2023年12月7日木曜日

IPO分析(ナイル)

  【事業内容】

​ (1)ホリゾンタルDX事業

 社会構造の変化や、消費活動の多様化に伴い、企業におけるマーケティング活動は高度化、複雑化しており、企業においてはDX・マーケティング戦略の迷走や進行の遅延、業務効率化、広告効果の最大化、良質な広告出稿先の確保等のDX課題が生じており、それらに即したマーケティング施策を実行することが重要な経営課題になってきています。

 当事業では、創業以来培ってきたDXやマーケティングを中心とするインターネットを活用した技術・ノウハウを強みにして、顧客企業に対するコンサルティングサービスを主軸としつつ、生成AIによる業務自動化支援、メディア開発・運営及びデジタル広告に関するソリューション提供を通じた事業支援を行っております。

 

①DX&マーケティング事業

 インターネットを活用した顧客企業の売上成長・利益成長支援を行っております。具体的には、デジタル戦略コンサルティングによる顧客企業の課題特定と課題解決策としてのDX・マーケティングに関するコンサルティングや実行支援、メディア開発・運営支援、コンテンツマーケティング支援、ユーザー解析に基づくWebサイト改善コンサルティング支援、生成AIによる業務自動化支援等、顧客企業のニーズに応じインターネットを活用した様々なソリューションを提供しております。これらに加え、顧客企業のニーズに応じた提供メニューの拡充を継続的に行うことで、模倣難易度の高い事業構築を進めております。当社のコンサルティング実績は、2023年12月期第3四半期累計期間の取引実績で160社に及ぶとともに、顧客継続率は約90%となっており、顧客企業との円滑な関係構築による安定収益基盤を構築しております。

 また、当事業における幅広い業種業態の顧客企業に対する事業成長のためのDX・マーケティング/課題把握と課題解決策特定の知見は、新規事業の創出のみならず、他事業・領域における事業成長力や収益力向上に向けた取り組みにもつながっております。具体的には、自動車産業DX事業における各ステークホルダーとの業務オペレーションのDX化、AIを活用した効率化・自動化、エンドユーザー集客におけるインターネット活用やメディア&ソリューション事業におけるアプリ情報サイト「Appliv」のユーザー集客の効率化などは、当事業から派生する技術・ノウハウに基づくものとなっております。


②メディア&ソリューション事業

 主に複数のメディアの開発・運営及びデジタル広告に関するソリューション提供を通じ、顧客の事業成長支援を行っております。

 DX&マーケティング事業の技術・ノウハウを活用し、メディア開発・運営を通じた顧客の事業成長を支援する事業として、2012年に開始いたしました。6万件を超えるスマートフォンアプリ情報を掲載する国内有数メディア「Appliv」、スマートフォンユーザー向けに役立つライフスタイル情報を豊富に掲載するメディア「Appliv TOPICS」、アプリを運営する事業者向けのデジタル広告ソリューション「NYLE TRIDE」などを通じて顧客の事業成長を幅広く支援しております。当社の運営するメディア群の月間ユーザー数は約760万人となります。


 (2)自動車産業DX事業

 DX及びマーケティングの知見を活用して、自動車産業のDX化を推進する事業として、2018年に立ち上げた事業です。当事業では、「おトクにマイカー 定額カルモくん」の事業運営を主軸として、個人向けに日系メーカー全車種の新車及び中古車を取り扱っており、頭金やボーナス払なしで月1万円台からマイカーを利用できるサブスクリプションサービスを提供しています。

 従来、個人が自動車を購入する際には、ディーラーや自動車販売店の店舗を訪問する必要がありました。また、ディーラーや自動車販売店が取り扱うローンやリースなどの金融商品は、各社の提携ファイナンス会社が提供するケースが多く、与信の弱い個人は自動車金融商品(注2)を活用できない場合があります。

 個人の車購入におけるプロセスをDX化することで、マイカー購買の手間暇を省力化するとともに、与信の弱い個人に対する自動車金融商品の提供可能性を模索することで、自動車領域における金融包摂サービスの提供を進めており、新車・中古車の販売市場における新たな市場創出に取り組んでおります。


 当社が提供する「おトクにマイカー 定額カルモくん」のビジネスモデル上の特徴は、以下のとおりです。

①自動車購入プロセスのデジタル化により実現した効率性の高い事業運営

 マイカーのサブスクリプションに関して、車探しから料金シミュレーション、申込といった諸手続を24時間オンラインで受け付けております。また、納車についても顧客の自宅まで配送するというオペレーションを構築しており、実店舗に一度も来店する必要がなくマイカー利用を開始することが可能です。加えて、エンドユーザー、提携金融事業者、ディーラー、陸送事業者、損害保険事業者などのステークホルダーとの業務プロセスをDX化することで、エンドユーザーに向けた自動車購入プロセスのUI/UXの利便性を高めるとともに、実店舗を持たず効率性の高い事業運営を行っております。


②車両在庫を持たないアセットライトなビジネスモデルの構築

 上記のとおり、当事業においては、マイカーのサブスクリプションに伴うリース車両については、リース期間にわたり、提携金融事業者が保有するため、中古車リースの一部のスキームを除き、当社は原則として車両在庫を持たないアセットライトなビジネスモデルを構築しております。


③契約獲得に伴うスポット収益と、契約期間中に計上される月額収益

 「おトクにマイカー 定額カルモくん」では、車両本体に加えてマイカーの利用中に発生する維持管理コスト等も含めて月額定額のサブスクリプションとするオプションなどを提供しており、顧客のニーズに沿ったプラン設計を行うことが可能です。

 当社が提携する金融事業者と顧客間におけるリース契約の獲得を仲介することで、提携金融事業者からの初期紹介手数料として納車時にスポット収益を計上いたします。また、当社が提携する金融事業者とリース契約を締結したリース車両について、整備費用等のメンテナンスサービスを中心としたオプションをリース期間にわたり提供しており、顧客からその対価として定額の月額料金を受領しております。リース料金相当分は、当社が顧客から収納して提携金融事業者に分配しております。中古車リースの一部のスキームは、顧客からの契約申込に基づき、当社にてその中古車を一度仕入れて、提携金融事業者に車両を売却するため、車両売買収益も発生いたします。

 結果として、当事業においてはスポット収益(初期紹介手数料及び車両売買収益)により早期に顧客獲得コストを回収しながら、顧客からの月額収益を受け取ることで、安定的な収益を計上できるビジネスモデルが形成されています。なお、2023年12月期第3四半期累計期間の平均カスタマーチャーンレートは0.21%と低水準を維持しており、契約から生じる収益は長期にわたり安定的に生じることが期待されます。加えて、契約満期後に改めて当社サービスを再契約したいとの意向を持つ顧客がおり、契約満了後の再契約による追加収益を加味すると、当事業は長期的な時間軸の中で収益を計上していくとの予測を当社は持っております。2023年12月期第3四半期累計期間の新規顧客との平均契約期間は8.7年、顧客から受領する収益のうち当社に帰属する平均月額料金は5,086円となっております。2023年12月期第3四半期会計期間末時点において確保されている契約残高は、54億円になります。


④与信の弱い個人に向けた与信枠拡大の取り組み

 当社の自動車産業DX事業の顧客に対する与信判断は提携金融事業者にて行われておりますが、提携金融事業者と共に与信の弱い個人に向けた与信拡大の取り組みを行い、自動車金融商品を活用できない方々に向けたサービス開発を推進しております。


⑤一般的には自動車メーカー系ファイナンス会社が取り扱っていない最長11年・月額が安価なサブスクリプションプランを提供

 3〜5年の契約期間のローン商品を主体とする自動車メーカー系ファイナンス会社が多い中、日本人の平均新車保有期間は約9年となっております。長期にわたり1台の車に乗り続ける消費活動が一般的であることに加え、月額リース料が安価となる長期のカーリース契約には需要があります。そこで、当社は比較的契約期間の短いプランのみならず、最長11年の長期のプランまでのラインナップを用意して、様々な顧客のニーズに対応しております。

 マイカーのサブスクリプション市場を含む個人向け自動車金融市場の持つ広大なTAMに加え、当社が培ってきたDX及びマーケティングの技術・ノウハウの活用によるオペレーション合理化、顧客からの認知度向上及びマーケティングコストの最適化により、2018年のサービス開始以降、契約件数は増加しております。2023年12月期第3四半期累計期間において契約価値粗利(CV)は平均662千円となり、契約獲得に係る広告宣伝費に対するROIは平均2.3倍、対CPAにおけるペイバックピリオドは13ヶ月となっております。その結果、延べ契約件数は、2023年9月末時点において14,018台となっております。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/12 単独3Q累計実績 3,960 -499 -528 -530

2023/12 単独会社予想 5,047 -880 -930 -933

2022/12 単独実績 4,139 -1,336 -1,354 -1,355

2021/12 単独実績 2,628 -1,865 -1,890 -1,895


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/12 単独会社予想 -113.60 122.26 -


上場時発行済株数 8,535,200株(別に潜在株式820,000株)

公開株数 1,518,900株(公募350,000株、売り出し970,800株、オーバーアロットメント198,100株)

調達資金使途 採用費・人件費、広告宣伝費


募集を行う地域

欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)


PER:

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:25.5億

公募時時価:143億

​   

【株主構成】 

高橋飛翔 代表取締役社長 3,884,000 43.13% 180日

JICベンチャー・グロース・ファンド1号投組 投資業(ファンド) 1,245,600 13.83% 90日・1.5倍

(株)SMBC信託銀行 投資業(ファンド) 608,400 6.75% 90日・1.5倍

(株)セプテーニ・ホールディングス 取引先 412,400 4.57% 180日

SBI AI&Blockchain投組 投資業(ファンド) 405,200 4.49% 90日・1.5倍

榎並慶浩(受託者) 新株予約権信託の受託者 276,000 3.06%

EEI4号イノベーション&インパクト投組 投資業(ファンド) 247,600 2.74% 90日・1.5倍

DIMENSION投組 投資業(ファンド) 173,600 1.92% 90日・1.5倍

(株)博報堂DYメディアパートナーズ 特別利害関係者など 173,200 1.92% 180日

(株)アニヴェルセルHOLDINGS 特別利害関係者など 162,000 1.79% 180日

長沢斉 取締役 150,000 1.66% 180日

(株)ダイレクトマーケティングミックス 特別利害関係者など 148,400 1.64%


​ 本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、貸株人かつ売出人である高橋飛翔、売出人である株式会社セプテーニ・ホールディングス、長澤斉、髙階良輔、土居健太郎、大谷昌史及び成松淳、当社株主である株式会社博報堂DYメディアパートナーズ、株式会社アニヴェルセルHOLDINGS及び浜田宏並びに当社新株予約権者である株式会社Strategy Partners、大村尚子、梅本雄二、森川亮、富田寛之、針替健太、麻相田真也、藤野希美、濱本克大、工藤択斗、三好理子、田中創基、相馬朱里、福田士朗、三浦利夫及び三瓶勝之は、共同主幹事会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2024年6月16日までの期間中は、共同主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。

 売出人である株式会社SMBC信託銀行及びSBI AI&Blockchain投資事業有限責任組合並びに当社株主であるJICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合、EEI4号イノベーション&インパクト投資事業有限責任組合、DIMENSION投資事業有限責任組合、SBI Ventures Two株式会社、グリーベンチャーズ1号投資事業有限責任組合、NVCC9号投資事業有限責任組合、株式会社アドウェイズ・ベンチャーズ及びデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社は、共同主幹事会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して90日目の2024年3月18日までの期間中は、共同主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等(ただし、その売却価格が募集における発行価格又は売出しにおける売出価格の1.5倍以上であって、SMBC日興証券株式会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)を行わない旨を約束しております。

 

【代表者】

代表者生年月日  1985年12月14日生まれ

代表者略歴

2007年01月      当社設立 代表取締役

2010年03月      当社代表取締役社長(現任)

代表者名 高橋 飛翔(上場時38歳0カ月)/1985年生

本店所在地 東京都品川区東五反田

設立年 2007年

従業員数 235人 (2023/01/31現在)(平均35.8歳、年収607.9万円)

事業内容 自動車産業DX(デジタルトランスフォーメーション)事業(オンライン主体のマイカーサブスク関連サービスを提供)、ホリゾンタルDX事業(DX・マーケティングに関するコンサルティングなどを提供)

URL https://nyle.co.jp/

株主数 28人 (目論見書より)

資本金 325,054,000円 (2023/11/16現在)


【幹事団】

主幹事証券 SMBC日興 - -

主幹事証券 SBI - -

引受証券 松井 - -

引受証券 大和 - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 丸三 - -

引受証券 極東 - -

引受証券 岡三 - -

引受証券 東洋 - -


【参考類似企業】今期予想PER(11/22)

3622 ネットイヤー 19.9倍 (単独予想)

4499 Speee 105.2倍 (連結予想)

5021 コスモエネHD 6.5倍 (連結予想)

7067 ブランディン 15.7倍 (連結予想)

7068 FフォースG 23.8倍 (連結予想)

7357 ジオコード 89.0倍 (単独予想)

8591 オリックス 9.5倍 (連結予想)

9211 エフ・コード 22.3倍 (連結予想)

9244 デジタリフト 25.8倍 (連結予想)

9554 AViC 16.4倍 (連結予想)

9832 オートバクス 13.1倍 (連結予想)


【私見】

 自動車産業 DX 事業ということで、業種的にはややわかりずらく、大きな優位性はさほど感じません。売上の伸びは非常に良いのですが、赤字は大きなマイナス材料で来期見通しが黒字でないと買い意欲は湧きません。吸収金額は適度に大きく、VCのロックも甘いことから人気になることは想定しずらく、公募近辺と予想します。


想定価額:1615円

仮条件上限:1680円

初値予想:1680円

ブック申し込み度・・・中立

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3

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