikTok等のSNSを利用したマーケティング活動に注力しております。当社商品のPRのため、ブランド公式アカウント(店舗公式アカウントを含む)、社内運用個人アカウント、外部のインフルエンサーアカウントをそれぞれ使い分け、SNSユーザーに訴求しています。ブランド公式アカウントでは、新商品の紹介等の投稿を行い、ブランドの世界観を伝えています。社内運用個人アカウントでは、当社のSNS担当者がその個人の視点から商品紹介および商品の着用画像、動画を投稿し、よりSNSユーザーと密接なコミュニケーションを図っております。外部のインフルエンサーアカウントでは、特にZ世代に強い影響力を有するインフルエンサーに対して当社の視認性の高い商品を支給し、着用画像、動画を投稿していただくことにより、当社ブランドおよび商品の認知度の向上、新規顧客の流入を図っております。なお、Instagram、TikTok、X(旧Twitter)におけるブランド公式アカウント及び社内運用個人アカウント(以下、総称して「社内運用アカウント」という)は合計で91(2023年11月15日時点)であり、それぞれのSNSの特徴に最適化した運用をしております。

 SNSにおけるフォロワー数は経営上の重要指標としており、フォロワー数の獲得拡大を目標にしております。2023年11月15日時点で、Instagramの社内運用アカウントのフォロワー数の合計は152.6万人であり、最近1年間で増加傾向にあります。その他、TikTok(161.8万人)、LINE公式アカウント(13.9万人)、X(3.3万人)があり(いずれも2023年11月15日時点のフォロワー数)、複数のSNSチャネルでファンの形成を図っております。

 また、フォロワー以外のユーザーの認知拡大も重要と考えており、広告投資(ペイド広告)により、SNSユーザー全体へのリーチ数(SNSコンテンツがユーザーに表示された回数)をコントロールしており、2023年9月のInstagramにおけるリーチ数は、1,425万回となっております。SNSコンテンツの訴求効果については、プロフィールアクセス数を重要視しております。実際にSNSユーザーがそのブランド、商品に興味を持つと、まずSNSアカウントのプロフィールにアクセスして、ECサイトにアクセスするため、プロフィールアクセス数は重要な指標の一つと考えております。2023年9月のInstagramにおけるブランド公式アカウントへの月間プロフィールアクセス数は、253万回となっております。

 上記のフォロワー数、リーチ数、プロフィールアクセス数を効果的に増加させるため、特にInstagramにおける投稿に力を入れており、社内運用アカウントにおける動画の月間制作本数446本のうち、広告動画として投資した動画が238本であり、そのうちCTRが3.5%以上の動画は84本(いずれも2023年9月実績)となっております。さらに、上記の広告動画本数238本のうち、CPCが10円以下となっている動画は26本(全体の10.9%、2023年9月実績)あり、広告宣伝効果および投資効率の高い広告宣伝を行うことに努めています。

 上記のとおり、当社はSNSを起点とした購買体験の設計することにより、最終的には自社ECサイトへアクセスいただき、気に入った商品を円滑に購買いただくことを目標にしております。自社ECサイトへのアクセス数は、集計が可能な2022年度第4四半期から2023年度第2四半期にかけて、176.3万(2023年1月~3月)、180.2万(2023年4月~6月)、186.3万(2023年7月~9月)と順調に増加しております。

 また2023年9月では、自社ECサイトへの訪問者数は50.2万人であるのに対して、SNS経由で訪問した者は26.7万人であり、その半数近くがSNSから当社のECサイトにアクセスしております。そして、最終的なYZ Storeでの月間購買者数は1.3万人であり、ECサイトへの訪問者数の増加こそが購買者数の増加につながるものと考えております。

 SNSによるマーケティング活動を行うことにより、販売開始前の需要予測、認知拡大が可能になることから、商品企画力の強化にもつながると考えております。当社において、ワンシーズン(春夏物は2~7月、秋冬物は8~1月)で500万円以上販売した商品をSランク商品と定義しており、そのSランク商品の多寡がブランドのヒットに直結し、全社売上の増大、安定化、下支えにつながり、そのSランク商品の開発に社内のリソースを優先的に投下するよう意識しております。SNSや展示会、過去のヒット商品をもとに今後の需要予測を行い、戦略的にSNSでプロモーションを行い、十分に認知拡散を行った後、販売開始をして売上を伸ばしていくことができます。なお、直近のシーズン(2023年2~7月)では、全社売上のうち約2割がSランク商品による売上でした。SNSマーケティング活動によるその他の効果として、社内運用アカウントからの発信により、認知拡散が生じ、ブランドのファンによるUGC(注3)としてのコミュニティの形成も認められます。企業による広告投稿ではなく、一般ユーザーによって、UGCとして制作、生成されたコンテンツの投稿が増え、それにより更に認知度をおよび人気も向上する好循環が生まれます。


② NICOモデル

 Z世代の熱狂を獲得する競争力の源泉として「NICOモデル」によるブランド企画、商品企画および開発を行っております。それぞれ以下の頭文字を取り「NICOモデル」としています。


N:Niche

ニッチだが熱量のある領域を選定しております。


I:Item

そのブランド領域におけるアイコニックな商品として認知されるよう商品企画を図っております。


C:Collabo

インフルエンサーとのコラボレーションやデザイナー等と協業して、社内にはない新しいデザインを提案しています。


O:Offline

実店舗やPOPUPの展開により販路拡大とブランドのファンとの交流によるファンの固定化を図っております。


例えば、当社を代表するブランドである「9090」では、90年代に流行したアイテムを現代のストリートシーンに落とし込みリバイバルして展開することでニッチな領域を選定して、大人気を博した「King Logo」シリーズの商品を展開しています。コラボによる「9090ポケモンコレクション」の商品シリーズは人気IP「ポケモン(注1)」の知名度を活かして爆発的な売上を記録しました。さらに、全国を周回するPOPUPで短期間のオフライン販売により需要を確認したうえで、常設店を名古屋と原宿にオープンしました。


 他にもY世代向けブランドである「PAMM」では、ルームウエア特化ブランドとして、パジャマ、ニット、肌着等を中心に商品を展開しています。特に、着心地の良いニットアイテムが人気であり、「汽水域のニットカーディガン」は再販売を重ねております。コラボとしては、独自の世界観を築きブランディングをしていながら、「PAMM」と親和性がある相手先として、アーティスト「haru.」、バンドグループ「羊文学」や「ほぼ日手帳」と共同して商品開発を実施してきました。そして、これまでPOPUPや展示会の実施を重ね、顧客の反応を確認したうえで、2023年9月にブランド1号店として渋谷PARCOに出店をしました。

 当社は、オンライン販売やコラボレーションを通じてブランド・商品の認知を高めた後に店舗展開を行っているため、店舗展開を中心とする場合と比較して投資効率が良いと考えており、店舗の減損リスクを最小限に抑えております。また、NICOモデルのノウハウを実際に適用したブランドから他のブランドへそのノウハウを横展開することでヒット商品の再現性を高めて、ブランド運営をしています。

 実際に、十分にユーザーを獲得したブランドから、店舗を順次展開しております。2022年4月1日の初出店を皮切りに、2023年3月末時点で8店舗、2023年9月末時点で13店舗(それぞれPOPUP2店舗、5店舗を含む)を展開しております。また、イベント・企画を多く実施し、ファンコミュニティへの接点をつくっています。


③ 自律分散型ブランド運営

 各ブランドが自走して自ら利益を獲得できるようにするため「Yリーグ」という制度を導入して、ブランドごとの採算を管理しております。ブランドの成長ストーリーを全社的に定量的に示すことで、各ブランドの担当者にとって分かりやすい目標となり、かつ、撤退基準を明確にすることで迅速で合理的な意思決定ができるようにしており、定量的な判断のもと損失を最小限に止める体制を目指しております。また、各ブランドにおける投資はブランドごとの自主的な意思決定を尊重しており、ブランドの個性を活かした機動的なブランド運営を行っております。一方で、ブランドごとの売上等の進捗状況や企画・販売戦略を全社で共有する会議を週次で開催しており、特定のブランドで効果を発揮した施策を他ブランドでも展開可能か検討しております。

 そして、各ブランドで商品企画を担当するブランドディレクターには、消費者目線を持つことができるようにするため、そのブランドのターゲット層(主にZ世代)と年齢的に近いスタッフを配置しております。また、新規ブランドや新商品を企画したスタッフがそのまま、ブランドの立ち上げ、商品開発にも携わるため、ブランド運営の経験は浅くとも当事者意識を高く持ち、取り組むことができます。その結果、流行が移り変わりやすいアパレル業界においても、適時に需要に応じた商品を企画することができます。

 当社の従業員(臨時雇用者を含む)の平均年齢は24.7歳(2023年9月末時点)であり20代の若手社員が半数以上を占めていること、および、本社勤務の従業員のうち45%がクリエイティブ(ブランドディレクター)を担当しており、クリエイティブ業務に携わるメンバーが豊富に集まっていることも当社の特長の一つと言えます。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2024/03 単独中間実績 1,751 113 106 53

2024/03 単独会社予想 3,565 337 312 215

2023/03 単独実績 2,470 -47 -54 -68

2022/03 単独実績 1,631 226 224 149


決算期 種別 EPS BPS 配当

2024/03 単独会社予想 143.15 416.34 -


上場時発行済株数 1,565,700株(別に潜在株式138,600株)

公開株数 655,500株(公募85,000株、売り出し485,000株、オーバーアロットメント85,500株)

調達資金使途 借入金返済


PER:17.5

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:7.8億

公募時時価:49億

​   

【株主構成】 

(株)ZOZO 親会社 755,100 46.63% 180日

片石貴展 代表取締役社長 515,300 31.82% 180日

(株)pool 役員らが議決権の過半数所有 148,100 9.15% 180日

瀬之口和磨 取締役副社長 116,600 7.20% 180日

佐藤祐介 執行役員 11,300 0.70%

浜田栞 従業員 10,500 0.65%

船橋誠 従業員 9,700 0.60%

土田天晴 従業員 8,900 0.55%

穀本周 執行役員 8,800 0.54%

青島剣士郎 従業員 5,700 0.35%


本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である株式会社ZOZO、売出人である片石貴展及び瀬之口和磨、並びに当社の株主である株式会社poolは、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後180日目の日までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等を除く。)を行わない旨を合意しております。また、当社は主幹事会社に対し、ロックアップ期間中は主幹事会社の事前の書面による同意なしに、当社普通株式の発行、当社普通株式に転換もしくは交換される有価証券の発行又は当社普通株式を取得もしくは受領する権利を付与された有価証券の発行等(ただし、本募集、グリーンシューオプション、株式分割及びストックオプション又は譲渡制限付株式報酬(ロックアップ期間中に行使又は譲渡されないものであり、かつロックアップ期間中における発行等の累計による潜在株式ベースの希薄化率が1%を超えないものに限る)にかかわる発行等を除く。)を行わない旨合意しております。

【代表者】

代表者名 片石 貴展(上場時30歳0カ月)/1993年生

本店所在地 東京都世田谷区北沢

設立年 2018年

従業員数 43人 (2023/09/30現在)(平均27.1歳、年収365.1万円)

事業内容 衣料品および雑貨などの企画ならびにそれらの小売り・卸売り事業

URL https://yutori.tokyo

株主数 4人 (目論見書より)

資本金 100,000,000円 (2023/11/24現在)

代表者生年月日 1993年12月25日生まれ

代表者略歴

2016年04月 株式会社アカツキ 入社

2018年04月 当社設立 当社代表取締役 就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 大和 - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 岡三 - -

引受証券 松井 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 極東 - -


【参考類似企業】今期予想PER(11/30)

2138 クルーズ 5.0倍 (連結予想)

2685 アダストリア 14.5倍 (連結予想)

2726 パルGHD 16.5倍 (連結予想)

2778 パレモ・HD 3.0倍 (連結予想)

2792 ハニーズHLD 9.6倍 (連結予想)

3083 シーズメン 396.0倍 (連結予想)

3092 ZOZO 22.5倍 (連結予想)

3185 夢展望 - (連結予想)

3192 白鳩 136.3倍 (単独予想)

3415 トウキョベース 43.0倍 (連結予想)

3558 ジェイドG 13.2倍 (連結予想)


【私見】

 ZOZOの子会社で、若者のファッションブランドで、コアな人気はあるのでしょうが、層がやや狭い印象です。業績は良く、PERも成長性は加味した数字となっており、他のブランドよりはやや高めの設定になっています。規模は小さめで、VCもいないことから需給は良いのですが、買い手は少なく公募前後の動きと予想します。


想定価額:2510円

仮条件上限:2520円

初値予想:2520円

ブック申し込み度・・・中立

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3

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