2023年9月21日木曜日

IPO分析(キャスター)

 【事業内容】

​ (1) 事業の概要

① WaaS事業

 当社は自らフルリモートワークによる企業経営を実践し、リモートワーク及びリモートワーカーを駆使した事業を企画・開発してまいりました。社内におけるリモートワークによるノウハウの蓄積とリモートワークとリモートワーカーの活用により、固定的な人員の配置をせずとも、各地に所在するリモートワーカーがその場にいるかのような御用聞きのサービス提供を実現するに至りました。現在では、当社は、人的リソースの不足に悩む中小企業と、リモートワーカーを繋ぐプラットフォームの役割を果たしております。顧客企業の希望に応じて、適切なスキルをもつリソース(=Workforce)を、独自システムを用いて効率的に自動マッチングし、必要な時間だけ提供する新形態のサービスを「Workforce as a Service」として定義しております。具体的には、オフィスワークのリソースを月額約13万円〜の小ロットな月額設定で顧客企業にサービス提供を行っており、従来の大規模なBPOやクラウドソーシング、人材紹介や派遣とは異なり、IT関係の受託開発やシステム保守などを行う企業の事業のような小ロットで継続的な事業を展開しております。

 例えば、従来のBPO企業においては、案件別に要件定義を行い、固定の人員を確保して人数単位の見積もりが実施されることが慣例でありました。派遣や人材紹介においてもBPOと同様、人数単位で人員を確保することから、数時間単位などのタスクへの対応が難しく、大企業の利用が中心となっている実情がございました。クラウドソーシングにおいては、タスク単位で依頼が可能であるものの、顧客企業が要件定義から、作業者の確保、ディレクション、成果物の品質管理等、全般を管理する必要があり、顧客企業の負担が重く、リソースが不足している中小企業にとっては、引き続き利用しづらい状況でありました。

 このような従来型のサービスが未だに多く提供されている中、当社においては、人数単位ではなく時間単位でのサービス提供が可能で、当社のリモートアシスタントが依頼に応じて稼働し、分単位から年単位で様々なタスクに対応したサービスを提供しております。「リモートアシスタント」とは、当社従業員で構成するフロント(ディレクター)と、従業員及び業務委託者で構成するキャスト(作業者)を指し、フロントは顧客企業からの仕事依頼を確認し、実際に作業を行うキャストのアサイン及び作業完了後の成果物の確認・納品を行っております。固定の人員に限った対応ではなく当社に参画する「リモートワーカー」のリソースの中から必要かつ有用なスキル・工数分だけ柔軟に利用が可能であること、顧客企業は依頼ごとの個別のマネジメントや契約管理が不要であることが、WaaS事業の主な特徴です。従来型のサービスは、中小企業にとって利用しづらく、顧客企業の負担が重い状況があったものの、リモートワークを駆使したWaaS事業という新たなビジネスモデルの構築により、従来型のサービスの利用が進んでいなかった中小企業を中心に、顧客開拓を進めております。


WaaS事業では、「CASTER BIZシリーズ」「My Assistant」を主に展開しております。

 「CASTER BIZシリーズ」は、秘書、経理、人事、採用、カスタマーサポート、マーケティングなどバックオフィス業務代行を中心としたサービスです。顧客企業と当社が時間単位で契約し、顧客企業から当社が受注した仕事を、全国に所在する当社のリモートアシスタントが代行して、役務提供を行っております。創業時から提供している「CASTER BIZ アシスタント」では、6ヶ月契約と12ヶ月契約の2プランを用意しており、それぞれ月30時間の利用が可能です。6ヶ月契約プランにおける月額費用は約13万円となります。

 顧客企業はフロントに対して仕事の依頼を行うだけでよく、工数の大きい作業者への指示や品質確認についても全てフロントに任せ、納品を待つだけの手間のないオペレーションが大きな特徴です。

 フロントは顧客企業から依頼された仕事の工程を整理し、タスクとして細分化した上で、作業に適したキャストをアサインして一斉に振り分け、それぞれ完了した成果物を一式として検品し、顧客企業へ納品しております。

 キャストのアサインにおいては、自社で開発したシステムを活用しており、キャストのスキル、過去の仕事の対応情報など、膨大なデータを蓄積し、独自のアルゴリズムを用いて、顧客企業からの仕事の依頼に適したキャストを自動検出するものです。顧客企業からの仕事の依頼は幅広いものの、フロントによる仕事の細分化、自社システムによる自動マッチングによって高効率なオペレーションを確立することで、時間・成果物のクオリティの担保を実現しております。


(サービスの流れ)

 「My Assistant」は、既存サービスである「CASTER BIZ アシスタント」の最低契約時間である30時間/月を、20時間/月まで短くした小ロットサービスであり、主な依頼業務は、軽微なルーティン業務や文字起こし、情報調査等となります。「CASTER BIZ アシスタント」においては、顧客企業からの依頼をフロントが整理した上でキャストをアサインしておりますが、「My Assistant」では、仕事依頼の際に顧客から対応方法の指示を添えてもらい、その指示をキャストが直接確認及び対応して、そのまま納品を実施しております。

 顧客からの案件受付、担当キャストや案件の進捗管理をするためのシステム整備、品質維持・納品漏れの防止を目的とした専属チームを設置することで、他サービスに設置されているフロントの役割に替えております。顧客は所定のフォームで業務依頼をするだけでよく、以降は専属チームの管理のもと、独自システムを介して適したキャストの選定、契約時間の調整、契約管理が行われ、顧客からキャストへ直接の業務指示の発生はありません。独自システムの活用と専属チームのサポートにより、円滑な事業運営を実現し、工数を最大限排除していることがビジネスモデルの大きな特徴であり、販売価格の小ロット化に大きく寄与しております。さらに、既存サービスより最低契約時間を短くすることで月額4万円〜と、販売価格を安価に設定しているサービスです。

 「CASTER BIZ アシスタント」においては、月額10万円以上の価格設定で、個人での利用検討が難しい実情がありますが、「My Assistant」においては、販売価格を月額4万円と提供価格を最大限小さくすることで、企業のみならずビジネスマンなどの個人としても契約検討しやすい価格帯を実現しております。軽微な作業やルーティン業務、情報調査などを安価に依頼できることにより、個人との契約も増加しております。

 

② その他事業

 「在宅派遣」「Reworker」を展開しているほか、事業開発機能が属しております。

 「在宅派遣」「Reworker」においては、ワーカーの直接のマネジメントを希望する顧客企業に向けて、各地に所在するリモートワーカーを派遣・紹介し、時間的・地理的制約を取り払った人材の広い選択肢を提供していることが特徴です。リモートワークを希望する求職者に対しても、リモート勤務可能な求人に限定をして提案することで、求職者のライフスタイルにあった多様な働き方の実現に貢献しております。

 また、事業開発機能においては、あらゆる仕事のリモート化の実現を目的とし、新規事業の企画立案・実行のほか、M&Aの調査・実行による売上の拡大及び対応可能な業種・職種の多角化を推進しております。

 「在宅派遣」は、顧客企業の人材ニーズと、リモートワーカーの就業ニーズをマッチングさせ、人材派遣や有料職業紹介という形でサービス提供しております。

 「Reworker」は、顧客企業が直接リモートワーカーの求人掲載を行うことが可能な、リモートワーク特化の求人メディアとしてサービス提供しております。

 事業開発機能においては、事業領域の拡大に関する調査を実施し、その結果として、主力サービスである「CASTER BIZ」の海外版の提供を開始しております。現在欧州では、コロナ禍による移民の帰国が相次ぎ、労働人口減少が課題となっております。さらに、ドイツ連邦共和国においては、労働者の権利保護の観点や、派遣法の整備状況など、社会環境と働き手の市場環境が日本と近しいことがわかり、最初の海外進出国としてドイツ連邦共和国を選定する運びとなりました。

 2022年9月から提供を開始したドイツ連邦共和国を皮切りに、2022年12月よりアラブ首長国連邦ドバイ首長国においてもサービス提供がスタートしております。このような国内サービスの海外展開に関する新規事業の事例をはじめとして、その他既存事業の拡大や、既存とは異なる業界・業種への進出の検討を行なっております。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/08 単独3Q累計実績 3,109 -19 -14 -29

2023/08 単独会社予想 4,176 -2 19 3

2022/08 単独実績 3,338 -162 -161 -145

2021/08 単独実績 2,235 -362 -354 -336


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/08 単独会社予想 2.10 650.41 -


上場時発行済株数 1,907,960株(別に潜在株式137,560株)

公開株数 402,500株(公募350,000株、オーバーアロットメント52,500株)

調達資金使途 広告宣伝費・販売促進費


PER:362

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:3.1億

公募時時価:15億

​   

【株主構成】 以下180日

インキュベイトファンド2号投組 投資業(ファンド) 371,600 21.92%

(株)ブルーマンデイ 役員らが議決権の過半数所有 340,000 20.05%

WiL Fund II, L.P. 投資業(ファンド) 190,000 11.21%

大和ベンチャー1号投組 投資業(ファンド) 158,120 9.33%

STRIVE III投組 投資業(ファンド) 103,080 6.08%

中川祥太 代表取締役 60,000 3.54%

IF Growth Opportunity Fund I, L.P. 投資業(ファンド) 56,320 3.32%

グリーンコインベスト投組 投資業(ファンド) 56,280 3.32%

SMBCベンチャーキャピタル3号投組 投資業(ファンド) 47,480 2.80%

(同)Gunosy Capital 投資業(ファンド) 41,200 2.43%


 本募集に関連して、貸株人である中川祥太、並びに当社の株主である、インキュベイトファンド2号投資事業有限責任組合、株式会社ブルーマンデイ、WiL Fund Ⅱ, L.P.、大和ベンチャー1号投資事業有限責任組合、STRIVE Ⅲ投資事業有限責任組合、IF Growth Opportunity Fund I, L.P.、SMBCベンチャーキャピタル3号投資事業有限責任組合、合同会社Gunosy Capital、ディップ株式会社、UNICORNファンド投資事業有限責任組合、SMBCベンチャーキャピタル4号投資事業有限責任組合、本田浩之、杉田浩章、株式会社TEAM-H及び株式会社ベーターは、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後180日目(2024年3月31日)までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等を除く。)を行わない旨を合意しております。

 また、当社の新株予約権を保有する石倉秀明、森岡由布子、村田諒、岩谷翼、川村尚弘、藤村彩乃、越川慎司、佐藤治子、亀谷佳永、島野麻衣子、金井理菜、多比良菜々絵、高見明大、稲留侑希及び麻生可南子は、主幹事会社に対し、ロックアップ期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式の売却等を行わない旨を合意しております。

【代表者】

代表者名 中川 祥太(上場時37歳4カ月)/1986年生

本店所在地 宮崎県西都市鹿野田

設立年 2014年

従業員数 353人 (2023/07/31現在)(平均37.5歳、年収397.1万円)

事業内容 リモートアシスタントをはじめとした人材事業運営

URL https://caster.co.jp/

株主数 21人 (目論見書より)

資本金 49,900,000円 (2023/08/30現在)

代表者生年月日 1986年06月04日生まれ

代表者略歴

2008年04月 自営業にて古着店を開店

2011年01月 株式会社オプト 入社

2012年04月 株式会社イー・ガーディアン 入社

2014年09月 当社創業 代表取締役 就任(現任)

2020年09月 一般社団法人リモートワーカー協会 理事就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 大和 327,400 93.54%

引受証券 みずほ 7,000 2.00%

引受証券 SBI 7,000 2.00%

引受証券 岩井コスモ 3,500 1.00%

引受証券 極東 1,700 0.49%

引受証券 松井 1,700 0.49%

引受証券 マネックス 1,700 0.49%


【参考類似企業】今期予想PER(9/1)

3900 クラウドワクス 24.5倍 (連結予想)

3979 うるる 16.9倍 (連結予想)

4484 ランサーズ 112.0倍 (連結予想)

6560 LTS 32.9倍 (連結予想)

7060 ギークス 21.7倍 (連結予想)


【私見】

 リモート銘柄としてややトーンダウンしたものの、業種妙味はそこそこあります。業績は伸びてはいるものの、黒字になるかならないかのところで、大きな成長性があるとは言い難いです。VCだらけの株主構成はマイナス材料ですが、ほぼロックがかかっており、売出しなしということからも、VCの株価目線はもう少し上なのかと思います。中期では妙味はなさそうですが、吸収金額は小さく、売り要素はないことから初値に関しては高いと予想します。


想定価額:650円

仮条件上限:760円

初値予想:2000円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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