2023年9月23日土曜日

IPO分析(西部技研)

 【事業内容】

​(1) 技術の特徴

 1965年に前身となる株式会社西部技術研究所を立ち上げ、1974年に連続ハニカム成形技術を確立しました。シート状の素材と波形の素材を交互に積層接着して形づくられるのが、当社グループ製品のコアとなるハニカム積層体です。ハニカム積層体とは、ダンボールの板紙のようなものを何層にも重ねて作る構造体で、断面が蜂の巣に似ていることから、一般的にハニカムと呼ばれています。このハニカム積層体は、空気抵抗が少なく、強度に優れ、表面積が広いという3つの特徴を有しています。当社のコア技術は、多くの素材をハニカム状に加工できることと、そのハニカムに様々な機能剤を添着し、特別な機能を持たせることです。この技術を製品の心臓部となるハニカムロータ(回転体)に用い、デシカント除湿機やVOC濃縮装置、全熱交換器等を世の中に提供してまいりました。私たちは設立当時より培ってきたこのハニカム加工技術の強みを活かしながら、地球環境に貢献する製品を生み出し続けることを重要なミッションと考え、日々新たな技術を磨いております。

 

(2) 主な製品

(デシカント除湿機)

 一般空調に用いられる除湿には主に「冷却式」と「デシカント式=吸着式」の2つの方式があります。「冷却式」は空気中の水分を冷却し結露させて除湿する方式です。一方「吸着式」は吸湿材に湿気を吸着させて空気を除湿する方式です。デシカント式除湿機は、シリカゲルやゼオライト等の吸着材を用いてハニカム内部に湿気を吸着させて空気を除湿します。空気を冷却する必要がないため、低温時や空気中に水分が少ない低露点環境においても、効率的に除湿することができるのが特徴です。

 最終製品の品質維持のためにその製造工程で湿度コントロールを必要とする食品・製薬工場だけでなく、世界的に需要が急増中のリチウムイオン電池、二次電池や有機ELといった先端技術の製造工程にも採用されています。また、美術館・博物館、スーパーマーケット、室内アイススケートリンク、発電所や船舶輸送においても使われており、その用途は多岐にわたります。販売・設置に加え、導入をご検討頂いている新規顧客若しくは一定期間限定で使用する顧客に対しては、小型標準モデル機のレンタルサービスも提供しております。その中でも近年急拡大市場である車載電池の製造においては、そのほとんどの工程で-40℃露点以下の非常に低湿な環境が、当該製品の高性能、高耐久性、高安全性といった非常に厳しい品質基準が求められています。このような超低湿環境を省エネルギー性も加味して実現するには一般的な冷却式除湿機では実質的に不可能で、現在のところデシカント除湿機のみが有効な方式と認識されております

 また、デシカント除湿機を用いたドライルームシステムの設計、設置工事も行っており、一般的な-40℃露点クラスから-90℃露点以下の超低露点まで幅広い要求にお応えしております。


(VOC濃縮装置)

 1990年代より米国を始め、欧州、そして中国の産業化に伴い、大気汚染防止のための厳しい環境規制が施行され始めました。近年ではその規制も更に厳しくなってきており、特に半導体、自動車塗装のような大風量のVOC混合排気の処理においては、当社VOC濃縮装置による方法が省エネルギー性も兼ねて、非常に効率的に処理することができる環境保全装置として広く認識されております。 

 VOC濃縮装置は、塗料から発生する大気汚染の原因となるベンゼンやトルエン等を総称した揮発性有機化合物(VOC)を選択的にVOC濃縮ロータに吸着させ、排出ガスの無害化を可能にします。1988年に、世界に先駆けてゼオライトを用いたVOC濃縮ロータ商品化に成功して以後、塗装や印刷業界だけでなく近年では急進中の半導体製造工程といった多様な用途に柔軟に対応した製品展開及び豊富なオプション展開をしております。中国やヨーロッパといった大気汚染に関連する法規制が厳しい国々や、大気汚染が深刻化する新興国において、法規制が今後制定・強化される可能性もあります。このような地域において今後も引き続き、製品展開に注力してまいります。当該製品は開発からモジュール製造に至るまで日本国内で手掛けており、その性能の高さから世界30か国以上の顧客に選ばれております。


(その他)

 上記主力製品のほか、換気によって失われるエネルギーを再利用しCO2削減に寄与する省エネルギー装置、全熱交換器も製造販売しております。全熱交換器は、室内からの還気が屋外へ排気される際、還気が持つ熱と湿気(全熱)をハニカムロータが蓄え、汚れた空気のみが排気されます。同時に取り入れた外気がロータを通過する際に、蓄えた全熱を外気が受け取り、冬は予熱・加湿、夏は予冷・除湿されて室内に給気されます。一般事務所ビル、研究施設、病院、ホテル、学校、船舶、プール等、国内では当社の製品が多岐に渡る産業で採用されております。


(3) 製造・販売・サービス体制

①   製造体制

 国内における生産工場展開状況は、本社がある福岡県に、第一工場(福岡県古賀市)と第二工場(福岡県古賀市)、第三工場(福岡県古賀市)、宗像工場(福岡県宗像市)を、神奈川県に湘南事業所(神奈川県高座郡寒川町)を展開しております。各工場での主な製造物は、第一工場では除湿ロータ、第二工場ではハニカムフィルターを中心に小型製品、第三工場ではデシカント除湿機の組み立て、宗像工場ではVOC濃縮装置用ロータ、湘南事業所では全熱交換器であります。

 海外においては、スウェーデン(スパンガ)とポーランド(グディニャ)に主にデシカント除湿機を生産する工場を、アメリカ(ペンシルバニア州)に主に全熱交換器を生産する工場を、中国(江蘇省常熟市)に主にVOC濃縮装置を生産する工場及び主にデシカント除湿機を生産する工場(3か所)を計7か所展開しております。



②販売体制

 福岡県にある本社に営業本部を置き、この本部の指揮の下に東京・大阪・名古屋に営業拠点を設置し、国内市場の顧客開拓、販売拡大に努めております。海外では、スウェーデン、アメリカ、中国、ポーランド、アフリカ、韓国等の各子会社との緊密な連携のもと、ヨーロッパ、アメリカ、アジアをはじめ、約50か国にその販売網を広げております。各地域への直接営業及び各地域に代理店を設置し、グローバルな販売体制を構築しております。


③サービス体制

 国内では、据付工事、メンテナンス、ロータ交換工事まで提供しており、製品の性能を最大限に発揮できる環境づくりを行っております。当社の製品は、工場等の設備として長い期間使用されることも多く、簡単に改修できない巨大プラントへの導入等もあります。そのような環境下で安定した性能を維持管理し、トラブルを未然に防ぐためにも定期的なメンテナンスは重要です。さらに技術向上のスピードが速い現代においては判断の難しい、交換や改修のタイミング等についても随時ご提案を行っております。また、他社製ロータを使用中であっても、当社製ロータへの交換を可能としております。将来的には国外の各種ロータの交換需要にも積極的に対応できる体制構築に注力してまいります。

 国外においても、中国ではこれまで製造部と兼任で行っていたサービス業務をサービス部として独立し、更に専任人材を採用することにより、他社競合との差別化を図りながらサービス事業の拡大に取り組んでおります。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/12 連結中間実績 12,610 2,156 2,287 1,818

2023/12 連結会社予想 27,147 5,236 5,267 4,075

2022/12 連結実績 24,890 4,604 4,783 3,908

2021/12 連結実績 17,403 1,847 2,063 1,695


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/12 連結会社予想 213.96 1,392.00 -


上場時発行済株数 20,500,000株

公開株数 6,061,300株(公募1,930,000株、売り出し3,340,700株、オーバーアロットメント790,600株)

調達資金使途 工場の新設・増設、借入金の返済


募集を行う地域

欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)


PER:12.1

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:158億

公募時時価:533億

​   

【株主構成】 以下180日

(株)グリーンフューチャー 代表取締役の資産管理会社 5,000,000 26.93%

隈扶三郎 代表取締役社長など 4,350,000 23.42%

(公財)隈科学技術・文化振興会 代表取締役社長が代表理事を兼務 3,000,000 16.16%

西部技研社員持株会 特別利害関係者など 2,012,600 10.84%

下園誠 常務取締役など 750,000 4.04%

平川美和 取締役 411,400 2.22%

隈優作 代表取締役の甥 400,000 2.15%

喜田桂祐 執行役員など 400,000 2.15%

永松資紹 執行役員 400,000 2.15%

藤川貴史 執行役員 400,000 2.15%


本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、貸株人かつ売出人である隈扶三郎、売出人である下薗誠、平川美和、喜田桂祐、永松資紹、藤川貴史、白石芳子、隈優作及び村岡克紀並びに当社株主である株式会社グリーンフューチャー、公益財団法人隈科学技術・文化振興会、西部技研社員持株会、福田健、Anders Kristoferson、池田順一郎及び宮島剛は、SMBC日興証券株式会社(以下「主幹事会社」という。)に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しにかかる元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2024年3月30日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。

【代表者】

代表者名 隈 扶三郎(上場時59歳5カ月)/1964年生

本店所在地 福岡県古賀市青柳

設立年 1965年

従業員数 348人 (2023/07/31現在)(平均41.1歳、年収532.2万円)、連結738人

事業内容 デシカント除湿機やVOC濃縮装置などの製造、販売、据え付け・保守などのサービス

URL https://www.seibu-giken.com/

株主数 21人 (目論見書より)

資本金 100,000,000円 (2023/08/30現在)

代表者生年月日 1964年05月01日生まれ

1987年04月 当社 入社

1990年11月 米国ニチメン㈱へ出向

1997年04月 当社 専務取締役営業本部長

2001年07月 Seibu Giken America, Inc. 取締役(現任)

2002年04月 当社代表取締役社長(現任)、Seibu Giken DST AB 取締役会長(現任)

2007年01月 西部技研環保節能設備(常熟)有限公司 董事長(現任)

2014年07月 ㈱西部技研DRエンジニアリング 取締役(現任)

2016年12月 在福岡スウェーデン名誉領事館 名誉領事(現任)


【幹事団】

主幹事証券 SMBC日興 - -

引受証券 野村 - -

引受証券 FFG - -

引受証券 みずほ - -

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -


【参考類似企業】

1770 藤田エンジ 8.1倍 (連結予想)

1775 FFE&C 7.9倍 (連結予想)

1952 日空調 10.5倍 (連結予想)

1975 朝日工 12.5倍 (連結予想)

4245 ダイキアクシス 30.8倍 (連結予想)

5946 長府製 18.7倍 (連結予想)

5953 昭和鉄 5.6倍 (連結予想)

5997 協立AT 7.0倍 (連結予想)

6231 木村工機 12.1倍 (単独予想)

6367 ダイキン 28.5倍 (連結予想)

6458 シンコウ工 11.5倍 (連結予想)

6755 富通ゼネ 22.7倍 (連結予想)


【私見】

 デシカント除湿機や VOC 濃縮装置等の製造ということで分かりにくいですが、市場シェアが高く、環境銘柄としても成長性は高そうで業種評価はできます。急成長とまではいきませんが、この規模で売上・利益共に10%の成長は評価でき、他社の10強のPERとみるか、30弱とみるかは評価が分かれるところです。個人的には15~20の評価をしても良いと考えています。規模は大きいですが、VCなしの完全ロックなので静かなスタートになるかと思いますが、セカンダリー銘柄になる可能性はあると思います。


想定価額:3250円

仮条件上限:2600円

初値予想:3000円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立~やや強気

総合評価:3.5

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